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http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20131026/ecn1310260957000-n1.htm
2013.10.26
【ビジネスの裏側】
来年4月から消費税が8%に引き上げられるのにあわせ、たばこ大手3社が1箱最大20円の値上げを検討している。1円単位での値上げが難しい自動販売機での販売を踏まえた対応だが、度重なる増税とそれに伴う値上げに、愛煙家や関係者からは「また値上げか…」と嘆く声も。ただ、たばこ税関連の収入はここ20年近く変動しておらず、小売価格アップは喫煙者減少や安い銘柄への購買変更に拍車をかけ、業界のクビを絞めるとの見方もある。
■10年弱で1・6倍!
自販機での販売割合が高いたばこ。そこで、大手3社では、消費税の増税分3%をそのまま転嫁すると1円単位の端数が出ることから、一部商品の価格は据え置く一方、値上げする場合は10円か20円とし、たばこ全体で3%の値上げになるよう調整する方針だ。
たばこ価格は公共料金の一つとされており、価格変更には財務省の認可が必要だ。消費税率が上がれば利益率が圧迫されるため、メーカー側は値上げする銘柄やそれぞれの値上げ幅は年内にも決め、財務省に申請して2月初旬までに認可を得ることを目指している。
今回の値上げ(全面改定)は、1箱100円以上という過去最大の値上げが行われた平成22年10月のたばこ増税時以来だ。それ以前にも15年、18年と10年の間に3度の増税が行われており、JTの主力製品「メビウス(旧マイルドセブン)」の価格は、平成15年7月は250円だったのが22年10月には410円と、10年弱の間に実に1.64倍になっている。
■値上げは「苦渋の決断」?
愛煙家からは「また値上げか…」「1000円までは頑張る」など、嘆き節も聞こえてくる値上げ。だが、メーカーにとっても苦渋の決断だ。
日本のたばこの税率は65%。物品にかかる税率としては、ビール(税率合計約45%)、ガソリン(同約43%)を超えて最も高い水準にある。だが、約70〜85%の欧州諸国と比較すれば、必ずしも高くないとの指摘もある。
たばこ税の増税は税収増を見越して行われてきたが、実際は値上げが「たばこ離れ」を加速させてきた。日本たばこ協会の統計によると、15年度、18年度、22年度の紙巻きたばこの販売数量は前年比で大きく減少。健康への機運の高まりなどもあり、販売数量は平成8年度の1483億本をピークに、24年度には1951億本まで落ち込んでいる。
このため、増税にもかかわらずたばこ関連税収はここ20年間、2兆円台で推移。税率アップは税収増にはつながっていないのが現状だ。つまり、メーカー側にとっても消費増税に連動した値上げは、自分の首を絞めることにつながっているといえる。
■1箱千円にすれば税収4兆円増?
かつて、消費増税を回避しつつ財源を確保するための“つなぎ”としての増税が議論されたことも度々あるたばこ税。もともとは物質課税だったのが、健康目的の“懲罰税”的要素を帯びはじめたため、「取りやすいところから取っている」との批判もある。増税しても喫煙家サイドからは表だった反発がなく、たとえ増収につながらなくとも「健康増進になる」と増税を正当化しやすいからだ。
日本財団会長の笹川陽平氏は、「たばこは千円にした方がよい」との持論の持ち主だ。笹川氏の提言を受け設立された「たばこと健康を考える議員連盟」が日本学術会議から聴取した試算では、たばこが1箱千円になれば喫煙人口が約14%減少。たばこ消費量は約半分になる一方で、税収は6兆円余りと4兆円以上の増加になるという。
試算どおりなら、増税は国にとってまさに“一石二鳥”。だが、生産農家やメーカー側には死活問題ともいえる大打撃となる。
たばこ産業の調査によると、今年の日本の成人男性の平均喫煙率は32.2%で、ピーク時(昭和41年)の83.7%に比べ45年間で51ポイント減少している。減少傾向は今後も続くとみられ、業界は採算性の向上に必死だ。JTが今年2月、国内で最も売れているマイルドセブンをメビウスと改称、ブランド刷新を図ったのも、世界展開をにらんだブランド力向上がねらいだった。
さまざまな思惑と事情が絡み合って変動し続けるたばこ価格。消費増税に伴う各メーカーの“価格配分”が今後どうなるか注目される。
(阿部佐知子)
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