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山口正洋氏
アベノミクス、消費増税で好況のウソ?悪化進む消費、破綻できない資産“超過”日本
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131105-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 11月5日(火)6時19分配信
昨年12月に自民党・安倍晋三政権が発足し、上場企業の2013年4〜6月期決算では、営業利益が前年を3割強も上回るペースとなり、政権発足前には9000円を割り込んでいた日経平均株価は、一時1万5000円台にまで回復。為替相場でも円高是正が進み、政権発足直後の1ドル=85円前後から、5月には約4年7カ月ぶりとなる103円台まで下落し、メディア報道などにより、アベノミクス効果で日本経済が急回復しているとのムードが広がっている。
だが、こうした見方に異を唱えるのが、7月に『日本経済 ここだけの話』(朝日新聞出版)を上梓し、ぐっちーさんのペンネームで知られる山口正洋氏だ。
モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がける投資銀行家であり、「AERA」(朝日新聞出版)や「週刊SPA!」(扶桑社)などに連載コラムも持つ山口氏に、前回(http://biz-journal.jp/2013/10/post_3084.html)に引き続き、
「日銀の掲げる2%物価上昇、消費増税で経済成長のごまかし」
「日本財政は破綻しない」
「“すでに強い”日本企業がとるべき道」
などについて聞いた。
--安倍首相は日銀に2%の物価上昇率達成を求め、黒田東彦総裁は「2年程度を念頭に実現を目指す」としていますが、この方針は正しいのでしょうか?
山口正洋氏(以下、山口) 間違っていると思います。政府と日銀の考えをきわめて単純化すれば、今よりも将来のほうが物価が高くなるという経済環境の下では、早く買わなければという消費者が増え、人々は貯金を取り崩してでも、今ものを購入する、つまりお金を使うはず。その結果、企業収益が改善して、社員の給料も上がるという論理です。いわゆるリフレ派と呼ばれる人たちが唱えている理論で、いろいろと買いたいものがあった1980年代はまさにそういう展開でした。
しかし今、多くの日本の消費者にとって、どうしても急いで買わなければと思っているものはありますか? 買うのを我慢しているものはありますか? もうちょっと楽に生活したいという思い、あるいは将来に対する不安、そういうものは持っていたとしても、大多数の人はすでにほとんどのものを手に入れているのではないでしょうか。将来のほうがものの値段が高くなるとしても、今のうちに急いで何かを買おうとは思わないでしょう。
逆に、ただでさえ将来に対して不安を持っているわけですから、物価が上がっていく中で給料はいつ上がるかわからないとしたら、まず考えることは「生活の防衛」でしょう。すると、消費を控え、節約しますよね。それに消費税増税も待ち構えているわけです。
学者の方々は、「消費税が引き上げられる前の駆け込み需要で一時的に景気がよくなり、消費税増税による落ち込みは補填できる」と考えているようですが、日本では過去2回にわたり消費税が引き上げられるたびに、その年の税収は落ちています。増税分と給料とを見比べて、もっと節約しなければいけないと考え、ますます消費を減らす方向にバイアスが働くからです。そうした歴史を踏まえると、今回も消費税増税に備えて貯金しようという人が増えるのではないでしょうか。
--つまり、消費が増えて企業業績が回復し、給料が上がるというシナリオにはならないということですね?
山口 そうしたシナリオはすでに破綻しています。例えば、2人以上の世帯を対象に、今後半年間の消費見通しを5段階評価で尋ねる消費動向調査で、指数が50以上であれば「良好」と判断されますが、内閣府が7月10日に発表した6月の消費動向調査の結果では、「44.3」と6カ月ぶりに悪化しました。
その理由について内閣府は、「株価や円相場が乱高下した影響を受け、指数を構成する暮らし向きなどの4指数がすべて低下した。ただし、基調判断は、足下の株高、円相場が持ち直してきていること、過去の平均と比べて指数自体は高水準にあることから、前月の“改善している”を据え置いた」としています。無茶苦茶なロジックだと思いませんか? 我々は、株価や円相場を見て毎日の消費態度を決めていません。
それから、これも内閣府ですが、景気ウォッチャー調査。これは全国を11地域に分け、幅広い業種・職種から選ばれた約2000人に対して行った聞き取り調査をまとめたものです。8月8日に発表した7月の現状判断DIは、前月比0.7ポイント低下の「52.3」と、4カ月連続で低下しました。そして、「百貨店等での夏のセールが低調であった」「円高是正により仕入価格上昇等によるコスト増がみられた」、先行きについては「電気料金や食料品、燃料などの価格上昇が懸念される」、こういうコメントが聞き取り調査の中でたくさんあったようです。しかし、「“景気は緩やかに持ち直している”とまとめられる」という結論になっています。
●対GDP債務比率と財政破綻リスクに相関関係はない?
--ところで、財務省は、「日本の債務はGDP比で190%に達しており、財政再建が急務だ」と言っていますね。
山口 財務省は、「1000兆円の公的債務をいっぺんに返すためには消費税を50%にしても足りない」と財政危機を煽るわけです。それをメディアが鵜呑みにして、「日本が倒産する」と垂れ流すわけです。でも、国債をいっぺんに返す必要性というのは、どこにもありません。この1000兆円の公的債務のうち、少なくとも95%は日本人がファイナンスしているからです。つまり、1500兆円ともいわれる個人の金融資産のほとんどは預金と保険で、これらが巡り巡って金融機関などによる国債の購入に充てられています。だから、これだけの借金を外国の助けなしに賄えるわけですね。
そういう国は日本だけですよ。アメリカ国債保有者の50%が外国人です。だから、その外国人が「もうアメリカ国債はいらない」と言ったら、アメリカ経済は破綻するかもしれませんね。日本国債が危なくなり、本当に財政が危険になるというケースは、大半の日本人が日本人であることをやめ、日本から出ていくときくらいです。
また、財務省は消費増税を進めるために、「GDPに対する債務比率が高まれば、財政破綻の可能性も高まる」という説明をしていますが、債務比率と財政破綻リスクの間に相関関係はありません。韓国、タイ、ロシア、アルゼンチンなどが倒産した時のGDPに対する債務比率は、50%程度でした。こうした国々に共通しているのは、対外借入比率が高く50%以上だった点です。ちなみに日本は、限りなくゼロに近い。
日銀は統計をとる際に、国の経済主体を、政府、金融機関、非金融法人企業、家計、NPO(民間非営利団体)の5つに分類しています。そういう観点から、日本という国のバランスシートを調べると、資産は5615兆円、負債は5353兆円。つまり、日本は260兆円の“資産超過”です。財務省は、民間部門を無視して、「日本は債務超過だ」とあおっているわけです。
世界中で、民間部門も加えて資産超過の国は日本だけです。世界で唯一の資産超過の国が倒産するというのであれば、債務超過の国のほうが先に倒産するはずです。財務省は財政の危機をあおることで増税をしたいので、こうした単純な議論をわざとしない。もし議論したら、「増税しなくてもいい」ということになりかねないですからね。
--財務省が消費税増税をしたい真の理由は、なんなのでしょうか?
山口 いろいろな説がありますが、私は課税所得の捕捉率の問題ではないかと思います。捕捉率というのは、税務署が所得額をどれくらい把握しているかを表すもので、サラリーマンは源泉徴収なので捕捉率は10割、自営業者は5割、農業、林業、水産業従事者は3割といわれています。これから団塊の世代が定年を迎え、サラリーマン生活から年金生活に移っていくと、それまで100%捕捉できていた課税所得がだんだんと捕捉できなくなる。それに危機感を抱いた財務省は、確実に税収を確保できる消費税引き上げを考えたのではないでしょうか。
●日本企業生き残りのカギはガラパゴス?
--最後に、日本企業の現状やこれからの見通しについてお聞きします。日本の製造業は、世界市場において韓国などのライバル勢に負け、かなり厳しいとの見方が強いです。
山口 日本にいると、「日本は、韓国や中国に追いつかれ、落ちぶれる一方だ。アメリカでもソニーよりLG電子のほうが売れている」という話をよく聞きます。でも、状況はまったく違います。コモディティ化した製品でシェアを奪われただけなのです。購入後の商品満足度やクレームの少なさなどのデータを見ると、日本製品が依然としてトップを独占しています。
それから、コアテクノロジーの蓄積量で、日本企業は圧倒的に優位に立っています。例えば、iPhoneの部品の60%は日本製です。ボーイング787も70%が日本の技術ですよね。つまり、iPhoneもボーイング787も、日本の技術なしにはつくれないわけですよ。日本の強みは、そこにありますよね。だから、汎用品でサムスンと競争する必要はありません。
--本書の中で「ガラパゴスで日本は生き残る」と書かれていますね。
山口 ガラパゴスとは、ある特定の市場向けだけに特化させてしまい、世界市場では使い物にならないという意味で使われています。でも、ルイ・ヴィトンは、一切妥協せず自らのブランドイメージを守り通し、世界市場向けに廉価な鞄や靴を大量に販売しようとはしませんでした。このようなブランドを徹底的に追求するという戦略をガラパゴスだと揶揄するのは、勘違いもはなはだしいと思います。ルイ・ヴィトンを見習って、高価でも世界が欲しがるブランドをつくることが、日本の生き残る道ではないでしょうか。そして、世界中で誰も追いつけそうもない究極のブランドは、日本人の“接客サービス”ではないかと思います。
日本のサービス産業というのは、まだ世界の競争にさらされた経験が少ない。銀行の窓口業務や、温泉業、旅館業は、まだほとんど世界に出て行っていませんが、その競争力はすごいでしょうね。日本の銀行の窓口で、お釣りを間違えることはありませんからね。アメリカの銀行は普通に間違いますから。「何事も当たり前に正確だ」というところが、日本はすごいですね。
日本人にとっては当たり前のことが、世界の人々にすごくいいと思われるような時代になってきました。例えば、アニメやオタク文化。別に輸出しようと思ってつくったものではありませんが、たまたま日本人がそういうことをやっていたら、世界が追いついてきたわけですね。
寿司もそうですね。私が初めてアメリカに行ったのは80年代ですが、そのころ生の魚を食べるといったら、気持ち悪がられました。それが今や寿司ブームで、外国人でも生の魚を食べる人が増えています。
また、ばかばかしいと思うかもしれませんが、毎朝8時にきちんと会社に来るとか、就業時間外であってもお客様から頼まれた急ぎの仕事があれば終わるまで頑張るというのは、ごく普通の日本人のメンタリティーなのですが、世界的にはそれはきわめて珍しいことなのです。だから、日本人であることが競争力の原点なのです。
編集部
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