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2013年10月 2日 植草一秀の『知られざる真実』
1996年6月25日、橋本龍太郎政権は、消費税率を2%引き上げる方針を
閣議決定した。
国会では住専問題処理のために6850億円の公的資金を投入するかどうかを
めぐって紛糾した直後だった。
国会は6月19日に閉会した。
橋本政権は、住専国会終了で与野党攻防に間隙ができたタイミングを狙って
消費税増税方針の閣議決定を行ったのである。
日経平均株価は翌日の22,666円をピークに下落に転じた。
1990年にバブルの崩壊が始まって以来、日本経済は長期低迷に苦しんだ。
日経平均株価は92年8月18日には14,309円に下落。
その後、景気対策が発動されると株価反発、経済浮上が生じたが、93年は
冷夏などの影響で、94年は日銀が早すぎる金融引締め政策に進もうとして
経済を暗転させた。
日本経済がバブル崩壊後の不況を克服するたしかな手ごたえを得たのが95年
から96年にかけてであった。
95年の円高局面で日銀が政策を大転換し、金融緩和政策を強化した。
村山政権は14兆円の景気対策を決定し、財政金融政策総動員のスタンスを
明示した。
政策総動員によって日本経済の方向は好転し、96年に日本経済はバブル崩壊
後、初めて明確な回復軌道を実現させつつあった。
私は、96年の最重要の経済政策問題が消費税増税問題になると判断し、
消費税増税問題が日本経済再悪化の引き金となる事態を回避しなければ
ならないと考えた。
97年度の増税が日本経済の浮上を破壊してしまう可能性を憂慮し、
これを回避するための政策提言を展開したのである。
1996年6月に刊行された東洋経済新報社『論争』96年7月号に、
「財政再建最優先論に異議あり」
と題する論文を発表した。
ここで提示した政策提言は、1997年度の財政緊縮策を消費税率の
1%引上げのみに留めよというものだった。
この施策によるデフレ効果は2.5兆円=GDP比0.5%である。
この程度の財政緊縮であれば、日本経済の回復基調を破壊しないと
判断した。
私が論文でもっとも強い警告を発したのは、日本経済の地下に巨大な
不良債権問題のマグマが潜んでいることだった。
行き過ぎた緊縮政策を強硬実施すれば、株価下落=経済悪化を通じて、
不良債権問題を一気に爆発させてしまう。この問題に最大の警戒を払う
ことが最重要であることを訴えた。
しかし、橋本政権はこの道を選ばなかった。
橋本政権が97年度に実施した政策は、消費税5兆円増税、
所得税2兆円増税、社会保障負担2兆円増大、公共事業削減4兆円だった。
合計13兆円のデフレ政策を実行したのである。
この結果、96年6月26日に22,666円だった株価は下落に転じ、
98年10月9日には12,879円にまで暴落した。
そして、97年秋の三洋証券、山一證券、北海道拓殖銀行の破綻、
98年の日本長期信用銀行、日本債券信用銀行の破綻が生じていった。
懸念通りの金融大波乱が生じたのである。
株価は96年6月26日から下落に転じていた。
私は当時執筆した『金利・為替・株価週報』に、22,666円の株価が
「666」であり、地獄への転落を暗示していることを記述した。
「666」とは、ヨハネの黙示録に出てくる悪魔の数値なのである。
96年10月20日の総選挙を経て、96年12月に橋本政権は13兆円
のデフレ政策を予算に盛り込んだ。
この政策決定を受けて、日経平均株価はついに2万円を割り込んだので
ある。
97年年初、日経平均株価は1月7日から1月10日にかけて急落した。
NHKは急遽、『クローズアップ現代』でこの問題を取り上げた。
私はこの番組のインタビュー取材に応じた。
そのなかで、株価下落の主因が橋本政権の行き過ぎた緊縮財政にあること
を説明した。株価は96年6月の増税閣議決定から始動していること、
96年12月に超緊縮政策を予算案として決定したことから日経平均株価
が2万円を割り込んだことなどを説明した。
しかし、放映されたVTRには、私の発言の核心はすべてカットされて
いた。
『クローズアップ現代』は、橋本政権が財政改革で緊縮財政政策を推進
しているなかで、これに抵抗する勢力が新幹線予算に調査費を計上した
ことだけを大きく取り上げ、財政構造改革に対抗する力が表面化したこと
が株価下落の原因になったとのトーンで制作された。
NHKは私の主張を一切紹介せず、橋本緊縮財政を全面支援する番組を
制作しただけのことなのだ。
私をVTRに出演させたのは、橋本緊縮財政に反対の論者にも意見を
聞いたとの「アリバイ」を作るためだけだったのだと思われる。
この図式と、今回の安倍政権による増税決定は酷似している。
安倍晋三氏は10月1日に記者会見を行い、2014年4月に消費税率
を現行の5%から8%に引き上げることを表明した。
既定路線である。
安倍氏の判断は揺れ動いた。
増税圧縮ないし、先送りを検討したが、財務省に押し切られて、
当初の設定どおりの増税実施方針を示した。
この決定が安倍政権の致命傷になると思われる。
重要なことが二つある。
ひとつは、増税先送りを示唆しておきながら、増税を当初設定どおりに
実施することを決定したことが、政治的センスとして最悪であること。
不人気の政策を実施する場合には、ブレ=揺らぎを示すべきでない。
失望が増幅されるからである。
いまひとつは、2014年度の財政デフレの規模を完全に読み誤っている
ことだ。
2012年度末に編成した13兆円補正予算の効果が計算のなかに
含まれていない。
財務官僚は、法律と行政に詳しいが、算数が出来ないのだと思われる。
2014年度の財政デフレの規模は、メディアが伝える規模ではない。
メディアは、9兆円の負担増だとするが、これはまったく違う。
安倍政権は5兆円の経済対策を決定する。
9兆のデフレ政策で5兆の景気対策を実施すれば、デフレ効果は4兆円
になる。日本のGDP比1%弱のデフレ政策なら、日本経済を根底から
破壊することはないだろう。
しかし、現実は違う。
2014年度は、13兆円の補正予算剥落効果が加わるため、落差が
22兆円に達するのである。
ここに5兆円の景気対策を注いでも、デフレ政策の規模は17兆円
にしか縮小しない。GDP比3%を超す「財政の絶壁」になる。
安倍政権2012年11月から2013年5月にかけて浮上できた
理由は、財政金融政策を総動員したことにある。
1995年から96年にかけての日本経済浮上と同じメカニズムだ。
ところが、96年6月に橋本政権が消費税増税方針を閣議決定してから、
流れが変わった。
為替レートは95年4月の1ドル=80円から円安・ドル高に転換し、
これが97年まで持続したが、株価は96年6月から下落に転じた。
今回、昨年11月からドル高=円安が進行して、
連動して日経平均株価が8664円から15,627円に上昇した。
しかし、安倍政権は10月1日に消費税増税を決定した。
『金利・為替・株価特報』では、すでに2013年9月30日号で、
安倍政権の超デフレ政策決定により、日本株価が反落する可能性が高い
ことを警告した。
日経平均株価は9月26日に14,799円を記録して以来、下落に
転じている。
このことは、9月29日付ブログ記事
「「絶好調」全開安倍政権に巨大な暗雲が迫りつつある」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2013/09/post-0ae3.html
に記述した。
安倍政権は2013年度に執行された13兆円の2012年度補正予算
の効果で、株価上昇、経済浮上の効果を引き出したのである。
そのことを忘れて、2014年度に超巨大デフレ政策を実施するのでは、
何の意味もない。
私は警告する。
現在の安倍政権の経済政策を修正せずに実施するなら、日本経済は
再崩落する。
株価は大幅反落することになるだろう。
為替は米国長期金利に連動するから、円高に回帰するとは限らない。
96年は円安なのに株価が下落した。
このことが再現されるかも知れない。
マクロの財政政策運営で一番大切なことは、足し算引き算である。
財政収支を前年度に対してどれだけ変化させるのかが、財政刺激、
財政緊縮の規模を示す。
2013年度に13兆円の真水が追加投入されていることを踏まえると、
2014年度の9兆円の負担増は22兆円のデフレ政策になることは、
小学1年生以上の足し算引き算が出来る人には、容易に推察できること
なのである。
しかし、財務省はこうした足し算引き算が出来ないらしい。
この点を踏まえて、足し算引き算の観点から政策の誤りがないように
指導力を発揮するのが内閣総理大臣の一番大切な役割だ。
残念ながら、安倍首相はその指導力を示していない。
デフレ脱却を掲げる政権が史上空前のデフレ政策を強硬推進するのは、
一種の喜劇=ブラックユーモアかも知れない。
日本政治の流れは2013年10月1日をもって、大きく旋回すること
になる可能性が高い。
http://blogs.yahoo.co.jp/hellotomhanks/64197357.html
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