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経常収支赤字転落を心配する必要のある日本
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20131021-00029087/
2013年10月21日 12時0分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
2013年9月の貿易統計が発表になりました。
9月の貿易赤字額は‥貿易赤字と聞いても、もう驚かなくなってしまったのではないでしょうか?
いずれにしても、その9月の貿易赤字額が9321億円になったのだとか。なんと9月としては過去最大の赤字額なのだ、と。
余り驚かないようですね。
では、もう一つ。9月の数値が出たことで、同時に2013年度上半期の数値もまとまったのですが、2013年度上半期の貿易赤字額が、な、な、なんと4兆9892億円になってしまったのです。まあ、大雑把に言えば、5兆円の赤字です。
ということは、その額を基に2013年度を予想すると‥貿易赤字は10兆円の大台に乗ると思われるのです。
あれっ、不満そうな顔ですね。何をおっしゃりたいのでしょうか?
分かりました。そろそろ円安の効果が出てきて貿易収支も改善に向かうだろうから、2013年度の貿易赤字額がそのような数値になる筈がないとおっしゃりたいのですね。
円安が進んでも最初はJカーブ効果が働き、貿易収支はむしろ悪化するが、暫くすると輸出も増え、貿易収支は改善する筈だ、と。日銀の黒田総裁も、以前からそのような発言をしています。
そして、内閣府も今年の4月頃に、2013年8月頃から貿易収支は改善に向かうだろうというレポートを出していたのでした。
しかし‥繰り返しになりますが、9月の貿易収支は、9月としては過去最大になっているのです。そして、この7月、8月、9月と毎月約1兆円のペースで貿易収支は赤字を記録しているのです。改善どころか悪化しているのです。
それに輸出額を見ても、確かに前年同月と比べれば増えてはいるのですが‥そのまた1年前の同月と比べれば、それほど増加しているとは思えないのです。それに、輸出数量でみれば、前年同月と比べ、増えるどころか減少してさえいるのです。
アベノミクスで急速な円安を実現した日本。そのため、アベノミクスがスタートした当初は、欧州勢の嫉妬を買ったほど。特にドイツなどが日本を批判しました。しかし、最近は、そうした批判もすっかり聞こえなくなっています。1つには、米国が仲裁に入り、日本を弁護したためですが、最大の理由は、幾ら円安が実現しても、こうして日本からの輸出がそれほど増えていないことにあるのでしょう。
2013年9月と2012年9月の為替レートを比べると、1ドル=78円程度が1ドル=98円程度にまで急速に円安になっているのにも拘わらずです。
確かに、円安によって輸出企業の円建て表示による売り上げが急増することになり、また、利益も大きく膨らませることに成功したのはそのとおり。しかし、財務省の貿易統計で見る限り、輸出数量は全然増えていないのです。輸出額でみても、前年同月に比べれば増えてはいるものの‥そのまた1年前の水準と同じくらいなものなのです。
ひょっとしたら、これは日本の経済力が落ちてきている兆候を示すものかもしれません。
でも、まだ貴方はそれほど心配している様子ではないようですね。
分かりました。日本の貿易収支が多少赤字になったところで、経常収支はまだまだ黒字を続けているではないかとおっしゃりたいのでしょう。所得収支で稼ぐ構造ができているから‥つまり、海外に投資した資本がもたらす利子や配当の収入があるから、心配することはない、と。
確かに、年間ベースでみた経常収支はまだまだ黒字を続けているのはそのとおりです。しかし、稼ぎ頭の所得収支も、過去の数値から予想するならば、10兆円〜15兆円程度しか期待できないと思っていた方がいいのです。従って、一方で、我が国の貿易赤字が年間10兆円を超えるようになれば、経常収支が赤字に陥ってしまうことが心配されるのです。
いいですか?!
こんなに円安が進行していても、輸出は思ったほどは増えはしない。輸出数量で見ればむしろ減ってさえいる。だとすれば、経済関係者は、円安の効果をこれまで過大評価していたということではないのでしょうか?
今までは、円安が起きる度に株価が上昇した。しかし、円安にそれほどの効果がないことが認識され始め、そしてさらに、経常収支までもが赤字に転落するようなことになれば、今度は、円安が危険な兆候にしか映らなくなるかもしれません。
つまり、日本が今まで蓄えた富が次第に流出し始める、と。そうなれば、むしろ円の価値を維持することが重要課題になるかもしれません。
そんな先のことに政治家は気を配るべきなのに‥相変わらず目先のことにしか関心が行っていないようなのです。
以上
小笠原 誠治
経済コラムニスト
小笠原誠治(おがさわら・せいじ)経済コラムニスト。1953年6月生まれ。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(いずれも秀和システム)など。「リカードの経済学講座」を開催中。難しい経済の話を分かりすく解説するのが使命だと思っています。
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