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海運市況が急上昇 中国需要は本物か 光が差した鉄鉱石船市況だが、持続性に疑問符も
http://toyokeizai.net/articles/-/20696
2013年10月06日 前野 裕香 :東洋経済 記者 東洋経済
足元の市況上昇はどこまで続くのか──。主に中国向けの鉄鉱石を運ぶ大型バラ積み船(ケープ船)の用船料(船の賃貸料)が、このところ急騰している。
4月ごろは1日当たり4000ドル台と低水準だったスポット契約の用船料だが、9月初旬には1年8カ月ぶりに2万ドル台を回復。9月26日現在、3年ぶりとなる4万2000ドル強まで急上昇している(トランプデータサービス調べ)。日本郵船、商船三井、川崎汽船の邦船大手3社は7〜9月のケープ船の用船料を1万〜1万1000ドルと見ていたが、予想を大きく上回って推移している。
ケープ船の運航コストは1日当たり2万ドル程度。前期末にバラ積み船130隻を減損処理した商船三井の場合、ケープ船の1日当たりのコストは1万5000ドル程度まで下がっているもよう。採算の改善は顕著で、10月にも今期の業績見通しを上方修正する会社が出てきそうだ。
全世界での鉄鉱石の荷動きの6割超を占める中国向けは、海運市況に大きな影響を及ぼす。成長鈍化が懸念されている中国経済だが、足元の鉄鉱石需要は意外にも底堅い。
「昨年は7億トン台前半だった中国の鉄鉱石輸入量だが、今年は8億トンに近づく可能性が高い」と、川崎汽船の浅野敦男執行役員は期待を寄せる。輸入量が増加する一方、鉄鉱石の港湾在庫はピークだった半年前に比べ3割減った(日本郵船調べ)。
中国の旺盛な鉄鉱石需要を受け、2大供給国の一つである豪州からの出荷は年初から極めて好調だ。資源メジャーのBHPビリトンやリオ・ティントは積極的に増産をかけている。新興資源会社のフォーテスキュー・メタルズ・グループも、今年は昨年の倍となる年間1億2000万トンペースで生産している。
こうした流れに拍車をかけたのが、豪州と並ぶ鉄鉱石輸出国であるブラジルの動きだ。例年より雨季が長引いた結果、資源メジャーの一角、ヴァーレの月産量は春先まで2000万トン台前半と低迷していた。だが8月に入るとフル生産を開始し、月産3000万トン台を回復した。鉄鉱石の生産は雨季に入る12月までが勝負時。ヴァーレは今年の会社計画である3.3億〜3.6億トンの生産量を達成すべく、10〜11月に大車輪で仕上げにかかるもようだ。
ブラジル積み中国向けの1航海(往復で80日)は、豪州積み中国向け(同35日)の約2.3航海に相当し、船の必要量もそれだけ増える。ブラジルからの供給量急増は海運市況急騰の起爆剤となった。
■鉄も船も供給過剰感
ただ、先行きは不透明だ。中国では中小の鉄鋼メーカーが乱立し、生き残りを懸けた増産競争を続けている。「実需と照らし合わせれば、今の鉄鋼生産量は過剰」(アナリスト)との指摘も多い。鉄鉱石輸入の伸びはいつ鈍化してもおかしくない。
ケープ船の世界的な供給過剰も解消していない。今年のケープ船の竣工は約110隻と昨年から半減する見通しだが鉄鉱石の輸出入量に対しては過剰感が残る。船舶数が適正水準になるのは、竣工がさらに減り解撤も進む1〜2年後となりそうだ。
ブラジルが雨季に入る年末以降に海運市況が下落に転じるのが、ここ数年の傾向でもある。ケープ船の供給余力から見ると、足元の海運市況は明らかに割高水準であり、早晩反落に向かってもおかしくない。
海運会社の中には、今後の下振れリスクを見て現在の用船料で長期契約を結ぼうとする動きも複数ある。ただし、実際のところは長期契約が大半を占め、足元の好条件で結べる契約はごくわずか。市況好転がつかの間で終われば、恩恵を存分に享受できる会社はなさそうだ。
(週刊東洋経済2013年10月1日号)
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