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米国雇用統計がFRBに突きつける難問
2013年10月24日(Thu) Financial Times
(2013年10月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
9月の雇用統計で非農業部門雇用者数が14万8000人増にとどまったことを受け、投資家が米連邦準備理事会(FRB)による資産購入の拡大を予想するようになると、国債利回りが急低下した。
発表が遅れた9月の雇用統計は、18万人の雇用増加を見込んでいたアナリスト予想を下回り、10月の政府機関閉鎖の前から経済の勢いが弱かったことを示したが、失業率は一段と低下し、7.2%となった。以下に今回の雇用統計から学んだ5つのことを挙げよう。
(1)労働参加率の問題は消えない・・・
FRB、米成長率予測を上方修正
量的緩和縮小のタイミングを見極めようとしているFRBだが・・・〔AFPBB News〕
FRBはもう何カ月も、1つの難問と格闘してきた。失業率が、成長ペースが示唆する以上の速さで低下しているのだ。
FRBが予想していたのは、景気回復を受けて仕事を探そうとする人が増え、その結果、失業率が当面横ばい状態になる、という展開だった。
だが、そうはならなかった。9月には失業率が再び低下し、労働参加率は生産年齢人口の63.2%と、横ばいが続いた。これは1970年代後半以降、最低の水準だ。
恐れられているのは、多くの人が引退したか障害者手当てを申請したか、あるいは、必要なスキルを著しく欠くため、もう2度と仕事を探さないことだ。
(2)・・・そして、これがFRBの問題を悪化させている
失業率のおかしな動きがFRBにとって問題になるのは、失業率の統計がFRBの対話政策の中で大きな地位を占めてきたからだ。FRBが利上げを検討する基準値としているのは、6.5%という失業率だ。だが、経済の好転が正当化すると思える以上の速さで失業率が低下したら、この基準値はあまり効果のないコミュニケーション手段となる。
危険なのは、労働力に戻ってくる人の数についてFRBが推測を誤り、経済の余剰の量を間違って予想してしまうことだ。もしこの過ちを犯せば、FRBは必要以上に長く、過剰な低金利を維持することになりかねない。一方、失業率の低下のせいで慌てれば、早計に利上げしてしまう可能性もある。
(3)12月の量的緩和縮小はまだあり得なくはない
FRBは、資産購入の規模を月間850億ドルから減らす前に、景気が加速している証拠を確認したいと述べている。3カ月平均の雇用増加数が9月に14万3000人に減少したことは、景気加速の兆しではない。これは経済の基本的な成長ペースが遅く、FRBは2014年まで量的緩和を縮小する理由がないことを示唆している。
もっとも、統計に改善が見られれば、12月の緩和縮小もまだあり得なくはない。
(4)弱い雇用の伸びは1つのセクターに限った話ではない
景気回復期の大半を通じ、雇用拡大の最大の重荷となってきたのは、景気後退で大きな打撃を受けたセクターだった。例えば、建設業界は2010年に18万2000人の人員を削減したが、2012年の雇用増加数は9万9000人にとどまった。政府部門における雇用喪失は2011年に最悪を記録し、2012年も雇用喪失が続いた。
今年9月は両セクターが雇用の伸びに大きく貢献し、建設業では2万人、公的部門では2万2000人増加した。これは経済の健全性と2014年の雇用拡大ペース加速の可能性にとっては心強い兆候だが、一方では9月の民間雇用がいかに弱々しかったかを浮き彫りにしている。このため、経済の勢いについて疑問が生じる。
(5)・・・だが、雇用統計には大騒ぎする内容はなかった
時として、大きく取り上げられる雇用増加数は雇用統計の詳細を反映しないこともあるが、9月は反映していた。(8月、7月分の統計の)修正は雇用者数全体を9000人増やしただけだった。1週間の平均労働時間は34.5時間で、前月と変わらなかった。時間当たり平均賃金は小幅に上昇し、今では前年比2.1%増となった。
雇用統計の詳細に見られた最も心強い兆候は、正規雇用に先立つことが多い臨時雇用者が2万200人増えたことだが、それでも伸びは小幅だった。
全体としては、雇用統計は、消費者の購買力が急激に高まる、あるいは企業が投資を増やすと考える理由をほとんど与えてくれなかった。需要が増えない限り、雇用を増やす理由はない。
By Robin Harding
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/39001
米ドルへのペッグで、抜群の安定性を見せる香港ドル
人民元はまだ柔軟さに欠ける
2013年10月24日(木) The Economist
「国がどのような為替制度を採っていようと、『違う制度だったらよかったのに』と願う時期が必ずある」。IMF筆頭副理事やイスラエル中央銀行総裁などを歴任したスタンレー・フィッシャー氏はこう語る。多くの国が変動相場制の下で通貨価値の変動に手を焼いているが、固定相場を維持することはそれ以上に困難だ。このため今月、香港がドルペッグ制を採用して30周年を迎えたのは驚異的なことだと言える。
香港は通貨危機に対処するため、ドルペッグという荒削りだが効果的な制度を1983年10月17日に導入した。それ以降、香港のドルペッグは幾多の試練を耐え抜いて今日に至っている――3度に及ぶ米国の景気後退、SARS(重症急性呼吸器症候群)危機、ジョージ・ソロス氏による攻撃(同氏はポンド危機やアジア金融危機で名を馳せた伝説的な為替投機家。アジア危機では香港ドルも攻撃の対象にした)。
近年、香港ドルの対米ドル相場は下押し圧力ではなく上押し圧力を受けている。対ドル固定相場を維持するため、香港経済自体は健全であるにもかかわらず、FRB(米連邦準備理事会)の金融緩和策に追随している。その結果、インフレ高進と住宅価格の高騰を余儀なくされている。
香港経済は米国経済から乖離し、中国経済との連動性を強めている。ところが逆に、香港ドルと人民元の乖離は次第に広がっている。かつて香港ドルは人民元と緊密に連動していた。人民元自体が、米ドルにペッグしていたからだ。だが中国がドルペッグ制を修正して以降、人民元は30%以上値上がりした。
フィッシャー氏が示唆したように、香港は別の為替相場を採るべきだったと考えるエコノミストもいる。例えばシンガポールがしたように、為替相場の上昇を容認し、インフレを抑え込むことができただろう。人民元の上昇と足並みを揃えることもできたはずだと言う。確かに、人民元を採用することさえ可能だっただろう。ちなみに香港の銀行預金の10%超が既に人民元になっている。
完璧な相場制はない
とはいえ、こうした選択肢にもそれなりの欠点がある。オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のエコノミスト、劉利剛氏が指摘するように、香港の貿易において中国がかなりの部分を占めているものの、その多くが依然としてドル建てで行われている。しかも、人民元はいまだに中国の中央銀行、人民銀行が毎朝発表するレートに固定されている。資本統制により人民元資産は自由に移動することができない。劉氏は、兌換性を持たない人民元にペッグすれば、国際金融センターとしての香港の役割は破壊されかねないと主張する。
香港は長い間に、ドルペッグに伴う制約にある程度適応してきた。為替相場は硬直的かもしれないが、物価や賃金は極めて柔軟性が高い。金融危機においては高級官僚さえ減俸を受け入れた。こうした柔軟性ゆえに、香港は独立した金融政策の支援がなくても、景気変動に素早く対応することができる。
物価、とりわけ不動産価格には、しばしばそれ自体の波がある。より柔軟な為替制度を採っていても、それだけで資産価格ブームが防げるわけではない。その好例がシンガポールだ。シンガポール・ドルの為替相場は上昇したにもかかわらず、住宅価格は急騰した。
さらに、通貨はそれ自体が、価格が変動する資産となり得る。例えばユーロ危機当時、スイス・フランが急騰し、同国の中央銀行は介入を強いられた。インドやインドネシアなど香港の近隣諸国は資本逃避と通貨の急落に苦闘している。
ドルにペッグしている香港ドルの安定性は、採用から30年を迎えてひときわ貴重なものに見える。
©2013 The Economist Newspaper Limited.
Oct. 19th, 2013 All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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