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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 やはり聖域は守れない
http://wjn.jp/article/detail/0231148/
週刊実話 2013年10月31日 特大号
インドネシア・バリ島でTPP交渉が行われる中、政府が米、麦、乳製品、牛肉・豚肉、甘味資源作物の重要5品目の中で、一部を関税撤廃の対象として検討していることが、10月6日に明らかになった。
関税は、タリフラインと呼ばれる細目ごとに定められている。重要5品目は、586のタリフラインに細分化されている。その内訳は、コメ58、麦109、牛肉・豚肉100、乳製品188、甘味資源作物131だ。タリフラインは全体で9018あるから、重要5品目をすべて守ろうとしただけで、自由化率は93.5%にとどまってしまう。
この交渉の中で、日本は95%以上の自由化率を求められているとみられ、それに対応するために重要5品目に手を付けざるを得なくなったようだ。
政府は、影響の小さい飼料用や加工用の農産物の関税率を撤廃する方向で検討していると報じられているが、いくら飼料用や加工用と言っても、それが輸入品に置き換われば国内農業に及ぼす影響は深刻だ。
しかも、これは昨年の総選挙で自民党が掲げた「聖域が守れないのであれば、TPPに参加しない」とした公約に明確に違反する。自民党は、重要5品目に関しては、そもそも関税引き下げの交渉すらしないと約束してきたからだ。
それがいきなり関税撤廃の検討をするという。これではウソつきと呼ばれても仕方がないだろう。
今回の会合にはアメリカのオバマ大統領が参加する予定だった。中間選挙を控え、TPP参加国のルールをアメリカ基準に合わせる合意を一気呵成に作り上げることで、実績を作りたかったからだ。ところが、債務上限問題で米国議会が対立しているため、オバマ大統領は欠席を決めた。この影響もあって、マレーシアのナジブ首相は、10月6日に、「年内の妥結は時間的な余裕がなく、現実的ではない」との考えを表明した。
この状況は日本にとっては福音だった。交渉参加が遅れた日本にとって、交渉の時間が延びることになるからだ。ところが、安倍総理は逆にアメリカの主張する年内妥結に協力するよう各国に呼びかけてしまったのだ。結局、日本は、ろくな抵抗もせずに、アメリカの言いなりになるということになるのだろう。アメリカに対する全面降伏だ。
こうなることはある程度予測できた。日本は日米交渉に弱い。たとえば'94年から民主党政権が発足する直前の'08年まで、年次改革要望が日本に突きつけられた。これに基づいて日本は郵政民営化、道路公団分割民営化、時価会計の導入、そして高速道路でのオートバイの2人乗り解禁まで、あらゆる改革を実施してきた。
ところが、年次改革要望書は、日本からアメリカに対しても提出されている、日本の要求は、些末なものが多いのだが、それでも、これに基づいてアメリカが改善を実施したことは、私が知る限り皆無だ。つまり、これまでの日米交渉において、日本は、ほぼ全敗に終わっているのだ。
喧嘩の弱い人が負けたくなかったら、そもそも喧嘩をしてはいけない。それと一緒で、日本は、敗北の見えているTPP交渉に参加すべきではなかったのだ。ただ、もしかすると安倍総理は、わざと負けに行ったのかもしれない。アメリカを喜ばせるためだ。
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