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【第294回】 2013年10月8日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長]
バーナンキはまじない師か?
中央銀行の「言葉の経済」
文化人類学者のD・R・ホルムズ教授(ニューヨーク州立大学)はこの10年以上、世界の中央銀行に強い関心を示してきた。
近年の金融政策は文化人類学的観点からもかなり興味深いものらしい。多くの中央銀行が市場の期待を制御することで経済を運営しようとしてきた。コミュニケーションが何よりも重視されている。それ故ホルムズ教授はこれを「言葉の経済」と描写している。
実際、今年7月にはECBが、8月にはイングランド銀行がフォワードガイダンス(超低金利が長く続くことを言葉で市場に予想させる政策)を導入した。また、日銀は「2年程度でインフレ率を2%にする」と強調し続けることで国民のインフレ予想を押し上げようとしている。「ファイナンシャルタイムズ」紙のG・テット記者は、ホルムズ教授に共感し、FRB議長は言葉を巧みに操れる「マネタリー・シャーマン(金融まじない師)」であるべきと述べた。
ところで、バーナンキ議長は、「シャーマン」であると同時に、以前このコラムで紹介したように、ドニゼッティのオペラ「愛の妙薬」に登場する薬売りにも似ている。その薬売りは、話術で村人たちに安ワインを万能薬と信じさせて販売する。ところが、「恋の病にさえも効く」と強く信じて疑わない青年が現れ、ニセ薬が奇跡を起こすことになる。
大規模資産購入策(いわゆる量的緩和策)でFRBが市場に供給したマネーの大半は、現実には金融機関がFRBに持っている預金口座に眠っている。しかし、効果を信じる人が多かったために、コモディティ市場やエマージング経済までその影響が及んだ。
だが、「ニセ薬効果」が効き過ぎるとソフトランディングは難しくなる。9月18日にFRBが大規模資産購入策の減額を見送った理由の一つは、住宅ローン金利の高騰にあった。このままでは経済の回復ペースが弱まるとバーナンキは警戒したが、その金利上昇は彼の言葉で発生した事象である。
資産購入策の減額はマネーの吸収開始を意味しない。追加の供給を少なくするだけだ。金融引き締めは実際は2015年以降であることがFRBの経済予測からも読み取れるのだが、市場は一時過剰反応を示した。来年1月末の退任まで残り時間は短い。それまでに市場の期待を制御し、減額を開始できるのか、「シャーマン」バーナンキの手腕が注目される。
(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
http://diamond.jp/articles/print/42701
Bpress>海外>Financial Times [Financial Times]
失われた経済統計、FRBの量的緩和縮小に影響も
2013年10月08日(Tue) Financial Times
(2013年10月5/6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
米国防総省、今週にも職員の一時休暇を解除
米ワシントンの連邦議会前で政府機関閉鎖に抗議する連邦政府職員ら〔AFPBB News〕
長引く政府機関の閉鎖は米連邦準備理事会(FRB)の政策立案――資産購入をいつ縮小するかという重大な決断を含む――を麻痺させ、今後数カ月ないし数年にわたり、経済統計の有用性を損なうような波及効果をもたらす恐れがある。
米国の政策立案者らは、政府機関閉鎖の継続が経済統計の質を著しく悪化させ、来年1月まで信頼できる情報が得られない状況に陥りかねない事態を心配している。
FRBは金融刺激策の規模をいつ現在の月間850億ドルのペースから段階的に縮小し始めるべきか評価するうえで政府統計に大きく依存するため、統計の喪失は世界の市場に大きな影響を与える。
政府機関閉鎖の最初のインパクトは、10月4日に発表予定だった雇用統計の延期だが、政策当局がそれ以上に懸念しているのは10月の統計値の完全性だ。
10月の雇用統計を集計できるか?
当局者によれば、彼らが抱く最大の不安は、政府機関が10月14日までに再開されないことだ。この週は月次雇用統計のための調査を行う週だからだ。政府機関が再開された時に、9月の雇用統計は発表されるが、10月の統計は永遠に失われる恐れがある。
比較対象となる前月の統計がなければ、11月のデータを集計・解釈するのが難しくなる。その結果、経済のパフォーマンスを測る明確な測定値は来年1月に発表される12月の統計値ということになる。
「極めて大事な時に明確さが失われることになる」。シカゴに本拠を構えるメジロウ・フィナンシャルのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏はこう言う。「まるで目をつぶって飛ぶようなものだ」
米議会が10月に始まる新年度の政府予算を成立させられなかった後、労働統計局(BLS)や国勢調査局、経済分析局(BEA)などの統計機関は概ね必須ではないと見なされた。BLSでは全職員2409人のうち職場に残っているのはたった3人、国勢調査局では1万5641人のうちたった35人が働いているだけだ。
企業は給与支払いを記録しており、BLSに電子的にデータを提出しているため、エコノミストらは月次雇用統計を過去にさかのぼって算出することは可能かもしれないと考えているが、家計を調査して失業率を計算するのは難しくなる。
2012年までBLS長官を務め、現在はバージニア州のジョージ・メイソン大学のリサーチフェローであるキース・ホール氏は「人々に『先週何をしましたか?』と聞くのとは、ちょっとわけが違う」と言い、回答率の低さと人々の記憶の正確さに特に大きな懸念があると指摘する。
BLSなどの統計機関があとから取り返す能力は、職員が一時帰休中の給与を支払われるかどうかにもかかってくる。もし支払われなければ、取り損ねたデータをすべて集めるために残業して働く動機はほとんど存在しない。
統計記録に永遠に穴が残る恐れも
失われたり、質が損なわれたりした雇用統計は、他の経済統計に連鎖的なダメージを及ぼす。例えば、雇用統計は個人所得のデータに入力される数値であり、それが今度は国内総生産(GDP)統計にも使われる。最悪の場合、統計の記録に永遠に残る穴が生じ、将来の経済分析がすべて、これを考慮に入れなければならない可能性もある。
政府機関の閉鎖がもっと長引けば、ほかの統計も質が落ちる。例えば、消費者物価指数(CPI)は調査員が店頭を訪れて算出されているため、過去にさかのぼって計算することができない。
ホール氏によると、2011年時点では、政府機関が2週間閉鎖されると、CPIの裏付けとなるデータの50%が失われると推計されていたという。
雇用統計以外にも、建設支出や製造業の出荷、在庫、新規受注の統計など、GDP統計に反映される複数の統計が既に発表延期となっている。どちらも国勢調査局が集計しているものだ。
By Robin Hardin
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38874
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