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http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20131015/ecn1310151157000-n1.htm
2013.10.15
銀行の融資引き揚げに遭って自殺した中小企業経営者を父に持つ銀行マン「半沢直樹」の今後のストーリーが気になる。消費税増税後、中小企業経営問題の深刻化が避けられないからだ。
金融庁の銀行検査マニュアルで「要管理先」の中小企業はことし3月末で約40万社、銀行にとって不良債権扱いとなる債務は約37兆円に上る。これら債務は平成20年9月のリーマン・ショック後に施行された「中小企業金融円滑化法」で返済負担が軽減されてきた。同法がことし3月末で期限が切れたあと、金融庁は手続き操作で銀行が破綻処理しないよう押しとどめている。だが、今後デフレ圧力が高まると、問題企業の先行きが閉ざされ、銀行も債権を持ち切れなくなる。
最終的な破綻処理となると、銀行は信用保証協会に不良債権を持ち込んで「代位弁済」を求める。保証協会は保険をかけている日本政策金融公庫に弁済額の7割から9割の支払いを請求する。そんな仕組みから平成バブル崩壊時のような銀行の信用不安にはならないが、財務省系列の政策金融公庫が打撃を受け、そのツケは国庫を経由して最終的に納税者に回る。
もとより、中小企業は日本経済を支え、全企業421万社の99・7%、全従業員数4297万人の66%を占めている(21年時点、総務省調べ)。アベノミクス効果で、実質経済成長率はことし4〜6月期で3・8%と回復したが、中小企業の景況は依然として低迷を続けている。
その実態は、財務省「法人企業統計」から読みとれる。4〜6月期の中小企業の経常利益は前年同期比で12・5%減、対照的に大企業は同49・7増%と急回復している。
アベノミクスの下での格差拡大の背景について、ゴールドマン・サックス・ジャパンの馬場直彦氏らは、同社発行の日本経済分析リポート(10月9日付)で「大企業と中小企業間での価格交渉力差がある」と指摘している。円安に伴う原材料コスト上昇を中小企業がまともに受け、販売価格に十分転嫁できない。輸出比率が高い大企業の場合は為替差益の恩恵もあるので、利益は急上昇するが、内需依存の中小企業は負担増だけが残る。
それを端的に示すのが企業の交易条件である。交易条件とは販売価格と仕入れ価格の差のことで、「DI」は価格が上がっている企業の割合から、下がっている企業の割合を差し引いたもの。販売価格「DI」から仕入れ価格「DI」を、さらに差し引いたのが本グラフだ。これまでの15年デフレの間、この交易条件DIは悪化しっぱなしでマイナスが続いてきたが、短期的には円高局面で改善し、円安局面で悪化する。ところが、安倍政権が発足した昨年12月以降、円安が急速に進むのと並行して中小企業の交易条件は急激に悪化したままなのに、大企業は4月以降、改善している。
来年4月の消費税増税後はどうか。馬場氏らは、「日本では、輸出主導の成長は大企業に対する生産誘発効果が大きい」「民間消費などは中小企業に相対的に大きな収益をもたらす。消費税増税後に民間消費が頭打ちとなり、輸出主導の色彩が強まってくると、収益格差はますます広がる可能性がある」と論じているが、全く同感である。
安倍首相は消費税増税に伴う家計への8・1兆円の負担増からくる消費需要の減退とデフレ圧力の高まりを懸念し、5兆円の経済対策を打ち出した。前年度末の真水5兆円の補正予算で今年度の成長率が押し上げられているが、財政支出には限度がある。そこで政府は経済対策の目玉に復興特別法人税の来年度廃止など法人関連の減税を餌にして企業の賃上げを誘い、内需の拡大につなぐシナリオを描いている。
しかし、肝心の中小企業は輸出主導の大企業とは違って、消費税増税後の消費需要減の直撃を受ける。これまでみられたように価格交渉力は極めて弱く、収益はさらに低下すると懸念される。全雇用の3分の2を占める中小企業による賃上げのための経済環境は悪化し、法人関連税の減税で挽回できるはずがない。
アベノミクス指南役の浜田宏一エール大学名誉教授は「消費税の税率が2倍になると、その社会的な損失はその2倍でなく、その2乗、つまり4倍となる」(著書「アメリカは日本経済の復活を知っている」)と警告してきた。
冒頭の話に戻そう。半沢直樹さんの言葉を借りると消費税増税はまさに「倍返し」なのだ。が、被害者は消費者または納税者と中小企業で、財務省、金融庁や銀行はするりと逃げられる。半沢さん、どうする?(編集委員 田村秀男)
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