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賃上げなしは恥ずかしいという甘利大臣こそ恥ずかしい!
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20131020-00029064/
2013年10月20日 9時30分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
甘利大臣の発言内容は、いつものことなので特に驚く必要もないのですが‥でも、流石に‥
甘利大臣は言いました。
「企業収益が上がっているのに賃金や下請け代金を上げないと恥ずかしい企業だという環境を正直つくりたい」
こんなことを言ってよいのでしょうか? もちろんどうにかして賃上げを実現したいという気持ちは、分からないではないです。
しかし、この方、日本経済の総元締めの内閣府を司る大臣なのです。昔流に言えば、経済企画庁長官。そんな方が、このような発言をするのか、と。本当に経済が分かっているのかと思いたくなってしまうのです。
そもそも、企業収益が向上した場合、必ず賃上げが起きるものなのでしょうか?
私は、企業収益が向上した理由が問題だと思うのです。
例えば、会社の従業員がそれまでになく一生懸命努力してくれたお陰で売上が伸びたというのであれば、それなら社長は黙っていても賃金を上げるでしょう。
しかし、企業業績が上がった原因が、単に円安が急激に進み、輸出企業のドル建ての売り上げを円建てに換算した結果、売り上げが伸びたに過ぎないような場合は、どうでしょうか?
偶々円安が進んだから円建ての売上高が伸びたように見えているだけで‥それに、仮に今後逆の動きが発生して円高が進行すれば、売り上げが減ることも予想されるのです。だから、そのような場合には、なかなか賃上げに応じないでしょう。
そもそも近年、日本で賃金が上がらなくなった最大の原因は何なのか? そのことをよ〜く考えるのが先決です。
全ての責任がデフレにあるなんて、余りにも単純な発想をするから、本当の原因と対策が見えなくなってしまうのです。
確かにデフレの状況にあって、モノの売れ行きがよくなくなれば、賃金を上げる余裕がなくなるのはそのとおり。では、何故デフレになったのか?
日銀叩きが大好きなリフレ派は、何でもかんでも日本銀行のせいにしてしまう。しかし、それ以上に、日本国内で少子高齢化が進展していることや、中国など途上国の追い上げに原因を求めるべきではないでしょうか?
いつも私が言っているように、今の若い世代は、自分たちと同じ年代の人口が、中高年世代の半分以下にまで落ち込んでいるのです。ご自分が卒業した小学校や中学校に、今、毎年どれくらいの数が入学しているか調べてみればいいでしょう。
それに、幾ら日本経済がデフレの状況にあるからと言って、それだけが賃上げを阻んでいる原因ではないのです。例えば、仮に今の日本が鎖国をしていたとして、そして海外の労働力を一切当てにすることができないとしたら、日本国内では若い世代が減っているために、どうしてもそれなりの賃金を支給しないと必要な労働力が確保できないでしょう。
それなのに‥現実には賃金がなかなか上がらない。
何故か?
最大の理由は、海外に安い労働力が存在しているからではないですか?!
その重要な事実を、今の安倍政権の閣僚たちは、意識してかしないでか分かりませんが、無視しているようにしか見えないのです。そして、安倍さんのファンたちも、その事実は敢てパスしてしまうのです。
何故かと言えば、その事実を認めた途端に、賃金が上がる可能性が限りなくゼロに近いことを認めざるを得なくなるからです。
しかし、どうにかして賃金を上げて欲しい。だから、この際海外のことは無視してしまう。
いずれにしても、その海外の安い労働力を利用するには、何も工場を海外に移転させる必要もないのです。そんなことユニクロのケースをみればすぐ分かる筈です。デザインは欧米に任せて、そして、縫製はアジアで行い‥みたいな。
そうでしょう?
だから、これから先、日本国内の賃金がどんどん上がるようなことになれば、日本の企業は益々海外の労働力を当てにするようになるでしょう。
逆に、そうやって海外の労働力を利用するなどして、コスト削減に努めてきたからこそ日本の企業は利益を確保することができているのです。
それなのに、収益が上がっているのに賃金を上げないと恥ずかしい‥だなんて。論理が逆さまではないですか!
もし、そんな環境を政治家たちが作り上げてしまったら、それこそ、企業の海外大脱出が始まってしまうでしょう。
安倍政権の経済閣僚は、自分たちのやっている「何が何でも賃上げを実現するぞ!作戦」が、本当に筋の通ったものなのか、安倍総理が信奉するハマコウ先生の意見を伺ってみては如何でしょう?
以上
小笠原 誠治
経済コラムニスト
小笠原誠治(おがさわら・せいじ)経済コラムニスト。1953年6月生まれ。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(いずれも秀和システム)など。「リカードの経済学講座」を開催中。難しい経済の話を分かりすく解説するのが使命だと思っています。
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