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メガバンクとして余りにお粗末なみずほ銀行の危機対応
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2013年10月5日 郷原信郎が斬る
近年、金融機関のコンプライアンス対応の中で、特に重視されてきたのが暴力団等の反社会的勢力への対策である。国際的なマネーロンダリング防止の要請もあって、金融機関の対応のレベルは急速に高まっている。
そうした中で表面化したのが、みずほ銀行が提携ローンを通じて反社に融資をしていた問題だ。反社への融資であることを把握した後も2年間も放置していたとのこと。日本を代表するメガバンクとしては誠にお粗末としか言いようがない。
もちろん、反社と認識しながら直接融資したわけではない。しかし、日本の経済社会全体で反社対策、暴力団対策が一層徹底され、金融機関の義務が強化されている中においては、反社への融資に対して、副頭取等の銀行幹部が認識していながら、長期間何の対策もとらなかったというのは、金融機関の社会的責任という観点からも、厳しい批判を免れない。
反社問題で監督官庁から業務改善命令を受けるというのは、メガバンクにとって極めて深刻である。反社への融資について金融庁の調査で指摘され、何らかの処分を受ける可能性があることを認識した段階で、重大な不祥事として受け止め、そのような問題に対するみずほ銀行としての姿勢、方針を明確に示し、今後の対応と再発防止の基本的な方向性を示すことで、社会からの信頼の維持を図るべきであった。
ところが、みずほ銀行は、金融庁調査の後、業務改善命令が公表され、問題が世の中に対して明らかになった後も、広報部での説明や、幹部が囲み取材に応じる程度で、記者会見も開かなかった。そのため、社会からの批判は否応なく高まっていった。
ようやく、一週間後の昨日、会見を開いたものの、頭取は顔を見せず、副頭取が謝罪に終始した。誰もが注目している「問題を2年間放置した経緯・原因」等については「調査中」としか答えなかった。銀行内でのこれまでの反社問題への対応の経過も、対応が遅れた原因も、今後の対応方針も、ほとんど明らかになっていない。反社取引という不祥事そのものに加え、このようなみずほ銀行の一連の危機対応の稚拙さが、今回の問題を一層深刻化させたことは否定できないであろう。
クライシスマネジメントの迅速さ、適切さは、企業等が不祥事によって受けるダメージの有無・程度に決定的な影響を与える。
私が、第三者委員会の委員長として不祥事の事実関係の調査、原因分析、再発防止策の策定等に関わった新日本有限責任監査法人職員のインサイダー取引問題と、野村証券社員のインサイダー取引問題とを、クライシスマネジメントの面で比較したのが、拙稿【野村証券はなぜ危機管理に失敗したのか 組織の生死を分けるクライシスマネジメント】である。ここでは、クライシスマネジメントの違いによって、組織もたらされる結果が大きく異なることを明らかにした。
新日本有限責任監査法人のケースでは、証券取引等監視委員会による調査の早い段階から、問題の表面化に備えて十分な準備を行い、新聞報道の直後に記者会見を開き、第三者委員会の設置を明らかにした。
それに対して、刑事事件に発展した野村証券のケースでは、対応がすべて後手に回り、記者会見での社長の説明も混乱、調査委員会のメンバーが社外取締役中心であることについて「調査の客観性」も問題視された。
この記事を書いたのは2008年5月。もう5年以上も昔のことである。それ以降、経済社会の環境が激しく変化する中で、日本企業のコンプライアンスに対する姿勢も取組みも進化してきたはずだ。
グローバルな事業活動を展開し、様々なコンプライアンス上のリスクにさらされているメガバングの一角をなすみずほ銀行のクライシスマネジメントのレベルが、いまだに、今回のような程度だというのは、何とも情けない限りである。
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