http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/770.html
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タイトルが虚しいものになりかけているが、安倍首相が最終的に増税実施を表明するまでは使わせてもらう。
そう言いつつ、増税実施はそれでも愚かな判断だが、ほんとうに来年4月の消費税増税を実施すると決めたのなら、その背景を推測してみよう。
● 「政治的にあれだけの苦労をして手に入れた消費税増税チャンスをみすみす逃すという愚は犯したくない」
● 「建前は3%増税のうちの2%を使う5兆円規模の経済対策だが、100兆円に近い本予算の肥大化を合わせて考えれば、消費税増税額を上回る財政出動だから、景気の腰折れはなんとかしのげるはず」、
● 「今は円安基調だが、デフレが続く限り円高基調に戻る可能性が高い」
●「3%の増税で経済がおかしくなったら、15年の2%増税をやめればいい」
といったものが考えられる。
(陰謀論的に言えば、弱小企業は倒産してもかまわないという企業集約化(=社会主義化政策)の思惑を上げることもできる)
しかし、推測が当たっているのなら、そのような考えは浅知恵の極みだと言いたい。
(その1)で書いたが、消費税増税を放棄する必要はなく、条件を明示しておけば与党が多数派である限り、半年後の消費税増税は可能である。
財務省の官僚たちが居直るなら、予知能力もなく、民主制の束縛で機動的な政策化もできないのだから、できるときにやるしかないと言うかもしれない。
今回の投稿の本題である経済対策の有効性は後ほど触れることにする。
円高基調に戻る可能性は、デフレが続く限り高い。
外国為替レートは、中長期的にはインフレ率の差に規定され、インフレ率が低いほうの通貨が高くなるからである。
しかし、2%のインフレ達成を主目標とする「異次元の超金融緩和」策を実施しているのだから、ディスインフレ状況にある米国やユーロ圏との比較で考えれば、円高には転換しないはずである。
「異次元の超金融緩和」策が物価上昇を確実にするとは考えていないが、円高を嫌うのなら、財政出動など、米国やユーロ圏よりも高いインフレ率を確実に達成する政策を実施すべきである。
来年4月の消費税増税はせっかく手に入れた機会だから実施し、経済状況がおかしくなったら、再来年10月の消費税増税はやめればいいという考えは最悪である
来年4月の増税そのものを遡及的にやめるのならいざ知らず、消費税増税の影響は、デフレと同じように、スパイラル的に深化するものだからである。消費税増税で利益が減少し、そのために、人件費を減らそうとし投資を諦めるという流れだからである。
覆水盆に返らずどころでなく、むろん第2弾をやらないほうがいいことはいいが、いったん動き始めた悪循環は第2弾のあるなしにかかわらず深く広く進行する。
肝心要の「経済対策」と「減税政策」について説明したい。
まず、わかりやすい「減税政策」のほうから取り上げる。
2兆円規模とされる「減税政策」には、投資減税や賃上げ減税など企業の事業活動をある方向に向けさせる目的誘導型の減税とただそのまま特定に企業に利益を供与する減税とがある。
住宅ローン減税(1100億円)も、特定の家計を支援することを通じて不動産ディベロッパーや建設業を支える政策だから、ある種の目的誘導型減税策と言っていいだろう。
目的誘導型の「減税策」は、そのような活動をしない企業には適用されないのだから、国民経済を歪めるものではなく、政策手段としての税制を活用して国民経済を再生する機能を果たすものと考えることができる。
9千億円といわれる復興特別法人税を引き剥がすかたちでの法人税税率の引き下げ策だが、これはあまりにスジが悪い。安倍首相は、それによって設備投資や賃上げが実現できると強弁しているが、その保証はまったくない。
それは、12年度3月の決算でグローバル企業が法人税収見込み額を2兆円ほど上回るほど大幅な利益増加を実現していながら、賞与に反映されるだけでベースアップを行わず、未だ本格的な設備投資増大の動きもないことからもわかる。
何より、02年から07年まで続いた戦後最長の景気高揚期においても、賃金水準は下がり続け設備投資も低迷したままだった歴史的経緯を考えれば、有力企業に利益を残す政策を採ったからと言って、安倍首相の思いが実現される保証はないとわかる。
現状での法人税税率引き下げ政策は、円安で膨らんだグローバル企業の利益を内部留保ないし配当のために残すためのものでしかなく、仮に来年4月に消費税増税を実施するとしたら、消費税増税によってさらにいっそう膨らむグローバル企業の利益をより多く彼らの手元に残すためだけの政策と言わざるをえない。
5兆円規模の「経済政策」の有効性とも関わる問題だが、消費税制度が抱える宿痾は深く重い。
消費税制度は、税を通じて内需企業から輸出企業への付加価値の移転を行うものである。
説明するまでもなく、日本を代表する有力企業はみな輸出企業であり、消費税制度を通じて、よその企業(事業者)が稼いだ付加価値を貰い受けている。
恐ろしい現実は、消費税を負担するどころか消費税から利益を受ける立場でありながら、消費税負担の転嫁と称して販売価格をもっともスムーズに引き上げられる立場がグローバル企業だということだ。
家電業界は苦しいだろうが、自動車業界は、これまでの価格に3%を上乗せした価格でディーラーに卸すだろう。
輸出有力企業は、消費税増税でこれまでより多い付加価値の移転を受けるだけでなく、販売価格も消費税増税分という名目で引き上げて付加価値の増収を達成するのである。
この現実をマクロ経済的に考えれば、来年の総需要額が今年と変わらない場合、有力企業の“消費税転嫁”により一定部分が食われてしまうことを意味する。
内需型の全てとは言わないが、価格競争力に乏しい事業者は、それによって減った需要をなんとか自分のものにしなければならない。でこぼこはあるが、平均すれば、稼ぐ付加価値額は減少する。そうでありながら、消費税増税のために、これまで以上の率で付加価値を税として吸い上げられることになる。
ざっくり言えば、稼ぐ付加価値は減る一方で、税金として納付させられる付加価値の割合は増加することになる。
経営に余裕がある事業者ならそれでも最終利益を減らすだけ済むが、ぎりぎりの経営を続けている事業者は、賃金を切り下げるか、事業を畳んでしまうしかない。
「経済対策」には、「停所得者向け現金給付」3千億円という政策もあるが、年金や生活保護費に対して行われている減額措置の総額にも満たないレベルだから、総需要を維持することさえままならない。
住宅購入者向けの現金給付は、住宅を購入できるだけの余裕がある家計に援助金を与え、住宅関連企業の需要を維持するというものだが、97年消費税増税以降の住宅需要の持続得的な低迷を考えれば、需要減をできるだけ少なくする役割しかなく、総需要を維持することさえままならない。
明示されている「経済政策」で残っているのは、およそ3.3兆円の公共投資である。
これは、建設業の雇用増大や賃金引き上げの誘引する政策であり、総需要の増加に寄与する可能性がある。ただでさえ人手不足で事業が実行できない状況にある公共投資に予算を上乗せするのだから、労働力の需給がタイトになることで賃金が上昇し、事業費も膨らむのは確かである。
建設業での雇用増大は、失業率が4%を切りかけている現状では他業種の賃上げを誘導する可能性も高く、この政策のみがアベノミクス的観点で言えば有効性があると言える。
今年度の補正予算、来年度の本予算、来年度の補正予算を合わせると、消費税増税で見込んでいる消費税税収(念のため税収全体ではない)8兆円のおそらく2倍以上の財政支出に動くはずである。
それでも、消費税制度に深く根ざした宿痾を消すことはできないのである。
※ 参照投稿
「安倍首相(財務省)が消費税増税を延期するワケ(その1)」
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/757.html
「首相、消費税8%方針表明…閣議で正式決定へ:アホな決定がそのままなら日本経済は奈落に向かうことになる」
http://www.asyura2.com/13/senkyo154/msg/455.html
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