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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131023-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 10月23日(水)5時56分配信
1976年の創業以降、iPhoneやiPod、iPadなど常に世界中を魅了する製品を生み出し、今年9月に発売したiPhone 5s/5cも、発売3日間の全世界での販売台数が900万台に上るなど、その強さの健在をアピールする格好となったアップル。
年間売上高は10兆円を超え、2012年には株価時価総額世界1位の座に就くなど、いわば世界で最も大きい企業の一つといえるアップルだが、今年に入りiPhone 5の生産予定台数を大幅に下方修正した“iPhoneショック”や、1〜3月期決算で10年ぶりとなる減益などを受け、年初から4月にかけ2割以上も株価が下落。世界のスマートフォン市場でも中韓勢が躍進する中、出荷台数は韓国・サムスンの後塵を拝し、「急成長を遂げてきたアップルも、曲がり角を迎えた」と指摘する声も聞かれる。
また、アップルはその秘密主義ゆえ、内側をなかなかかいま見られないことでも知られているが、膨大な関係者への取材により“アップルの実像”に迫った書籍『アップル帝国の正体』が7月に出版され、話題を呼んでいる。
今回は、本書の著者である森川潤氏と後藤直義氏に
「アップルの植民地化する日本企業」
「アップル依存が深刻化する日本メーカーの実態」
「アップルに手足をもぎ取られるキャリア」
「知られざるアップルのビジネスモデル」
「アップルに高まる“普通の会社化”懸念とこれから」
などについて聞いた。
--9月、ついにNTTドコモがiPhoneの販売を開始しましたが、その背景をどのようにお考えですか?
森川潤氏(以下、森川) 当初、ドコモがiPhoneの販売に踏み切れなかったのは、「iモード」を通じて構築してきた課金制度を維持し、しかも利益率を落とすことなく、いかにアップルと契約をするかということに固執していたからです。しかし、MNP (Mobile Number Portability:キャリア間の番号継続サービス)の影響もあり、iPhoneを販売するソフトバンクとauの契約者数が増え、販売していないドコモの契約者数が減っているという現実を受け、いつまでも固執できないと判断したからではないでしょうか。
加えて、アップル側の対応も変わってきていましたね。これまでアップルは、キャリアがアプリを通して課金するのを厳しく制限してきたのですが、ここにきてその制限がかなり緩くなってきているといわれています。例えば、日本ではauが2013年1月にiPhoneでもリリースした「うたパス」では、アップルID決済とキャリア決済の2つの決済方式から利用者が選べるようになっています。ドコモでも8月くらいにはiPhone向けのアプリをかなりつくり始めていて、その時点でiPhone販売に向けにかなり動いていたのは間違いないですね。
--ドコモに採用してもらうために、ソフトバンクやauに対してよりも、アップル側が条件面で折れた部分もあるのでしょうか?
森川 これまで、「世界の大きなキャリアでiPhoneを取り扱っていないのは、チャイナモバイル(中国移動通信)とドコモだけ」といわれ、ずっと注目されてきましたが、アップル側が折れた部分もあると思いますよ。ただ、はっきりしたことはわかりませんが、アップル側よりドコモ側が折れた部分のほうが多いのではないかと思います。それに、ドコモのiPhoneの価格を見る限り、アップルがドコモだけを価格面で特別待遇したという話はあり得ないと思います。
●アップルの植民地化する日本企業
--本書では、「日本のメーカーの間に、アップルの植民地化が進行している」と書かれていますが、どういう意味でしょうか?
後藤直義氏(以下、後藤) 企業間取引において、お互いの企業がパートナーなのか、あるいは上下関係なのか、いろいろな関係があると思いますが、その関係を決める重要な要素の一つは、お金です。
日本のメーカーとアップルの関係を見たときに、「日本の技術がアップルを下から支えている」、あるいは「日本の技術がなければiPhoneはつくれない」といわれ、日本のメーカーの立場がアップルより上だという見方をされることがあります。しかし、その関係をお金、つまり売上高という観点から見ると、アップルの12年度の売上高は約12兆円で利益は約3兆円と、地球上で最も儲かっている企業の一つとなっています。一方で、日本で最もアップルと関係の深いシャープは大赤字で、破綻懸念すらささやかれる状況です。ビジネスをしている双方がともに儲かる、いわゆるウイン・ウインの関係であればパートナーと呼べると思いますが、一方はこの世の春を謳歌し、一方は破綻寸前で地獄の淵を歩いているわけで、これが同じiPhoneをつくっている企業なのかということです。
少なくとも日本には200カ所以上のiPhone向けの工場がありますが、状況はどこも同じです。この状況を見て思ったのが、宗主国と植民地という関係、つまり宗主国がその植民地に対して行った搾取です。
--どうしてそのような関係になってしまったのですか?
後藤 アップルは、1982年にパソコン事業の不調からあわや倒産という危機に見舞われたのですが、一度は会社を追われたスティーブ・ジョブズが復帰した1997年以来、ジョブズは自らすべての開発に関わるというこだわりを持ち、そしてアートに対する造詣の深さと先見性などでアップルを牽引してきました。そして、今や時代の先導役となるまでに成長したのです。そのアップルに、ソニー、パナソニック、シャープ、東芝など、かつては世界を席巻したいわゆる“日の丸メーカー”は大量の電子部品を供給しています。
しかし、アップルという世界的な企業に部品を納められるのは名誉だと喜んではいられない状況です。どういうことかというと、アップルがiPhoneを発売して以来、世界中の生産委託メーカーに言い続けてきているのは、「世界で一番質の高いものを、世界で一番安く提供してください」ということです。あまりにも量が膨大なので、メーカー側はアップルを無視したらビジネスに乗り遅れてしまう。しかも、世界で一番品質の高いものを求められ、要求に応えているうちに、日本の部品産業は徐々にアップルへの依存度を強め、下請けメーカーに成り果ててしまったわけです。
--それほどまでに日本メーカーのアップル依存が進んでしまったのは、なぜですか?
後藤 誰もが欲しがっているiPhoneを、「うちは扱っていません」という対応を5年間も続けたら、その間にお客が激減したドコモのように、扱っていなければビジネスを継続できないほどの商品になってしまった。部品メーカーにすれば、どれほど安かろうと、世界一売れている商品を扱う企業に部品を提供しなければ、工場を回せないわけですよ。今まではソニーやパナソニックをはじめとして、日本には世界を制圧していたメーカーがたくさんあったので、そこにくっついていれば自動的に注文をもらえました。しかし、今やソニーもパナソニックも惨憺たる状況になっていて、気づいたら注文をくれるのはアップルかサムスンしかないという状況になってしまったわけです。だから、なんとかいいものをつくり、安くても買ってもらいたい、そういう事態が日本中の工場で起きているのです。
その結果、液晶で一時は栄華を誇ったシャープですら、アップルからの発注がなければ即座に経営が立ち行かなくなるほどの“依存症”となり、アップルを頂点とする帝国の支配にすっぽりと入り込んでしまったわけです。要は、昔一緒に畑を耕していた友達がいつの間にか大地主になって、気がついたら自分たちを支配するようになっていたということです。
--そういうアップルの高い要求に応えるために、シャープは亀山第1工場をアップル専用工場にしたわけですね。
後藤 亀山工場というのは、世界初の液晶テレビの一貫生産のための工場で、第1工場が04年1月本格稼動しました。この工場で生産されたのが、シャープが世界に誇る 「アクオス」ブランドの液晶テレビでした。そして、一貫生産とともに亀山工場の象徴だったのが、生産技術の流出防止のために外から中をまったく見えないようにしたブラックボックス化でした。亀山第1工場は、丘の上にある工業団地の中に建てられた超巨大な箱の形をしています。
そこで働く人たちや工業団地の工場経営者たちに綿密な取材を重ねた結果わかったのは、この巨大な箱がいつの間にか、iPhoneのためだけの巨大な箱になり、そこでは月間720万台のiPhone用のタッチ式液晶パネルが生産されているということです。
--亀山工場内には、シャープ社員ですら近づけない「アップル社員専用部屋」があるそうですね。
後藤 iPhoneの発売はアップルにとって年に1回の一大イベントです。発売予定日の3カ月前に、世界中の生産委託先工場での生産が一斉にスタートすると同時に、アップルのオペレーションズという部門の部品担当スタッフが世界中の工場に張り付き、お目付け役として監督します。iPhoneに使う部品のうちの一つでも欠けたら、製品が完成しませんからね。
iPhoneの液晶パネルを供給しているのは世界で3社だといわれていて、そのうちの1社がシャープなのです。だから仮に亀山第1工場の生産ラインが止まったら、アップルの担当者はクビになるといわれているほどです。そして、その担当者のための秘密の部屋が亀山第1工場と第2工場をつなぐ中空の廊下にあります。この部屋は最大30人ほどが仕事をすることができるスペースで、アップルの担当者はここに駐留して、工場の生産を管理、コントロールしています。
この秘密の部屋は、以前はシャープと付き合いのある日本メーカーが使っていた部屋だったのですが、シャープが自腹でそこを改装し、亀山第1工場を監督するアップル社員のために用意したのです。シャープ社員は、その前の通路を通ることすら禁じられているそうです。
●家電量販店もアップルの言いなり
--通常だとメーカーに対して強い立場に立つ家電量販店でさえ、「アップルにひざまずく」と書かれていますね。
後藤 米国でも日本でも、家電流通ではこの10年間で急激に寡占化が進み、巨大流通企業が誕生しています。アメリカでは、ウォルマートとベストバイ、この2社で電子AV製品の3〜4割を販売しています。日本ではヤマダ電機が3割ですね。その結果、流通段階でのコストが高騰し、日本の家電流通業者が受け取るマージンは売上高の3割を超えるといわれています。つまり、メーカーはヤマダ電機にそれだけのマージンを払って、“売ってもらっている”わけですね。
しかし、アップルの場合には世界中に400店を超えるアップルストアがあり、自社のオンラインストアでも販売していますから、家電量販店に“売ってもらう”必要はないわけです。しかも、量販店の店頭で他のメーカーの商品と値札を並べられることで、つるべ落としのように価格が下がってしまうということも防げるわけです。だから、メーカーと家電量販店というこれまでの力関係が通用せず、人気の高いアップルの製品を扱いたい家電量販店としては、利益を抑えてでも、アップル側の要求をのまざるを得ない。このような関係性は、日本だけでなく、他の国でも大差ないと思います。そして、家電量販店はアップル製品の利幅の薄さをカバーするために、周辺機器を大量に販売せざるを得ないわけですね。
また、アップル製品に関して量販店が出すリリースも、例えば「発売からわずか3日間でiPhone 5sとiPhone 5cの2モデルの販売台数が過去最高の900万台に達しました」「これは世界最高の記録です」「素晴らしい顧客の反応です」というような内容のものをアップルが作成し、これを使ってくださいと量販店に送ってくるそうです。ある量販店の役員は、「そこまでするのかという感じですが、アップルの商品を扱いたいのであれば仕方ありませんね」とこぼしていました。
森川 キャリアも同じ状況です。自分たちの販売店で売っていても、自分たちでやれることはほとんどないのです。売り場のレイアウトなども含めて、すべて指導された通りです。
●アップルに手足をもぎ取られるキャリア
--本書では、「日本の携帯電話キャリアは、アップルに手足をもぎ取られている」と表現されていますが、どういう意味ですか?
森川 携帯電話の誕生以来、キャリア側が端末の仕様や機能面での要望を端末メーカーに出し、メーカーはキャリアに要求される通りのコストと仕様で端末を開発してきました。そうすることで、キャリアは端末メーカーとの関係性においていつも優位に立つことができ、キャリアは端末販売と通信料金の2通りで利益を生み出すことができたわけです。
しかし、キャリアがiPhone 5を販売するということは、このキャリアの“食い扶持”をことごとくアップルに譲り渡してしまうことを意味します。つまり、アップルはキャリアが活動するための手足を奪い取るかのように、携帯電話ビジネスの隅々にまで利益を得るための網を張り巡らせているわけです。
ジョブズは「アップル自身が通信キャリアになろう」と考え、既存キャリアに取って代わるにはどうしたらいいのかを徹底的に調べ上げたといわれています。キャリアがどこで、どのように稼いでいるのか、そのビジネスモデルを徹底的に調べ上げたことで、キャリアを支配するという構造を築くことに成功したわけです。そして、キャリアが頂点にいたピラミッドを、アップル頂点のピラミッドにつくり替えたわけです。通信業界の人は“土管化”と言いますけれども、キャリアは何もすることがなくなってしまったわけです。つまり、アップルのスタイルは「つくるのもお金を稼ぐのも自分たちがやる。キャリアは黙ってiPhoneを売っていればいい」というものです。
--アップルはキャリアに対して、かなり厳しいiPhone販売ノルマを課しているともいわれています。
森川 最初はノルマを課してはいなかったと聴いてますが、auが参入した時からノルマを課すようになったといわれています。ただ、いろいろな関係者の話を総合すると、「これだけ売れ」というノルマではなく、「これだけ買え」という内容ではないかと思います。
あるキャリア幹部は「iPhoneは、販売価格だけで見ると赤字だ」と打ち明けてくれました。例えば「実質0円」で購入できる仕組みがありますが、これは2年契約で本体価格を24回分割で割賦販売にし、月々の支払い分を月額の通信料金の割引で相殺していく仕組みですが、無料となった月々の端末代金は、キャリアがユーザーに代わり、アップルに支払っているわけです。この場合、アップルに支払う額がキャリアの販売価格よりも高ければ、端末販売だけでは収支は赤字です。だから、2年間になるべく多くの通信をさせ、その通信料でキャリアは稼がなければならない。赤字で売るということは、これまでのキャリアとメーカーの関係では起こり得なかったことですね。
--キャリアにとっては、そこまでしてもiPhoneを扱うメリットはあるのですか?
森川 それはソフトバンクを見れば明らかで、iPhoneを販売することはキャリアの注目度を一気に引き上げ、計り知れない恩恵を与えていますね。当時ソフトバンクは、契約者数が増えれば増えるほどいろいろなサービスを打てると考え、世界中で一番厳しい条件をのむこともできた。08年7月、日本で初めてiPhoneを販売した当時のソフトバンクは、国内携帯電話契約数のシェアで16%にすぎませんでしたが、今や22%強となっています。その一方で、ドコモはiPhone登場以前には50%を超えていたシェアが、13年に入ると一気に43%まで落ち込んでいます。
●高まる“普通の会社化”への懸念
--今年に入り、アップルは1〜3月のiPhone 5生産予定台数を大幅に下方修正し、一時的に株価が下落する“iPhoneショック”が話題になりました。スマートフォン販売の世界シェアでは韓国サムスンの後塵を拝し、アップルの快進撃は踊り場を迎え、今後徐々に勢いは低下していくとの見方もありますね。
後藤 儲けようと思うことと、いいものをつくりたいと思うことは、まったく別です。いいものをつくりたいと思ってきたジョブズは、アップルのシンボルになってきましたが、発売を延期させたり、異常なくらい高い部品を使ったり、そういうことは儲かるということとは時に相反することです。しかし、どういう会社でも必ず、会社がだんだんと大きくなっていくとともに、「儲けるために何をするのか?」ということが会社の目的になってきます。アップルでも、ジョブズの「質にこだわった経営戦略」から、現CEOのティム・クックの市場シェアや価格など「量を重視した戦略」に、少しずつですが軸足を移しています。
それが明らかになったのが、最近発売されたiPhone 5cです。これは、バジェットバージョンと呼ばれる廉価版iPhoneです。これによって、プレミアム商品しか売っていなかったアップルが、劇的にスマホ販売が伸びている中国やインド、インドネシア、そういう市場を取りに行くことを宣言したわけです。でもこれは、かつてジョブズの下で徹底したプレミアム商品だけに絞り込んで勝ち続けたスタイルではありません。
アップルのこれまでの歴史を振り返ると、2000年にiPodを出して以降、03年にiTunes、2007年にiPhone、そして10年にはiPadと、2〜3年おきに新しいカテゴリーを創造してきました。ですから、そろそろアップルが次の新しいカテゴリーを発表するのではないか、多くの人が大きな期待を抱きながら待っているわけです。そして、そのカテゴリーについて、腕時計やテレビなどと憶測が飛んでいます。実際、来年iTVを発表するのではないかといわれており、その試作機がすでに完成しているという情報もあります。
ただ、新しく発表するカテゴリーがもし失敗したら、アップルにはカテゴリーを創造する能力はもうないということを自ら証明してしまうことになる。むしろ何も出さなければ、「見たこともないようなすごいものを、近いうちに出すのではないか?」と、人々の期待がますます高まるだけで済むわけですが、その“じらし”がそろそろ限界に来ているのも事実なのです。つまり、アップルが革新的企業であり続けるのか、はたまた普通の会社になってしまうのか、世界中がかたずをのんで見守っている状況といえます。その意味で、iWatchかiTVが発売されると噂される来年は、アップルにとって試金石となると思います。
--ありがとうございました。
編集部
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