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イギリス、ジャージー島の金融機関が情報開示へEU居住者のタックスヘイヴンのメリットが消滅[橘玲の世界投資見聞録] 
http://www.asyura2.com/13/hasan83/msg/189.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 10 月 14 日 00:03:00: igsppGRN/E9PQ
 

ジャージーの主都セント・ヘリアの町並み   (Photo:©Alt Invest Com)


イギリス、ジャージー島の金融機関が情報開示へEU居住者のタックスヘイヴンのメリットが消滅[橘玲の世界投資見聞録]
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20131013-00042920-diamond-nb
ダイヤモンド・オンライン 2013/10/13 19:20


 イギリスとフランスの間に位置するチャンネル諸島のひとつジャージー島は、ガーンジー島、マン島とともにイギリスの王室属領で、ヨーロッパの代表的なタックスヘイヴンとして知られている。

 知り合いから、ジャージーにあるプラーベートバンクから送られてきた手紙を見せてもらった。「IMPORTANT INFORMATION(重要情報)」と太字のブロック体で大書された手紙は、口座保有者に向けて、今年度以降のさまざまな税法上の変更をまとめたものだ。日本人(日本の居住者)には直接の関係はないが、興味のある方もいると思うので紹介してみたい。

 (1)アメリカ人の顧客に関する口座情報は、2014年度分が2015年6月までにIRS(米内国歳入庁)に提供される

 FATCA(Foreign Account Tax Compliance Act/外国口座税務コンプライアンス法)の本格施行にともなって、米国外の金融機関は、IRSとFFI(Foreign Financial Institution)契約を結び、米国人口座を特定したうえでその詳細をIRSに報告しなければ、米国源泉の所得(利子・配当)や米国資産の売却額などに対し30%の源泉徴収が行なわれることになった。

 これまで非課税だった金融所得や資産の売却代金(譲渡益ではない! )への30%もの課税は業績に大きな影響を与えるが、それ以前に、国際的な業務を行なう金融機関がFATCAを拒否することは自ら“ブラック”のレッテルを貼るようなものなので、この規定は米ドル取引を行なうすべての金融機関に対し、米国人口座の情報提供を実質的に義務づけたものと考えられている。

 こうした極端な規制が議会を通過したのは、いうまでもなく、2008年にプライベートバンク最大手UBSの幹部が米国で拘束され、スパイもどきの手法で脱税幇助を行なっていた実態が暴かれたからだ。「犯罪銀行」のレッテルを貼られかけたUBSは、米当局との司法取引に応じ、総額7億8000万ドル(約780億円)の罰金を支払うとともに約5000件の顧客情報をIRSに提出した。

 今年1月には、スイス最古のプライベートバンク、ヴェゲリンが脱税幇助への関与を認め、米当局との和解に必要な罰金に耐えられないとして廃業を決めた。さらにスイス政府は今年8月、金融機関が米国人顧客の隠し口座の情報を提供し一定の罰金を払うかわりに、脱税幇助での起訴を免れるという合意を米司法省と結んだ。これによって、「鉄壁」といわれたスイスのプライベートバンクの守秘性は完全に崩壊した。

 ジャージーをはじめとするヨーロッパのタックスヘイヴンが雪崩を打ったように米国人顧客の情報開示に踏み切ったのは、米国の逆鱗に触れたスイスの惨状を目の当たりにしたからだろう。

 FATCAは極端な規制に見えるが、「世界の中心」であるアメリカはこれまでも同様な手法で自らのルールを他国に押しつけてきた。たとえば船主は、所在地とは異なる国に船籍を置くことができるが、こうした便宜置籍船は、税負担を低くするとともに、便宜的に籍を置いた国のゆるやかな規制を利用して運行コストを抑えてきた。それに対してアメリカは、米国内の港湾を利用する船はすべて米国の基準に従わなければならないとして、便宜置籍船の悪用を許さなかった。今回のFATCAは、米ドルが機軸通貨であることを利用して、米国の金融システムにアクセスする金融機関に米国のルールを強制するものだから、発想は同じだ。

 アメリカ社会が税に対してきわめてきびしい態度をとるのは、独立戦争のきっかけとなったボストン茶会事件のスローガンが「代表なくして課税なし」だったように、納税が市民の義務であると同時に民主政治に参加する権利だとされているからだろう。脱税はアメリカという“理念”の否定で、富や収穫を権力者の目から隠すことが生き延びる術だった日本のような社会とはそもそも成り立ちがちがうのだ(ちなみにこれはヨーロッパも同じだ)。

 (2)イギリス居住者の口座情報も、イギリスの非定住者を含め、英国歳入税関庁に提供されることがイギリス政府との間で合意された

 ジャージーはイギリス王室の属領であるが、イギリスとは異なる法域(Jurisdiction)として口座情報の秘匿が認められてきた。しかし世界金融危機後の世界的な「反脱税キャンペーン」のなかでこうしたダブルスタンダードは通用しなくなり、イギリス居住者の口座情報がイギリスの税務当局に提供されることになった。

 ここで興味深いのは、イギリス独特の非定住者(Non UK Domiciled)という概念だ(これは後で述べるように、「無本籍者」とでも訳すほうが適切だと思う)。

 イギリスの税法は日本と同じ属地主義で、イギリスの居住者は全世界の所得に対して納税義務を負う。しかしそのなかには、イギリス国内に住んでいながら(UK Resident)イギリスに本籍を持つ(UK Domiciled)とは見なされないひとたちがおり、こうした「非定住者(無本籍者)」は例外的にイギリス国外の所得に対する課税を免れてきた。

 なぜこのような規定ができたかというと、大英帝国の時代に、植民地で暮らすイギリス人を植民地国の税法から隔離する必要があったからだ。そこで、「居住地」と「本籍」を分離する便法が編み出された。

 たとえば植民地インドに住むイギリス人は、インドの「居住者」だが「本籍」はイギリスなので、「非定住者(無本籍者)」としてインド国外で得る海外所得には課税されなかった。皮肉なことに、第二次世界大戦後、大英帝国がほとんどの植民地を失うと、この便法はイギリスに住む(主に旧植民地国の)外国人の税逃れに利用されることになったのだ。

 イギリスでは長年、居住者であっても本籍がなければ、「海外所得をイギリスに送金しないかぎり非課税」というルールが認められてきた(これを「送金課税Remittance Basis」という)。2008年9月に税法が改正され、本籍の有無にかかわらず(7年以上居住していれば)原則として全世界所得に課税されることになったが、これには抜け穴があり、一律年3万ポンド(約450万円)を納税する送金課税を選択すればこれまでどおり海外所得を非課税にできる。

 イギリス政府がこの法外な特例を全面廃止できなかったのは、「無本籍者枠」というタックスヘイヴン政策によってイギリス(とりわけロンドン)に世界の大富豪を呼び集めてきたからだ。サッカー、プレミアリーグのチェルシーを買収したロシアの石油王ロマン・アブラモヴィッチがその典型で、彼がイギリスを選んだのは無本籍者として海外所得に対する課税が免除されるからだ。居住者として全世界所得に課税すれば、アブラモヴィッチはイギリスを逃げ出して、チェルシーは元の貧乏クラブに戻ってしまうだろう(ロンドンで豪遊するアラブの大富豪たちも同じだ)。

 なお、ジャージーやガーンジー、マン島など王室属領の金融機関が口座情報の提供を予定しているのにともない、イギリス税務当局は現在、タックス・アムネスティ(UK Tax Disclosure Facility)を実施している。

 タックス・アムネスティは「租税特赦」とも呼ばれる特例措置で、資産や所得を正しく申告していなかった納税者が自主的に開示・申告を行なうことで(Voluntary Disclosure)加算税の減免や刑事告発の免除を得られる。ブッシュ政権が実施し海外資産3000億ドル以上を還流させたといわれる「ホームランド投資法」が、1年間限定の大規模なタックス・アムネスティとして知られている。

 ジャージーの法律改正では、非定住者を含むイギリス居住者に対しこのタックス・アムネスティについて告知することを金融機関に義務づけている。

 (3) 2014年1月1日以降のEU居住者の口座情報が、2015年からそれぞれの国の税務当局に開示される

 EU貯蓄課税協定(European Union Savings Tax Directive)はこれまで、ヨーロッパのタックスヘイヴンにある金融機関の口座を保有するEU居住者の顧客に以下の3つの選択肢を与えてきた。

 a: 金融機関が利子から35%を源泉徴収し、顧客に代わって居住国に納税する(個人情報の秘匿は維持される)
b :利子に対して課税せず、口座情報をそれぞれの国の税務当局に開示する
c: 課税の適用除外を証明する適正な文書を顧客が各自で提出する

 このうち口座情報を秘匿できる「オプションa」が2014年末までに廃止され、翌年から銀行情報の交換が始まる。情報交換がいつ始まるかは2014年5月31日までに顧客に通知される。

 このような一連の規制強化によって、EU居住者がヨーロッパの域内タックスヘイヴンにある金融機関に口座を保有するメリットはほとんどなくなった。これがここ数年、香港やシンガポール、ドバイなどアジアや中東のタックスヘイヴンに富裕層の資金が流入する大きな理由になっている。

 だが国際社会からの情報開示の圧力は、いずれこうしたタックスヘイヴン国にも加えられることになるだろう。

 OECD(経済協力開発機構)は15年末までに加盟国間の情報交換制度の詳細をまとめる予定だという。タックスヘイヴンの多くはOECDに加盟していないが(スイスとルクセンブルクは発足当初からの加盟国、香港を統治する中国は加盟を視野にいれたキー・パートナー国、シンガポールは各種活動に参加するオブザーバー)、グローバルな金融市場でビジネスを行なう以上、グローバルなルールを無視することはこれからますます難しくなっていくだろう。


 

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コメント
 
01. 2013年10月14日 10:46:57 : niiL5nr8dQ

今後、、これまでグローバル化によって、過剰に利益を得てきた超富裕層への監視の目は世界中で厳しくなっていくだろう

まあロシアなどのように体制に反逆すると、資産だけでなく命も没収されるよりはマシというものだが



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