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円高でなく、円安こそ日本経済に悪影響 為替レートの大変動は、日本経済に何をもたらしたか (週刊東洋経済) 
http://www.asyura2.com/13/hasan83/msg/218.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 10 月 15 日 10:17:00: igsppGRN/E9PQ
 

              為替の適正水準はどこなのか


円高でなく、円安こそ日本経済に悪影響 為替レートの大変動は、日本経済に何をもたらしたか
http://toyokeizai.net/articles/-/21431
2013年10月15日 野口 悠紀雄 :早稲田大学 ファイナンス総合研究所顧問


為替レートは経済活動に甚大な影響を与える。また、リーマンショックの少し前から現在に至るまで大きく変動してきた。それにもかかわらず、変動のメカニズムについても、適正な水準がどこかについても、また為替レートをどうコントロールできるかについても、わからないことが多い。

ただし、いくつかのことは言える。

第一は、「財市場の条件変化で経常収支が変化し、それが為替レートを動かすのではない」ということだ。前回述べたように、リーマンショックを契機として、米国の経常収支赤字も日本の黒字も減少した。経常収支が為替レートを決めるのだとすれば、これによってドル高円安が起こるはずだ。しかし、実際に起きたのは、ちょうど正反対の動きだった。2009年から12年にかけて、顕著なドル安円高が進んだのである。

これは経常収支ではなく、資本収支によって為替レートが動くことを示している。だから、金融的な条件が大きな影響を与えるのである。

08年には円キャリーの巻き戻しが生じ、それが円高を引き起こした。すなわち、証券化商品のバブルが崩壊して、それに投資されていた資金が米国から日本に還流したため、円高になった(ただし、円キャリーの動きを国際収支統計で捉えるのは難しい)。バブル崩壊は住宅市場への資金流入を減少させて住宅投資を減少させ、それが経常赤字を縮小させた。

第二は、為替レートは資産の価格であるから期待の変化で大きく動くということだ。そして、経済実態から離れたバブルを起こすことがある。国際的な投機資金は簡単に国境を越え、さまざまな国にバブルを起こす。

では、09年から12年にかけての円高はバブルだったのだろうか。これは投機というよりは、ユーロ危機から逃避した資金が日本国債に投資されてもたらされたものだ。だから、これはバブルでなく、むしろ、07年までが円安バブルだったのだと考えられる。一方、12年秋頃からの円安は、投機によってもたらされた可能性が高い。

■ドル建て輸出は円高で増え、円安で減っている

バブルかどうかの判断は、「適正なレート」の評価に依存する。

購買力平価で言えば、09年から12年にかけて、格別円高になったわけではない。これは、実質為替レートの推移で見ることができる。

ただし、購買力平価での評価にあたっては、基準時点を決める必要がある。それ如何によって結果は異なるものとなる。したがって、購買力平価によって誰もが納得するような結果を出すことはできない。

この問題を回避する一つの方法は、世界中でほぼ同一品質の商品が供給されている場合において、その現地価格を比較することである。この目的のために、よく使われるのが、「ビッグマック指数」だ。これによると、13年2月の円はドルに対し20%近くも割安だ。

しかし、バブルか否かの判定より重要な問題は、為替レートが経済活動にどう影響するかだ。とりわけ、輸出にいかなる影響を与えるかである。常識的に言うと、「輸出は円安で増加し、円高で減少する」ということだが、現実に起きているのは、ほぼそれと逆のことなのである。

円建ての輸出額は、円安が進むとドル建て輸出額が不変でも自動的に増える。この影響を除去するため、図にはドル建て輸出額の推移を示した(輸出数量指数も、ほぼこれと同じ動きを示している)。これを見ると、次のことが言える。

第一に、12年までの円高によって輸出が減少したわけではない。むしろ、増加した。

年間平均為替レートは、07年の1ドル=117.8円から11年の79.8円までほぼ継続して円高になった。しかし、それによってドル建ての輸出額が減少したかというと、そうではなかったのである。

リーマンショック直後には大きく下落したものの、09年6月頃からは回復した。そして、11年の秋から12年の春にかけてピークに達した。この結果、年間輸出額はリーマン前より多くなった。すなわち、07年の7127億ドルから、10年の7670億ドルに増加し、さらに11年の8208億ドルまで増加したのである。こうした輸出増をもたらした大きな原因は、対中輸出の拡大だ。だから、「円高が日本経済に悪影響を与える」という考えは、間違いである。

第二に、これと対照的に、12年11月頃から円安が進んでいるにもかかわらず、輸出が増えたわけではない。ドル建て輸出額はむしろ減少しているのである。

11年までの輸出の増加も、12年以降の輸出の減少も、ともに相手国の事情によるものだ。

これは、リーマンショック前の円安時と違う点だ。当時は、とくに米国の輸入が増大したので、日本のドル建て輸出も増大した。今回はそのような拡大効果がない。他方で、後で述べるように円安は生産コストを引き上げている。したがって、経済活動が拡大せずに物価だけが上昇するというスタグフレーションに突入する危険がある。


為替レートとドル建て輸出額の推移
http://tk.ismedia-deliver.jp/mwimgs/f/9/570/img_f9c4d96fd8c8edf1ebf3f3f30d359c31118405.jpg


■円安がもたらしたのは所得移転

円安が輸出産業の利益を増大させることは明らかである。それが株価を引き上げてきた基本的な要因だ。しかし円安が輸入コストを引き上げていることを忘れてはならない。

その状況を見よう。円ベースの輸入物価指数の対前年比は、7月が18.7%、8月が17.5%の上昇となった。一方、8月の消費者物価指数(全国)の対前年同月比は、総合では0.9%、生鮮食品を除く総合では0.8%の上昇だ。これらは、12年平均では、それぞれ0.0%とマイナス0.1%だったので、0.9%ポイントの上昇があったことになる。

円安による消費者物価の上昇はリーマンショック前にも起きたことだ。そのときの経験では、為替レートが20%円安になって、消費者物価が1%ポイント上昇した。為替レートは、この1年で25%円安になったから、消費者物価を1.3%ポイント程度引き上げるはずだ。したがって、転嫁は完全には行われていない。

当時と違うのは、発電の火力シフトのために、円安によって電気代も上がることだ。だから、円安がすべての企業の利益を増やすわけではない。利益増は、原料中の輸入の比率が低い産業(その典型が自動車)に限られる。消費者物価に与える影響もリーマン前より大きくなっているかもしれない。また、今後円安がさらに進めば、生産コストや消費者物価はさらに上がるだろう。つまり円安がもたらしたのは、経済拡大ではなく、所得移転である。

為替レートの予測はできないが、米金融緩和の行方が大きな影響を与えることは間違いない。前回述べたように、米金利が上がれば日本から資金が流出して円安になる。あるいは投機が縮小すれば、ユーロマネーが欧州に回帰し、やはり円安になる。

この状況は、日本経済にとって望ましいものではない。12年頃までの経済成長で、実質消費が増えた。名目ではほとんど横ばいだったのに実質が増えたのは、物価上昇率が抑えられたからだ。しかし、この状況は、円安が進むと変わる。

(週刊東洋経済2013年10月12日号)


 

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コメント
 
01. 2013年10月15日 18:03:31 : nJF6kGWndY
>「輸出は円安で増加し、円高で減少する」ということだが、現実に起きているのは、ほぼそれと逆のことなのである。
>12年までの円高によって輸出が減少したわけではない。むしろ、増加した。
>年間平均為替レートは、07年の1ドル=117.8円から11年の79.8円までほぼ継続して円高になった。しかし、それによってドル建ての輸出額が減少したかというと、そうではなかった

ただし円高の分、円建てでは価格を下げ、売上も利益も激減し、国内企業の弱体化=産業空洞化、企業内外の失業は増え、非正規の増加で名目賃金も下落し続けたけどね

それにリーマン後の海外の景気刺激効果も無視できない


円安が進むほど日本経済が良くなるわけではないのは、交易条件から見れば当然であり、

あくまでも副作用を伴う一時的な(しかも今となっては小さい)景気刺激効果しかない


しかし円高デフレが進んでも、日本経済が良くなるわけではなく、

単に財政赤字を積み上げて、国民の実質生活水準を短中期的に維持しやすくできるだけで、

さらに空洞化は進むし、長期的には破綻する


結局、民間主導で実質経済成長が生じなければ、全体としては豊かにならないし、

インフレだろうがデフレだろうが、平均として実質所得は下がって、貧困化していくという点ではあまり変わりそうもない


02. 2013年10月15日 22:37:31 : HNsvlUxK0s
 円高はデフレ圧力となり、デフレは実質金利が上昇し円高を助長する
しかし、高度経済成長期にも円高も不況もあったがデフレにはならなかった
現代との違いは何なのか、東西冷戦終結による世界経済グローバル化のためなのか
または、規制緩和、経済対策、消費税、組合弱体化等々が裏目にでたのか


03. 2013年10月15日 23:12:13 : niiL5nr8dQ


2013年10月10日


日 本 銀 行

日本銀行総裁 黒田 東彦
「量的・質的金融緩和」の特徴

ブレトンウッズ委員会インターナショナル
カウンシルミーティングにおける発言の邦訳 1
(はじめに)
本日は、このような素晴らしい会合に、パネリストとして参加できること、
誠に光栄に存じます。事務局から送られてきた、この会合の論点候補となる
リストを見た時に、数の多さと範囲の広さに驚きました。相互連関する世界
において、対処すべき多くの困難な問題があることを示していると思います。
そして、こうした課題に対して、我々は真摯に取り組んでいかなければなり
ません。本日は時間に限りがありますので、私からは、当然ながら金融政策
に焦点を当てて、お話ししたいと思います。
近年、金融政策のかじ取りは次第に難しくなってきており、他の多くの中
央銀行の仲間達も、未知の領域で対応しています。リーマン・ショック以降、
世界の主要な中央銀行は、ゼロ金利制約のもと、資産買入れなどの非伝統的
金融政策を導入してきました。日本銀行も、10 年以上前から累次にわたって
非伝統的金融政策を行ってきており、この分野での経験は豊富です。しかし
ながら、デフレからは脱却できませんでした。そこで、私が日本銀行総裁に
就任した直後である本年4月に「量的・質的金融緩和」を導入しました。こ
の「量的・質的金融緩和」は、以前の日本銀行や、他の中央銀行が行ってい
る非伝統的金融政策とは、大きく異なっています。本日は、この「量的・質
的金融緩和」の特徴について説明したいと思います。

(直面する課題と経済状況)
日本経済は 15 年来、デフレが続いてきました。その間に、日本の人々のイ
ンフレ予想は低下し、「物価は上がらないもの」という感覚、デフレ・マイン
ドが定着してしまいました。物価が上がらないもとで、現金や類似の資産の
保有が有利になり、企業は現金を抱え込んで投資をしなくなりました。しつ
こく続いたデフレは、企業や家計の「現状維持」の行動を促し、日本経済の
活力を奪いました。
この間にも循環的な景気回復局面はありましたが、物価の継続的な上昇に 2
はつながりませんでした。需給ギャップと物価の関係を示したフィリップス
曲線は、予想物価上昇率の低下とともに、下方にシフトしました。経済が平
均的な水準にある時に見込まれる平均的な物価上昇率は、最近 15 年程度では、
0%台前半です。G7の他の6か国においては、インフレターゲット近傍で
ある2%程度でアンカーされています。
日本経済の最大の問題は、経済活動の水準が高まっても物価が上昇しにく
いということなのです。したがって、インフレ予想を引き上げることが最大
の課題なのです。

(「量的・質的金融緩和」の特徴)
こうした認識に基づいて、日本銀行は、4月に「量的・質的金融緩和」を
導入しました。この新たな政策では、インフレ予想に直接働きかけることで、
物価をグローバルスタンダードである2%まで引き上げることを狙っていま
す。具体的には、2つの要素を織り込んでいます。第1は、デフレから早期
に脱却するという日本銀行の意志を、強く明確なコミットメントで示すこと
です。そこで、目標達成までの期限を「2年程度」とはっきり示しました。
第2は、その決意を裏打ちするために、従来とは明らかに一線を画する、大
規模な金融緩和を行うということです。具体的には、日本銀行が供給するマ
ネタリーベースを2年間で2倍にすると宣言しました。これにより、2年後
の日本のマネタリーベースは 270 兆円(2.8 兆ドル)となり、対GDP比率
では 50%を超えることになります。なお、現在のFRBの同じ比率は 20%、
BOEは 23%です。マネタリーベースを積み上げる際、日本銀行の資産サイ
ドでは長期国債の保有額を2倍にすることで、長期金利に強力な低下圧力を
加えることも企図しています。
この政策の核となるメカニズムは、予想物価上昇率を上昇させることと、
それとの対比で長期金利を抑制することです。中央銀行の明確なコミットメ
ントと次元の異なる大規模な金融緩和のもとで、予想物価上昇率を上昇させ 3
る一方で、巨額の国債買入れによって長期金利の上昇を抑制します。その結
果、実質金利は低下し、経済に刺激効果をもたらします。さらに、これらの
結果として現実の物価上昇率が上昇することは、予想物価上昇率の上昇につ
ながります。

(「量的・質的金融緩和」の進捗状況)
「量的・質的金融緩和」の導入から、6か月が経過しましたが、こうした
メカニズムは、着実に働いています。日本経済は、2期連続で年率約4%の
GDP成長率を達成し、生鮮食品を除く消費者物価も 14 か月振りにプラスに
転じた後、+0.8%まで上昇しています。経済・物価見通しは改善し、株価は
年初から 30%以上上昇しました。これらは長期金利の上昇要因となっている
はずですが、日本の長期金利は年初の 0.8%程度から 0.6%台へと低下してい
ます。5月末以降、米国など多くの国の長期金利が軒並み大幅に上昇してい
る中でも、日本の長期金利は低下しています。BEI や各種のアンケートから
判断される予想物価上昇率も上昇しています。このように、「量的・質的金融
緩和」は、企図したとおりの政策効果が現れてきており、日本経済はデフレ
からの脱却に向けて着実に歩を進めています。

(おわりに)
「量的・質的金融緩和」は、名目金利の引き下げ余地がなくなる中で、予
想物価上昇率を引き上げるという、世界的にも過去に例のない政策です。決
して容易ではありませんが、これまでのところ、確かな手ごたえを感じてい
ます。今後も、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、こ
れを安定的に実現するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続
していきます。ご清聴ありがとうございました。

以 上
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131011a.pdf

04. 2013年10月16日 09:32:01 : Qru1yIFtIE
>>01さん
>円安が進むほど日本経済が良くなるわけではないのは、交易条件から見れば当然であり

いまいち、論理がわかりにくいですね。
一口に交易条件といっても定義はいくつかありますし、その数値が意味することもそれぞれ違ってきます。
どの定義の交易条件のことなのか、それと「〜を見れば当然」と省略するのではなく論理をしっかり明記していただけるとありがたいですね。


05. 2013年10月16日 09:47:09 : Qru1yIFtIE
>しかし、高度経済成長期にも円高も不況もあったがデフレにはならなかった
>現代との違いは何なのか、

私が思うに、それは数量の違いでしょう。
円高による需要低下の規模が高度経済成長期より激しかったため景気低迷が進んだのだと思います。
また、マンデルフレミングモデルから考えれば、円高が進むのは日本銀行の金融政策が間違っていたという結論になります。

>東西冷戦終結による世界経済グローバル化のためなのか
>または、規制緩和、経済対策、消費税、組合弱体化等々が裏目にでたのか

これはそのとおりだと思います。
金融政策の失敗を別の方法で対処することは難しいですから、これは当然の結果と言えるでしょう。
いわば、インフルエンザを外科手術で治療しようとしたようなもので、痛みが伴う割に効果があまりないのです。


06. 2013年10月16日 20:40:37 : Qru1yIFtIE
すみません、>>05>>02さん宛に書いたものです。

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