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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131008-00000009-pseven-soci
週刊ポスト 2013年10月18日号
安倍政権が年金カットを閣議決定したのは消費増税を決断する1か月前の9月3日だった。その大義名分に掲げたのが、「もらいすぎ年金」と呼ばれる特例水準の解消だ。
年金は物価の上下に応じて支給額を調整することになっているが、歴代の自民党政権はデフレ(物価下落)状況の中で高齢者の生活を考慮して年金支給額を下げずに据え置いた。結果、受給額は法律に定められた水準より高くなり、これが特例水準と呼ばれている。
財務省や厚労省は昨年の消費税増税法案審議にあたって、そのことを問題にした。消費税を上げなければならないのは、「高齢者が年金をもらいすぎているからだ」と批判して現役世代の不満を高齢者に向けさせ、自公民3党で消費増税とともに年金カット(特例水準解消)の法案を成立させた。今回の閣議決定ではそれを予定通り実施すると決めたのである。
しかし、本当に高齢者は年金をもらいすぎているのか。そもそも政府が年金減額に動いたのは、「団塊の世代」(1947〜1949年生まれ)が年金受給開始年齢の65歳を迎え、年金財政が一層苦しくなったからだ。年金カットは団塊世代を狙い撃ちするものといっていい。
年金博士として知られる社会保険労務士の北村庄吾氏が指摘する。
「団塊世代は年金に関して“勝ち逃げ世代”といわれるが、そうではない。年金制度はすでに破綻しているのに、なんとか年金を支払うことができるのは、高度成長期からバブル期にかけて団塊世代が中心になって貯めた積立金があるからなのです」
日本の年金制度は、積み立て方式ではなく、現役世代が支払う年金保険料で高齢者の年金を賄う「賦課方式」を取っている。制度上、保険料は給付に必要な金額という考え方が基本だ。ところが、政府は長い間、サラリーマンから支給額より多く保険料を徴収し、余ったカネを積立金にしてリゾート開発などに注ぎ込んだ。
年金積立金とはいわば“払いすぎた保険料”であり、その金額は団塊世代が就職した1965年の約1兆4400億円から、大量退職を迎えた2007年には約127兆円へと100倍近くに増えた。
半面、団塊世代は受給額では割をくっている。年金の支給額は制度改革のたびに減らされ、サラリーマン男性の世代別の年金支給額(今年3月末)を見ると、1927年生まれ(86歳)が平均月額21万7110円なのに対し、それ以降の世代は1歳刻みで受給額が減っていき、団塊世代の1947年生まれ(66歳)は18万1952円と3万4000円も低い。それに加えて年金支給開始年齢引き上げ(団塊世代は64歳で満額支給)で、生涯の年金受給額はさらに少なくなる。
団塊世代は、現役の時は必要以上に保険料を支払って年金制度を支えさせられながら、受給額は前の世代より大きく減らされている。それなのに「もらいすぎ」と年金破綻の元凶のように批判されては、反乱を起こしたくなるのも当然だろう。
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