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ユーロ圏債務危機国の構造改革の成果と課題−増大する貧困と社会的排除
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投稿者 SRI 日時 2013 年 10 月 19 日 17:15:59: rUXLhToetCnYE
 

ユーロ圏債務危機国の構造改革の成果と課題−増大する貧困と社会的排除
2013/10/18


伊藤 さゆり 

Weekly エコノミスト・レター2013/10/18号全文ダウンロード(357KB)
ユーロ圏では緩やかな景気の回復が続いている。債務危機国でも失業の増大には歯止めが掛かりつつあるが、失業率はユーロ圏平均を大きく上回る状態が続いている。
債務危機国はEU・IMFの構造調整プログラムや、強化されたユーロ圏の政策監視の枠組み、そして厳しい市場の監視に後押しされ構造改革に取り組んだ。その結果は、経常収支や対外競争力指数、景気循環調整後のプライマリー・バランスの改善などに表れている。失業期間の長期化を招くとされる解雇規制の緩和も進展した。
その半面、就業率は大きく低下、貧困と社会的排除のリスクに直面している人口の割合が増大するなど、社会的な痛みが広がっている。
債務危機国の成長と雇用の問題は依然深刻であり、支援の継続・強化が望まれる。

貧困と社会的排除のリスクに直面している人口の割合

( 緩やかな回復続くも、債務危機の影響は深刻 )
ユーロ圏経済の緩やかな回復が続いている。今年1〜3月期までの6四半期にわたる景気後退局
面では、内需は総崩れで、外需のみが成長に寄与する状態が続いた。外需の寄与も主な要因は輸入
の減少であった。しかし、今年4〜6月期は内需・外需が揃って回復、7四半期ぶりのプラス成長
に転じた。欧州委員会統計局が公表するユーロ圏の月次統計は、季節的な要因を除去したベースで
も月ごとの振れが大きいが、8月まで鉱工業生産、建設業生産、小売数量などの緩やかな回復基調
が続いていることが確認できる(図表1)。財貿易の統計では、輸出数量の緩やかな拡大基調が続
き、内需の低迷で減少が続いた輸入数量も回復に転じた(図表2)。
債務危機の拡大に阻まれてきた景気の回復がようやく定着するようになり、裾野が広がりつつあ
ることは朗報だ。しかし、輸出以外の指標の水準は、世界金融危機・同時不況前のピークを大きく
下回っている段階にあり、世界金融危機に続いたユーロ圏の債務危機の影響と後遺症は深刻である。



( 失業問題にもようやく改善の兆し )

長期にわたる不況はユーロ圏の失業率を現行統計で最悪水準の 12.1%まで押し上げた。しかし、
景気の持ち直しとともに、失業問題にもようやく僅かな改善の兆しが見え始めた。失業者数は今年
5月の 1921 万人をピークに前月を下回るようになり、失業率も7月には 12.0%に低下した。15
歳〜24 歳の若年層の失業率は 23.7%で全年齢層(15〜74歳)の倍近くと依然深刻だが、失業者数
は今年1月の 3604万人をピークに減り始めており、全年齢層よりも早く改善の兆しが現れている。
昨年6月のEU首脳会議での「成長雇用協定」などで、特に若年層の失業対策が強化されたことが
一定の効果を挙げていると推察される(注1)。
ユーロ圏の失業率を押し上げたのは南欧を中心とする債務危機に見舞われた国々である。2008
年以降、ユーロ圏では失業者数が 800 万人余り増大したが、うち、およそ半数をスペインが占める。
債務危機に見舞われた国々でも、失業率の上昇、失業者数の増大には歯止めが掛かり始めたが、ス
ペイン、ギリシャを筆頭に、債務危機国の失業率はユーロ圏平均を大きく上回る状態は続いている
(図表5、図表6)。


(注1)ユーロ圏の失業問題と若年雇用対策についてはニッセイ基礎研レポート2013-5-31「ユーロ危機の新たな段階
債務危機から雇用危機へ」をご参照下さい。

図表3 ユーロ圏の失業率と失業者数増減


( 財政健全化とともに構造改革を求められた債務危機国 )
ギリシャ、ポルトガルなど債務危機に見舞われ、欧州連合(EU)・国際通貨基金(IMF)の支
援を受けた国々は、支援条件である構造調整プログラムを通じて、財政赤字削減と競争力回復のた
めの構造改革に取り組んできた。包括的な支援には追い込まれなかったが、銀行増資のための支援
を受けたスペインや、政府債務残高の水準の高さや政治の安定性から市場の圧力が加わったイタリ
アでも財政健全化への取り組みと構造改革が進展した。
債務危機を教訓にユーロ圏では、政策監視の枠組みが手直しされ、従来から導入されてきた名目
GDP3%を超える過剰な財政赤字の是正手続き(EDP)を強化すると同時に、構造改革の実行
を求めるようになった。ユーロ参加国のうち、自力での資金繰りが困難になる債務危機に陥った国


は、危機の前段階で政府債務残高が過大であった国に限られた訳ではない。支援要請国に共通した
のは、民間部門も含めた債務の水準が大きく、かつ、経常収支の大幅な赤字を計上し、結果として
対外債務への依存度を高めていたことである(図表7)。こうした潜在的な債務危機のリスクを早
期に発見するために導入されたのが「マクロ経済不均衡是正手続き(以下、MIP)」である。M
IPは、経常収支や対外純資産など対外不均衡と競争力の指標と、住宅価格や民間部門の債務など
対内不均衡の指標から、マクロ的な不均衡を発見し、当該国に取り組みを求めるものである(注2)。
(注2) マクロ経済不均衡是正手続きの詳細についてはWeekly エコノミスト・レター「過剰なマクロ不均衡是正を求
められたスペインとスロベニア」2013-4-19をご参照下さい。

図表7 2008 年末時点のユーロ圏の対外純資産残高

( 進展した債務危機国の構造改革 )
債務危機国がEU・IMFの構造調整プログラムや、MIPの導入など強化されたユーロ圏の政
策監視の枠組み、そして厳しい市場の監視に後押しされ、構造改革に取り組んだ結果、ファンダメ
ンタルズは大きく変化した。
経常収支は、アイルランドが2010年にすでに黒字に転じているほか、他の国も均衡に近づき、
MIPで過剰な対外不均衡とみなされるGDP比マイナス4%を超える国はなくなっている(図表
7)。
対外競争力にも改善が見られる。ECBがユーロ参加国について作成している対外競争力指数の
うち、単位労働コストを物価指標として使用した指数は、雇用と賃金を通じた調整により大幅に低
下、すなわち対外競争力の回復が見られる(図表9)。
財政の面でも、大規模な財政赤字削減への取り組みが進展したことが、裁量的財政政策の規模の
目安となる景気循環調整後のプライマリー・バランスの改善ぶりから把握できる(図表10)。第
3次の支援を必要としているギリシャも例外ではない。
労働市場の改革も進展した。労働市場の機能は、債務危機国の対外競争力の回復のための構造改
革の課題として特に重視されたからである。その成果は、経済協力開発機構(OECD)が作成す
る雇用保護指標で確認できる。同指標は、解雇規制の厳しさの度合いを指標化したもので、0が最
も保護の度合いが低く、6が最も高いことを示す。図表11〜12はOECDが作成する3種類の




5| |Weekly エコノミスト・レター 2013-10-18|Copyright 2013© NLI Research Institute All rights reserved
雇用保護指標のうち、最新の第3指標を図示したものだが、世界金融危機がおきた2008年の段
階ではユーロ圏のコア国よりも高かった債務危機国の雇用保護の度合いは、2013年初にはコア
国を下回るようになっている。

図表9 ユーロ参加国の競争力指数


図表11 OECDの雇用保護指標

ここでは常用雇用と臨時雇用に関する解雇規制、集団
解雇に関する規制、さらに常用雇用と派遣社員との均
等待遇などを加味した第3指標を図示


このように債務危機国の改革の取り組みが、一定の成果を挙げていることは、危機の再燃を繰り
返してきたユーロ圏の金融市場が小康状態を保てるようになった背景の一つと考えることができ
るだろう。市場の落ち着きは、企業や家計のマインドの改善を通じても、ユーロ圏経済の回復に貢
献している。

( 中期戦略「ヨーロッパ2020」からの乖離する債務危機国 )
ただ、この間の急激な対外不均衡の是正や財政赤字削減の副作用として、債務危機国は極めて大
きな社会的な痛みを負っている。
ユーロ圏が導入した新たな政策監視の枠組みは、将来の債務危機につながるリスクを早期に発見
し、是正を促すだけではなく、2010年に立ち上げたEUの10カ年の成長戦略「欧州2020」
を達成する目的もある。「欧州2020」が目指すのは、賢い成長、持続可能な成長とともに包括
的な成長である。具体的な数値目標は、2010年までの10カ年計画「リスボン戦略」を引き継
ぐ就業率の引き上げや研究開発投資の対名目GDP比率3%に加えて、環境、教育、そして貧困の
削減も加えた、5つが掲げられた(図表13)。

図表13 EUの10カ年の成長戦略「ヨーロッパ2020」の目標
賢い成長 持続可能な成長 包括的な成長
smart growth susutainable growth inclusive growth
イノベーションの促進 気候変動、エネルギー対策 雇用と技能の向上
教育の充実 競争力の強化 貧困の削減
デジタル社会促進
【雇用】20歳〜64歳人口の就業率の引き上げ(69%→少なくとも75%)【「リスボン戦略」から継承】
【イノベーション】GDP比3%の研究開発(R&D)投資の目標達成【「リスボン戦略」から継承】
【環境】気候変動、エネルギー対策の「3つの20%(*)」の目標達成
【貧困】貧困ライン以下の人口を削減、2000万人の貧困からの脱却を図る
3つの優先分野
5つの数値目標
【教育】前期中等過程で教育を終える比率の引き下げ(15%→10%)と30〜34歳人口の高等教育卒業
比率引き上げ(31%→少なくとも40%)

(*) 90 年水準から温室効果ガス排出量を 20%削減、エネルギー最終消費量に占める再生可能エネルギー比率を 20%
に引き上げ、エネルギー利用効率を 20%向上
(資料)欧州委員会

債務危機国は、資金繰りの危機克服への取り組みに成果を挙げた半面、就業率は大きく低下、E
U全体の目標である75%から乖離が拡大、研究開発投資は伸び悩み、貧困と社会的排除のリスク
に直面している人口の割合は増大している(表紙図表参照)。
5つの目標のうち、環境と教育については改善しているが、これらは構造改革の成果というより
は不況の副産物である可能性が高いように思われる。

( 引き続き成長と雇用の支援が必要 )
債務危機国の努力と欧州安定メカニズム(ESM)、ECBによる新たな国債買い入れプログラム(O
MT)の導入によってユーロ圏で大規模な資金繰りの危機が発生するリスクは封じ込められた。しかし
ながら、債務危機国が負った痛みは大きく、「ヨーロッパ2020」が掲げる柱の1つである「包括的
な成長」とは逆方向に向っている。
市場の安定に続いて、景気の緩やかな回復が続くようになったことは明るい材料であるが、債務危機
国の成長と雇用の問題は依然深刻である。その克服に向けたEU・ユーロ圏としての支援の継続・強化
が望まれる。

図表14 20歳〜64歳人口の就業率

http://www.nli-research.co.jp/report/econo_letter/2013/we131018eu.pdf  

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コメント
 
01. 2013年10月25日 19:56:07 : e9xeV93vFQ
コラム:台頭する「ユーロ楽観論」の落とし穴=斉藤洋二氏
2013年 10月 24日 17:32 JST
斉藤洋二 ネクスト経済研究所代表(2013年10月24日)

共通通貨ユーロがデビューして、間もなく15年を迎える。この間、リーマンショックや欧州債務危機に遭遇し、ユーロ圏崩壊の可能性も語られた。しかし今、確率は低いが起こると大混乱が予想されるテールリスクは極めて小さくなったとの楽観論が強まり、さらにはユーロの先高予想も聞こえてくる。

こうした見方は数々の難局を乗り越えてきた欧州委員会など関係者の自信、そして市場の信頼を反映していると言えようが、今後の順風満帆を予測するにはあまりにも多くの内部矛盾を抱えている。15年間にわたる幼年・少年期を経て、ユーロはどのような青年期を迎えるのだろうか。

<欧州統合と基軸通貨への遠い道のり>

ユーロは1999年1月、政治的には欧州統合への大きな一歩、経済的にはドルに次ぐ第2の基軸通貨としての期待を背に受けて船出した。しかし、国際通貨基金(IMF)によれば、各国の外貨準備高に占めるユーロの割合は2013年6月末時点で、ドルの61.9%に対し、23.8%にとどまっている(各国の自主申告に基づき判明した分のみ)。

また、貿易などに用いられる決済手段としても、地域通貨の域を超えていない。欧州域内でこそドルをしのぐ存在だが、アジア太平洋など他地域での使用は限られている。その理由は、金融街「シティ」を持つ英国がユーロを導入していないことに象徴されるが、通貨としての信認と利便性の不足、さらには投資の受け皿となる金融・資本市場の不安定さによる。

加えて、為替市場におけるユーロの乱高下は、価値基準の面で不安感を高める。ユーロドルは99年1月4日に1.17ドル台でスタートし、0.8228ドルの安値(2000年10月26日)、そして1.6040ドル(08年7月15日)の高値と大きく振幅した。一方、ユーロ円も133円台で始まり、88.93円(00年10月26日)の安値、そして169.97円(08年7月23日)の高値の範囲を変動してきた。現在の1.37ドルそして134円水準は中間値よりやや上値にあるが、これまでの乱高下の歴史を考えれば、一時的な安定局面と捉えるのが妥当だろう。

もちろん、ユーロ圏崩壊につながるような危機的状況はひとまず去った。欧州中央銀行(ECB)の「新たな国債買い入れプログラム(OMT)」が市場心理を好転させた功績は大きい。統計上も、PIIGS5カ国(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)の経常収支赤字の合計は09年には対名目国内総生産(GDP)比で4%に上っていたが12年には0.8%程度へと大幅に改善し、IMFによれば、13年は黒字化が見込まれている(ギリシャとイタリアのみ赤字)。

ユーロ圏17カ国間においては、経常黒字国と赤字国に大きく分かれ、赤字国では信用不安が発生し、中核国とECBの支援により何とか辻褄を合わせてきた面はあるが、ユーロ圏全体として今年8月までの12カ月累計で1896億ユーロ(約25兆円)の経常黒字を積み上げた点は評価できる。

しかし、青年期を迎えたユーロの将来は、極めてハードルの高い構造改革の成否にかかっている。

<最大の課題は若年失業者対策>

まず、各国の財政悪化と低成長を踏まえれば、緊縮財政一本槍で明るい未来を切り拓くのは難しい。各国は財政改革とともに競争力強化に向けて構造改革を急ぐ必要がある。その分野は税制、年金、民営化などが対象となるが、とりわけ労働市場改革が最優先課題だろう。

欧州は農業、通貨と同レベルの重要性を持つ共通政策として雇用政策に取り組んできた。なぜなら日本同様に欧州の労働市場には、厳格な解雇規制による硬直性と高コスト体質、終身雇用と有期雇用の二重構造、労働力需給のミスマッチ(情報通信セクターで顕著)などの問題が根深く存在し、米国と比較して労働生産性で劣るためだ。

これまで労働市場改革の必要性は認識されていたものの、実行が先送りされてきたことから、若年層の失業問題は年々深刻さを増している。13年8月時点で、ユーロ圏の25歳未満の若年失業者は約346万人、失業率は23.7%と深刻な状況にある。この問題に対して、欧州委員会が若年雇用イニシアティブを立ち上げ、各国でも伝統的に強い労働組合に対し企業の雇用調整の自由度を取り戻すべくメスが入ったところであり、今後が注目される。

人の移動については、「シェンゲン協定」により、欧州連合(EU)域内での自由度は高まった。チュニジア、モロッコ、アルジェリアなどの北西アフリカ諸国、トルコ、東欧などからの移民の増大は、安い労働力の供給に貢献した。その一方で、高コスト労働者の既得権喪失、若年層の失業問題を加速化させることから、ネオナチ運動など欧州全域で人種的摩擦が起きている。労働市場改革が遅れれば、労働生産性の改善が先送りされることに加え、失業問題に直面する若者を中心とした極右による文化多元主義への反対運動を高め、社会は不安定化するだろう。

<もぐらたたきが続く>

欧州における構造改革の成功例としては、80年代初頭のサッチャー政権下での英国、そして2000年代前半のシュレーダー政権下でのドイツが挙げられる。

ドイツは、今でこそ失業率は6%台後半にとどまっているが、シュレーダー首相(当時)が労働市場改革に着手するまで高失業率と経済停滞に苦しみ、「欧州の病人」と呼ばれていた。失業手当が賃金を上回る状態を改善して就労インセンティブを増大させ、また労働組合に守られた労働者の賃金交渉力を圧縮するなど労働市場の改革を進めた。さらに付加価値税増税と法人税引き下げが奏功し経済は活性化し、「欧州の盟主」と呼ばれるドイツへと変貌した。

この労働改革の追い風に乗ってスタートしたメルケル首相は、9月の総選挙において3選を果たし、目下連立を模索している。メルケル首相は、国民に不人気なテーマである欧州政策について、選挙期間中こそ封印してきたが、引き続き財政緊縮を掲げて取り組む。経済成長を優先する他国との摩擦が再燃するのは必至である。

そして他のユーロ諸国は、ドイツを範として財政改革に加えて構造改革の取り組みを始めている。しかし現実は、節約疲れする国民と、既得権を死守しようとする動きに停滞を余儀なくされている。イタリアではレッタ首相の付加価値税増税策に対して中道右派・ベルルスコーニ元首相から造反が起き、一時は連立崩壊の可能性も浮上した。またスペインでは、付加価値税を10年以降2度も引き上げた結果、消費は落ち込み、景気停滞により財政再建も進まぬ悪循環で国民の不満は頂点に達している。

さらに極右が台頭するギリシャは、14年下期に資金不足が発生すると予想されており、過去2回2400億ユーロ(約32兆円)に続く第3次支援の問題が俎上(そじょう)に上るのは必至だ。問題の震源地は1カ国に止まらず、ユーロ圏17カ国のどこでどのようなリスクイベントが飛び出すか分からないのは、まさにもぐらたたきに例えられよう。

欧州は多民族で形成されており、社会的な調和と安定が大前提となる。かかる意味で欧州の経済競争力を向上させ、雇用改善をもたらす労働市場改革は取り組むべき最大の課題である。その帰趨がはっきり見えないうちは、ユーロ圏の楽観的未来と通貨ユーロの先高観を語るのは時期尚早ではないだろうか。

*斉藤洋二氏は、ネクスト経済研究所代表。1974年、一橋大学経済学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。為替業務に従事。88年、日本生命保険に入社し、為替・債券・株式など国内・国際投資を担当、フランス現地法人社長に。対外的には、公益財団法人国際金融情報センターで経済調査・ODA業務に従事し、財務省関税・外国為替等審議会委員を歴任。2011年10月より現職。近著に「日本経済の非合理な予測 学者の予想はなぜ外れるのか」(ATパブリケーション刊)。


 

コラム:ECBの銀行審査、効果と痛みのバランス勘案
2013年 10月 24日 12:43 JST
George Hay and Neil Unmack

[ロンドン 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州中央銀行(ECB)が来年から監督対象とするユーロ圏の主要銀行128行に対して行う健全性審査の内容を公表した。実際の効果とそれがもたらす痛みのバランスを勘案した形となっており、やや強硬姿勢を緩めた点は妥当かもしれない。

ユーロ圏の銀行が抱える問題は、投資家がこれらの銀行の資本ポジションを信用していない点にある。それは銀行のバランスシートの正確性が信じられていないからだ。ECBはいわゆる資産の質の審査(AQR)によってこの問題を解決し、不良債権は域内の統一基準に沿って分類したいと考えている。

ECBの17ページにわたる審査手法の概要の記述は、やろうと思えばもっと圧縮できたかもしれない。審査を担当する各国の中央銀行は、欧州銀行監督機構(EBA)が勧告したきっちりした基準を「参照」に実行する必要がある。これは指針に厳密に従うのとは異なるかもしれない。

しかしECBが最終判断を下すと強調していることで、各国当局が国内の銀行の盾となる事態は免れるだろう。もっともこれはECBが審査のために新たに雇いつつある人員の質が最高水準でなければならないことを意味している。

ECBは、銀行が統一基準に基づくバランスシートのストレステストを受けた後で必要になる自己資本比率について、特段厳格な要求を突き付けているわけではない。バーゼルIIIの下で狭義の中核的自己資本(コアTier1)比率を最低8%にするというのは厳しく聞こえるが、もっと高くなる可能性もあった。

一方で昨年のスペインのストレステストと同様に、資本バッファーの目標はストレステストの最悪シナリオではなく、基本シナリオにのみ適用される。最後の点として、ソブリン債のエクスポージャーは2011年のストレステストよりも寛大に扱われる。

より厳しい目標を設定すれば、安全性は増したかもしれない。だが欧州銀行の資本不足をだれが穴埋めするのかをめぐる不透明感は消えておらず、ECBは銀行セクターの信頼回復に向けた取り組みが債券保有者のパニックを引き起こさないよう、また逆に各国が銀行のリスクを過剰に抱える結果にならないよう、双方の面で細心の注意を払う必要がある。銀行セクターの基準一元化は差し迫った目標であり、欧州の銀行同盟を実現への道筋から外す危険は冒すべきではない。

●背景となるニュース

*ECBは23日、ユーロ圏のシステム上重要な最大手銀行に対する監督権限を掌握する前に行う健全性審査に関して、現段階で決まっている内容を公表した。

*審査は銀行のレバレッジや資金調達構造、流動性のリスク評価や、銀行バランスシート上の資産の質の審査(AQR)、ストレステストに関連するものになる。ECBは銀行監督を始める来年11月の1カ月前に当たる同10月に審査を終える。

*AQRについては、銀行のバランスシートにおいて最もリスクが高い、ないしは透明性が欠如しているとみなされる分野に焦点を当てる。また不良債権の分類には統一基準を用いる。国際的な財務報告基準の保守的な解釈を適用し、銀行が使用している信用リスクのウエート計算は修正されるかもしれない。

*銀行は、基本的なストレスシナリオにおいて普通株などで構成する狭義の中核的自己資本(コアTier1)比率を最低8%とすることが求められる。関係筋によると、悲観シナリオにおける合格基準はこれとは違ってくるという。

*ECBは、民間からの資本調達が「十分でないか利用できない」場合は、公的なバックストップの確立が必要になる可能性もあるとしている。

*EBAは21日、域内における不良債権に関する最終的な定義を公表し、これがECBの審査で用いられる。EBAの定義では不良債権は90日を超える延滞が発生しているものとされた。

*AQRの対象は、域内と域外の双方で信用と市場動向に対するエクスポージャーに基づいて実施される。多くのアナリストの想定よりも幅広い範囲になった。

[12削除理由]:無関係な長文多数


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