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みずほ銀行問題に説明責任がある金融庁
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20131029-00029330/
2013年10月29日 16時8分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
みずほ銀行が、世間から注目されている暴力団融資に関して社内処分の内容を発表しました。
その処分内容というのは‥頭取の役員報酬を半年間ゼロにする、と。でも、それでも年間5千万円以上の報酬は確保できるのだとか。
欧米のバンカーの報酬に比べれば大したことはないのかもしれませんが‥それでも我々庶民からみたら、「えっ、そんなに!」なんて。
で、ついそんなことにばかり注意が行ってしまうみずほ銀行の処分内容なのですが‥では、改めて、何故そのような処分が必要であったのか?
こんな質問をすれば、多くの方は次のように答えるでしょう。
「暴力団員に融資をしていい筈がない」
貴方もそうお感じになりますか?
しかし、先日も言いましたように、みずほ銀行が暴力団員と知ってお金を融資した訳ではないのです。何でも、暴力団員が中古車デーラーで車を買う際の自動車ローンのお金の出所がみずほ銀行であっただけで、みずほ銀行の職員は車を買った暴力団員に会ってはいないのです。それどころか、そのローンを仲介したオリコの職員でさえ、自動車ディーラーからファックスで送られてきた提携ローンの申込書を見ただけなのだとか。
つまり、一般の自動車購入者のなかに暴力団員が紛れ込んでいて、それを自動車ディーラーの営業マンやオリックスの担当者が見抜けなかったというだけの話なのです。
因みに、そうして暴力団員に結果として融資してしまった件数は230件ほどであり、金額は総額で2億円に上るのだとか。
いいですか? 2億円と言えば大きい額に見えるかもしれませんが、融資1件当たり約100万円に過ぎないのです。
従って、この融資で得た金を本当に自動車の購入資金に充てていることが明らかであれば、幾ら暴力団員に対する融資ではあっても、それほど悪質なものだとは考える必要がないでしょう。但し、この点について、疑問を呈する見方もあり得るのです。つまり、自動車ローンというのは隠れ蓑であって、その合計2億円ほどの融資は、別の目的に使われたのではないのか、と。この点については、後ほど検討することにしましょう。
私、もし、こうした融資手続きがずさんであるという理由で銀行が責任を取るべきだというのであれば、本来は、銀行の頭取が責任を取るというよりも、融資部長だとか、提携ローンの担当の課長などが主に責任を問われてしかるべきだと思うのです。もちろん、だからと言って頭取が全く責任を問われなくてもいいということにはならないと思いますが‥
しかし、実際には、会長や頭取、そして、それ以外の役員たちが主に責任を問われた形になっているのです。
もう一度、お聞きしたいと思います。
何故、みずほ銀行の頭取たちは責任を問われたのか?
どうも釈然としないのです。
それに、肝心の金融庁が口を閉ざしているので、なお真相が分からない。
そうでしょう? 金融庁の担当大臣でもある麻生副総理は、これまで殆どこの件について中身のあることを言ってこなかったのです。
・10月15日
「個別金融機関にかかる検査に関して、金融機関との具体的なやりとりや何かについてコメントすることはありません。この件に関しては、今、銀行法第24条に基づいて報告徴求命令を実施している最中だと思いますので、その報告を踏まえて、今後の対応について検討していきたいと思っておりますので、これ以上のコメントはありません」
・10月22日
「これは予算委員会でも言いましたけれども、個別金融機関の検査の内容について、私の方からコメントすることはありません」「いずれにしても、この件については、現在、みずほ銀行が第三者委員会を含めて、事実関係を改めて調査をしているところなので、その調査結果などを踏まえて対応していきたい、対処していきたいと考えています」
まあ、以上のような受け答えを続けていたのですが、昨日、社内処分案が示されたということで、少しばかり展開がありました。
・10月28日
「反社会的勢力との関係があったことを、第三者委員会から指摘されたのは非常に大きな問題だ。また金融庁に対して間違った話をしたのは銀行としていちばんしてはいけないことであり、きちんと精査しないで報告していたことも問題だった」
しかし、お分かりのように新たに言っていることと言えば、金融庁に対して事実と反することを報告したのは遺憾というだけ。
これだけだと、何故みずほ銀行の頭取の報酬が5千万円も減らされる必要があったのか、その理由が分からないのです。
これが、もし頭取が、頭取は話を知らかなったように金融庁に報告しておけと指示したのであれば別ですよ。しかし、そのようなことは明らかになっていないのです。
にも拘わらず、相当に厳しい処分案が示された、と。
いずれにしても、みずほ銀行は、本件の調査を第三者委員会に任せて、その結果を待ったわけなのですが‥
その調査は、今月8日に発足した第三者委員会が3週間弱でまとめたものに過ぎないのです。
そのような第三者委員会が限られた時間で調べた内容が、的確であるという保証がどこにあるのでしょうか?
もちろん、金融庁から事実を報告しろと迫れられたから、調査結果の信憑性を増すために敢えて第三者委員会を発足させたという事情はよく分かるのです。しかし、様々な権限をバックに事実関係を炙り出す筈の金融庁の検査でも真相が分からなかったと思われるのに、単に肩書きばかりが立派な弁護士さんたちに調査を任せたからといって何が分かるのか?
もちろん、弁護士さんたちがまとめた報告書ですから、理路整然として筋の通ったものにはなっているでしょう。
しかし、その報告書の内容が本当に正確であるかは何とも言えないし、また、内容が十分であるとも言えないのです。
いずれにしても、どんなことをその第三者委員会は報告書で言っているのでしょうか?
<経緯>
2010年7月、オリコとの提携ローンについて、自行として審査開始決定
2010年12月、228件を反社会勢力への融資として認定。当時の西堀頭取に報告
2011年3月、システム障害が発生し、問題の融資が放置。
<背景>
提携ローンであったため、自行融資との認識が乏しかった。
法令担当部署がトップに詳しい状況を説明しなかった。
西堀頭取が引き継ぎを行わなかった。
いいですか? 以上のようなことしか言っていないのです。後付け加えるのならば、合併してできた銀行だから、内部の意思疎通が十分でないということなどです。
この第三者委員会の言っていることは、大体これまで報じられてきたことをまとめたような内容に過ぎないではないですか? つまり、本当の真相にまでメスを入れたとは到底思えない。
いいでしょうか? 金融庁が一番問題にしているのは、そして、私が一番知りたいのは、暴力団関係者に対する融資が判明した後の対応なのです。
恐らく提携ローンだから、審査が甘くて暴力団員に対する融資が紛れ込んでも、ある程度は止むを得ないと金融庁も認識しているのではないでしょうか?
しかし、分かった以上、何故適切な措置を取らなかったか? そのことを金融庁は問題にしているのだと思うのです。
もし、それがそうだとしたら、麻生担当大臣としては、一般論としてそのことを国民に分かり易く説明すべきであると思うのです。もちろん、実際に上層部が、そうした事実関係が判明した後、どのように対応したかについては、コメントできないかもしれませんが、いずれにしても、事後の対応ぶりを金融庁としては重視しているのだ、というようなことは国民に説明すべきなのです。
しかし、それについては何も言わない。
何故言わないのか?
それを言ってしまうと、皆の関心が、当時の頭取に向いてしまうからでしょう。つまり、当時の頭取がグレーに近いと皆に思わせることは回避したい、と。
しかし、そうやって金融庁が明確なことを言わないものだから、マスコミは、一体何がこの融資の最大の問題かが分からないでいるのです。
ところで、先ほど述べたように、本件に関して、形式的には自動車ローンという形を取っているが、実は、それは真実を隠すための隠れ蓑に過ぎないという見方もあるようです。つまり、暴力団に融資をするために、隠れ蓑として提携ローンを利用したのではないか、と。
私は、その可能性は低いと想像しています。何故ならば、余りにも関係者が多数に上り、いずれ誰かの口から真相がばれてしまうことが簡単に予想されるからなのです。それに、仮に暴力団に融資をする必要性に迫れたとしたら、ダミー会社を利用して行うなどすれば、幾らでも融資が可能であるからなのです。
従って、真相はそこまで悪質ではないのでしょう。しかし、暴力団員に対する融資があることが判明した後、その融資の解除や回収を急がなかったのは事実なのです。だから、その真の理由が何であったかを明らかにしなければならないのです。
もし、仮に頭取が、自分の身の安全などを心配したために、暴力団員への融資の回収を支持しなかったとしたら、それをどう考えるべきなのか?
仮にそのような事実があったとしたら、それは大変に大きな問題であって、銀行のトップは相当の責任を負う必要があるでしょう。
では、そのような事実を踏まえて、今回の処分案は決定されたのでしょうか?
しかし、報告書で指摘されていることから判断すれば、どうもそうではないのです。単に、職務怠慢で、このような事態を放置しただけだ、と。しかし、仮にそうであるにしても、事柄の性質上、重い責任が問われてしかるべきだ、となっているようなのです。
では、真相は、報告書が指摘したとおりなのか?
それは何とも言えません。そして、それを徹底的に調査するのが検査の目的でもあるのです。
でも、検査では、恐らく確たる証拠はつかめなかったのでしょう。また、だからこそ、金融庁の役人は、麻生総理に「金融庁に対して間違った話をしたのは銀行としていちばんしてはいけない」とだけ発言させたのでしょう。
恐らく、これ以上のことが今後表面化することはないのではないでしょうか。
いずれにしても、一番の焦点は、何故暴力団員への融資が230件ほどもあることが判明したのに、それを放置するようなことをしたのか? その真の理由なのです。
本当に、提携ローンであるからという理由で軽く考えたことが最大の理由なのか?
ひょっとしたら、暴力団員に回収を強要すると、身の危険があるかもしれないと感じたことが原因であるかもしれません。頭取だけではなく当該提携ローンに関係する多くの銀行関係者も同じように感じていたかもしれません。つまり、さわらぬ神に祟りなし、と。
だって、これまで何千億、何百億円の貸出金の償却に慣れっこになっているメガバンクからしたら2億円なんてゴミみたいなものですから。でも、そんなこと世間に言ってはいけない、と。
或いは、提携ローンとは言いながらみずほ銀行が暴力団員に融資をしていた事実が判明するだけで、銀行のイメージが大きく傷つくと思ったのかもしれません。
いずれにしても、金融庁は、みずほ銀行の何がどう問題であるのかを国民に分かり易く説明する責任があるのです。もし、何も国民に説明する気持ちがないのであれば、一体何のための金融検査なのかと言いたい!
以上
小笠原 誠治
経済コラムニスト
小笠原誠治(おがさわら・せいじ)経済コラムニスト。1953年6月生まれ。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(いずれも秀和システム)など。「リカードの経済学講座」を開催中。難しい経済の話を分かりすく解説するのが使命だと思っています。
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