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http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20131003-00028627/
2013年10月3日 11時28分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
消費税増税反対派の皆さん、さぞかし落胆していることと思います。お気の毒です。ただ、悪いニュースもあれば、良いニュースもあるのです。
貴方がたにとって悪いニュースとは、増税が決定したこと。良いニュースとは、これで将来大増税になる可能性が少しは小さくなるかもしれないということです。
本日は、今回の消費税増税決定が、何故将来の大増税の可能性を少しでも小さくする方向に働くのかを考えてみたいと思います。
ところで、貴方がたの今回の増税決定に対する反応から、私はあることを感じました。
あれほどまでに安倍総理をかばっていた貴方たちも、今度ばかりは少し違うみたいだ、と。
例えば、靖国神社に参拝しなかったことに対して、何も言わなかった貴方がた。尖閣に公務員を常駐させるという約束が実現されなくても、何も言わなかった貴方がた。さらには、TPPに対しても‥
しかし、今回の消費税増税については違うのです。まだ一部かもしれませんが、初めて安倍総理に対して批判し始めています。
でも、私は、そんなことはどうだっていいのです。何故ならば、私の狙いは、どこかの党に政権を取らせたい‥なんてことではないのですから。自民党であろうが、民主党であろうが、はたまたそれ以外の党であろうが‥党にそれほど拘ることはないのです。まともなことをやってくれれば、それでいい。しかし、まともなことをやらないのならば、どの党でも支持することはできないのです。
安倍さんを支持する人々は、政策の中身よりも、とにかく今の安倍政権を継続させることが第一の目的であるようにしか見えません。だから、政策の中身について建設的な議論などあり得ない。とにかく安倍政権のやることは何でも正しくて、それに批判するのはおかしい、と。
そんな雰囲気であったのが‥今言ったように初めて変化が表れ始めているのです。幾ら安倍政権を支持する人々でも、増税だけは絶対に受け入れることができないという人々がいることが判明したのでです。
ある意味、そこまでしっかりした考え方を有していることは、賞賛に値すると言ってもいい!
しかし、そのように絶対に増税を受け入れないという人々がいること自体が、将来大増税をもたらす原因になるのです。ここでもマーフィーの法則が働いているのです。
問題を出します。将来、大増税が回避不可能になると思われる国は、次のどちらでしょうか?
<選択肢>
A国: 国民の多くが増税に理解を示すことは殆どない反面、景気を回復させるために政府が財政出動するのは当たり前のように考えている国。
B国: 国民の多くが、将来のことを考えれば、増税を受け入れることも時には必要であると考えるとともに、将来のことを重視し、財政出動はなるだけ控えるべきだと考える国。
実際に、将来大増税が圧し掛かる可能性が高い国はどちらなのでしょうか?
増税に理解があり過ぎると、官僚の思惑通りに税金が上がる一方であり、消費税も、所得税も、そして、法人税も、全て税率が高くなってしまうのか? 少なくても消費税だけは、天井知らずに税率が上がってしまうのか?
逆に、国民の多くが如何なる増税にも反対すれば‥精神一到何事か成らざらんの精神で、如何なる増税も、将来に渡って回避することができるのでしょうか?
確かに、日本は民主主義の国ですから、国民の大半が如何なる増税にも反対するのであれば、最後の最後まで増税が実現するのが難しいのは事実。
しかし‥その行き着くところは‥結局、政府が、それまでに発行した国債の元利払いができなくなり、デフォルトに至るのは当然ではないですか!?
では、デフォルトが起きた後、日本はどのような行動を取ることが必要となるのでしょうか?
結局、否が応でも財政再建を迫られるのです。だから、最後にはやっぱり大増税となる。
増税に理解があり過ぎると‥一見、官僚の思ったとおりに国民が操られるように思われるかもしれませんが、国民もバカではありませんから、増税が行われる度に予算の内容に対する監視の目が厳しくなるでしょう。そして、恐らく、今以上に官僚の給与をカットしろというような声が大きくなって行くでしょう。それ以外の無駄な事業に対する批判の声も大きくなる、と。
そういうことなのです。無駄の監視は、増税によって国民が重い税をかけられそうになるからこそ、強くなるのです。逆に、いつまでも国民に追加の負担が求められることがないのであれば、無駄遣いに対する監視の目も強まることはないのです。
筋金入りの増税反対派は、無駄の削減が先決であって、それが実現されない間は、増税を認めてはいけないと言います。
まあ、そう言いたいのも分からないではありません。
しかし、では、いつになったらその無駄の削減が実現できるのでしょうか?
教えて下さい。無駄遣いは、何も官僚たちによってなされるだけではないのです。また、民主党によってだけなされる訳でもない。政権が交代してからも、民主党時代に負けず劣らず無駄遣いが横行しているではないですか?!
無駄はいつも起こるものなのです。だから、絶えず納税者が監視の目を光らせておく必要があるのです。
しかし、無駄というもののは、判断によって無駄にも見えるときもあれば、そうでないときもある。
早い話、今回の5兆円の経済対策の中身にしても、住宅取得者にお金を支給するようなことが本当に必要なのか? また、低所得者に1万円ずつ配ることが必要なのか? そしてまた、東北の被災地では復興事業に必要な人員の確保さえままならないのに、ここでまた公共事業を追加するようなことが必要なのか、と。
無駄ばかりに見えませんか?
しかし、幾ら増税に反対する納税者であっても、自分が恩恵を受ける事業ならば、決して無駄に見えることはないでしょう。つまり、近いうちにマイホームを買おうと思っている人々にとっては、住宅補助は無駄には見えないのです。そして、公共事業は、一般の人にとっては無駄に見えることが多くても、土木業者にとっては決して無駄に見えることはない、と。
では、無駄の徹底的な排除は無理なのか? ある程度の無駄は、しようがないと諦めるしかないのか?
実は、そうでもないのです。無駄は徹底的になくすこともできるのです。では、どうしたらできるのか? その答えが、増税の実施なのです。
増税がなされることがなければ、国民は無駄なお金の使い方に、それほど煩く言うことはないでしょう。何故ならば、幾ら無駄が横行していても、そのツケが自分に回ってくるのでなければ、国民は多分黙っていることの方が多いからなのです。
その反対に、ツケが回されると、国民の反応はどう変わるでしょうか? つまり、増税が実施されるとどうなるのでしょうか?
増税反対派の人々だけではなく、多くの国民は怒るでしょう。請求書の中身を見て、お金の使い途がまだ納得ができるのであればともかく、なんじゃ、この無駄遣いは!と。
そして、そのように憤慨する国民が多くなるので、初めて無駄遣いに対する監視の目が厳しくなるのです。
だから、今回のような増税がこれから先も続くのであれば、国民の財務省に対する敵意は一層高まる。だから、財務省としても、一層無駄な事業を削らざるを得なくなるのです。
しかし、そうした事態になって一番困るのは、事業官庁、つまり、国土交通省や経済産業省のようなところです。そして、まただからこそ、そのような事態にならないように、絶えず増税は財務省の陰謀だという情報を流し続ける。
国の予算から無駄なものが大幅に削減されると、経済にはどのような影響を与えるでしょうか?
そんなことをしたら、需要が落ち込むので景気が悪くなってしまうと心配する人もいるでしょう。
確かに一時的に景気が悪くなる効果があるのは否定できません。しかし、そうして無駄なお金の使い途を排除し、お金が生きる形で使われることが多くなることによるプラスの効果は決して小さくないのです。否、長い目でみれば、そのプラスの効果は計り知れないでしょう。つまり、経済を成長させるには、お金を有効に使うことが一番大切なのです。
そんなこと、民間の会社の経営者なら、言われなくても分かりますよね?
しかし、国家の経営に関することになると、その常識がいつのまにか忘れられてしまうのです。
結局、自分のお金でないから‥つまり、誰のものとも言えない国のお金だから、使った方が得だという感覚が生まれてしまうのです。
もし、無駄が削減されないまま、例えば、いつまでも公共事業が増える一方だと土木業者が予想すれば、どのようなことになるでしょうか?
土木業者が、これから先は、殆ど特別な努力をすることなしに飯が食べられると考えれば、その結果、そうした業界の生産性が上がることはまず期待できないでしょう。
その一方、無駄が排除された結果、土木業者が、公共事業が今後、今までと同じようなペースで続くことが期待できないと予想するようになれば、同業者との競争を勝ち抜くために、土木業者たちは他の業者にはない特別な技術を身に着けるべく努力をせざるを得ないでしょうし‥また、それ以外の仕事に活路を求めて、新しい産業を誕生させることにもつながるかもしれません。
大増税は嫌だ! だから、そのためには国民の無駄遣いに対する監視の目を強める必要があるのです。しかし、国民は、何もショックを与えられないと監視の目を強めることはないでしょう。それどころか、自分にとって利益になるような無駄なお金の使い方を要求するでしょう。だから、次善の策として、当面は増税を実施し、国民にショックを与えることが望まれるのです。
以上
小笠原 誠治
経済コラムニスト
小笠原誠治(おがさわら・せいじ)経済コラムニスト。1953年6月生まれ。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(いずれも秀和システム)など。「リカードの経済学講座」を開催中。難しい経済の話を分かりすく解説するのが使命だと思っています。
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