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9万人が受験したサムスン採用統一試験とは?
漢字、数学、常識、状況判断・・・過去問集に専門塾まで
2013年10月16日(Wed) 玉置 直司
2013年10月13日の日曜日。ソウル南部の江南(カンナム)にある地下鉄駅。住宅街で普段は日曜日の朝は閑散としているが、この日は早朝から若者が続々と降りてきた。近くの学校を使って2013年下期のサムスングループ大卒定期採用試験が実施されたからだ。
全国各地、さらにニューヨークやロサンゼルス、トロントにも試験場が設置され、世界で9万2000人が受験した。この日のマークシート方式のグループ統一試験は「SSAT」と呼ばれ、いまや大学生の間で最難関の試験として有名だ。
2011年6万人、2012年8万人、そして2013年は9万2000人。この数字は韓国サムスングループの大卒定期採用試験(下期)への応募者数だ。秋入社の上期試験と合わせると17万人が応募した。
年間の受験者数は17万人、過去問集がベストセラーになる人気ぶり
この全員が受験する「SSAT」とは何か。
ソウル市内の書店に並ぶSSATの過去問集
ソウル市内の大型書店に行くと、「SSAT対策」という広いコーナーがある。過去の問題や解説書などが何十種類も平積みになっている。
SSAT――Samsung Aptitude Test の略称だ。日本語訳すれば「サムスングループ職務適性試験」となる。
一体、1年間に大学生が17万人も受験するこのSSATとはどんな中身なのか。筆者は、試験日の3日前に、1冊の「過去問題集」を買ってみた。400ページを超える大冊で、価格は2万2000ウォン(1円=11ウォン)。決して安くはない。
レジで支払いをするとびっくりした。「この本を買うと、『SSAT模擬試験集』と『SSATネット講義の2万ウォン分の割引券』が付きます」と、模擬試験集と「2万ウォン」と印刷してあるクーポン券を渡された。こうなると、過去問の2万2000ウォンという価格が高いのかどうか分からなくなる。
書店の店員に聞いたら、「今度の日曜日が試験ということで、売れ行きは落ちているが、数週間前までは最もよく売れた本だった」という。
「SSAT」コーナーの横には、他の財閥の採用試験の過去問が並んでいる。
「HMAT」というのは、現代自動車グループ職務適性試験、「SKCT」というのは、SKグループ職務適性試験・・・といった具合だ。
サムスングループのSSATは10月13日だったが、1週間前の10月6日にはHMATが実施されており、1週間後の10月20日にはSKCTが実施される。
HMATにも、SSAT並みの受験生が詰めかけたという。
サムスングループの2013年下期の大卒定期採用者数は5500人。ざっと20倍の競争率だ。競争率だけならまだましな方で、グループによっては競争率が軽く100倍を超える大卒採用試験の本格シーズンの到来だ。
サムスン、5Gデータ送受信に成功
就職先として極めて人気の高いサムスングループ〔AFPBB News〕
SSATの過去問を開く前に、サムスングループの採用試験について簡単に説明しよう。
受験資格があるのは大卒または大卒見込み者で、学業成績が4.5点満点で3.0点以上の学生または卒業生だ。志願者は、日本と同じように自己紹介や自己PRを兼ねた「エントリーシート」を提出する。
ここでカットされることはまれで、学業成績条件さえ満たせば、SSATは受験できる。最難関はSSATで、これを突破すると、志望グループ企業別の面接試験に進むことになる。
TOEICや中国語検定などで一定以上のグレードを取得済みの場合はSSATに加算点が付くことになる。TOEICの場合は、2000年代に入って新設されたテストのスピーキング能力がその対象となる。
さて、SSATの過去問を開いてみよう。
試験は130分間で185問前後、休憩なしの一本勝負
SSATは、人文系、理工系に分かれていて、筆者が買ってきたのは人文系試験の過去問だ。
SSATは、「基礎能力検査」と「職務能力検査」とに分かれている。
「基礎能力検査」は、言語能力(20分間)、数理能力(30分間)、推理能力(30分間)の3項目がある。配点は300点だ。
「職務能力検査」は、職務常識能力(25分)、状況判断応力(25分)という構成だ。配点は200点。
合わせて500点満点だ。
試験時間は130分間で、休憩なしで実施する。だいたい問題数は185前後だ。
筆者が購入したのは、2013年の上期(2013年4月実施=主に秋入社)以前の過去問題集だ。
特に、2013年上期の試験問題に挑戦してみた。
言語能力:漢字重視、英語の問題はゼロ
では、どんな問題なのか。まずは、言語能力だ。
【問題例1】次に提示する単語の関係と同じものを選択せよ――病院:医師
(1) 牧場:牛乳
(2) 図書館:司書
(3) 競馬:競輪
(4) 国会:大統領
(正解は (2))
【問題例2】質問は同じ――税金:納付
(1) 為替:下落
(2) 選挙:勝利
(3) 決済:処理
(4) 気温:下降
(正解は (3))
言語能力については、全般的に漢字の知識を問う問題が多い。言語というから英語の試験かと思ったが、英語の問題はゼロ。もっとも、応募者のほとんどがTOEICの高得点者というから、差がつかないのか。
サムスングループは従来、漢字の能力を重視してきた。SSATでもその姿勢は維持されている。
数理能力:文系の学生には試験対策が不可欠
次は、数理能力。これは、算数と数学の両方が交じり合った問題が多い。
【問題例3】以下のAとBの大きさを比較して、A>Bなら(1)、A<Bなら(2)、A=Bなら(3)、なんとも言えないなら(4)を選択せよ。
A 水260グラムに塩120グラムを入れた場合の塩の濃度
B 32%
(正解は (2))
【問題例4】ある自動車会社のI工場では30分間に1台の自動車を生産する。I工場とII工場を合わせると40時間で200台を生産できる。この場合、II工場で1時間に生産できる台数は何台か(ただし、I工場とII工場で生産するということは、それぞれの工場で異なる車種を生産するということを意味する)。
(1) 1台
(2) 2台
(3) 3台
(4) 4台
(正解は (3))
数理能力は、文系の学生にとっては漢字と並んで頭を悩ます問題が多い。大学入学試験が終わった後、ほとんど数学や算数と無縁な生活を送ってきた学生にとっては、「試験対策」が不可欠な分野だ。
推理能力:知識量の問題というよりは、時間との勝負か?
推理能力は、図や絵を見て考えさせる問題が多く、なかなか紹介しづらい。ここではちょっと長いが、1つだけ紹介しよう。
【問題例5】新入社員A、B、C、DとインターンE、Fを下記の条件で、営業チーム、財務チーム、人事チーム、広報チームに配置しなければならない。
1) 各チームには最大2人まで配置できる。
2) 財務チームには、インターンは1人だけ配置できる。
3) 営業チームには、新入社員2人、または、インターン1人だけを配置できる。
4) Cは無条件で、人事チームに配置する。
5) Aが営業チームの場合、Bは広報チーム配置する。
6) Eが財務チームの場合、Fは人事チームには配置できない。
次のうち、正しくないのはどれか。
(1) Bが人事チームの場合、AとDは同じチームに配置になる。
(2) Eが人事チームの場合、Dは広報チームには配置できない。
(3) Eが営業チームの場合、人事チームには新入社員2人が配置されることになる。
(4) 人事チームに2人配置する場合、広報チームにも2人が配置される。
(正解は (4))
【問題例6】上記の条件で配置したとして、営業チームに新入社員を2人配置した場合、広報チームに配置できないのは誰か。
(1) A
(2) B
(3) D
(4) F
(正解は (3))
「職務能力検査」のうち、職務常識能力を問う問題は、サムスングループの最近の企業活動に関する内容も多い。例えば、こんな問題だ。
【問題例7】次のうち、SPA(製造小売業)ブランドでないものはどれか。
(1) forever21
(2) 8seconds
(3) H&M
(4) KUHO
(正解は (4))
4枚の絵画を見せて「ピカソが描いた絵のうちでスペイン内戦を主題にして戦争の残酷さを表現した絵は次のうちどれか」という問題もある。
ここまでの問題は、極端に難しいというレベルではない。以前は、漢字の試験がやたらと難しかったことで有名だが、逆に漢字で高得点を上げると大きな差がつくため、最近は、レベルを落としていると言われる。
ただ、内容は多岐にわたり、また、時間の制約が厳しく、かなり難しい試験であることには変わりがない。単なる知識量を問うのではなく、ちょっと考えさせるというのもポイントだろうか。
状況判断能力:職場の冷蔵庫から弁当が消えて・・・
それでも、ここまでは、「正解がある質問」だ。この後の「状況判断能力」は、きわめて主観的な問題で、これはどういうふうに判定しているのか分からず受験生泣かせだ。
例えばこんな問題がある。
【問題例8】Q社で勤務しているBは、社内の共用冷蔵庫に持参した弁当を保管していたが、最近何日か、この弁当を誰かが食べたような痕跡があった。そんなある日、Bは冷蔵庫がある休憩室で同僚のSが自分の弁当を食べているところを目撃した。Sは自分の弁当だと勘違いしたと弁明をして、あわてて休憩室を出ていった。あなたがBならば、どうしますか?
自分が取る行動に最も近い項目にM(most)を、最も異なる項目にL(least)とチェックせよ。
(1) 追いかけていってこの間弁当を食べたのはあなただろうと問い質す。
(2) 最近、誰かがこっそりと私の弁当を食べていたのだが、このことを知っていたかと問い質す。
(3) 勘違いすることはあるだろうが、勝手に他人の弁当を食べてはいけないだろうと頼む。
(4) 他人の弁当を食べるような行為がないように、警告のメッセージを冷蔵庫に貼り付ける。
(5) 同僚たちに解決策について聞いて相談する。
もちろん、答えがないから、MとLを選ばせる。この「状況判断能力」は一種の適性試験だ。会社で起きそうな不快な問題にどう対処するのか、を聞く。あらかじめ正解があるのか、ないのか。不思議で厄介な問題だ。
よく出題されるのは、「知人や家族と約束をしていた時に、急に残業をする必要になった。どう対応するか」などの質問だ。
会社と個人の関係などを聞く質問だ。だからと言って「100%会社を選ぶ」が「求められる回答」でないところが、SSATの難しいところだという。
「毎日経済新聞」によると、2013年10月13日に実施された試験では、韓国経済と関連して、「ベビーブーム世代の引退が近付いて不動産の資産価値が下落する」という内容の文章を読ませ、これに関する問題が出題されたという。
面接試験に進める合格ラインは「80%正解」、ネット講座や塾が大繁盛
SSATは、あくまでも適性試験だ。この試験を通過したら面接試験に進むことになる。では、そのカットラインはどの程度なのか。
インターネットには、「SSAT」に関するサイトがあちこちにある。いろいろと見たが、だいたい「80%正解」がカットラインだという。
SSATの問題自体は、驚くほど難しくはない。じっくり考えれば、筆者でもかなりの問題は回答可能だ。だが、1問あたり1分以内の時間で次々と回答しなければならない。これはやはり相当のトレーニングを積まないとこなせないだろう。130分間ですべての問題を解き、なおかつ80%というのは、やはり相当な難関であることには間違いがない。
だから準備が欠かせない。SSAT対策のためには過去問があるだけではない。インターネットを通じた有料講座や塾もあちこちにある。
ネットの講義では、講師が過去問を解説しながら「どういう準備をすればよいのか」を丁寧に教えてくれるという。
エントリーシートの書き方、合格体験記など、もう大学入試並みの流行ぶりだ。有名大学には、SSAT対策のサークルもたくさんある。
10月13日のSSATの会場では「面接対策教えます」という塾の垂れ幕もあったほどだ。
企業側も頭を悩ます選考方式の是非
韓国では学生がごく一部の財閥企業に就職したがり、就職試験の過熱ぶりは日本の比ではない。企業側も、現在の選考方式が果たしてよいのか、頭を悩ましている。
「朝鮮日報」によると、SSATが実施された日、サムスングループでは案内や試験監督のために9500人の社員が「休日出勤」をした。
また、地方の会場が不足してソウルまで足を運んで受験せざるを得ない地方大学学生の負担も大きく、選考方式についてさまざまな検討をしているという。だが、SSATはスタートから18年経過してその間に膨大な「選考ノウハウ」も蓄積されており、これといった妙案がないという。
同紙は、10月4日付の紙面で、現代自動車グループの採用担当者の奮闘ぶりを紹介している。それによると、早朝、バスに乗って学生と思しき乗客に声をかけて話を聞くという。
生活費を稼ぐために早朝からアルバイトに精を出す真面目な学生だと思える場合、受験を促すという。同じように、深夜時間帯に大学の図書館で勉強をしている学生にも声をかけるという。
サムスングループや現代自動車グループには、黙っていても優秀な学生が殺到する。ところが、あまりに志願者が多すぎてきちんとした選考ができているのか、常に不安を抱えているのだ。
10万人の一斉試験。受験生も選考する企業も超過熱の中で、それぞれに悩みを抱えている。.
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38921
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