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【独占インタビュー】ノーベル経済学賞受賞ポール・クルーグマン 日本経済は、そのときどうなるのか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37296
2013年10月21日(月)週刊現代 :現代ビジネス
インタビュー・翻訳/大野和基
■円安は続くのか
現在のオバマ大統領を見てもわかるように、アメリカはいま「決められない政治」の罠に陥ってしまっています。一方で日本は、自民党の安倍晋三氏が政権の座に返り咲いてから、これまで当たり前だった「決められない首相」というスタイルから突如として脱しました。先進国で唯一、「決める政治」への舵を切っているのです。
この日本経済に私は期待をしています。いまこそ、日本が世界の希望になれるチャンスなのです。
こう話すのは、米国プリンストン大学教授で、'08年にノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏だ。
このほど上梓した『そして日本経済が世界の希望になる』(PHP新書)では、日本経済を評価し、今後の日本や世界経済の展望を記している同氏。米国経済が揺らぎ世界各国への影響も懸念されるいまの状況でも、日本経済への期待は揺るがないと断言する。
いまの日本は先進国でもっとも興味深い国です。新しいことに挑戦し、現状を変えようとしています。
今年4月、黒田東彦日銀総裁は、マネタリーベース(日銀が供給する通貨)を2年間で倍増させるという「異次元の金融緩和」を打ち出しました。
これまで、「金融緩和で日本経済を回復することは不可能だ」という議論が繰り返されてきました。もちろん、金融緩和がすべての問題を解決するわけではないですが、一定の条件が満たされればインフレが起こり、望ましい状況がもたらされます。その条件とは、「国家の経済は将来的に落ち込まない」「中央銀行が実際に金融緩和を実現に移す」と人々が信じ=A期待する≠アとです。
将来インフレが到来すると確信すれば、手元の資産は目減りが予測されるのでおカネを使う理由が生まれる。同時に、そのインフレによって日本の国家債務も減少し、国民負担も軽減されます。
それでも国民の信頼を充分に得られなかった場合に備えて必要となるのが、財政政策です。現実の雇用が生まれますから、人々の期待を変えずとも景気を拡張させる効果がある。
金融緩和によって円安のデメリットを指摘する人もいますが、私はそうは考えません。現実に、1ドル=75円から100円への為替変動によって、輸出企業の利益はすさまじい金額になりました。トヨタ自動車の今年3月期の通期決算は、同年前期比271・4%増の1兆3208億円です。
たしかに円安になると、輸入品をはじめとする商品価格が上昇し、消費者は打撃を受けるでしょう。ですが、他の国の例を分析しても、それが経済を縮小させるという結論は得られません。日本は純債権国であり、円相場が下落すれば、自国通貨建てで見た富の価値は増大する。円安が日本企業の競争力を強めていき、現在のまま円安が続くことは日本経済に良い影響であることは間違いない。日本は、他の国が経験したことのない未知の領域に踏み込もうとしているのです。
黒田日銀総裁が掲げる「今後2年間で2%のインフレ率」という目標が達成されたとき、日本にはさらに多くの可能性が広がるでしょう。
貨幣価値が下がった結果、円安はさらに進むはずです。個人消費は伸張し、住宅や商業施設などの建築への支出も増え、企業の設備投資も増加します。多くの日本人がマンションを買い、新築物件が増設され、一人当たりの住居スペースも広くなる。日本経済の内需は、将来に向けて拡大していくのです。
成長戦略については、法人税の引き下げが言及されましたが、米国など他の先進国の例を見ると、法人税引き下げとGDP成長率にはあまり関係がないように思います。また、TPPについては、私自身、頑強に反対する立場ではないことは述べておきたい。
■増税は正しいのか
他の成長戦略としては、女性の才能をもっと活用すべき。女性というだけで重要な仕事が任されないのは人的資源の浪費と言えます。また、土地利用や小売業の規制を緩和すればさらに大きな投資が生まれ、内需を大きく拡大させられるでしょう。労働力人口が減少している日本では、定年制度のないアメリカのように、働ける能力があるうちは働ける社会にするのも有効です。
最後にひとつだけ苦言を呈するのであれば、今回8%への消費増税を決定したことにはがっかりしました。もし私が安倍首相から相談されていたら、「もう少し待て」と言ったでしょうね。
'97年に消費税を3%から5%に引き上げた際、景気が後退したことはみなさん知っているでしょう。本来なら、デフレを完全に脱却してからやったほうが安全です。いま、ちょうど光が見えかけていたのに、増税によって消費が落ち込む可能性がある。消費税が上がっても消費を落ち込ませないためには賃金アップが必要ですが、景気が良くなってもそれが賃金に反映されるのは最後の段階ですから。
急速に少子高齢化が進んでいる日本では、今後さらに所得税よりも消費税のほうが重要になってくることは確かです。そうした状況を踏まえれば、たとえば一定年収以下の所得税を減らすことを提案したい。収入が一定以上ある世帯は、消費税が上がっても消費が極端に減ることはないので、消費が落ち込むこともないでしょう。
少子高齢化は日本の大きな問題点ですが、これを解決するには、フランスなどで採用されている出産奨励政策からヒントを得るべきではないでしょうか。フランスは、子どものいる女性に多くの補助金を与えることで、いまやヨーロッパで出生率がもっとも高い国の一つになっているのです。
こうして考えると、消費増税した日本がこれでうまくいけば、世界各国のロールモデルになることは間違いない。積極的な対策をとれば必ずデフレから脱却できるという強いメッセージになるでしょう。
確かに日本が行っている経済政策は大きな挑戦です。しかし、世界の多くの国が固唾を呑んでその行方を見守っている。いま、世界経済を救うために、日本が必要とされているのです。
「週刊現代」2013年10月26日号より
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