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[FT]消費増税決定、財政再建目標達成にリスクも:財政再建のための消費税増税ではなく消費税増税のための財政再建目標
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/798.html
投稿者 あっしら 日時 2013 年 10 月 03 日 02:04:41: Mo7ApAlflbQ6s
 


 消費税増税は、グローバル企業と銀行の経営を考慮した政策であり、財政再建は口実としては使われていても、リアルな目標としては存在しない。


(財務省の官僚たちは、グローバル企業と銀行の経営を考慮することは国民生活を考慮することに他ならないと言いたいだろうが)

 このような政策態度は、銀行の預金運用難が強まれば(預貸率が低下すれば)必要のない予算を編成してまで赤字国債を増発したり、グローバル企業の利益増大のために消費税(付加価値税)増税を強行したり法人税税率の引き下げを志向していることでわかる。

 建前(口先)としては必要だと思うが、現状、実際に財政再建に動く必要も動ける条件もなく、消費税増税は、端から財政再建とは無関係の政策なのでる。

 財政再建のために消費税増税があるのではなく、消費税増税のために財政再建という口実が持ち出されたというものである。


 FTの記事のなかで、「増税という財政上の利得の一部を追加経済対策で相殺してしまう決定は、財政再建目標を骨抜きにし信頼性を危険にさらす恐れがある」と語られているが、日本政府の“放漫財政”は、来年度の本予算自体が100兆円近くと本年度の当初予算より6兆円ほど増加しそうな勢いだから、「財政上の利得の一部を追加経済対策で相殺」という穏やかなレベルではない。

 近代経済社会では、貸し出しが増加しなければ名目GDPは思うように成長しない。
銀行が多額の貸し出しをしてもいいと思う相手は限られた有力企業だが、それらの企業は、自分たちのほうが貸したいほど潤沢な資金を保有している。
 住宅ローンや最高裁判決のおかげで手に入れたサラ金子会社の貸出額では増え続ける預金を安全に運用しきれない。


 結局、銀行が抱える豊饒な預金はその多くを、政府部門に借りてもらうしかないである。

 財政再建問題の結論を言えば、(現行システムを前提とした)財政再建は、銀行の貸し出しが増大(預貸率が上昇)しない限り、リアルな政策課題とさえならないのである。
 そして、貸し出しを増加させる条件は、需要(=供給)の増加を通じてデフレから脱却するほかにない。

 安倍政権は、消費税増税の決断でその道筋を放棄したのだから、財政再建が現実的な政策課題にのぼるとしても、遙か彼方の話である。

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[FT]消費増税決定、財政再建目標達成にリスクも
2013/10/2 14:00

(2013年10月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 日本経済が財政緊縮に耐え得るかどうかを示す決定的な指針として、安倍晋三首相が日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)を本当に念頭に置いていたとすれば、ほぼすべてのページで勇気づけられたことだろう。
 短観は日本企業の景況感を示す最も重要な指標とされている。日銀が1日発表した9月の短観では、大企業と中小企業の業況判断指数(DI)が2007年12月調査以来の高水準となった。
 景況感が改善したのは輸出業者が外需増加を見込んでいることと、非製造業者が国内で個人消費が持ち直した恩恵を受けているためだ。日本企業の多数を占める中小企業でもDIはマイナス4に改善し、過去最高だった07年の0に近づいた。


■円安で膨らむコスト

 しかし消費税を現在の5%から来年4月に8%に引き上げることは、かなり複雑な現実を伴う。安倍首相の経済政策「アベノミクス」は日本で長年続くデフレに終止符を打ち、経済成長を促そうとするものであり、円安を促進する大規模な金融緩和策を含む。円安で輸入価格が上昇し、燃料やその他商品のコストが増加している。

 円安は企業収益に貢献し、短観でも雇用がある程度改善したことが示されたが、コスト増に対応するのに必要な賃金上昇にはまだ至っていない。1日発表の別の統計によれば、いわゆる基本給は8月に前年同月比0.4%下落した。

 「アベノミクスが良性インフレ時代の到来を告げるのであれば、物価上昇に伴う賃金上昇が重要だ。物価上昇がやや先行しても問題ない。しかし例えば6カ月という期間で見ても賃金が下落しているようなら警鐘が鳴り始めるだろう」。SMBC日興キャピタル・マーケッツのジョナサン・アラム氏は話す。

■景気への懸念の払拭に努める

 安倍首相は12月初めにも詳細を説明する約5兆円規模の経済対策により、増税による最初の打撃を和らげ、増税が回復途上にある景気の腰を折るのではないかとの懸念を払拭しようとしている。

 同首相は賃金上昇や雇用拡大を約束した企業に対し法人税を減税する可能性を視野に入れているが、企業が現実にそのように振る舞うかどうか、エコノミストらは確信していない。

 安倍首相は利払いを除いた財政赤字を15年までに半減し、20年までにはゼロにするという公約を繰り返した。

 しかし、調査会社キャピタル・エコノミクスのマーセル・ティーリアン氏は、増税による初年度の歳入増の大部分が経済対策に費やされる可能性があり、財政赤字削減目標の達成はさらに難しくなるものとみている。安倍首相が今年初めにより大規模な経済対策を実施したことで、先進国でも最高水準にあった日本の公的債務残高は国内総生産(GDP)の約250%に上昇した。
 「増税という財政上の利得の一部を追加経済対策で相殺してしまう決定は、財政再建目標を骨抜きにし信頼性を危険にさらす恐れがある」。ティーリアン氏は警告する。

 企業経営者らは今回の決定を歓迎している。経団連の米倉弘昌会長は「決断を評価する」とのコメントを出した。
 ソニーの平井一夫社長は「財政安定は中長期的には国や社会にとって良いことだ。ポジティブな面を期待したい」と話す。
 今回の増税については世論の賛否は拮抗している。消費税は2段階の引き上げが予定されており、今後2年以内に10%となる見通しだ。

By Ben McLannahan and Jonathan Soble

(c) The Financial Times Limited 2013. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


http://www.nikkei.com/article/DGXNASGV02003_S3A001C1000000/?n_cid=DSTPCS013


 

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コメント
 
01. 2013年10月03日 03:22:34 : niiL5nr8dQ
【第77回】 2013年10月3日 高橋洋一 [嘉悦大学教授]
消費税増税決定の過去そして未来
 安倍首相は、来年4月からの消費税増税を明言した。ツイッターでは、

「増税を行えば、消費は落ち込み、日本経済は、デフレと景気低迷の「深い谷」へと逆戻りしてしまうのではないか。最後の最後まで、考え抜きました。
 日本経済の「縮みマインド」が変化しつつある。大胆な経済対策を果断に実行し、この景気回復のチャンスをさらに確実なものとするならば、経済の再生と財政健全化は両立しうる。
 国の信認を維持し、社会保障制度を次世代にしっかり引き渡す。経済再生と財政再建を同時に進めていく。これが私の内閣に与えられた責任です。……。
 大胆な経済対策と消費税の引き上げ。本日決定した経済パッケージは、この両立のベストシナリオである。これが、熟慮を重ねた上での、私の結論です。」

 と書かれている。

 つまり、経済成長、財政再建と社会保障の三つを満足させる解として、消費税増税と経済対策を実行するとしたわけだ。

民主党政権の誕生が
消費税増税の伏線

 この論評は後述するが、最近の消費税増税の動きを整理してみよう。

 ことの始まりは、麻生政権だ。増税派の与謝野馨氏が、財務大臣、金融担当大臣、経済財政担当大臣の三閣僚を兼務するなど、重要閣僚だったが、2009年3月に成立した税制改正法の付則104条に「消費税を含めた法制上の措置を2011年度までに講じる」という時限爆弾を潜り込ませた。

 その後、国民は、「増税しない。シロアリ(天下り官僚)の退治が先」との民主党マニフェストを信じて、民主党に政権交代させた。

 ところが、菅政権では、2010年6月突如として消費税10%宣言が飛び出す。その後、2011年1月にはなんと与謝野氏が入閣する。野田政権で、昨年8月とうとう増税法案を成立させた。その因果なのか、昨年12月の総選挙で民主党は大敗し、あっさりと政権からすべり落ちてしまった。

 今回の消費税増税は、2009年の政権交代がなければ、起こらなかったかもしれない。というのは、政権交代がなければ、与謝野氏が民主党政権に荷担して増税路線にもっていくこともなかっただろう。また、自民党政権であれば、与謝野氏の増税一本槍の経済政策とは対極になっていた中川秀直氏の経済重視の上げ潮派がいて、両者は競っていたからだ。

上げ潮派不在が
今回の増税を許した

 両者は、ともに財政再建を重視している点は同じであるが、その手法は全く違う。与謝野氏は、経済成長を重視せず、デフレ脱却消極姿勢も容認し、増税による財政再建を目指すが、中川氏は、金融政策を使ってデフレ脱却を図り、経済成長を重視し、その結果として財政再建を達成しようとする。

 今の自民党には、中川氏のような経済政策観の政治家はいない。強いていえば、安倍首相の経済成長重視の考え方は中川氏に似ている。さらに、アベノミクスのキモを金融政策に据えたのも、上げ潮と同じだ。それなのに、ここに来て、なぜ与謝野氏の路線になったのだろうか。

 その答えは、自民党内に中川氏のような政治家がいないからだろう。もしいれば、安倍首相は、自民党内の与謝野氏のような増税派と中川氏のような経済重視派を競わせて、経済重視の結論を出していただろう。

 いくら首相が権限があるといっても、自民党という党を運営していかなければいけない。もし、本当に首相が権限を見せつけるなら、衆院解散・総選挙も辞さない、内閣も党の人事も行うという覚悟でなければいけない。

 しかし、衆院が違憲状態になっていてまだ区割り法案も成立していないので、総選挙はやりにくい。内閣改造をやろうにしても、麻生氏を切る覚悟がないとできないが、そこまでの党内基盤は安倍首相にはできていない。というわけで、安倍首相は、政治的に消費税増税を避けられなかったのだろう。増税を止めるためには、法改正をこの秋の国会に提出しなければいけないが、政治的にできなかったというわけだ。

首相の本質がわかるのは
再引き上げ決断のとき

 今回の消費税増税が、安倍首相にとっては政治的な解がなく、苦渋の決断としても、経済成長、財政再建と社会保障の三つを満足させる解は、消費税増税と経済対策ではない。

 しかも、経済対策では、企業へのてこ入れをそのコアにしているのは、財務省の財政再建至上主義に対抗するためとはいえ、「まずは企業が潤えば、その後に社員の賃金も……」とのいわゆるトリクルダウン説を根拠としており、説得力に欠ける。おそらく財務省に対抗するために経産省に頼ったのだろうが、トリクルダウン説で格差が拡大した韓国の例もあり、一抹の不安を感じざるを得ない。

 本コラムで再三指摘しているように、金融政策によって2年後にはデフレ脱却、経済成長が達成できる。その1年後には、基礎的財政収支が改善して、財政再建への道も開ける。と同時に、番号制、歳入庁や消費税インボイスを導入すれば、財政再建を確実にして、社会保障制度の運営も万全にできる(シリーズ日本のアジェンダ第5回も参照)。

 今回の消費税増税への表明で、安倍首相の経済政策観が、与謝野氏のような増税派だと決めつけないほうがいい。増税の経済へのマイナス効果を理解しているからこそ、最善の策とは言いがたいが、経済対策を打つのだろう。さらに、本質がわかるのは、2015年10月の8%から10%への再引き上げの時だ。

 1日の記者会見では、それを質問されて、安倍首相は「改めて付則第18条にのっとって、経済状況等を総合的に勘案して、判断時期も含めて適切に判断していきたい、決断していきたいと考えています」と述べている。

 自民党総裁の任期は3年である。安倍首相は2012年9月に総裁になったので、2015年9月に任期が切れる。総裁選の争点として、消費税増税が浮かぶだろうが、安倍首相が経済成長重視であれば、増税阻止の立場を明確にするだろう。2016年7月に参院選、12月に衆院任期切れになることを考えると、7月にダブル選挙になるだろう。その時には、安倍首相は経済成長重視派の真骨頂がでているだろう。

 期待を込めていえば、2014年4月と2015年10月の消費税増税について、@2回ともパス、A2014年4月だけ上げる、B2015年10月だけ上げる、C2回とも上げるという選択肢がある中で、安倍首相は政治的かつ冷静にAを選んだのだと思う。

 それまでは、景気の腰を折らないために、財政政策と金融政策をフル稼働させるだろう。先々週の本コラムで述べたように、追加財政政策のための財源はまだ残っている。さらに、3、4日の日銀金融政策決定会合でも、追加金融緩和を行うべきだ。金融政策の効果はすぐには出ずに、本格的な効果発揮までは2年もかかる。その一部はその前に効果が出るが、それでも遅い。その効果ラグを考えると、日銀はすぐに行動すべきである。


 


 


【第23回】 2013年10月3日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
異次元緩和政策は、国債を当座預金に変えただけ
 異次元緩和によって、マネタリーベースは著しく増えたが、マネーストックはそれほど増えなかった。その意味で、異次元緩和は空回りしている。こうなるのは、貸出が増えないからだ。前回と前々回でこのように述べた。では、銀行の資産構成は、異次元緩和によってどのように変化したのだろうか?

 以下では、日本銀行の資金循環統計によって、国内銀行の資産の変化を見ることとしよう。

金融緩和で貸出は
わずかしか増えず

 銀行の資産のうち日銀預け金の残高は、異次元金融緩和政策の結果、2013年4−6月期において、過去に比べて異常なほど増加した。この状況は、図表1に示すとおりだ。


 01年に導入された量的緩和政策、10年に導入された包括的金融緩和政策のときにも増えたのだが、導入前に比べて10兆円程度の増加である。ところが、今回は、13年1−3月期から18.5兆円増加している。12年10−12月期からの増加で見ると、28.3兆円増と、これまでの3倍近い増加を示している。今回の緩和措置が「異次元」であると言われたのは、このかぎりにおいては、そのとおりだ。

 これは、銀行の資産構成にどのような影響を与えただろうか?(なお、以下で「国債」とは、「国債・財融債」を指す。つまり、国庫短期証券は入らない)。

 13年1−3月期からの残高の差を見ると、日銀預け金の増18.5兆円に対して、貸出はわずかに3.3兆円増加したに過ぎない。しかも、増加の傾向が鈍化している。つまり、これまでと比べて、増加額が減少している。

 金融緩和をしたのだから、貸出はピッチを上げて増えていなければならないはずだ。しかし、現実には逆のことが起きているのだ。したがって、教科書的な意味での信用創造過程は生じていないと結論できる(なお、ここでは銀行勘定だけを見ている。銀行勘定と信託勘定の合計では、前回見たように貸出は減少している)。

 また、貸出増自体は、11年1−3月期から続いていることに注意が必要だ。異次元金融緩和政策は、貸出増を加速したわけではなく、むしろ、これまで生じていた増加を抑えたことになる。

 同様のことは、量的緩和のときにも生じた。すなわち、図表2に見るように、貸出ストックは、金融緩和措置の導入にもかかわらず、05年4−6月期まで減少を続けた。なお、包括的金融緩和の際には増加した。


 金融緩和をしても貸出が顕著に増えないのは、資金需要がないことが基本的な理由であるが、企業の内部資金が潤沢で、借入に依存する必要がないからである。とくに製造業においてこの傾向が著しい。

 こうした経済で金融緩和で経済を活性化しようとしてもできないのは当然のことだ。

 なお、国債は、1−3月期に比べて19.5兆円減と、顕著に減少した(図表3参照)。これは、言うまでもなく、買いオペによって日銀が銀行保有国債を買い上げたからだ。今回のような急激な現象は、過去には起こらなかった現象だ。


銀行資産構成の変化

 2013年1−3月期から4−6月期の総資産中での比率の変化を見ると、国債が2.2%ポイント減少し、貸出が0.4%ポイント減少し、当座が1.7%ポイント増加した。

 各々の資産について、00年1−3月期からの比率の推移を見ると、つぎのとおりだ。

(1)日銀預け金:異次元緩和で歴史的最高値に

 総資産中の日銀預け金(当座預金)の比率は、量的緩和以前には総資産の1%未満であったが、量的緩和政策の導入によって、01年7−9月期からは継続的に1%を超えるようになった(図表4参照)。そして、03年1−3月期以降は3%を超えることが多くなった。しかし、量的緩和政策の終了に伴い、06年4−6月期からは1%程度になった。


 10年からの包括的金融緩和によってこの比率は上昇したが、2%程度までであった。つまり、当座預金の比率という点から見れば、包括的緩和政策は量的緩和政策よりは穏やかな政策であったと言える。

 ところが、この比率は13年1−3月期に3%台に上昇した。そして、13年4−6月期には、4.9909%と、ほぼ5%になったのである。この比率は歴史的に見て最高の比率である。

(2)貸出:金融政策に関係なく徐々に低下

 総資産中の貸出の比率は、00年1−3月期には、67%だった(図表5参照)。そして、量的緩和政策の導入後は、この比率が上昇するのではなく、むしろ穏やかな低下を続けた。05年10−12月期には、55%というボトムに達した。


 量的緩和政策終了後、この比率は下がるのではなく、若干ではあるが上昇した。そして、08年1−3月期には、59%になった。08年7−9月期には60%を超えた。

 これまでも述べてきたように、貸出は金融緩和で増大するのではなく、他の要因によって経済活動が活性化することによって増大するのである。いま見た数字は、このことを明確に示している。

 貸出の比率は、リーマンショックの影響で、08年10−12月期には低下した。ただし、それほど急激なものではなかった。そして、早くも、09年1−3月期には、前期より上昇している。

 ただし、比率はその後徐々に低下した。この傾向は金融緩和政策の導入によっても変わることはなかった。そして、13年1−3月期に5割を割り込み、13年4−6月期には49.4%となった。

 総じて言えば、総資産中の貸出の比率は、06年1−3月期から08年1−3月期までを除けば、傾向的に低下していると言える。そして、例外期間が金融緩和期ではなく、金融緩和が停止されていた期間であったのは、誠に皮肉なことだ。

(3)国債・財融債:新規国債発行が増えると金融緩和が要求される

 総資産中の国債・財融債の比率は、量的緩和導入によって、むしろ上昇した(図表6参照)。これは、日銀買いオペ額よりも、新規国債の発行額が多かったことを示している。この結果、04年1−3月期から04年7−9月期にかけては、比率が1割を超えた。


 しかし、量的緩和終了で比率は低下した。というより、景気回復で新規国債の発行額が減少したために、比率が低下したのである。

 しかし、10年4−6月期頃からは、比率は傾向的に上昇している。これは、リーマンショック後の税収の減と09年からの民主党政権の支出拡大によって、新規国債の発行が増えたからである。そして、10年10−12月期に比率は10%を超えた。包括的緩和政策が導入されたのは、このように国債の保有比率が高まったからだと思われる。

 そして、日銀の買いオペが増えたために、国債の保有比率は12%台で頭打ちとなった。

 しかし、量的緩和政策によってこの比率は急激に低下して、約10%となり、包括的緩和政策導入以前の水準に戻った。

 このように、(今回を除けば)資産中の国債率は、「金融緩和で日銀買いオペが増えると低下し、緩和が停止されると上昇する」という常識的な動きを示していない。実際の動きは、上で見たように、「金融緩和期と比率上昇が対応し、停止期と比率低下が対応している」ことが多い。

 これは、金融緩和政策の発動が、経済活動のコントロールよりは財政ファイナンスを目的として行なわれているからだと解釈できる。つまり、財政事情が悪化して国債発行が増えると金融緩和が発動されて買いオペが行なわれて、市場の供給圧力を軽減する。財政事情が好転して国債発行が減ると、金融緩和が停止される。

 金融緩和の導入によって資産中の国債比率が低下したのは、今回の緩和の特徴である。

金融緩和は銀行の
収益性を悪化させる

 2010年10−12月期頃からは、国債残高も貸出残高も増えていた。つまり収益性資産が増加していたのだ。

 しかし、13年4−6月期には国債が減り、貸出増の勢いが鈍化したので、銀行の収益性は低下している。では、どの程度の変化があったろうか? 次のように考えることができる。

 国債の利回りは償還までの期間に依存するが、ここではそれを5年と仮定しよう。現在5年国債の利回りは0.24%である。他方、日銀当座預金の超過準備部分に対しては、0.1%の付利がなされる。ここでは、今回の買いオペによって増加する当座預金はすべて超過準備になるものとしよう。

 また、日本銀行の「貸出約定平均金利の推移」によれば、13年7月で国内銀行の貸出平均利回りは、総合で1.3%である。

 他方、資産の変化は、すでに述べたとおり、下記のとおりであった。

 日銀預け金 18.5兆円増加
 貸出    3.3兆円増加
 国債    19.5兆円減少

 問題は、国債が減って、その見返りに日銀預け金が増えたことだ。これだけを取り出して考えれば、上記の利回りから、年率で283億円の減となる。これは、貸出が1.5兆円ほど減ったことに相当する。

 貸出は現在約500兆円あるから、この程度の収益減少は問題にならないとも言える。しかし、今後も続けば、次第に無視できない問題となっていくだろう。

 なお、貸出増も含めて、単純に収益の変化を計算すれば、年率で146億円の増となる。

http://diamond.jp/articles/print/42507
 
 


 

 

【第202回】 2013年10月3日 田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]
「消費税来年4月8%」の決定に死角はないか!?
 10月1日、順調な実体経済の動きを示す9月の「日銀短観」が発表され、それを受けて安倍首相は、来年4月から予定通り、消費税率を8%へ引き上げる意向を表明した。

 この決断の最終局面では、オリンピック開催決定と良好な日銀短観の2つが首相にかなりの自信を与えたのであろう。それは記者会見の様子によく表れていた。

 今回の首相の決断には表向き大きな批判や混乱は起きないだろう。最大野党の民主党が主導したこと。経済が復調に向かっていること。首相が決断に際して慎重な手順を尽くしたこと。さらに、首相が財務省に取り込まれていない印象を持たれていること。それらの要因が一体となって効果的に働いている。

 だが、中・長期的観点から見て、この決断に死角はないのか。不安がないのか。それを展望すると必ずしも明るい経済や生活の姿は見えてこない。

消費税増税後の「3つの不安要素」

 いま、不安な要素を3つに大別して考えてみよう。いずれも厳しい見通しと言わざるを得ない。

(1)景気の腰折れ、経済の失速は防げるのか。

 安倍首相は、1997年の消費税率アップ(3%→5%)の経過を綿密に検証したという。なぜなら、その増税後に経済は急失速して、日本経済は15年デフレの道に踏み込んでしまったからだ。

 財務省は97年からの経済危機について、「消費税増税が主犯ではない」と主張し、それを同年7月のアジア経済危機や11月の北海道拓殖銀行、山一証券など大型金融機関の破綻のせいにしている。

 もちろん消費税増税が単独犯ではない。しかし少なくとも最も責任が重い共犯者であったことは否定できない。

 特に、96年の景気の回復基調を過大に評価して、消費税増税だけでなく所得税の特別減税の廃止やサラリーマンの医療費の負担憎などで追い討ちをかけたことが消費を一層冷え込ませることになった。

 また、96年当時と現在との経済状況も大きく違っている。

 震災特需や駆け込み需要などの政策需要が大きかったものの、96年度の実質経済成長率は先進国最高の2.7%に達し、特に現在と比べて民間設備投資の勢いも強かった。

 それでも消費税増税が経済危機の引き金になったのである。97年は2%のアップ、今回は3%のアップ。今後駆け込みが急増し、その反動も覚悟しなければならない。

 思えば、97年増税直後(4〜6月)の実質経済成長率はなんとマイナス3.7%。政府は「一時的なもの」としたが、その後のデフレ経済が定着してしまった。

 問題なのは、このような負担増をはね返すだけの力強い成長力が日本経済や企業に用意されているかどうかだ。安倍首相が成長戦略にこだわってきた理由であろう。

 法人税減税や為替相場、あるいは他国の関税障壁ばかり気にする企業は、それを突破して進む成長力が不足していると疑いたくなる。

(2)経済格差や不公平感が拡大しないか。

 市場経済、特に原理主義的に動くグローバル経済は必然的に経済格差をもたらし、社会は分裂を生む。

 なぜなら、そもそも「経済の動きは人間の気持ちを配慮しない」からだ。冷酷な経済の動きは、人間の幸福や公平さなど全く眼中にない。

 だからこそ、それは政治の役割なのである。

 グローバル経済の進撃で、大都市と地方、大企業と中小企業、あるいは国家間にも経済の格差が拡大し、それが個人間の格差となって多くの人を悩ませている。

 本欄で指摘したが、消費税増税によって平均的な人たちは三重苦(円安物価高、貨幣停滞、税負担増)によって苦しむことになる。

 この苦しさに耐えるためには@耐えた後の明るい展望とA公平な処遇がどうしても必要である。

 格差が拡大しているか、政策が公平、公正であるか、人々の目はその一点に集中している。

(3)税の使途が正しいか。それを信頼できるか。

 実はこれが最大の問題かもしれない。国民的協力を得るためには不可欠だからである。この点で信頼できれば、納税者は歯を食いしばって協力するが、不信感を持てば、首相、内閣を一気に見捨てることになる。財務省としては増税が実現できればそれで満点で、いつものことながら「あとは野となれ山となれ」である。

 菅義偉官房長官が「歴代政権は財務省の言うことに従ってきたが、日本経済はおかしくなってきただけだ」と言ったという(10月2日朝日新聞)が、その通りである。

 使途の問題には2つある。

 1つは消費税法に明文化された通り社会保障のためにだけ使う約束を守るかということ。

 もう1つは、言うまでもなく税金の無駄遣いの根絶の問題。メディアは忘れたようになっているが納税者は忘れないどころか、ますます不満が募っている。

 前回の消費税アップに際しては「行政及び財政の改革状況を点検する」ことが条件であったが、今回はそれがない。いったい、行革に熱心さを装った民主党政権は何であったのか。

 前回も新党さきがけが「行政改革」の明文化を強く要求して実現したのだが、当時の大蔵省はそこに財政の改革を加えることを忘れなかった。

 私は96年10月の総選挙で落選して不覚にも発言権を失った。その後の行政と財政の改革は見るも無残となった。

 行政改革は、省庁の再編という誰も頼まない機構改革でお茶を濁され、財政改革は財政構造改革法まで仕上げながら凍結の事態となった。安倍首相には、96年、97年の轍を踏まないでほしい。

 幸い、安倍官邸と財務省との緊張関係はわれわれに正しい判断を招く期待を抱かせる。

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02. 2013年10月03日 03:53:59 : niiL5nr8dQ
JBpress>海外>Financial Times [Financial Times]
米国は自滅への道を歩むのか
2013年10月03日(Thu) Financial Times
(2013年10月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

米下院、予算不成立で政府機関の閉鎖始まる
米連邦議会は暫定予算を成立させられず、一部政府機関の閉鎖が始まった〔AFPBB News〕

 米国は果たして、きちんと機能している民主主義国なのか? 連邦議会は今週、可決済みの法律を合意済みのタイミングで施行することを認めるのではなく、連邦政府機関の一部を閉鎖することを決断した。

 しかも、話はそこで終わらないかもしれない。もし議会がいわゆる「債務上限」の引き上げを議決しなければ、米国政府債務のデフォルトの引き金を引く危険を冒すことになる。そうなれば、政府機関の一部閉鎖や連邦予算の一律強制削減よりもはるかに深刻な事態だ。

 もしそのような打撃を自国に食らわすつもりが野党側にあるとするなら、民主主義を機能させている節度は失われてしまったことになる。なぜそのようなことになってしまったのか? それによりどんな結果がもたらされるのか? 大統領は何をすべきなのだろうか?

劣悪な医療制度の小幅な改革を巡る大騒動

 最も訳が分からないのは1番目の問題だ。共和党がこのような行動を取っているのは、高所得国の中で最も劣る医療制度の小幅な改革を阻止するためだからだ。

 患者保護並びに医療費負担適正化法(いわゆる「オバマケア」)は、2006年にマサチューセッツ州で当時のミット・ロムニー知事が導入した法律をモデルにしたものだ。3200万人に上る無保険者に医療保険を提供し、既往症がある人でも保険に加入できるようにするのがその目的だが、どうやらそこが問題視されているようだ。

 確かにこのプログラムは複雑だが、欠陥のある制度が改善されることになる。被雇用者の大半が雇用主を通じて医療保険に加入するという現在の仕組みは、被雇用者、特に慢性疾患を抱える人たちが退職の決断を下しにくくなるという意味で、労働市場の流動性を阻害する要因になっているからだ。これは一種の農奴制だ。

 米国の医療制度をほかの主要高所得国と比較してみよう。まず、医療費の国内総生産(GDP)比は米国が18%で最も高く、第2位のフランス(12%)を大きく引き離している。また、公的セクターが支出した医療費のGDP比を見ると、無保険者が多いにもかかわらず、米国のそれはイタリア、英国、日本、カナダを上回っている。

 さらに、米国の1人当たり医療費はカナダのそれをほぼ100%上回り、英国のそれを150%以上上回っている。

 では、このような医療費支出の見返りに、米国は何を得ているのか? 米国の平均寿命は上記の主要高所得国の中で最も短く、乳児死亡率は最も高い。70歳未満の人々の損失生存可能年数もずば抜けて高い。男性の場合、これは戦死などいわゆる非業の死のせいでもあるに違いない。しかし、同じことは女性にも当てはまる。

 ほかの高所得国では当たり前のこととして導入されている国民皆保険を阻止するためなら政府機関の閉鎖も――あるいは政府債務がデフォルトになる危険を冒すことも――辞さないという考え方は正気の沙汰とは思えない。

政府機関閉鎖の影響は限定的だが・・・

 もしかしたらこれは、共和党の一部の議員がどれほどバラク・オバマ大統領を毛嫌いしているかを物語っているのかもしれない。オバマケアに予算をつけないようジョン・ベイナー下院議長(共和党)に求めた議員の半数は、南北戦争以前の南部で選出された人たちだ。

 今回の行動は、彼らの連邦政府嫌いにより一部説明できるのかもしれない。共和党議員はこのプログラムが失敗することではなく、逆に成功して政府の信頼度が高まってしまうことを恐れているのかもしれない、ということだ。

 では、今後どうなるのだろうか? まず、政府機関の一部閉鎖については比較的予測がつくし、以前にも行われたことがある。ゴールドマン・サックスによれば、「今回と同じ規模で最も長期に及んだ政府機関閉鎖は1995年のもので、その時は5日間続いた」。同社の推計では、約80万人の連邦政府職員が自宅待機を強いられるという。

 影響を受けるのは、議会で個別の承認を得たうえで歳出が行われる活動――連邦予算の約3分の1を占める――だけであり、それらの活動の半分強は承認を免除される公算が大きい。免除されない分野では、政府機関閉鎖中の職員の給与は支払われなくなるが、物品やサービスの政府調達のほとんどは、政府機関再開後に履行されるだろう。

 ただ、それでもやはり面倒なことになる。そのため大半のアナリストは、政府機関の閉鎖はあまり長くは続かないと見ている。ゴールドマンの試算によれば、2日間の閉鎖により第4四半期のGDP伸び率(年率換算値)は0.1ポイント押し下げられる。1週間の閉鎖なら0.3ポイントの押し下げになるという。

債務上限が引き上げられなかったらデフォルトも

 次に債務上限について考えてみよう。ゴールドマンによると、上限が引き上げられなければ、財務省は10月17日から債券を発行できなくなり、月末までに現金を使い果たす。財務省の手元資金が底を突き、債務残高を増やすことができなかった場合に何が起きるかという問題を巡っては大きな戸惑いがある。

 楽観的な見方は、財務省は支払いをうまく管理することで、債務の元利払いを含む優先事項には対処できるというもの。だとすれば、デフォルトは起きずに済む。エール大学のジャック・ボルキン教授はまさにそう主張している。

 悲観的な見方は、そのような方法で財務省のキャッシュフローを管理することは違法であり、かつ不可能かもしれない、というものだ。特に、現金収入は大きく変動するためだ。だが、度胸試しのチキンゲームをする財務省は、たとえ事態に対処できると思っていても、悲観的な見解を主張するだろう。

 債務上限を引き上げられなければ、よくても支出の大幅削減が必要になる。最悪の場合、米国はデフォルトする。バンクオブアメリカ・メリルリンチのアナリストらは、債務が上限に達したら、米国は即座に予算を均衡させねばならず、歳出を約20%、GDP比で4%削減する必要が出てくると主張する。そうなれば、米国は再び景気後退に追い込まれる。たとえデフォルトがなかったとしても、だ。

 実際にデフォルトが起きた場合、特にデフォルト状態がしばらく続いた場合の影響は計り知れない。政府機関の閉鎖とは異なり、デフォルトには前例がない。それは、もっともな理由があってのことだ。そんな考えは自殺行為だ。

政権側は譲歩してはならない

 では、政権はどうすべきなのか? 民主主義国においては、人は選挙に勝つことによって法を覆す。政府機関の閉鎖や全面的なデフォルトの脅しで覆すのではない。このような恐喝の脅しを受けている重要国の政府を運営するのは不可能だ。政権は譲歩するたびに自ら困難をさらに抱え込むことになる。譲歩はやめなければならない。

 一部には、「法によって認められた米国の公的債務の有効性は・・・問題にされることはない」と定めた米国憲法修正第14項は、国債償還のための借り入れに必要な権限を大統領に与えると主張する人もいる。だが、そのような大統領の行動はリスクが高い。最高裁は大統領を支持するかもしれないが、憲政の危機そのものが有利な条件で借り入れを行う米国の能力を損ないかねない。

 さらに言えば、1兆ドル硬貨を鋳造して、これを米連邦準備理事会(FRB)で担保として利用するという例の巧妙な提案も、大騒ぎを引き起こす恐れがある。

 確実に無謀な人々を相手にするチキンゲームは、常に恐ろしいものだ。だが、政権は譲歩するわけにはいかない。ウィンストン・チャーチルのように、筆者はなお楽観している。米国は最後には正しいことをする。ただし、ほかの選択肢をすべて使い果たした後のことだが・・・。

By Martin Wolf


03. 2013年10月03日 08:46:06 : exdu8fxPm2
今回の消費税増税にともなう自民党の行動をもっとも分かりやすく説明した言葉は共産党の市田書記局長の言葉である。

「増税によって景気への悪影響が見込まれるので増税により見込まれる増収分を公共事業により支出することにより悪影響を最小限にするということは政策として支離滅裂である。」

自民党の政治家はお頭の程度がこの程度なので何時までたっても官僚と米国の支配から抜け出せない。

物価上昇試算
消費税増税分 3% 日銀によるインフレターゲット 2% 円安による値上げ 1% 合計で6%


04. 2013年10月03日 16:22:39 : iiQfB7imAs
「消費増税決定、財政再建目標達成にリスクも http://mw.nikkei.com/sp/#!/article/DGXNASGV02003_S3A001C1000000/

アメリカ人の端的なウォール・ストーリー・ジャーナルの記事 http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304827404579110282995365514.html もいいが、フィナンシャル・タイムズのこの記事もなかなかいい。

要するに、消費税増税しても全部上手く行けば安倍の言う通りになるという、少しシニカルな英国紳士ということか。


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