05. 2013年10月30日 10:11:51
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【第115回】 2013年10月30日 森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト] 追加緩和の焦点は「量」より「質」より「時間軸」 〜「エンゲルの法則」に反する日本の消費者物価指数 ――森田京平・バークレイズ証券チーフエコノミスト 市場の焦点: 「第三の矢」から「第一の矢」へ 海外投資家と話していると、アベノミクスに対する彼らの期待が「第三の矢」(「成長戦略」という名の構造改革)から「第一の矢」(金融緩和)に回帰しつつあることを痛感する。 1つのきっかけは、国家戦略特区の範囲内でさえ、労働市場改革の議論が先細りする兆しがあることだ。企業のビジネスモデルの変革スピードを左右する1つの要因として、労働力の可動性(mobility)が挙げられる(なお、労働力の可動性は正規雇用、非正規雇用など雇用形態の流動性(liquidity)とはかならずしも同一の論点ではないことに注意したい)。 したがって、労働力の可動性向上が期待できないとなった場合、「日本企業が変わる」という期待自体が萎縮しかねない。勢い、市場の焦点は「第一の矢」(金融緩和)に戻る。まして米国の“Tapering”(量的緩和の縮小)が先送りされる中では、先進国に共通して市場の焦点は金融政策に絞り込まれようとしている。 消費者物価指数(CPI): 「家具・家事用品」「教養娯楽」が上向き 日本の金融政策の場合、焦点は追加緩和があるのか、あるとすればいつ何をするのかにある。この点を占う上で消費者物価指数(CPI)が鍵を握る。先週発表された9月分CPIでは、生鮮食品を除くコアCPIは前年同月比+0.7%と4ヵ月連続で前年比プラスとなった(図表1参照)。 拡大画像表示 この間のCPIの上昇スピードは、筆者が事前に想定していたよりも速い。しばしば物価上昇要因として、円安を背景としたエネルギーや食料の価格上昇が指摘されるが、これらはおおむね想定内の現象である。
むしろ、ルームエアコンやティッシュペーパーなどの「家具・家事用品」、テレビやパソコンなどの「教養娯楽」での価格の上方反転(あるいはその兆し)がこれだけ早く見られ始めるとは、筆者は十分想定できていなかった(図表2参照)。中でもパソコンの価格上昇は予想以上に速い。 拡大画像表示 日本のCPIの特徴: 食料のウェイトが高い
このように、足もとにかけてのCPIの上昇スピードは確かに速い。それでも筆者は、日銀の「物価安定の目標」である「CPI前年比+2%」が2年、つまり2015年を目途に実現する可能性は低いと見ている。 1つのポイントとして、日本のCPIのある特徴が挙げられる。それは食料のウェイトが高いということである。実際、日本のCPIでは食料のウェイトは25%にのぼり、米国やユーロ圏の15%程度よりかなり高い。さらには、インド、インドネシア、ブラジル、南アフリカなど、一部の新興国と比べても高い(図表3参照)。 拡大画像表示 よく知られた「エンゲルの法則」によると、経済が発展し家計の所得水準が高くなるほど、家計の支出に占める食料支出の割合は下がる。これをCPIについて言い換えれば、先進国のCPIでは食料のウェイトは下がるはずだ。それにもかかわらず、日本のCPIは食料のウェイトが高い。
したがって、日本のCPIを見通す上では、食料、ひいては穀物市況を重視しなくてはならない。その穀物市況をシカゴ先物価格で見ると、とうもろこし、小麦、大豆など主要な穀物が、すでに前年比マイナスに転じている(図表4参照)。 過去、円建てのシカゴ穀物先物価格と日本のCPIにおける穀物製品価格には、1年程度の時差があった(図表5参照)。この時差を踏まえると、足もとで見られる穀物先物価格の前年割れは、2014年後半の日本のCPIの下押し要因となる可能性がある。
拡大画像表示 もちろん、これ以外にも検討すべき点は多いが、食料のウェイトの高さや穀物市況の前年割れを踏まえて、筆者は2年程度で「物価安定の目標」が実現する可能性は今なお限られると見ている。
追加金融緩和: 「量」より「質」より「時間軸」 こうした環境下、筆者は展望レポートが発表される2014年4月30日の金融政策決定会合で、日銀は追加緩和に踏み切ると見ている。その際、長期国債とETFの買入額の増加が見込まれるが、より重要なポイントは時間軸の延長であろう。 日銀は現行の「量的・質的金融緩和」(QQE)によって、2年程度、すなわち2015年頃に「物価安定の目標」を実現しようとしている。それにもかかわらず、QQEの下でのマネタリーベースや日銀バランスシートの規模は、2014年末までしか示されていない(図表6参照)。 次回の追加緩和では、規模の明示期間を2015年末に延長し、かつその間もバランスシートを拡張させることを示す必要があろう。結局は「量」でもなく「質」でもなく「時間軸」に訴えることが、次回追加緩和の鍵となる。
http://diamond.jp/articles/print/43703
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