http://www.asyura2.com/13/hasan83/msg/386.html
Tweet |
【第114回】 2013年10月23日 熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]
駆け込み買いは得か?
家計の増税防衛策を点検
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
消費税増税で1世帯10万円の税負担
いま住宅、自動車、テレビを買うべきか
来年4月1日から消費税率が5%から8%へと引き上げられる。1世帯の税負担をざっと計算すると、約10万円の年間負担額の増加が見込まれる。
さて、この10万円という負担増に対して、家計はどのような防衛策を講じるのが有効なのだろうか。
増税前の準備と言えば、一般的に考えられているのは、住宅購入、自動車・テレビなど耐久消費財を税率5%のうちに購入することである。
しかし、増税後に家計のやりくりが厳しくなる前に、住宅ローン支払いを増やしたり、クレジットでの分割払いを組むことが得策だとは筆者は考えない。
消費税率が上昇する分を手前で回避しようとして、大きな駆け込み買いをすると、余裕資金がそこに喰われて、それこそ2014年4月以降のやりくりが窮屈化する。
試しに、2014年4月1日の直前でまとめ買いが行われそうな品目を選び出して、駆け込み買いがどのくらい節約効果を上げるのかを計算してみよう。
まとめ買いができなそうな品目を、年間消費金額が大きい順に10品目ほどリストアップしてみる(図表1参照)。首位は、お米、次にたばこ、ビール、発泡酒と続く。
極端な想定として、これら10品目を1年間分まとめ買いしたとしよう。総計は9.9万円になる。消費税5%のときの税負担は、4727円/年間である。それが8%になると、追加負担は7564円/年間になる。駆け込み買いのメリットは、▲2836円ほどになる。増税直前の3月の支出額を9.9万円も余計に増やすことになって、▲2836円しか節約の実入りはないと思う。
手前にまとめ買いをするよりも、堅実に別のところで2836円分の節約をすることが合理的と判断できる。
年間収入を増やせるか
家計の防衛を考えるときに重要なのは、給与水準が2014年に向けて引き上げられるかどうかである。現在、政労使会合が開催されて、2014年度の賃上げについて議論が為されている。
現在、労働需給の逼迫度合いは2006・2007年頃の高水準に匹敵するレベルに近づいている。加えて企業収益の水準も、2006・2007年のピーク時に接近している(非製造業は超えている)。賃上げの前提になる経済環境は整いつつある。
しかし過去15年近く、正社員の賃金水準はトレンドとして切り下げられてきており、労働需給と企業収益が良好だった2006・2007年でさえも、賃金上昇率は小幅に止まったので、2014年の賃上げも期待できないという声は小さくない。エコノミストの直感として、2014年も集計値としての賃金上昇率は増えるとしても、大幅ではないと予想する。
ただし個別の勤労者にとっては、消費税増税に合わせて賃金上昇のメリットが全くないわけではない。賃上げには、ベースアップと定期昇給の2つがあって、年齢ごとに定期昇給していく効果は小さくない。連合の集計では、2013年は定期昇給を含めると春闘交渉では1.71%の賃上げを達成している(2012年1.72%、図表2参照)。
消費税の対所得比での負担がどのくらいかを計算すると、1世帯の勤め先収入に対しては可処分所得の1.76%(2012年総務省『家計調査』〈2人以上勤労者世帯〉)である。定期昇給がある程度確保できれば、その上昇分が消費税の負担増に対応することになる。
もちろん、賃金上昇率ができるだけ高くなるに越したことはないが、マクロ賃金が十分に上がらなくても、定期昇給で対応できる部分はある。
定期昇給の恩恵は
主に40歳未満に限定
問題は、この定期昇給の恩恵が主に40歳未満の勤労者に限定されることである。企業によっては年俸制が敷かれていて、定期昇給が行われなかったり、人によっては非正規雇用の場合もあるだろう。
厚生労働省の統計を使ってモデルケースをつくり、定期昇給の恩恵を受ける対象者数を計算すると、40歳未満は全体の半分近く(47%)の人数になる。一方、残りの半分のうち50歳以上の勤労者は、賃金水準が切り下がっていく人も多く厳しいだろう。
勤労者が総所得を増やす方法を考えると、所定外労働時間を増やして所得水準を引き上げるという方法もあろうが、その自由度は限定的である。勤労者以外では、副業によって増税負担分を賄うこと人もあるだろう。総務省の統計では、定期昇給の恩恵が限られている50歳代では、副業をしている人の割合が約20人に1人の割合になっている(図表3参照)。
なお、年金生活者は消費税増税によって2014年の消費者物価が上昇することを受けて、1年遅れて2015年度に約1%の支給額のスライドを受けることが見込まれる。増税分を完全にカバーできないが、一部は1年遅れて公的年金の受給額調整で取り戻せる。
主な対応は「節約」になる
家計所得の増加が期待できない世帯では、年間消費支出のどこかを削減することで、消費税増税の負担分を吸収することになるだろう。十分に消費支出を減らせないときは、家計貯蓄が取り崩される。
節約術としては、(1)通信費の見直し、(2)駐車場の変更、(3)外食の頻度を抑える、(4)読書は図書館を利用、(5)エアコンの利用日数を減らす、などの方法を思いつく。
しかし、節約志向が徹底されて、日常生活が過度に窮屈になるのは嫌だと思う人は多いだろう。
そこで、最後に1つのアイデアを示すと、年間で節約時期を限定することで、なるべく節約の苦痛を抑える選択がある。
総務省『家計調査』を調べると、標準的な世帯では毎月の消費支出額が平均値を大きく上回る時期が3つある。12月と3・4月の3ヵ月である(図表4参照)。
この3ヵ月に限って、消費支出を徹底して減らせば、比較的成果が出やすい。短い期間に限って節約することで、後から節約疲れによる消費の反動増が起こりにくくする効用もある。
http://diamond.jp/articles/print/43373
「入れ歯」が資産に化ける時
モノの遺贈が難しい理由
2013年10月23日(水) 鵜飼 秀徳
(写真:吉田 健一)
「亡き父の机から出てきました。このようなものでもお役に立てたらうれしい」「義父の遺品を整理中にいくつも出てきました」「叔母が以前使っていたものをどうしたものかと思っていたところ、お役に立てていただければと思い送付させていただきます」――。
公益財団法人「日本財団」で最近、一風変わった「寄付」の申し込みが増えてきている。
故人が使っていた「入れ歯(義歯)」だ。入れ歯は家族が遺品を整理している際、タンスの中や書斎などから、出てくることがある。入れ歯には、換金可能な金、銀、プラチナ、パラジウムが含まれていることがある。現在、金やプラチナはグラムあたり4000円以上、パラジウムも2000円以上で取り引きされており、仮に金無垢の入れ歯であった場合、数十万円〜100万円超の「資産価値」が生まれることもある。
入れ歯で学校をつくる
アクセサリーであれば換金したければ、買い取り業者に持って行く手はある。しかし、さすがに業者に入れ歯を持参するのは憚られる。
そこで、公益法人への寄付(遺贈)という形で、入れ歯による社会貢献が広がりを見せている。
日本財団のこの試み「TOOTH FAIRY(歯の妖精)プロジェクト」は、個人だけでなく、歯科医師界にも広がりを見せている。診療所などで回収される義歯や詰め物が、同財団に送られてくる。2009年以降、個人の遺贈と、全国の歯科医院による入れ歯の寄付により、換金総額は6億円を超えた。
入れ歯でつくられた資金は、アジアの最貧国ミャンマーの山岳地帯に住む部族の子供達のために使われる。現地では300万円ほどあれば学校が1つ建てられる。既に同国シャン州では10の学校が建設された。まさか故人も、自分が使用していた入れ歯がこのような形で国際貢献しているとは、思いもよらぬことだろう。
楽器やカメラは「資産」?
なるほど、入れ歯ですら資産価値を持つことが分かった。
「ならば、故人が遺した様々なモノもきっと資産価値があるに違いない」「入れ歯と同じように、諸団体に寄付できるモノがあるのではないか」。
そう考える人がいてもおかしくはない。例えば、ピアノやヴァイオリンなどの楽器、数千冊の蔵書、クラシックカー、着物、オーディオセット、カメラ、美術品…。一見、高額で売却できそうな「お宝」に思える。先述の日本財団で、これらの遺贈は受け付けてくれるのか。
日本財団の担当者に聞いたところ、「ほぼNo」との答えが返ってきた。
同財団によると、モノの遺贈になり得るのは、@都市部の土地Aまとまった量の貴金属、高級腕時計、そして先述のB入れ歯くらいだという。
「最近、現金以外の財産も引き取ってくれないかという相談が増えてきている。しかし、モノの遺贈はとても難しいのが実情」(日本財団)。
その理由は、「価値がある」と思っている財産は、実はほとんど無価値のことが多いからだ。田舎などでは広大な山林や田畑などを保有し、それを相続する遺族も多い。
しかし、田舎の不動産は二束三文どころか、売れずに固定資産税だけがかかる「負の遺産」になっている可能性がある。寄付を受け付ける団体が負債を背負うわけにはいかない。また、相続財産は様々なトラブルを抱えている場合もあり、受け入れ先としてはリスクを背負うことはできない。
「モノの遺贈」が進まぬ訳
では、故人が遺した「モノ」はどうすればよいのだろう。
カネの相続を終えた後、活用可能な「モノの遺産」は2種類ありそうだ。
1つは入れ歯や貴金属のように「利用価値はないが資産価値のあるモノ」。もう1つは楽器や車のように「資産価値はないが利用価値のあるモノ」だ。前者は遺贈なり、カネに変えて分割相続するなり、考え方は簡単だ。
しかし、後者は難しい。そもそも 「モノの遺贈」が進まない理由もそこにある。
モノの遺産を選別し、それを必要としている団体やNPO、愛好家などを探し出し、受け入れてもらうという「遺品の交通整理」の仕組みが存在しない。
だが、カメラや着物、楽器などはきっとその道の愛好家がいるだろうし、不要な不動産にしてもベンチャー支援に活用する方法などきっとあるはずだ。
日本財団の担当者も「モノの財産の再活用はこれからの課題。しかし、寄付や遺贈の文化が浸透するときっとうまく経済も回りだす」と話す。
モノを巡る相続トラブル
そもそも、「遺贈」は効果的に使えば、相続トラブルが回避できる手段でもある。しかしモノの相続財産は均等に分けることが困難で、先述のように遺贈も難しいので、得てして兄弟間での争いの元になることが多い。
本誌が全国2168人に対して実施した「相続アンケート」(8月28日〜9月5日)では、相続を経験した人のうち何らかのトラブルが起きた割合は28.9%。親の預貯金や有価証券、つまり「金銭」の分け前を巡って兄弟間で争うことはよくあるケースだが、同時に、「カネ以外の遺産」が原因でもトラブルに発展する事例も目立っている。
本誌アンケートでも「親が所有していた時計1つを巡って兄弟喧嘩が始まり、法事で顔を一切合わせない」「遺品を勝手に処分した兄に対し、妹が激怒した」など、様々なトラブルが見られた。
故人が遺したモノを活用していく仕組みが整えば、相続争いも少しは減るのではないか。
亡き人の「生きた証し」をアダに、ムダにしない理念や美学が、我々に求められている。
このコラムについて
相続ショック
2015年の相続増税が話題だが、実は、それ以上に悲惨を極めるのが相続トラブル。
遺産を巡る骨肉の争いや、親の借金・婚外子問題など、2012年には相続10件につき1.5件で家裁に駆け込むようなトラブルが発生している。
これを受け、相続を円滑に進めるための様々なビジネスが登場し始めた。
相続に関わる人たちから新ビジネスまで、相続最前線を追った。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20131021/254860/?ST=print
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。