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【13/10/19号】 2013年10月15日 週刊ダイヤモンド編集部
国の借金が1000兆円でも
国債が暴落しなかった本当のわけ
国のメインバンク三菱UFJ
日本国債の急落を想定し危機対策?
国のメインバンク三菱UFJ
2012年の立春のころ、中央官庁がひしめく東京・霞が関に、三菱東京UFJ銀行で国債運用責任者を務める鈴木人司・市場部門長(当時。現副頭取)の姿があった。
その少し前のこと。日本の国債市場では、とある“事件”が起きていた。2月2日、「朝日新聞」朝刊1面に「日本国債の急落を想定、三菱UFJ銀が危機対策」という衝撃的な文字が躍ったのだ。
その内容は、「三菱UFJが、国債急落のシミュレーションを内々に行っている」というもの。三菱UFJといえば、国債発行残高の約4割を保有する国内銀行の中でも、ゆうちょ銀行を除いて最大の42兆円を抱える、いわば国債市場の“巨人”だ。市場における売買量でいえば「最大の投資家」(国債トレーダー)である。
そんな三菱UFJが国債急落を想定し、国債を売却するタイミングをうかがっていると言わんばかりのセンセーショナルなヘッドラインが出たのだから、他の投資家たちがあわてたのも無理はない。
しかもこの日は、財務省が10年物の新規国債を2兆2000億円も発行する入札日。「よりによってその日の朝刊にそんな見出しが出た」(財務省関係者)とあって、財務省内にはピリピリしたムードが漂っていたという。
もっとも、三菱UFJにしてみれば、至極当然のリスク管理を行っていたにすぎないし、「そもそもそれ以前からシミュレーションくらいしていた」(三菱UFJ幹部)のだから、「何をいまさら」と鼻で笑ってもいいはずのことに見える。
ところが、である。実はこれ、深刻な事件だったのだ。人知れず鈴木部門長が霞が関に足を運んでいたのも、この記事が原因だった。なんと、財務省に謝罪していた、というのである。
しかも、この話には後日談がある。12年10月、三菱UFJが500ページ近くにも及ぶ書籍『国債のすべて』を発行。財務省がかつて編集していた『国債』のリメーク版という“蜜月ぶり”もさることながら、先の記事から日が浅かったタイミングだけに、「財務省に対する“事謝罪本”なのでは」と、一部国債市場関係者の間でもっぱらのうわさになったのだ。
これに対し三菱UFJ側は、「記事が出るもっと前から準備していたもの」と否定する。それでもシミュレーションについて詳細に意図が説明されているだけに、業界関係者は“言い訳本”だと邪推する。三菱UFJに対する強い関心は、彼らの市場における存在感の大きさの裏返しともいえる。
巷の国債暴落論に欠けている
閉ざされた“談合市場”の掟
なぜ、これだけのことで騒ぎになり、財務省にとって上顧客であるはずの三菱UFJがわざわざ、謝罪に行くような事態になるのか。
背景には、決して外からは垣間見ることのできない、“国債ムラ”の独特のルールがある。そこには、なぜかお上に気を遣おうとする“慣習”が存在するのだ。
巷にはさまざまな国債暴落論が溢れているが、その多くはマクロ経済分析に基づくものだ。だが、日本の国債市場は、財務省・日本銀行・大手銀行の“あうんの呼吸”によって安定を保ってきたといっても過言ではない。「市場」とは言い難いムラ社会的な色の濃い日本の国債市場には、そう簡単には崩壊しない、見えないシステムが内在している。
逆に言えば、市場メカニズムによって効率的に動いてきたわけではなく、いわば“談合”が続いてきた世界。その象徴の1つが、一見すると理解し難い巨人・三菱UFJの行動だ。
「国のメインバンクになる」──。三菱UFJ幹部の一言に、本誌も驚いた。「うちは、ただもうかればいいわけではない。意味のないプライドと満足感を持っているんですよ、国を支えているというポジションに、ね」。
たとえ自身の財務が傷ついても、「外国人投資家の売りを買い支えたこともある」というのだから、国を守るという “使命感”はある意味、称賛に値する。
確かに国債ムラのルールはこれまで国債の安定消化を支えてきた。一方で、この談合システムが抱える最大の問題は、経済の“体温”である金利というシグナルを、国債市場が正しく発していない可能性が高い、ということだ。
いうなれば、国債市場における談合とは、経済の“体温計”を意図的に破壊している状態。国家財政の状況を鑑みれば、本当はとうに高熱状態(高金利)にあるかもしれないのに、平熱だと言い聞かせ、無理をして走り続けているようなものだ。
そこに潜む本当のリスクとは、徐々に金利が上がるといった予兆もなく、ある日金利がワープして跳ね上がる“突然死”である。
まったく新しい日本国債論
本誌取材で判明した
新たな暴落トリガー
「借金が巨額でバランスシートは最悪なんだけれど、銀行としては金を貸せる相手なんですよ」
メガバンク幹部が融資できる相手なのかそろばんをはじくのは、企業ではなく、日本という国です。
日本の借金残高は1000兆円を超えるまでに膨れ上がっています。これが企業ならば、倒産するしか道は残されていません。日本も同様に、国家の信用を象徴する国債がいつ暴落してもおかしくないと指摘され続けてきました。それでも暴落はしていない。なぜでしょうか。
「企業に例えるならキャッシュフローが黒字で資本も厚いから」と、この幹部は語る。換言すれば、経常収支が黒字で、対外純資産も世界一だから安心という主張ですが、その最大の理由は「あなたが支えているからです」──。
そう言われると驚く人も多いでしょう。1590兆円に上る日本の個人金融資産の多くは、預金や保険といった形に姿を変えています。
これが銀行や保険会社を通じて、国債に投資されており、あなたのお金が間接的に国債を買い支えているのです。個人が国債を直接保有する割合は約3%ですが、間接保有も含めると5割を超すといわれます。
どんなに巨額の国債が発行されようが、国内の潤沢な個人マネーが預金などに流れている限り、国債は円滑に発行され、暴落することはないのです。
また、長年続く超低金利のおかげで、国債の利払い費の増加が最低限に抑えられ、借金残高の急増を防いでいた側面もあります。
さらに言えば、日本の低い租税負担率、つまり、いざとなれば増税できる点が財政再建の“切り札”として評価され、国債暴落の防波堤となってきました。
異次元の金融緩和が転換点
日本の国債市場のタブーに迫る
しかし、4月4日に日本銀行の黒田東彦総裁が打ち出した、異次元の金融緩和が大きな転換点となります。
日銀が新規に発行される国債のうち、70%を買い上げることになったため、流通市場での国債の取引が激減。国債価格の変動リスクが急上昇して、金利急騰(国債暴落)リスクがにわかに高まる非常事態に陥っているのです。その先にあるのは、まったく新しい日本国債論です。
ゆうちょの上場、異次元緩和の出口戦略、リスク基準の見直しーー。本誌の取材で判明した、こうした新たな暴落トリガーが1つでも引かれたら、いつそれが起こっても不思議ではありません。
『週刊ダイヤモンド』10月19日号では、これまで閉ざされてきた日本の国債市場のタブーに迫り、誰も言えなかった新たなリスクをあぶり出しました。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 山口圭介)
http://diamond.jp/articles/print/42973
法人税は25%まで下げていく
菅原一秀・経済産業省前副大臣に聞く
2013年10月15日(火) 田村 賢司
消費税引き上げの一方で、安倍晋三首相が強くこだわったのが法人税引き下げ。消費税上げが景気を冷やさないようにするための経済対策には、復興特別法人税の1年前倒し廃止を盛り込み、本格的な法人税率引き下げの足がかりにしたとも言われる。安倍首相の「強い思い」を後押ししたとも噂される経済産業省の前副大臣、菅原一秀衆院議員(自民党)は、「中長期的には25%までの引き下げもありえる」と言い切る。法人税引き下げの原資は見あたらない中、どのような道筋が想定されるのかを、5兆円の経済対策の効果予測とともに聞いた。
(聞き手は主任編集委員 田村賢司)
消費税引き上げに伴って5兆円の経済対策が決まった。だが、東日本大震災からの復興に充てる復興特別法人税の1年前倒し廃止は、これが賃金上昇につなげられるかどうかを見極めた上で、12月中に決めることとなった。見通しはどうか。
菅原一秀(すがわら・いっしゅう)氏
自民党衆院議員。東京都練馬区生まれ。日商岩井を経て、練馬区議、東京都議などを経て、2003年、衆議院議員初当選。4期。2012年12月、安倍晋三内閣で経済産業副大臣を経て、自民党財政金融部会長。
菅原:これはまず間違いなく、そのまま決まるだろう。
元々、復興特別法人税は、2012年度から3年間の時限で、法人税額にその10%を上乗せして東日本大震災の復興財源を確保するもの。これによって法人税の実効税率は38.01%(東京都)から本則の35.64%に1年早く戻ることになるが、企業が減税分を内部留保に回してしまうのではないかとの懸念が与党の自民、公明両党にあった。特に公明党に強く、指摘されたような手続きを経て年末に結論を得ることとなった。
これについては安倍晋三首相が意欲を示しており、よほど賃上げ企業が少ないというようなことでもない限り、そのままで実施されるというのが自民党内の見方だと思う。
経済対策5兆円の規模は変わらない
万一、前倒し廃止が延期になれば、経済対策の規模は縮小することになるのか。
菅原:それもない。実行されなければ、復興特別法人税の税収9000億円は最後、決まり通り復興特別会計に入るだけ。経済対策としてみれば、特別税の廃止の替わりに復興事業が入り、規模は変えないということになるだけだろう。
復興特別法人税の前倒し廃止は、官邸が主導して動いた。しかし、経済産業省もその裏で熱心に主張していたと言われる。法人税率の引き下げを早期に実施するのが本当の狙いか。
菅原:経産省が官邸を動かしたというようなことはない。法人税率を1%下げるには4000億円の財源が必要で、財務省が反対しているというのも知っている。しかし、自民党は前回の参院選の政権公約で、法人税率を20%台に下げるとしており、その方向で考えているのは事実だ。
それに、先進国が中心のOECD(経済協力開発機構)加盟国の法人税率も20%台半ばの水準となっており、やはりそこに近づけることが首相の思いでもある。25%辺りを目指していくことになると想定している。
だが、問題は財源。研究開発減税や設備投資減税の縮小などで、課税所得を増やす課税ベースの拡大には日本経団連も難色を示している。
菅原:まず短期的には、アベノミクスの好影響などで、円安・景気回復へ動いたおかげで、法人税収が大きく上ぶれしている。復興特別法人税の前倒し廃止による減収は約9000億円だが、上ぶれ分は、2兆円近くに達する可能性もある。減収をカバーしても余る。これを日本経済を強くする方向で使い、上ぶれを実力にしていかないといけない。
経済対策と共に政府は、生産性を向上させる設備投資をした企業や、特定の機械設備への投資を行った中小企業への減税などの投資促進税制の実施を決めた。これもそうした方向につなげるものだ。
今後、成長戦略がさらに重要になる
しかし、法人税収の上ぶれ分は、税収だけで、国債の償還・利払い費を除く歳出をまかなえるかどうかを見る基礎的財政収支(PB)の赤字(GDP比)を2015年に半減する財源にもなる。それに一時的財源で恒久減税を行うのは難しくないか。
菅原:もちろん、たまたま上ぶれしたものを単なる減税に使ってしまっては意味がない。だからこそ、成長戦略が大事になる。今回、政府は一定以上の賃上げを行った企業に対し、給与総額の前年比増加分の10%の税金を控除することで、企業に賃上げ拡大を促す賃上げ促進税制の実施を決めた。
また、一定地域内の規制を緩和することで投資拡大につなげる国家戦略特区も実行する方向で動いている。中小企業の赤字法人などで、こうした税制の恩恵をうけられないところには、別途補助金も検討している。ばらまきではなく、成長につながる支援をして日本経済の強さを取り戻すことだ。
前回の内閣改造で、経産副大臣から自民党の財政金融部会長に就任した。財務省、金融庁、日銀に影響力を及ぼす立場になる。
菅原:これまでは、必要な予算を検討し、それがつけられるように要望する立場。これからは、党側でそれらを広く見る立場だ。財政再建が必要なのは当然。それを前提により成長にも目配りした財政のあり方を考えていく必要があるということだ。
このコラムについて
キーパーソンに聞く
日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20131011/254484/?ST=print
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