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中高年「起業」ブームの背景にある悲しい米国の事情 米景気回復も、老後の不安は過去最悪の水準に
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投稿者 SRI 日時 2013 年 10 月 24 日 07:35:14: rUXLhToetCnYE
 

中高年「起業」ブームの背景にある悲しい米国の事情

米景気回復も、老後の不安は過去最悪の水準に

2013年10月24日(木)  太田 智之

 アントレプレナー(起業家)といえば、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏やTwitterのジャック・ドーシー氏のような若きリーダーを思い浮かべる読者も多いだろう。

 しかし、起業家の称号は、シリコンバレーの若者の専売特許というわけではない。ベビーブーマー世代が引退時期を迎えた米国では、中高年による「起業」がブームとなっている。

「55〜64歳」が起業の4分の1占める

 米国では毎年80万前後の企業が誕生する。昨年もおよそ78万の新興企業が誕生したが、カウフマン財団の調査によると、その23.4%が年齢55〜64歳、いわゆる中高年による起業である(図1)。しかも、その割合は、調査開始時点(1996年)に比べておよそ10%も上昇しており、起業家精神が旺盛といわれる米国でも、とりわけ中高年層の間で創業意欲が高まっている様子がうかがえる。

図1:「起業」の年齢階層別割合

(資料)カウフマン財団
夢をかなえる魔法の制度?

 こうした中高年の起業を後押ししているのが、「ROBS(Rollovers as Business Start-ups の略)」といわれる新手の退職積立金制度である。401Kなどに代表される従来の積立金制度は、通常、株や債券などで運用されるが、こちらは新興企業、しかも自らが起こした会社に出資するプログラムである。創業時の資金調達がボトルネックになっているという話はよく聞くが、老後のために積み立てた資金を開業資金(出資金)にあてることで、起業を支援する狙いがある。

 自己資金を活用するため、借り入れによる利払いやそれに付随する費用を節約できるほか、出資金は401Kなどと同様、税制の優遇措置が受けられることから、利用者にとってのメリットも大きい。事業が軌道に乗れば、自らの夢(=やりたいこと)を実現した上に、老後の生活資金まで賄えると考えると、まさにいいこと尽くめの制度のように見える。

 ROBS利用の助言を行うコンサルタント会社のホームページを見ると、念願のワイナリー経営に乗り出し満面の笑みをたたえた中年男性を背景に、「あなたの夢を叶えます。あなたの望む人生を」と、まるで誰もが成功を確約されているかのような言葉が並んでいた。

大半が創業後3年以内に消滅

 しかし当然のことながら、現実はそう甘くはない。言うまでもなく、夢を叶えることができる起業家はごく一部に限られる。

 ROBSを管轄する米国歳入庁の報告書によると、同制度を利用した企業の大半が創業後3年以内に消滅しており、中には巨額の損失を被り、老後の生活資金に深刻な影響を及ぼしたケースも少なくないと指摘している。

 また年金コンサルタントや税務弁護士からは、こうした事業リスクに加え、「いざというときに換金できない(流動性の低さ)」、「引退したくてもできない(事業譲渡の難しさ)」などの理由から、老後資金の運用手段としては不適切との批判もあるようだ。

 では、なぜ厳しい現実にも関わらず、同制度を利用した中高年の創業が後を絶たないのか。その理由の1つと見られるのが、老後の生活資金に対する不安である。

 マクロ経済統計では、株価や住宅価格の上昇を背景に、家計の純資産額は既に前回バブル期のピークを超える水準まで回復しているが、老後に対する不安はいまだに根強い。

 企業福祉研究所(EBRI)の最新調査によると、「老後に不自由なく生活できるだけの資金を確保する自信がある」とした回答は全体のほぼ半数にとどまった。一方で、「全く自信がない」とする回答者は28%と過去最高を更新、その割合は金融危機前のほぼ3倍に達している(図2)。

図2:老後資金について「全く自信がない」と回答した割合

(資料)EBRI
意識される「起業しない」リスク

 また、同調査によると、「全く自信がない」と回答した人は、老後の生活費を賄うために、世帯所得の4割以上を貯蓄する必要があると考えており、自信を取り戻すためのハードルは高い。日々の節約や資産運用にいくら励んだとしても、なかなか実現するのは難しいのが実情だ。

 そうした中で、リスクを承知の上でも夢にかける「起業」を選択する人が増えたと見られる。死中に活を求めるとまでは言わないが、窮地の打開策として、あえて危険な道を選ばざるを得なかったということだ。

 米国の強みとして旺盛な起業家精神がもてはやされる昨今だが、中高年による「起業」ブームの背景には、「起業するリスク」よりも「起業しないリスク」を意識しなければならない「悲しい事情」がある。

このコラムについて
Money Globe- from NY

変わりゆく米国の姿を、ニューヨークから見た経済の現状と、ワシントンの政策・政治動向の両面をおさえながら描き出していく
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20131022/254911/?ST=print


 

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コメント
 
01. 2013年10月24日 09:28:11 : CiFcXC3kMA
経済がグローバル化し、適切な生産拠点が自由に選べる時代は、労働者の賃金は国家により保障されなくなる。投資はデフレ型の、節約志向でないと、成功しなくなるのだ。新規に参入する起業家も、既存の起業家も経済の大きな潮流を理解していないと、必ず痛い目にある。

資産価格の上昇など当てにはできないのだ。資産を増やすなら、競争に勝てる有能な資産しか当てにならない。


02. 2013年10月24日 20:48:42 : G9XzMYGYhA
起業というより非正規職に落ち込み、個人契約や一人親方で働いているケースも自営業とカウントされる。

自営業を起業したことになる。


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