01. 2013年10月08日 10:52:02
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情報BOX:米デフォルトの発生状況・時期に関する一問一答 2013年 10月 8日 10:12 JST [ワシントン 7日 ロイター] - 米国は政治の混迷を受けてデフォルト(債務不履行)への道をたどっている。財務省は10月17日に債務が上限の16兆7000億ドルに到達すること明らかにしている。デフォルトの発生状況・時期に関するQ+Aは以下の通り。 ─米国のデフォルトはどのように起こるのか。 米連邦政府は1ドルの支出に対し、税収が約0.70ドルとなっており、借り入れをしなければ財政が成り立たない。しかし、米国にお金を貸したいと思っている投資家は多いため、こうしたやりくりも容易だ。問題は、政府の債務には議会によって上限が決められており、その議会が上限引き上げで合意していないことだ。 ─そのため米国は10月17日に行き詰るのか。 そうではない。だが、米政府の手持ちのキャッシュが危険なほど低水準になる。政府は5月以降、債務上限に到達しないように策を打っているが、今月中旬にはその上限に到達しそうだ。そうなれば、銀行に預け入れている財務省のキャッシュは約300億ドルになるとみられる。新たな借り入れが不可能になることから、政府は今後の収入と手持ちのキャッシュで支払いを行わなくてはならなくなる。 ─そのお金はどのくらい続くのか。 それほど長くはない。議会予算局(CBO)によると、少なくとも一部の支払いは10月22日から月末までの間に滞り始める。翌日の税収がどのようになるか把握できないため、実際の期日は分からない。 ─お金が尽きた時に米国のデフォルトが到来すると考えていいのか。 デフォルトの定義次第だ。歴史的に見れば、国の返済が滞った時にデフォルトとされる。オバマ政権は公的医療保険向けの支払いを含め、いかなる支払いが滞ったとしてもデフォルトに含まれるとしている。債務上限到達後、最初に訪れる大きな支払項目は10月23日の120億ドルに及ぶ社会保障関連の支払いとなる。 ─金融市場はいつ大混乱に陥るか 国債保有者への支払いが長期間にわたり滞れば市場の警戒感が高まり、さらに、政府による支払いの遅延はパニックにつながる。 米政府は国の債務の支払いを優先させるとアナリストは予想しているが、財務省高官は、どの支払いを優先させるか決定するのは不可能としている。債務上限に達した後、まず、10月17日、24日、31日に債務の支払いがある。CBOによると、17日の支払いは問題ないが、24日と31日分の資金は確保できない可能性がある。 ─デフォルトの経済への影響は デフォルトとなれば、政府はすぐに歳出を約3分の1縮小させる必要がある。ゴールドマン・サックスの試算によると、これが1年続いた場合の影響は国内総生産(GDP)の最大4.2%に相当する。これには金融危機が起きた場合の影響は考慮されていない。投資資金の引き揚げが始まれば株価は急落、年金基金が打撃を受け、消費も冷え込む恐れがある。 世界中の投資家が米国債の価値を見直し、信用市場は凍結する可能性がある。財務省は、デフォルトにより米経済は大恐慌以降で最悪の景気後退(リセッション)に陥ると警告している。 ─この状況から抜け出す方法はあるのか 財務省が額面1兆ドルの硬貨を発行し、米連邦準備理事会(FRB)に預け入れ、国庫を水増しするという案がある。合衆国憲法修正14条に基づき、大統領権限で債務上限を引き上げるべきとの議論もある。ただ、米政府はこの2つのいずれも受け入れない方針。
情報BOX:米政府機関閉鎖の影響を受けている民間企業 2013年 10月 8日 03:23 JST [7日 ロイター] - 米国では7日、政府機関の一部閉鎖が2週目に入った。事態打開に向けた歩み寄りの兆しは見られず、議会のこう着状態が長引くことで経済への影響が懸念されている。 連邦政府機関の職員や資金に依存している米企業にも波紋が広がる可能性がある。だがヘーゲル国防長官が一時帰休となっていた約35万人の同省文民職員の大半を職場復帰させる方針を表明したことで、数社は一時帰休の予定規模を縮小した。 以下に政府機関閉鎖の影響が出ると警告している企業や金融機関をまとめた。 ◎航空防衛機器大手ロッキード・マーチン(LMT.N) 関連政府機関の閉鎖やプログラム停止令を受け、2400人を一時帰休する方針を明らかにした。ただ前週末4日時点の予想3000人からは規模を縮小した。同社は先週、閉鎖長期化なら、一時帰休の人数が毎週増加するとの見通しを示している。 ◎航空機エンジン・機械大手ユナイテッド・テクノロジーズ(UTC)(UTX.N) UTC傘下のシコルスキー・エアクラフトは、7日から予定していた約2000人の一時帰休を取り止めると明らかにした。国防総省が約35万人の同省文民職員の大半を職場復帰させる方針を決定したことを受けた。 UTCは先週、政府機関の閉鎖が今週も続いた場合には全社で最大4000人、11月まで続いた場合にはおよそ5000人を一時帰休とする可能性があるとの見方を示していた。品質を調査する政府担当官が不在のためとしている。 ◎航空機大手ボーイング(BA.N) 航空機の認証を行う航空関連当局で多数の職員が一時帰休となっているため、最新鋭中型旅客機「787ドリームライナー」など一部航空機の納入が遅れる恐れがあると発表した。防衛部門でも、多数のプログラムや製品に影響する可能性がある。 ◎小売り大手ウォルマート・ストアーズ(WMT.N) 傘下の会員制倉庫型店舗チェーン「サムズ・クラブ」では、政府機関に近い店舗で先週末の売上高が小幅減少したが、ロザリンド・ブルーワー最高経営責任者(CEO)は軍事施設の売店閉鎖が続いた場合、食料品の売り上げが増加するのではないかとの見通しを示した。軍事関係者の家族は会費なしで、軍事施設の近くにある50の直販店を利用できるようにするという。 ◎ウラン濃縮会社ユーゼック(USEC)(USU.N) ウラン濃縮計画向けの政府資金の拠出を待っており、15日以降も政府機関閉鎖が続く場合、一部従業員の一時帰休や業務の遅延につながる可能性があると発表した。 ◎ゴールドマン・サックス(GS.N)、バンク・オブ・アメリカ (BAC.N)、シティグループ(C.N)、JPモルガン・チェース(JPM.N)、AIG(AIG.N)、モルガン・スタンレー(MS.N)、ウェルズ・ファーゴ (WFC.N) 大手金融機関のCEOらは、政府機関閉鎖が長引き、連邦債務上限引き上げが10月半ばまでに合意できない場合、悲惨な結果を招くと警告した。オバマ大統領との2日の協議でゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファインCEOは、米国のデフォルト(債務不履行)を招きかねない手段を使い、医療保険改革法(オバマケア)を阻止しようとしている共和党を暗に批判した。
ベイナー下院議長を縛るルール 共和党内の保守強硬派を無視できない理由
2013年10月08日(Tue) Financial Times (2013年10月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 共和党の下院議長らがオバマ氏支持、シリア攻撃に向け結束強める米国 共和党のジョン・ベイナー下院議長(左)は政府機関の閉鎖を終わらせ、債務上限を引き上げたいと思っているが・・・〔AFPBB News〕 ジョン・ベイナー下院議長は、ワシントンにおける共和党のリーダーとしての地位を維持しながら、政府機関の閉鎖を終わらせ、債務上限を引き上げようとしている。 だが、ベイナー議長はそれを、「ハスタート・ルール」として知られる原則――議長は自党議員の多数派の支持を得ていない法案を採決に付すべきではないとするルール――を犯すことなく成し遂げたいと思っている。 これは不可能な目標だったということになるかもしれない。保守派が今、このルールを不可侵の党議として解釈している以上、特にそうだ。 歩み寄りのない政治駆け引きや、米国の債務デフォルトという破滅的なシナリオにもかかわらず、突破口が開けることを期待する理由はまだある。つい数カ月前に、ベイナー議長が、党内の右派陣営よりも、自身が後世に残す遺産や長期的な共和党の将来により大きな関心を抱いていたように見えたことを覚えておいた方がいいだろう。 当時、ベイナー議長は2012年の悲惨な選挙結果を受けて、ティーパーティーに背を向け、共和党を復権への軌道に乗せる覚悟があるように思えた。 ルールを破り超党派の法案を可決させた議長に党内から疑念 バラク・オバマ大統領が11月に勝利を収めた後、ベイナー議長は次々と、共和党からは少数派の支持しか獲得していない民主党の支持を得た一握りの法案を採決に付して可決した。一部の税を引き上げつつ、大方の米国民にとっては減税を恒久化した「財政の崖」を巡る取引や、ハリケーンサンディの被災者支援法案、虐待を受けた女性の支援法案などがそうだ。 いずれの場合も、ベイナー議長はハスタート・ルールに違反していた。その理由は明白に思えた。共和党は、一般市民の民意とかけ離れていると見られたこともあって、大統領選に敗北したばかりだったからだ。 ベイナー議長のルール違反が積み重なるにつれ、保守派の間では、同議長がもっと大きな法案通過を目指すのではないかとの疑念が膨らんでいった。つまり、民主党議員の助けを得て、上院で既に可決された超党派の移民制度改革法案を下院で可決することだ。 案の定、ベイナー議長は6月初旬、ハスタート・ルールに違反して移民制度改革法案を本会議にかける意向があることを示唆した。超党派の支持を得て――下院の共和党保守派の支持なしで――移民改革法案を可決していれば、共和党のイメージの一新に役立ったはずだ。また、ベイナー氏が後世に残す功績にもなったはずだ。 ところが、保守派が議長はハスタート・ルールに従うべきだと迫ると、ベイナー氏は揺らいだ。一部の議員は議長に対し、保守派の全面的な支持なしで移民改革法案を可決しようとすれば、悲惨な結果になると警告した。6月末になると、ベイナー議長は強い圧力にさらされ、共和党の同僚たちに向かって、共和党多数派の過半数の支持がない限り、移民改革法案は採択に付さないと約束した。 多くの人が懸念しているように、移民制度改革法案がオバマ大統領の任期が満了するまでに成立しなければ、ベイナー議長は確実に責めを負うことになる。 ティーパーティーの時代には、危険な遺物か? 財政を巡る大混乱が投げかけるもっと大きな憲法上の問題は、議長に所属政党議員の利益のために尽くさせることを意図したハスタート・ルールが、ティーパーティーの時代には危険な遺物ではないか、ということだ。何しろティーパーティーは、米議会で議席数に見合わない過度な権力を振るっており、統治するよりも政府機関を閉鎖することに満足しているように思える。 確かに、下院で民主党の指示に従うのがベイナー議長の仕事ではないが、今の機能不全よりは、協力体制の構築に復帰した方がこの国のためになる。 それは共和党の役にも立つだろう。仮にベイナー氏が十分長く議長職にとどまり、十分な数の共和党穏健派の支持を勝ち取ることができたとすれば、いくつかの超党派の法案の可決――移民制度改革や長期的な赤字を削減する包括合意、税制改革など――が米国経済を後押しするだろう。 ところが実際は、米国は市場を懸念させているデフォルトの瀬戸際に立たされている。ベイナー議長について言えば、もし米国がデフォルトすれば、さほど長く自分の職務について心配する必要はなくなる。2014年の中間選挙が来れば、恐らくその座を失うだろう。 By Stephanie Kirchgaessner in Washington
【第285回】 2013年10月7日 広瀬 隆雄 米政府機関の一部閉鎖が米企業の決算発表に及ぼす影響とは? 【今回のまとめ】 1.米国政府機関は10月1日から一部閉鎖に入った 2.一部閉鎖期間が短ければ市場への影響は軽微 3.土壇場で米国債務上限引き上げ問題が解決する可能性もまだ残っている 4.決算シーズンでは一部閉鎖の影響を経営者がどう見ているかに注目 米国政府機関一部閉鎖が続いている 米国議会は10月に入っても予算策定が出来ず、政府機関は10月1日から一部閉鎖に入りました。これに伴い先週金曜日に予定されていた雇用統計の発表も延期されました。 米国株式市場は軟調な展開ですが、パニック売りという状況ではありません。先週、ダウ工業株価平均指数は−1.2%下げましたがS&P500指数はほぼ変わらず、ナスダック総合指数は+0.7%でした。 投資家の不安を示すと言われるS&P500ボラティリティ(VIX)指数も、多少動意付いているものの、まだ歴史的に見て最安値に近い水準であり、投資家が米国政府機関一部閉鎖を冷静に受け止めていることがわかります。 政府機関一部閉鎖の歴史 今回のような政府機関一部閉鎖は1976年以来、17回起こりました。平均して一部閉鎖になった期間は6日間でした。 一部閉鎖期間のS&P500指数の平均パフォーマンスは−0.8%でした。このことからも一部閉鎖が短期間で解決した場合、マーケットに与える悪影響はそれほど大きくなかったことがわかります。 しかし一部閉鎖期間が10日を超えたケースでは市場は平均して−2.6%下落しています。さらに一部閉鎖期間が長引いた場合、その後のマーケットの立ち直りも鈍かったことが知られています。 交渉の行方は? 世論は政府機関一部閉鎖の責任は共和党にあると考えています。オバマケア阻止をスローガンにしていた共和党が、第1ラウンドで敗北したとも言えるでしょう。この敗北を受けて共和党内部では足並みの乱れも目立ってきています。 しかしオバマケア阻止が頓挫した今、共和党は次の問題にフォーカスすることが出来ます。その問題とは10月17日前後に米国政府の手持ちのキャッシュが無くなってしまうという問題です。なぜ米国政府の手持ちのキャッシュが無くなってしまうかというと、現在の法律では連邦政府の債務上限は16.69兆ドルと決められており、その限界に既に達しているからです。 共和党は「連邦債務上限引き上げを認める代わりに、現在の膨張した政府予算を削減せよ」と主張するでしょう。大きな政府予算の維持は民主党のスローガンであり、今度は「失うもの」が大きいのは民主党の方になるわけです。つまり「第2ラウンド」では攻守逆転する可能性があるのです。 結局のところ共和党も民主党も米国がデフォルトするシナリオは望んでいません。従って水面下で合意が形成され、比較的迅速に危機回避が出来る可能性もまだ残っています。その場合、共和党は「政府支出の抑制という面で、我々は勝利した」と主張し、民主党は「オバマケアを守りきる事に、我々は成功した」と主張できるわけです。 決算発表シーズンのはじまり さて、今週から決算発表シーズンが始まります。米国企業の利益成長率はこのところじりじり低下しています。 決算発表に際しては政府機関一部閉鎖問題が各企業の今後の業績見通し(=ガイダンス)にどのような影を落とすかが注目されます。 いつものようにトップバッターはアルコア(ティッカーシンボル:AA)で8日(火曜日)の引け後に決算が発表される予定です。コンセンサス予想はEPS6セントです。 その他、11日(金曜日)寄り付き前にはJPモルガン(ティッカーシンボル:JPM)とウエルズファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)が決算を発表する予定です。コンセンサス予想はJPモルガンがEPS$1.33、ウエルズファーゴが97セントとなっています。 http://diamond.jp/articles/-/42723?page=2
米政府機関を停止させたカミカゼ議員団のハイジャック スタッフレベルでもいがみ合いが続く膠着状態 2013年10月8日(火) 堀田 佳男 米政府の機能が停止してから1週間がたつ。7日から一部の政府職員が仕事に戻ったが、予算案成立のめどは未だにたっていない。 短期的な影響は大きくないが、長期に渡って機能停止が続けばGDP(国内総生産)の減少だけでなく、日本を含む世界経済に悪影響がでるのは必至だ。 いったい何が原因なのか。そして最悪のシナリオとは何か。 そもそも政府機関の機能停止は、10月1日から始まった会計年度(2014年度)の予算案が承認されないことで発生した。法案を成立させるべき連邦議会の上下両院がまとまらないため、国家予算がつかないのだ。 もちちん米国の国家予算が9月末日でゼロになったわけではない。今月下旬まで新しい予算案がまとまらなくとも、300億ドル(約2兆8000億円)ほどの手元資金はある。だが議会はなぜ重要な予算案を可決できないのか。 端的に述べるならば、「共和党保守派のティーパーティ(茶会党)有志40人によるハイジャック」と呼んで差し支えない。 日本の主要メディアの多くは、上院の多数派が民主党である一方、下院の多数派は共和党であるため、ねじれ現象から意見が対立して折り合わないと説明する。 米紙は「カミカゼ議員連盟の仕業」と酷評 だが状況を客観的に判断すると、共和党下院の一部議員による強硬姿勢によって政府が機能停止に陥ったと言って差し支えない。ニューヨーク・タイムズ紙は3日、この共和党の動きを「カミカゼ・コーカス(議員連盟)の仕業」と酷評した。この約40人が連邦機関を停止させ、ドルの暴落を引き起こしかねない状況を作っていると記した。 それでは40人は何に反対しているのか。2つある。 1つは医療保険制度改革(通称オバマケア)を凍結させたいのだ。2010年3月に上下両院で法案が可決され、オバマ大統領も署名してオバマケアが導入されることが決まった。 これまで米国には日本やカナダのような国民皆保険がなく、約4700万人が健康保険に未加入だった。先進国として国民全員に健康保険を施すべきとの考え方は広く支持されたが、共和党からは反対意見が消えていない。 ヒラリー・クリントン前国務長官は20年ほど前、ファーストレディ時代に国民皆保険の導入に尽力したが、実現しなかった。民主党内にはその遺恨があり、オバマ大統領は大統領選の公約の1つとして国民皆保険を挙げていたのだ。 だが、その後も共和党からは反対意見が相次いだ。 「現状の健康保険が破壊される」 「財政赤字がさらに増える」 「政府が健保をコントロールするのは社会主義国家」 「税金が無保険者に浪費される」 国民皆保険が法律になった後も、個人の自由を侵害する法律との解釈から、26州で違憲であると提訴されもした。しかし最高裁判所は昨年6月、オバマケアは合憲との判断をくだし、同問題に一応の幕が引かれたはずだった。 日本であれば国会で成立した法律に楯を突くことはまずない。ましてや最高裁で合憲判断が下されたら、反対活動は終止符を迎えると思われる。 保守派が嫌う国民皆保険、元は共和党のアイデア だが「ハイジャック」をしている共和党有志は、今もオバマケアを廃止したい意向を持つ。下院の予算案には、オバマケアの実施延期が盛り込まれており、保守派は同法がイヤでイヤでしょうがないのだ。 複雑な保険システムであり、機能上、国民全員を満足させることは難しい。だが、無保険者を救済するだけでなく、既往症の人でも保険に加入できる配慮など、国民皆保険の導入は前進と捉えられるはずだ。 しかも、オバマケアのモデルはマサチューセッツ州で採用されている健康保険改革である。これは共和党のミット・ロムニー前大統領候補が知事時代に実現させたものだ。 ワシントンにある保守系シンクタンクのヘリテージ財団も20年前、国民皆保険の論文を発表している。理念的にはむしろ、民主党は共和党のアイデアを踏襲したと言えるのだ。 にもかかわらず、すでに立法化され、最高裁でも合憲と判断された法律に、反対派は未だに反対し続ける。その頑迷さは理解しづらい。というよりも、保守派による「オバマ嫌い」が現在のような状況を作り出しているといっても過言ではない。 オバマ大統領が直面するもう1つの問題は、今月17日に債務上限引き上げの期日が来るということだ。 この問題も主要メディアは詳しく背景を述べていない。細部の説明が必要だろう。 米国はいまだに財政赤字に直面している。2013年度の財政赤字は6420億ドル(63兆円)という数字だ。だが最悪だった2009年度の半分近くにまで減っている。ブッシュ政権で増大した赤字額が、オバマ政権下で縮小している。 歳出の強制削減と景気回復が追い風になり、増収などもあって借金はGDP比で約4%にまで減ってきている。しかし借金をしないと国家運営は成り立たない。連邦議会は借金をこれ以上増やさないために、上限を法律で決めている。その額が16.7兆ドル(約1640兆円)。 今月末には底をつくため、17日以降、米国債を保有している投資家などに支払う金利分のお金さえなくなる。国債金利が支払えない状況、それが債務不履行(デフォルト)であり、米国債の暴落につながりかねない。 財政赤字だけを議論するのであれば、米国債の金利は低く、インフレ率も低いため、マクロ経済上は大きな問題ではない。だが、債務の上限を引き上げられないと、支出の大幅な削減が必要となる。 これまで米国の金融史上、デフォルトは経験がない。仮に米国政府が借金を返済できないとなると政府は、憲法修正第14条を利用するオプションがあると言われる。大統領の独自判断で、国債償還のために借り入れをするのだ。 政府機関閉鎖の影響は1週間で10億ドル ただ今までのところ、オバマ大統領は債務上限の引き上げでは、共和党反対派に一切妥協するつもりはないという。 連邦議会スタッフに話を聞いた。 「茶会党の議員と民主党の上院議員はいま、話をしようともしません。何しろスタッフレベルでもいがみ合いが続いているので、連絡がうまく取れないのです。膠着状態はこのまましばらく続きそうです」 両党議員は突っ張り合いを続けているばかりか、ジョン・ベイナー下院議長のスタッフの電子メールが外部に漏れ、民主党に対する本音が伝わってしまったことで交渉はより難航している。 政府機関の閉鎖は、1週間で10億ドル(約980億円)の影響がでると言われる。半月内で決着がつけば大きな影響はないだろう。多くのエコノミストも短期で収束した場合、経済への影響は限定的とみる。 しかし17日になっても決着せず、デフォルトになった場合、円ドル相場は大幅に円高に推移するはずだ。日本を含めたアジア諸国からの米国向け輸出は減少し、世界的な景気減速につながりかねない。米国債の発行量も減り、米国内の景気刺激策も功を奏しなくなる。 米国が風邪のウイルスをまき散らすと、世界中で症状がでるという構図は昔も今も大きく変わっていない。 このコラムについて アメリカのイマを読む 日中関係、北朝鮮問題、TPP、沖縄の基地問題…。アジア太平洋地域の関係が複雑になっていく中で、同盟国である米国は今、何を考えているのか。25年にわたって米国に滞在してきた著者が、米国の実情、本音に鋭く迫る。
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