01. 2013年10月03日 03:22:34
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【第77回】 2013年10月3日 高橋洋一 [嘉悦大学教授] 消費税増税決定の過去そして未来 安倍首相は、来年4月からの消費税増税を明言した。ツイッターでは、「増税を行えば、消費は落ち込み、日本経済は、デフレと景気低迷の「深い谷」へと逆戻りしてしまうのではないか。最後の最後まで、考え抜きました。 日本経済の「縮みマインド」が変化しつつある。大胆な経済対策を果断に実行し、この景気回復のチャンスをさらに確実なものとするならば、経済の再生と財政健全化は両立しうる。 国の信認を維持し、社会保障制度を次世代にしっかり引き渡す。経済再生と財政再建を同時に進めていく。これが私の内閣に与えられた責任です。……。 大胆な経済対策と消費税の引き上げ。本日決定した経済パッケージは、この両立のベストシナリオである。これが、熟慮を重ねた上での、私の結論です。」 と書かれている。 つまり、経済成長、財政再建と社会保障の三つを満足させる解として、消費税増税と経済対策を実行するとしたわけだ。 民主党政権の誕生が 消費税増税の伏線 この論評は後述するが、最近の消費税増税の動きを整理してみよう。 ことの始まりは、麻生政権だ。増税派の与謝野馨氏が、財務大臣、金融担当大臣、経済財政担当大臣の三閣僚を兼務するなど、重要閣僚だったが、2009年3月に成立した税制改正法の付則104条に「消費税を含めた法制上の措置を2011年度までに講じる」という時限爆弾を潜り込ませた。 その後、国民は、「増税しない。シロアリ(天下り官僚)の退治が先」との民主党マニフェストを信じて、民主党に政権交代させた。 ところが、菅政権では、2010年6月突如として消費税10%宣言が飛び出す。その後、2011年1月にはなんと与謝野氏が入閣する。野田政権で、昨年8月とうとう増税法案を成立させた。その因果なのか、昨年12月の総選挙で民主党は大敗し、あっさりと政権からすべり落ちてしまった。 今回の消費税増税は、2009年の政権交代がなければ、起こらなかったかもしれない。というのは、政権交代がなければ、与謝野氏が民主党政権に荷担して増税路線にもっていくこともなかっただろう。また、自民党政権であれば、与謝野氏の増税一本槍の経済政策とは対極になっていた中川秀直氏の経済重視の上げ潮派がいて、両者は競っていたからだ。 上げ潮派不在が 今回の増税を許した 両者は、ともに財政再建を重視している点は同じであるが、その手法は全く違う。与謝野氏は、経済成長を重視せず、デフレ脱却消極姿勢も容認し、増税による財政再建を目指すが、中川氏は、金融政策を使ってデフレ脱却を図り、経済成長を重視し、その結果として財政再建を達成しようとする。 今の自民党には、中川氏のような経済政策観の政治家はいない。強いていえば、安倍首相の経済成長重視の考え方は中川氏に似ている。さらに、アベノミクスのキモを金融政策に据えたのも、上げ潮と同じだ。それなのに、ここに来て、なぜ与謝野氏の路線になったのだろうか。 その答えは、自民党内に中川氏のような政治家がいないからだろう。もしいれば、安倍首相は、自民党内の与謝野氏のような増税派と中川氏のような経済重視派を競わせて、経済重視の結論を出していただろう。 いくら首相が権限があるといっても、自民党という党を運営していかなければいけない。もし、本当に首相が権限を見せつけるなら、衆院解散・総選挙も辞さない、内閣も党の人事も行うという覚悟でなければいけない。 しかし、衆院が違憲状態になっていてまだ区割り法案も成立していないので、総選挙はやりにくい。内閣改造をやろうにしても、麻生氏を切る覚悟がないとできないが、そこまでの党内基盤は安倍首相にはできていない。というわけで、安倍首相は、政治的に消費税増税を避けられなかったのだろう。増税を止めるためには、法改正をこの秋の国会に提出しなければいけないが、政治的にできなかったというわけだ。 首相の本質がわかるのは 再引き上げ決断のとき 今回の消費税増税が、安倍首相にとっては政治的な解がなく、苦渋の決断としても、経済成長、財政再建と社会保障の三つを満足させる解は、消費税増税と経済対策ではない。 しかも、経済対策では、企業へのてこ入れをそのコアにしているのは、財務省の財政再建至上主義に対抗するためとはいえ、「まずは企業が潤えば、その後に社員の賃金も……」とのいわゆるトリクルダウン説を根拠としており、説得力に欠ける。おそらく財務省に対抗するために経産省に頼ったのだろうが、トリクルダウン説で格差が拡大した韓国の例もあり、一抹の不安を感じざるを得ない。 本コラムで再三指摘しているように、金融政策によって2年後にはデフレ脱却、経済成長が達成できる。その1年後には、基礎的財政収支が改善して、財政再建への道も開ける。と同時に、番号制、歳入庁や消費税インボイスを導入すれば、財政再建を確実にして、社会保障制度の運営も万全にできる(シリーズ日本のアジェンダ第5回も参照)。 今回の消費税増税への表明で、安倍首相の経済政策観が、与謝野氏のような増税派だと決めつけないほうがいい。増税の経済へのマイナス効果を理解しているからこそ、最善の策とは言いがたいが、経済対策を打つのだろう。さらに、本質がわかるのは、2015年10月の8%から10%への再引き上げの時だ。 1日の記者会見では、それを質問されて、安倍首相は「改めて付則第18条にのっとって、経済状況等を総合的に勘案して、判断時期も含めて適切に判断していきたい、決断していきたいと考えています」と述べている。 自民党総裁の任期は3年である。安倍首相は2012年9月に総裁になったので、2015年9月に任期が切れる。総裁選の争点として、消費税増税が浮かぶだろうが、安倍首相が経済成長重視であれば、増税阻止の立場を明確にするだろう。2016年7月に参院選、12月に衆院任期切れになることを考えると、7月にダブル選挙になるだろう。その時には、安倍首相は経済成長重視派の真骨頂がでているだろう。 期待を込めていえば、2014年4月と2015年10月の消費税増税について、@2回ともパス、A2014年4月だけ上げる、B2015年10月だけ上げる、C2回とも上げるという選択肢がある中で、安倍首相は政治的かつ冷静にAを選んだのだと思う。 それまでは、景気の腰を折らないために、財政政策と金融政策をフル稼働させるだろう。先々週の本コラムで述べたように、追加財政政策のための財源はまだ残っている。さらに、3、4日の日銀金融政策決定会合でも、追加金融緩和を行うべきだ。金融政策の効果はすぐには出ずに、本格的な効果発揮までは2年もかかる。その一部はその前に効果が出るが、それでも遅い。その効果ラグを考えると、日銀はすぐに行動すべきである。
【第23回】 2013年10月3日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問] 異次元緩和政策は、国債を当座預金に変えただけ 異次元緩和によって、マネタリーベースは著しく増えたが、マネーストックはそれほど増えなかった。その意味で、異次元緩和は空回りしている。こうなるのは、貸出が増えないからだ。前回と前々回でこのように述べた。では、銀行の資産構成は、異次元緩和によってどのように変化したのだろうか?
以下では、日本銀行の資金循環統計によって、国内銀行の資産の変化を見ることとしよう。 金融緩和で貸出は わずかしか増えず 銀行の資産のうち日銀預け金の残高は、異次元金融緩和政策の結果、2013年4−6月期において、過去に比べて異常なほど増加した。この状況は、図表1に示すとおりだ。 01年に導入された量的緩和政策、10年に導入された包括的金融緩和政策のときにも増えたのだが、導入前に比べて10兆円程度の増加である。ところが、今回は、13年1−3月期から18.5兆円増加している。12年10−12月期からの増加で見ると、28.3兆円増と、これまでの3倍近い増加を示している。今回の緩和措置が「異次元」であると言われたのは、このかぎりにおいては、そのとおりだ。
これは、銀行の資産構成にどのような影響を与えただろうか?(なお、以下で「国債」とは、「国債・財融債」を指す。つまり、国庫短期証券は入らない)。 13年1−3月期からの残高の差を見ると、日銀預け金の増18.5兆円に対して、貸出はわずかに3.3兆円増加したに過ぎない。しかも、増加の傾向が鈍化している。つまり、これまでと比べて、増加額が減少している。 金融緩和をしたのだから、貸出はピッチを上げて増えていなければならないはずだ。しかし、現実には逆のことが起きているのだ。したがって、教科書的な意味での信用創造過程は生じていないと結論できる(なお、ここでは銀行勘定だけを見ている。銀行勘定と信託勘定の合計では、前回見たように貸出は減少している)。 また、貸出増自体は、11年1−3月期から続いていることに注意が必要だ。異次元金融緩和政策は、貸出増を加速したわけではなく、むしろ、これまで生じていた増加を抑えたことになる。 同様のことは、量的緩和のときにも生じた。すなわち、図表2に見るように、貸出ストックは、金融緩和措置の導入にもかかわらず、05年4−6月期まで減少を続けた。なお、包括的金融緩和の際には増加した。 金融緩和をしても貸出が顕著に増えないのは、資金需要がないことが基本的な理由であるが、企業の内部資金が潤沢で、借入に依存する必要がないからである。とくに製造業においてこの傾向が著しい。
こうした経済で金融緩和で経済を活性化しようとしてもできないのは当然のことだ。 なお、国債は、1−3月期に比べて19.5兆円減と、顕著に減少した(図表3参照)。これは、言うまでもなく、買いオペによって日銀が銀行保有国債を買い上げたからだ。今回のような急激な現象は、過去には起こらなかった現象だ。 銀行資産構成の変化
2013年1−3月期から4−6月期の総資産中での比率の変化を見ると、国債が2.2%ポイント減少し、貸出が0.4%ポイント減少し、当座が1.7%ポイント増加した。 各々の資産について、00年1−3月期からの比率の推移を見ると、つぎのとおりだ。 (1)日銀預け金:異次元緩和で歴史的最高値に 総資産中の日銀預け金(当座預金)の比率は、量的緩和以前には総資産の1%未満であったが、量的緩和政策の導入によって、01年7−9月期からは継続的に1%を超えるようになった(図表4参照)。そして、03年1−3月期以降は3%を超えることが多くなった。しかし、量的緩和政策の終了に伴い、06年4−6月期からは1%程度になった。 10年からの包括的金融緩和によってこの比率は上昇したが、2%程度までであった。つまり、当座預金の比率という点から見れば、包括的緩和政策は量的緩和政策よりは穏やかな政策であったと言える。
ところが、この比率は13年1−3月期に3%台に上昇した。そして、13年4−6月期には、4.9909%と、ほぼ5%になったのである。この比率は歴史的に見て最高の比率である。 (2)貸出:金融政策に関係なく徐々に低下 総資産中の貸出の比率は、00年1−3月期には、67%だった(図表5参照)。そして、量的緩和政策の導入後は、この比率が上昇するのではなく、むしろ穏やかな低下を続けた。05年10−12月期には、55%というボトムに達した。 量的緩和政策終了後、この比率は下がるのではなく、若干ではあるが上昇した。そして、08年1−3月期には、59%になった。08年7−9月期には60%を超えた。
これまでも述べてきたように、貸出は金融緩和で増大するのではなく、他の要因によって経済活動が活性化することによって増大するのである。いま見た数字は、このことを明確に示している。 貸出の比率は、リーマンショックの影響で、08年10−12月期には低下した。ただし、それほど急激なものではなかった。そして、早くも、09年1−3月期には、前期より上昇している。 ただし、比率はその後徐々に低下した。この傾向は金融緩和政策の導入によっても変わることはなかった。そして、13年1−3月期に5割を割り込み、13年4−6月期には49.4%となった。 総じて言えば、総資産中の貸出の比率は、06年1−3月期から08年1−3月期までを除けば、傾向的に低下していると言える。そして、例外期間が金融緩和期ではなく、金融緩和が停止されていた期間であったのは、誠に皮肉なことだ。 (3)国債・財融債:新規国債発行が増えると金融緩和が要求される 総資産中の国債・財融債の比率は、量的緩和導入によって、むしろ上昇した(図表6参照)。これは、日銀買いオペ額よりも、新規国債の発行額が多かったことを示している。この結果、04年1−3月期から04年7−9月期にかけては、比率が1割を超えた。 しかし、量的緩和終了で比率は低下した。というより、景気回復で新規国債の発行額が減少したために、比率が低下したのである。
しかし、10年4−6月期頃からは、比率は傾向的に上昇している。これは、リーマンショック後の税収の減と09年からの民主党政権の支出拡大によって、新規国債の発行が増えたからである。そして、10年10−12月期に比率は10%を超えた。包括的緩和政策が導入されたのは、このように国債の保有比率が高まったからだと思われる。 そして、日銀の買いオペが増えたために、国債の保有比率は12%台で頭打ちとなった。 しかし、量的緩和政策によってこの比率は急激に低下して、約10%となり、包括的緩和政策導入以前の水準に戻った。 このように、(今回を除けば)資産中の国債率は、「金融緩和で日銀買いオペが増えると低下し、緩和が停止されると上昇する」という常識的な動きを示していない。実際の動きは、上で見たように、「金融緩和期と比率上昇が対応し、停止期と比率低下が対応している」ことが多い。 これは、金融緩和政策の発動が、経済活動のコントロールよりは財政ファイナンスを目的として行なわれているからだと解釈できる。つまり、財政事情が悪化して国債発行が増えると金融緩和が発動されて買いオペが行なわれて、市場の供給圧力を軽減する。財政事情が好転して国債発行が減ると、金融緩和が停止される。 金融緩和の導入によって資産中の国債比率が低下したのは、今回の緩和の特徴である。 金融緩和は銀行の 収益性を悪化させる 2010年10−12月期頃からは、国債残高も貸出残高も増えていた。つまり収益性資産が増加していたのだ。 しかし、13年4−6月期には国債が減り、貸出増の勢いが鈍化したので、銀行の収益性は低下している。では、どの程度の変化があったろうか? 次のように考えることができる。 国債の利回りは償還までの期間に依存するが、ここではそれを5年と仮定しよう。現在5年国債の利回りは0.24%である。他方、日銀当座預金の超過準備部分に対しては、0.1%の付利がなされる。ここでは、今回の買いオペによって増加する当座預金はすべて超過準備になるものとしよう。 また、日本銀行の「貸出約定平均金利の推移」によれば、13年7月で国内銀行の貸出平均利回りは、総合で1.3%である。 他方、資産の変化は、すでに述べたとおり、下記のとおりであった。 日銀預け金 18.5兆円増加 貸出 3.3兆円増加 国債 19.5兆円減少 問題は、国債が減って、その見返りに日銀預け金が増えたことだ。これだけを取り出して考えれば、上記の利回りから、年率で283億円の減となる。これは、貸出が1.5兆円ほど減ったことに相当する。 貸出は現在約500兆円あるから、この程度の収益減少は問題にならないとも言える。しかし、今後も続けば、次第に無視できない問題となっていくだろう。 なお、貸出増も含めて、単純に収益の変化を計算すれば、年率で146億円の増となる。 http://diamond.jp/articles/print/42507
【第202回】 2013年10月3日 田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授] 「消費税来年4月8%」の決定に死角はないか!? 10月1日、順調な実体経済の動きを示す9月の「日銀短観」が発表され、それを受けて安倍首相は、来年4月から予定通り、消費税率を8%へ引き上げる意向を表明した。 この決断の最終局面では、オリンピック開催決定と良好な日銀短観の2つが首相にかなりの自信を与えたのであろう。それは記者会見の様子によく表れていた。 今回の首相の決断には表向き大きな批判や混乱は起きないだろう。最大野党の民主党が主導したこと。経済が復調に向かっていること。首相が決断に際して慎重な手順を尽くしたこと。さらに、首相が財務省に取り込まれていない印象を持たれていること。それらの要因が一体となって効果的に働いている。 だが、中・長期的観点から見て、この決断に死角はないのか。不安がないのか。それを展望すると必ずしも明るい経済や生活の姿は見えてこない。 消費税増税後の「3つの不安要素」 いま、不安な要素を3つに大別して考えてみよう。いずれも厳しい見通しと言わざるを得ない。 (1)景気の腰折れ、経済の失速は防げるのか。 安倍首相は、1997年の消費税率アップ(3%→5%)の経過を綿密に検証したという。なぜなら、その増税後に経済は急失速して、日本経済は15年デフレの道に踏み込んでしまったからだ。 財務省は97年からの経済危機について、「消費税増税が主犯ではない」と主張し、それを同年7月のアジア経済危機や11月の北海道拓殖銀行、山一証券など大型金融機関の破綻のせいにしている。 もちろん消費税増税が単独犯ではない。しかし少なくとも最も責任が重い共犯者であったことは否定できない。 特に、96年の景気の回復基調を過大に評価して、消費税増税だけでなく所得税の特別減税の廃止やサラリーマンの医療費の負担憎などで追い討ちをかけたことが消費を一層冷え込ませることになった。 また、96年当時と現在との経済状況も大きく違っている。 震災特需や駆け込み需要などの政策需要が大きかったものの、96年度の実質経済成長率は先進国最高の2.7%に達し、特に現在と比べて民間設備投資の勢いも強かった。 それでも消費税増税が経済危機の引き金になったのである。97年は2%のアップ、今回は3%のアップ。今後駆け込みが急増し、その反動も覚悟しなければならない。 思えば、97年増税直後(4〜6月)の実質経済成長率はなんとマイナス3.7%。政府は「一時的なもの」としたが、その後のデフレ経済が定着してしまった。 問題なのは、このような負担増をはね返すだけの力強い成長力が日本経済や企業に用意されているかどうかだ。安倍首相が成長戦略にこだわってきた理由であろう。 法人税減税や為替相場、あるいは他国の関税障壁ばかり気にする企業は、それを突破して進む成長力が不足していると疑いたくなる。 (2)経済格差や不公平感が拡大しないか。 市場経済、特に原理主義的に動くグローバル経済は必然的に経済格差をもたらし、社会は分裂を生む。 なぜなら、そもそも「経済の動きは人間の気持ちを配慮しない」からだ。冷酷な経済の動きは、人間の幸福や公平さなど全く眼中にない。 だからこそ、それは政治の役割なのである。 グローバル経済の進撃で、大都市と地方、大企業と中小企業、あるいは国家間にも経済の格差が拡大し、それが個人間の格差となって多くの人を悩ませている。 本欄で指摘したが、消費税増税によって平均的な人たちは三重苦(円安物価高、貨幣停滞、税負担増)によって苦しむことになる。 この苦しさに耐えるためには@耐えた後の明るい展望とA公平な処遇がどうしても必要である。 格差が拡大しているか、政策が公平、公正であるか、人々の目はその一点に集中している。 (3)税の使途が正しいか。それを信頼できるか。 実はこれが最大の問題かもしれない。国民的協力を得るためには不可欠だからである。この点で信頼できれば、納税者は歯を食いしばって協力するが、不信感を持てば、首相、内閣を一気に見捨てることになる。財務省としては増税が実現できればそれで満点で、いつものことながら「あとは野となれ山となれ」である。 菅義偉官房長官が「歴代政権は財務省の言うことに従ってきたが、日本経済はおかしくなってきただけだ」と言ったという(10月2日朝日新聞)が、その通りである。 使途の問題には2つある。 1つは消費税法に明文化された通り社会保障のためにだけ使う約束を守るかということ。 もう1つは、言うまでもなく税金の無駄遣いの根絶の問題。メディアは忘れたようになっているが納税者は忘れないどころか、ますます不満が募っている。 前回の消費税アップに際しては「行政及び財政の改革状況を点検する」ことが条件であったが、今回はそれがない。いったい、行革に熱心さを装った民主党政権は何であったのか。 前回も新党さきがけが「行政改革」の明文化を強く要求して実現したのだが、当時の大蔵省はそこに財政の改革を加えることを忘れなかった。 私は96年10月の総選挙で落選して不覚にも発言権を失った。その後の行政と財政の改革は見るも無残となった。 行政改革は、省庁の再編という誰も頼まない機構改革でお茶を濁され、財政改革は財政構造改革法まで仕上げながら凍結の事態となった。安倍首相には、96年、97年の轍を踏まないでほしい。 幸い、安倍官邸と財務省との緊張関係はわれわれに正しい判断を招く期待を抱かせる。 ◎「田中秀征の民権塾」第13期10月開講のお知らせ◎ 田中秀征氏が主宰する民権塾の第13期が10月に開講します。詳細・お申込みは民権塾のホームページをご覧ください。 |