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中国地方政府の官僚たちへの贈賄工作が発覚し、愛知県警の捜査員らがフタバ産業の工場に家宅捜索に入った=9月12日午前10時10分、愛知県岡崎市
トヨタ系優良企業がはまった汚職国家の罠…中国「賄賂は必要悪」
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20131014/frn1310141032001-n1.htm
2013.10.14 夕刊フジ
【衝撃事件の核心】
中国にはびこる汚職の罠(わな)にはまったのは、日本が誇るトヨタグループの優良企業だった。中国の地方政府幹部に現金などを渡したとして、自動車マフラー最大手「フタバ産業」(東証1部)の元専務が9月、不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)容疑で愛知県警に逮捕された。元専務が中国の各方面にばらまいた賄賂の総額は5千万円超。5年間で22万人の汚職公務員が摘発されたといわれる中国では、「企業の進出に賄賂は必要悪」とも囁(ささや)かれる。一方で、日本は経済協力開発機構(OECD)から「経済規模の割に(海外への贈賄行為の)摘発件数が少ない」と勧告されてきた。専門家は今回の事件を契機に「中国進出企業がビジネス手法を考え直すときだ」と指摘している。
■役人買収で処分回避
事件のきっかけになった出来事は、フタバ産業の現地法人が運営していた広東省の部品工場で起きた。
2006(平成18)年11月、工場に中国の税関当局が査察に入った。この際、関税が優遇されている機械を無断で別の工場に移設していたことが発覚。工場は税関当局から違法操業を指摘された。一時操業停止や生産停止といった厳しい処分が予想される事態だった。
工場で製造された部品は日本の大手情報機器メーカーに供給されていた。工場が稼働しなくなれば製品の輸出はストップし、現地法人が多大な損害を被る可能性があった。
元専務はフタバ産業の中国進出を推進した人物。当時はフタバ産業の取締役と現地法人の社長を兼務し、営業から地方政府との折衝にいたるまで事業全体を統括していた。
税関当局の指摘に焦った元専務は、危機的状況を脱するため、逮捕容疑にもなった“奥の手”を使う。07年12月、広東省内の高級中華料理店で、地方政府の幹部に約3万香港ドルと高級ブランドのバッグを手渡したのだ。現金は当時のレートで約45万円、バッグは約15万円。工場の不正を黙認するよう求める趣旨だった。
賄賂を受け取った幹部は「鎮(ちん)」と呼ばれ、日本では村や町にあたる行政単位のナンバー3。税関職員とともに貿易を監督したり、証明書を発行したりする権限を持っていた。元専務の贈賄工作は成功し、工場の罰金額は大幅に減り、操業停止などの処分が課されることもなかったが、後に贈賄が露見し、逮捕されることとなった。
「厳しい処分を免れたいと考えた。何とかしなくてはという思いでいっぱいだった」
元専務は愛知県警の調べに、当時の心境をこう供述。10月、不正競争防止法違反罪で略式起訴された。
■賄賂総額は5千万円
ただ、今回の一件はやむにやまれず、というものでもなさそうだ。実は元専務はこの事件の5年ほど前から、地方政府幹部や税関幹部に贈賄を繰り返していた。初対面であいさつ代わりに現金を渡すこともしばしば。県警の調べにも「(賄賂は)02年ごろから計16回渡した」と供述しており、各方面に総額約5千万円相当の賄賂がばらまかれた疑いがある。
元専務は賄賂の原資を現地法人の経費から架空の交際費などの名目で捻出。中国語が話せないことから、贈賄の日時や方法は現地法人の中国人従業員に事前に相手方と調整させていた。賄賂は多くの場合、直接職場に届けさせていた。
このような露骨な手口にもかかわらず、フタバ産業本社は長年にわたって元専務の贈賄工作に気づかなかった。このため、元専務が賄賂を渡したとされる16回のうち15回は公訴時効(5年)を経過し、立件されることはなかった。
不正が明るみに出たのは愛知県警が着手した国内のフタバ本体の不正融資事件がきっかけだった。
県警は今年1月、フタバ産業が国内関連会社の倒産を防ごうと不正融資をした事実を隠そうとしたとして、元役員らを有印私文書偽造容疑などで逮捕。捜査の過程で中国での不正支出を疑わせる報告書が押収され、県警が捜査を進めていた。
相次ぐ不祥事にフタバ産業は「深くおわびする。コンプライアンス体制の強化に尽力する」とのコメントを出した。
■贈収賄は「商習慣」
「進出企業が中国公務員の収賄体質を利用し、金でトラブルを解決しようとするのは決して珍しいことではない」。中国市場に詳しいコンサルタントは今回の事件を「氷山の一角」と指摘する。
改革開放をうたい、外資を呼び込むことで経済成長を進めた中国には、00年ごろからトヨタやホンダなどの自動車メーカーが進出を加速させた。フタバ産業も01年、香港に現地法人を設立。元専務はこの1年後から、現地公務員に賄賂を渡していたという。
中国では工場用地の取得などあらゆる場面で地方政府の許認可を取らなければならない。ところが許認可の基準はあいまいで、担当者の裁量次第で必要書類が変わるなど、公務員とうまく付き合わなければ事業の停滞を余儀なくされる。「中国でビジネスをしようと思うのなら、賄賂は必要悪だ」とコンサルタントはいう。
特に待遇に恵まれない郡部の公務員はモラルが低く、高額接待や収賄への抵抗感が薄い。今年3月に中国政府が発表したところによれば、12年までの5年間に汚職で立件された公務員は約22万人。深刻な政治腐敗を受け、中国共産党は汚職撲滅を宣言したが、依然として地方では贈収賄の商習慣が幅を利かせているとみられる。
■OECDが勧告「日本での摘発は低調」
このように「必要悪」とも認識される海外での贈賄行為だが、公正な商取引を妨害することから、近年は国際的に厳しい取り締まりが求められている。
経済協力開発機構(OECD)に加盟する日本は1998年、「外国公務員への贈賄防止条約」を締結。不正競争防止法を改正し、贈賄企業を取り締まる環境を整備した。しかし、日本国内でこれまで摘発された事件は、今回を含めて4件にとどまる。
汚職を監視するNPO法人「トランスペアレンシー・ジャパン」(東京)によると、OECD加盟国の2011年までの摘発件数は計708件。トップの米国は275件、2位のドイツは176件に上る。摘発が低調な日本はOECDからたびたび、「経済規模の割に摘発件数が少なく、積極的な取り締まりをしていない」と勧告を受けてきた。
経済産業省によると、11年度末現在、日系企業の海外の現地法人数は約1万9千社で、中国に約3割が集中している。トランスペアレンシー・ジャパンの若林亜紀事務局長は「グローバルな商取引から賄賂を排除するのは、もはや世界の常識になりつつある。今回の事件を教訓に、中国進出企業がビジネス手法を考え直すとともに、捜査当局が不正の積極摘発に取り組むことを期待したい」としている。
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