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国家ぐるみの食品偽装
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2013.10.29 きっこのブログ
大阪市に本社がある「阪急阪神ホテルズ」が、メニューと異なる食材を使ってたことが問題になり、続いて傘下の阪神電鉄の子会社が経営する「ザ・リッツ・カールトン大阪」でも同様のケースが明らかになったことを受けて、全国のホテルが次々と内部調査を始めた。そして、札幌市の「ルネッサンスサッポロホテル」が食材の偽装があったと発表したけど、まだまだ出てくるだろう。
ま、多くの消費者は「こんなのは氷山の一角で、ホテルに限らず外食産業ならどこでもやってるはず」って思ってるだろう。逆に言えば、ちゃんとしたホテルだから正直に発表したワケで、そこらの個人経営の外食店だったら、内部調査で発覚したとしても、料理長に口頭で注意して終わりにしてるかもしれない。つまり、お客は最後まで知らされないってことだ。
今回、ホテル側は、最初は「偽装じゃなくて誤表示だ」なんて安倍晋三レベルの詭弁を弄してたけど、これはサスガに無理があった。だって、安い「バナメイエビ」を高級な「芝エビ」に、安い「ブラックタイガー」を高級な「クルマエビ」に、安い「冷凍の魚」を高級な「鮮魚」に、安い「普通のネギ」を高級な「九条ネギ」に、安い「既製品のパン」を高級な「自家製パン」に、安い「濃縮果汁還元のジュース」を高級な「フレッシュジュース」に、他にもいろいろと「安い食材」を「高級な食材」として提供してたのだ。
ホントに事務的なミスによる「誤表示」だったら、こんだけたくさん間違えてたんだから、中には「クルマエビ」を使ってるのに「ブラックタイガー」ってメニューに書くような、「高級な食材」を使ってるのに「安い食材」として表示したケースだってあって当然だろう。それが、すべてのケースで「安い食材」を「高級な食材」として表示してたんだから、誰がどう見たって「利益を上げるために故意に偽装してた」ってことは一目瞭然な今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、「阪急阪神ホテルズ」の社長は、とうとう「偽装と言われても仕方がない」なんていう中途半端な認め方をした上で、辞任を発表した。だけど、そんなことよりも、ホテル側が「レシートがなくても食事代を返金します」なんて言っちゃったもんだから、「俺はお前んとこでオムライスを50回は食べた」「私は年に10回はお宅で中華を食べてる」っていう苦情の電話が鳴りやまず、少なく見積もっても返金の総額は1億円を超えると見られてるそうだ。ま、これは完全に「自業自得」だけど、一度も利用したことがないのに、常連に成りすまして小銭を稼ぎに行くヤカラが増殖しそうな気配に「ご愁傷様」としか言いようがない。
だけど、今回の問題って、あたし的には「普通のこと」だと思ってる。だって、メニューに「カニ」って書いてあるのに「カニ」をまったく使ってなくて「カニカマ」を使ってた‥‥ってのなら完全にインチキだけど、メニューに「芝エビ」って書いてあるのに「芝エビ」じゃなくて「バナメイエビ」を使ってたワケでしょ?一応は「エビ」なんだから、インチキはインチキだけど、悪質度としてはレベルが低い。メニューには「芝海老とイカのクリスタル炒め」って書いてあったそうだから、「芝」という一文字が書いてなければ何も問題はなかったワケだ。「若鶏の照り焼き九条ねぎのロティ」って書いてあったそうだから、「九条」という二文字が書いてなければ何も問題はなかったワケだ。
スーパーのお魚のコーナーにいつでも並んでるパック入りの「シシャモ」、だいたい12匹くらい入ってて、パックには「ししゃも」とか「子持ちししゃも」とかハッキリ書かれてるし、その棚のポップにも「ししゃも280円」なんて書かれてる。だけど、あれは「シシャモ」じゃなくて「カペリン」ていうお魚だ。本物の「シシャモ」はものすごく貴重で水揚げも少ないから、「シシャモ」とは無関係の良く似た魚「カペリン」を代用してる。だから、パックの裏を見ると、小さな字で「カペリン」て書かれてる。
「マダイ」の代わりに「ハナダイ」を使うとか、「マサバ」の代わりに「ゴマサバ」を使うとかなら、同じ種類のお魚なんだから、「芝エビ」の代わりに「バナメイエビ」を使うようなもんだ。だけど、「シシャモ」とは無関係な上に、味もまったく違う「カペリン」なんてお魚を、ただ単に「見た目が似てる」って理由だけで「シシャモ」として販売するなんて、あたし的には、こっちのほうが遥かにインチキじゃん‥‥って思う。だけど、これがまったく問題にならないのは、パックの裏に「カペリン」て表示してあるからだ。
‥‥そんなワケで、「カペリン」なんていうヘンテコな名前を聞いて「魚(ギョ)!」とした皆さんに、せっかくだからご紹介しちゃうけど、日本は昔から「代用魚大国」だ。回転寿司のネタからスーパーのお惣菜、大手メーカーの缶詰などの加工食品に至るまで、「マグロ」って表示してあるお魚の何割かは「アロツナス」や「ガストロ」などの南洋で獲れる大型魚が使われてる。ネギトロ巻きやフレーク状の缶詰なんかは、本物の「マグロ」を何割、「アロツナス」を何割ってふうにブレンドして、「マグロ」と表示してるものも多い。
「マグロ」と並ぶ高級魚の「タイ」は、南米の「テラピア」や「チャネルキャットフィッシュ」などが代用魚として使われてる。「テラピア」は多摩川でも釣れるし、「チャネルキャットフィッシュ」、通称「アメリカナマズ」は霞ヶ浦で死ぬほど獲れる。他にも、「ブリ」の代用魚には「オキメダイ」や「シルバーワレフ」、「カジキ」の代用魚には「アカマンボウ」、「カンパチ」や「ハマチ」の代用魚には「シイラ」や「スギ」などが多用されてる。
一部の回転寿司で「アナゴ」として提供されてる「マルアナゴ」は、名前こそ「アナゴ」の一種みたいだけど、これは日本の消費者を騙すための呼び名で、実際には「アナゴ」とは無関係の「ウミヘビ」の一種だ。そして、これらの「見たこともないヘンテコなお魚たち」を多くの消費者が「マグロ」や「タイ」だと信じ込んでパクパクと食べてるのだ。
スーパーに並んでる「シシャモ」は、いくら大きな文字で「ししゃも」と書いてあっても、裏に小さな字で「カペリン」て書いてあるから問題ない‥‥ってことだけど、それなら、代用魚を使ってる回転寿司も、壁に並んでるネタの札に小さくホントの魚名を書いてほしい。「マグロ」の横に小さく「アロツナス」とか、「ブリ」の横に小さく「シルバーワレフ」とか、「アナゴ」の横に小さく「ウミヘビ科のマルアナゴ」とかって。
‥‥そんなワケで、「偽装」なのか「誤表示」なのかが取沙汰されてる今回のホテルの問題だけど、もともと日本ていう国自体が食品のインチキ表示を推進してきた。スーパーに並んでる「うどん」や「パン」などの小麦粉製品、「納豆」や「豆腐」などの大豆製品、何も考えずに買ってる人もいるだろうけど、中にはパッケージの表示を見て「国産小麦使用」とか「国産大豆使用」って表示してあるものを買うようにしてる人も多いはずだ。だけど、これが国家ぐるみのインチキなのだ。
「うどん」の袋の原材料の小麦の欄に「国産」と明記したあったり、「納豆」のパックの外装に「国産大豆使用」と明記してあれば、たいていの消費者は国産の原料だけで作られたものだと思うだろう。だけど、日本の政府が決めた規定では、小麦や大豆は国産の原料が「50%以上」使用していれば「国産」と表示していいことになってる。つまり、国産の大豆が「51%」で、アメリカ産の遺伝子組み換え大豆が「49%」でも、堂々と「国産大豆使用」と明記できるってスンポーだ。
製粉メーカーは、国産の小麦だけを買うことはできない。小麦は国産も輸入品も政府が管理してて、国産の小麦を買う時には、必ず輸入小麦も抱き合わせで買わされる。だから、どこの製粉メーカーも、輸入小麦を国産に混ぜて使うしかない。大豆も同じだ。そして、小麦も大豆も「50%以上」使用していれば「国産」と表示していいことになってる。ようするに、すべては「できるだけ輸入原料を消費者に売りつけるように」という政府のシナリオによって進められてきたワケだ。
日本では、年間に約300万トンの大豆が消費されてるけど、このうち国産は6%だけで、約94%は輸入に頼ってる。輸入の内わけは、アメリカ産が約70%、ブラジル産が約20%、カナダ産が約10%だ。つまり、日本で消費されてる大豆はアメリカ産が大半を占めてるワケだけど、アメリカで作られてる大豆の約86%は「遺伝子組み換え」だ。「遺伝子組み換え」の原料が良いか悪いかは別にして、多くの消費者が「国産小麦100%」「国産大豆100%」だと思って口にしてた食品の大半に、アメリカ産を始めとした輸入原材料が使われてたってことだ。
ちなみに、これは10年近くも前の2004年のデータだけど、市民団体が「遺伝子組み換え大豆不使用」と表示してある市販の豆腐を7種類、東京や埼玉などの小売店で購入して検査したところ、3種類から「遺伝子組み換え大豆の遺伝子」を検出したそうだ。メーカー名や商品名などの詳細は、以下のサイトで確認してほしい。
http://earlybirds.ddo.jp/bunseki/Data/gmo/tofu/tofu.html
「日本ナチュラルライフ協会」のこちらのレポートによると、日本国内で販売されている豆腐のうち、「遺伝子組み換え大豆不使用」と表示してある豆腐の40.9%、「国産大豆」と表示してある豆腐の35.5%、「国産大豆100%」と表示してある豆腐の30.0%、「有機大豆」と表記してある豆腐の57.1%から「遺伝子組み換え大豆の遺伝子」が検出されたそうだ。
日本国内では、大豆だけでなく「遺伝子組み換え」の作物はまったく作られていない。それなのに、「国産大豆」とか「国産大豆100%」とかって表示されてる豆腐の3割以上から「遺伝子組み換え大豆の遺伝子」が検出されたってことは、「国産」を謳いながらも「輸入大豆」が混ぜられてたことになる。それにしても、いくら政府が推進してるからって、「国産大豆」って表示はともかく、「国産大豆100%」って表示はインチキすぎると思う。豆腐にしろ納豆にしろ、「国産大豆100%」って書いてあれば消費者は誰でも「遺伝子組み換えでない国産の大豆だけで作られたもの」って思うだろう。だけど、実際には、最大で49%もの「アメリカ産の遺伝子組み換え大豆」が混ぜてあるワケだ。
‥‥そんなワケで、民間のホテルが「芝エビ」の代わりに「バナメイエビ」を使ったら大問題になる一方で、日本政府はアメリカ産の遺伝子組み換え原料を大量消費するために「原料の50%以上が国産なら『国産』と表示していい」なんていうインチキを推奨してる‥‥って言うか、農水省や厚労省までもがこんなインチキを認めてる。これほど消費者をバカにした話はないと思うんだけど、今はまだマシなほうだ。これで日本がTPPに参加することにでもなったら、現在の「国産」とか「遺伝子組み換え原料は不使用」とかの表示さえもできなくなる可能性が高い。何故かと言えば、こんな表示をしたら、アメリカの遺伝子組み換え原料のメーカーから業務妨害で訴えられちゃうからだ。だから、TPPは日本の農家の生活を破壊するだけじゃなくて、消費者の生活をも破壊することになると思う今日この頃なのだ。
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