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安倍首相(財務省)が消費税増税を延期するワケ(その1)
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/757.html
投稿者 あっしら 日時 2013 年 10 月 01 日 04:05:32: Mo7ApAlflbQ6s
 


 今日の夕方まで安倍首相の判断は見えないが、来年4月に予定されている消費税の3%増税は、十中八九、延期になるだろうと思っている。

 消費税増税が延期になると判断した根拠として次の二つをあげることができる。
 一つは安倍首相の言動であり、もう一つは、財務省官僚たちに対する一定程度の信頼である。

 そう思いつつも、消費税が増税される不安が“十中一二”あるから、日本の多数派をドツボに嵌めてしまう今回の消費税増税をなんとしても延期してもらいたいと願い投稿している。

■ 消費税増税延期を示唆し続けてきた安倍首相

 来年4月の消費税増税を見送る気配を見せてきた安倍首相の言動については、これまでも何度か説明してきたがここでざっとまとめてみたい。

 内閣総理大臣就任以降とりわけこの春からの安倍首相の言動を検証すれば、安倍首相が来年4月の消費税増税に極めて慎重な立場であることがわかる。だからこそ、安倍首相が来年4月の消費税増税についてどういう結論を出すかということが政局の中心になってきたとも言える。

 安倍首相は、就任以来、デフレから脱却し、日本経済を成長の軌道に乗せることが自分の使命だと熱く強く語ってきた。また、今回がデフレ脱却の最後のチャンスかもしれないという悲愴な覚悟さえ示してきた。
 安倍首相は、むろん財政健全化の必要性も語ってきたが、財政健全化を最優先の政策課題として語ったことはない。あくまでも、“財政健全化も”であり、アベノミクスの第2の矢である「機動的な財政出動」を考えれば、財政赤字や累積債務の一時的な増加も厭わない「デフレ脱却→経済成長回復→財政健全化」という道筋を選択していることがわかる。

 消費税増税実施の可否をめぐる発言で何より重要なポイントは、97年の消費税増税以降の税収推移を持ち出して、「消費税の増税が必ずしも税収全体の増大につながるわけでない」と説明していることである。

 主要メディアが首相のこの重大な発言について検証しようともしないことには驚かされるが、安倍首相は、4月17日の国会での民主党代表海江田氏との党首討論以降、7月の参議院選挙公示直前に行われた記者クラブ主催の党首討論会でも、さらには、9月17日収録のテレビ朝日との最新インタビューでも、消費税増税の目的が税収の増加であることを確認しつつ、消費税増税が税収全体の増加につながらない可能性に言及する「増税無効論」を語っている。

 「増税無効論」は、89年消費税導入後の24年間の財政史を顧みれば、至極もっともな結論であり、消費税増税問題で発言するものなら避けて通ることができないポイントでもある。

 日本の税収は、90年の60.1兆円をピークに低落傾向を続け、97年の消費税増税までは50兆円台を維持していたものの、消費税増税の翌年98年以降、00年と09年を除き、40兆円台という低水準での低迷を続けている。

(90年・91年は税収的に株式及び土地のバブル末期であり、90年と91年の所得税税収は89年に較べ5兆円ほど増加している)

 消費税を増税しても必ずしも税収全体が増大するワケではないという「増税無効論」は、97年の消費税増税が日本経済をデフレに陥れるトリガーになったという大問題を持ち出さずとも、財政健全化や社会保障制度の持続性という目的に叶うものではないということで消費税増税政策を排除するものである。

 それはともかく、安倍首相(財務省)が来年4月にどうしても消費税増税を実施したいと考えているのなら、今さら語る必要がない、それどころか、“やぶ蛇”にさえなりかねない「増税無効論」をわざわざ持ち出すことなぞないはずである。
 是が非でも消費税増税を断行すると考えているのなら、「消費税増税法案」はとっくに成立しているのだから、“見掛け”の景気の良さを理由に法律通り実施すると表明してしまえば済むことである。

 ともかく、安倍首相のこれまでの言動から、安倍首相が、経済成長を確実に下押しする一方で全体の税収が増えるかどうかさえ定かでない消費税増税に日本の行く末を賭けていないことは明瞭である。

■ 消費税増税の真の目的や消費税の内実を知れば見えてくる消費税増税延期の背景

 仮に、安倍首相が夕方の会見で消費税増税の延期を表明するとしても、将来にわたって消費税増税を放棄するわけでも、延期の理由を本音で語るわけでもない。

 延期の理由は、「今の日本にとってデフレから脱却し経済を成長軌道に乗せることが何よりも重要であり、財政の健全化にとっても、中長期的に考えればそのほうが近道であると考え、来年4月の消費税増税をとりあえず見送ることにした」といったものになるだろう。
 来年4月の消費税増税は延期するとしても、消費税増税という重要な政策カードは確保しておきたいと財務省が考えているからである。
 延期表明時に、「消費税の増税は、デフレからの脱却をなし遂げたのちに行う」と踏み込んだ発言まですれば“ベスト”と言えるかもしれない。

 今回の投稿は、説明されることのない消費税増税延期の“真意”を推測することを通じて、消費税増税政策の息の根を止め、消費税制度そのものの廃止に資することができればという思いで行っている。

 安倍首相(財務省)が来年4月の消費税増税を延期するという“確証”は、「消費税増税を決断!」という報道と軌を一にするように、法人税実効税率の引き下げが政策テーマとして浮上してきたことで得た。

 スケジュール通りに消費税増税へと突き進むのであれば、昨年すでに消費税増税を見越し先行して23.71%まで引き下げている法人税税率をどたばたで引き下げるような政策を持ち出すことはしないはずである。しかも、引き下げが復興増税分の2.37%というのもあまりにスジが悪い話だ。
 このようなきわどい政策まで繰り出して消費税増税に踏み切ったあげく、97年増税の二の舞ということになれば、安倍政権は間違いなく来年いっぱいでお役ご免になるだろう。


 巷間、消費税は、国民各層が広く薄く公平に負担する間接税と説明され、消費税増税は、国債発行が税収を上回るほど悪化してしまった財政を立て直し、社会保障制度の維持・拡充をはかるために行われると説明されている。

 これまで何度も説明してきたように、そのような説明はデタラメでインチキでしかない。

 そして、消費税増税の是非をめぐる議論も、「財政優先か、景気優先か」といった核心からずれた論点で行われている。学者や有識者と称する経済や財政の専門家たちが「財政か、景気か」と真顔で論争しているが、その問いへの答えは、現状の日本での消費税増税は財政にも景気にも悪影響を与えるというシンプルなものになる。

 税収の低迷は名目の経済成長の低迷を反映したものであり、名目の経済成長が続けば税収の増大も続く。税収増加と名目経済成長は一体であり、税収を犠牲にして名目の経済成長を達成することも、名目の経済成長を犠牲にして税収が増えるということもない。

 また、消費税(増税)反対派の多くは、消費税の逆累進性から低所得者への打撃を問題として大きく取り上げている。
 その通りでそれを理由に反対することも意義があると思っているが、その問題は、低中所得者に対し目減りする実質可処分所得を補償すれば解決できることなので、消費税問題の核心とは言えない。

 消費税は“別種の法人税・所得税・輸入関税”であり、消費税の増税は、付加価値配分を歪めるだけで、デフレないしディスインフレが基調の低成長下では税収を増大させることさえない。

 消費税が“別種の法人税”というのは、最終利益に課される法人税とは異なり、最終利益の有無に関係なく「営業利益+総人件費」(減価償却費関連は別)に課されていることを意味する。
 法人税と消費税のもう一つの大きな違いは、法人税負担分は転嫁されるものと説明されることがない一方で、消費税負担分は転嫁されるべきものと公言されていることである。この違いによって、消費税は、間接税的匂いを漂わせており、転嫁のしやすさをいくばくか引き上げている。

 消費税が“別種の所得税”というのは、課税ベースが「営業利益+総人件費」であることを考えればすぐわかる。
 消費税が5%ということは、受け取った勤労者が納める給与所得税よりも先に、年金・健保など法定福利厚生費を含む総給与(法定福利厚生費の企業負担分も)の原資に対し5%の税が課されていることを意味している。
 消費税10%は、所得税と違い控除すらないグロスの人件費に10%の“別種の所得税”が課されることを意味する。むろん、この課税は、株式配当の原資になる部分に対しても行われる。株式配当は、受取配当への課税や消費税で優遇されているグローバル企業はともかく、消費税と法人税の“二重課税”になっているケースもある。

 ワーキングプアや賃金格差という問題から言えば、派遣労働者は、従業員の人件費とは異なり仕入と同じ扱いなので、その費用は消費税の課税ベースから控除される。一方、従業員の人件費は消費税課税ベースの中核を占めている。この違いが、非正規労働者の比率が急速に増大してきた理由の一つである。同じ質と量の労働者が確保できるなら、同じ支払総額であってもハケンのほうが得なのである。それは、消費税の税率が高くなればなるほど際立っていく。

 安倍首相は設備投資と並んで賃上げを重要なテーマとして掲げているが、賃金の原資となる付加価値を課税ベースとする消費税やその増税は、賃上げどころか賃下げを誘引するのである。

 このような内実を持つ消費税がなぜに導入されなぜに増税されるような事態になったかと言えば、日本経済の頂点に立ち日本経済を牽引する立場にもあるグローバル企業の利益になり、日本経済全体の成長にも資すると考えられているからである。

 納付消費税額の算定式や消費税制度に関する持って回った説明でなんとかごまかそうとし、実際にもその効果が奏して錯誤している人も多いが、「輸出免税」制度に基づく根拠レスの消費税還付が、消費税が有する“別種の法人税・所得税・輸入関税”という害毒からある特定の事業者のみを防御するにとどまらず、謂われのない利益まで供与する仕組みになっていることが消費税(付加価値税)制度に対する固執を継続させている。
 そうでなければ、グローバル企業が加盟社の中心である経団連が、消費税増税を声高に求めることもないのである。

 この点については、異論や反論もあれば、首をひねる人もいることを承知しているが、マクロ経済的な観点からの説明をこのシリーズで行うつもりなので、消費税というのはそのようなものかもしれないというレベルでとりあえず受けとめていただきたい。

 消費税の内実がこのようなものであるという理解は、財務省や安倍首相が消費税増税を延期するに至った思考過程を推測するために必須である。

 なぜなら、詳細はのちほど説明するが、安倍首相が消費税を延期すると判断したのは、内需企業や家計に今以上しわ寄せがいくかたちで、グローバル企業に今以上の利益配分が行われれば国民経済がズタズタになってしまうと財務省も考えていると推測したからである。

 法人税税率の引き下げが浮上する前も、設備投資減税や賃上げ減税という目的追求型の法人減税政策は打ち出されていた。しかし、設備投資や賃上げなどの“代償”を求めないすっぽんぽんの税率引き下げ政策は、国民各層に負担増を強いる消費税増税政策に背理する動きであり尋常なものではない。

 消費税増税から間を置いての税率引き下げならわかるが、消費税増税と同時に法人税税率を下げることは、既に昨年先行して減税されてもおり、円安で利益を膨らませているグローバル企業に対する度を超えた利益供与行為といわざるをえない。
 国民多数派が経済的困難を強いられるなか、グローバル企業だけは「良い土地を分け与えた上に家を建ててやり、さらに家具調度品まで面倒を見る」というのでは非難と怨嗟の声が湧き上がって当然である。


 巷間、財務省は決定的確信犯的な“増税派”であり“財政健全至上主義派”と言われ、財務省自身もそのように見られるよう振る舞っているが、それは皮相的な見方だと思っている。

 85年の「プラザ合意」以降の30年近くの政策を顧みれば、財務省の政策立案能力を褒めるわけにはいかないが、財務省官僚たちは、増税や財政健全化をしゃにむに追求しているわけではなく、国民経済や国民生活(ダイレクトにかどうかは別)がよりよいものになることを第一義的に考えてはいる。
 そうでなければ、この15年間の膨大な赤字国債の増発もなかっただろうし、09年から歳出規模を一気に20兆円も増大させるという“愚”も犯さなかったはずである。
 財務省にはまだ“理性の健全性”が残っていると信じている。

 財務省が財政危機を叫び続けているのは、国民多数派に論理で理解してもらうことの難しさを前提に、危機を煽ることで政策手段として税と歳出を活用できるほうが楽で安全だと考えているからである。
 財務省が「赤字財政でも問題ない」と言ってしまえば、政治家も国民もずるずると赤字を膨らませる政策を求めるようになるであろう。膨大な赤字財政でも今のところは問題ないが、赤字財政の肥大化が悪性インフレを生み出しさらには拍車を掛けるという経済状況に移行する可能性は大いにある。
 また、もっとも重要な政策手段である税制がどうでもいいものであるかのように扱われてしまうのも困る。

 財務省の官僚たちは、このような思いを秘めて財政健全化の重要性や増税の必要性を語っているのだろうと勝手に忖度している。
 今回の消費税増税政策も、97年の消費税増税という“稀代の大失策”を反省した上でのものだから、それこそ薄氷の上を歩む思いで立案したと思っている。

 己の利のためにどうしても消費税増税を実施させたい経済界や経済学者とは違って、国家の運営を担う財務省の官僚たちは、97年の消費税増税が現在に続くデフレ経済に陥れたことを深く理解し、消費税増税の悪影響をしっかり認識している。
 私は納得できないが、昨年8月に成立した「消費税増税法案」は、その時点ではという注釈が付くが、利害得失を秤にかけて、国民経済にとって利と得があると財務省の官僚たちが判断した結果、政策化されたと思っている。

 民主・自民・公明の「三党合意」を経て昨年8月の成立した「消費税増税法案」には、増税実施の是非を最終的に行政が判断するという附則第18条が存在する。
 経済状況を理由に消費税増税をやめることができるとする附則第18条(景気条項)がなければ、国会の新たな立法行為がない限り、法治国家である日本は自動的に消費税増税を実施することになっていた。
 附則第18条は、民主党などにいた消費税増税慎重派に対する懐柔策として付け加えられたとイメージされているが、真相は、財務省自身がいざというとき政府の意向で消費税増税を中止できる“手段”を確保したかったからだと推測している。
 むろん、来年4月の消費税増税をすっきりやめるためには、国会での立法措置が必要だが、疑義はあるとしても、新たな立法措置がないままでも、行政の長である内閣総理大臣の判断で増税実施をただ見送ってしまうことも附則第18条に照らせば“合法”と言える。

 俗に「消費税増税法案」と呼ばれている法律は、正式名称が「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律」というものであり、理念的な文言も入っていることから、ただ廃止という立法措置はとりにくい。だからといって、初回の消費税増税実施日を1年ないし1年半繰り下げるといった機械的な改正では大きな過誤を招くことになる。
 今日の夕方、消費税増税の延期が表明されれば、10月中旬から開催される臨時国会は、両院とも与党が多数派なので成立に問題はないとしても、延期をどのようなかたちで法律に反映させるかということが大きなテーマとなるだろう。
 生き物である経済がかかわる話で、暦をいじるような対応はやるべきではない。GDPデフレータないしCPIが2年連続してプラス2%を維持した場合に限り、消費税増税の時期を国会審議の俎上にのせることができるというくらいの制約が必要だと思う。

(黒田日銀は「異次元の金融緩和政策」でそれが実現できると宣言しているのだから、それほど高いハードルではないはずだ)


■ 消費税増税延期のワケ

 財務省は、4月初旬の時点では来年4月の消費税増税を延期する方向に傾いたと思っている。
 円安や公共投資で経済成長は嵩上げされているだけで自律的成長の実は伴っていないことやデフレ脱却にとって不可欠の条件であるベースアップが不発であったことも、そう判断させる要因であったと思っているが、決定的な変化は、ドルとユーロに対する円レートの動きである。

 民主党野田政権が必死の思いで消費税増税法案を成立させようともがいていた昨年5月から本年9月までの円のレート推移を見ると、輸出企業の国際競争力にとって重要な要素である外国為替水準が大きく様変わりしたことがわかる。

 この変動と円安水準の定着こそが、14年4月の消費税増税を延期する決め手になったと考えている。

 別の言い方をすると、90円を上回る円安水準が定着したことで、輸出企業の国際競争力支援策である消費税を増税する必要がなくなったのである。

 逆に、この円安水準で消費税まで増税すると、エネルギー関連や原材料の輸入価格上昇を思うように価格に転嫁できずに苦しんでいる内需企業(下請けを含む)や電力料金やガソリン価格のアップで苦しんでいる家計をさらに窮地へと追い込んでしまう。
 電力やガソリンなどエネルギー価格の上昇は、家計の可処分所得を大きく毀損しており、消費税増税で事業者が抱えることになる負担を最終消費者にますます転嫁できない状況になっている。

 輸出企業にとって、円安と消費税増税は付加価値(利益)の増大という同じメリットをもたらす。
 マクロ的観点で考えれば、国民経済内部で付加価値を移転することで輸出企業の利益を増大させる消費税増税よりも、下請けのコストアップ分を吸収しても高い生産性でなおグローバル企業の利益が増大する円安のほうが望ましいと言える。(現時点で好ましい円ドルレートは、マクロ的には85円〜90円だと思っている)

 12年度の法人税税収が予算から2兆円ほどオーバーしたのも、円安で輸出企業の利益が大きく増大したからであり、ピークは円安のピークと同じ5月22日だが、1万3千〜4千円台の株価が続いているのも、円安で日本を代表するグローバル企業の好業績が続くと見込まれているからである。

 グローバル企業の利益という観点で考えても、経団連が今求めるべき政策は、内需企業や家計が大きな打撃を受け総需要が縮小する消費税増税ではなく、円安で膨らんだ利益を手元に残せる法人税税率の引き下げである。


 60年代の終わりから70年代にかけて進んだ欧州諸国における付加価値税の導入、そして、日本における消費税導入や消費税増税の動きを考察すると、それぞれの国の有力企業の国際競争力劣化や外国為替の自国通貨高といった変動が関係していることがわかる。

(70年代はニクソンショックとその後の変動為替相場制への移行に伴い自国通貨高に苦しむ先進国が多かった。また、日本企業の急速な国際競争力アップも、他の先進国に付加価値税の導入や増税を急がせた要因である)

 89年の消費税導入は、85年「プラザ合意」以降の超急速円高状況に対応した政策であり、97年の消費税増税は、95年4月に記録された1ドル=79.75円に象徴される不況下での円高状況に対応した政策である。

 78年大平政権によって政策化され総選挙で負けた結果撤回することになった「一般消費税」も、360円時代がニクソンショックで消え去り、76年には300円台を切る円高になり、78年になると100円台の円高にまで進む事態に対応したものである。
 その後、レーガノミクスによるドル高政策が「プラザ合意」まで続いたから、「一般消費税」は断念して正解だったと言えるだろう。

 これまたぽしゃる86年中曽根政権の「売上税」構想も、当然のことながら、前年の「プラザ合意」後の急速な円高傾向に触発されて打ち出された政策である。

 竹下政権が89年に導入した消費税は、そのような艱難辛苦を経てようやく実現したものである。

 一方、ほぼ好況期であった01年から08年までは消費税増税が政策テーマに上ることはなかった。小泉・安倍・福田・麻生政権の時代だが、好況期であるにもかかわらず30兆円台の国債発行が続き、政府債務残高も急速に積み上がり続けた。それでも、消費税の増税は政策として表立って浮上することはなかった。

 そのわけは、低金利の円を借りて高利回りの欧米金融商品を買うための「円キャリー取引」で円安状況が定着していたからである。

(今回の消費税増税を機に、支持率も高く戦後最長の好況期の真っ只中にあった小泉首相が消費税増税に踏み出さなかったことを非難する奇妙な論調も出ている)

 昨年8月に成立した今回の消費税増税も、08年秋のリーマンショック後の円高傾向を受けるかたちで浮上してきた政策である。
 円ドルレートは、リーマンショック後の「円キャリー取引」の巻き戻しもありだらだらと円高に進み、10年になると90円を切る円高水準になった。そのような為替水準の変動が、菅首相(当時)に消費税増税議論の必要性を語らせることになる。その後も円高水準はさらに進み、11年・12年と70円台の超円高水準が続き、11年10月31日には75.32円の最高値をつけた。
 このような超円高水準の定着が財務省を消費税増税に駆り立てたのである。

 増税法案が成立した昨年8月末時点の円レートは、1ドルが78.60円、1ユーロが98.34円である。
 1ドル=97.75円、1ユーロ=131.87円という現在のレートと較べると、ドルは19.6%、ユーロは25.4%も高かった。(円高時を基準に計算すると、ドルで21.8%、ユーロで34.1%の円安である)

 財務省に予知能力があれば、野田政権を急き立てて消費税増税法案を成立させることはしなかっただろう。財務省の官僚たちは、予知能力なぞあるはずもなく、民主制の束縛下に置かれているのだから、タイミングを失する政策になるのは仕方がないとぼやきたくもなるだろう。

 97年の消費税増税も、97年から08年まで続く円安基調がわかっていたら実施に踏み切らなかったと思っているはずだ。

 97年の消費税増税は、増税後に円安基調に転換したことでよりいっそう酷い歪みを国民経済に与え、資金循環構造までも大きく変えてしまい、日本経済をデフレに突き落とすことになったのである。

 財務省の官僚たちならこれ以上の理解をしているはずだから、よもや、来年4月の消費税増税を実施することはないと信じている。


※ 参考データ

[月末時点における円ドル・円ユーロのレート(TTM)推移]

(12年) ドル      ユーロ
 5月  78.92   97.62
 6月  79.31   98.74
 7月  78.17   95.87
 8月  78.60   98.34
 9月  77.66  100.24
10月  79.66  103.29
11月  82.12  106.55
12月  86.58  114.71
(13年)
 1月  91.14  123.69
 2月  92.51  121.65
 3月  94.05  120.73
 4月  97.92  128.18
 5月 101.18  131.96
 6月  98.59  128.53
 7月  98.08  130.05
 8月  98.36  130.24
 9月  97.75  131.87


※ (その2)では、経済対策や減税政策の有効性を考える予定である。


※ 参照投稿

「消費税が安定的な財源という説明はマヤカシ:09年を境に新たな状況に陥った日本経済:財政に支えられた消費税税収」
http://www.asyura2.com/13/senkyo154/msg/341.html

「(消費税増税−(増税対策財政支出+法人減税+“自然税収減”など))<0:それでも消費税増税に踏み切る為政者はいないハズ」
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/666.html

「来年度に「消費税増税+法人税税率引き下げ」政策が実施されることはない:だから、消費税増税は延期」
http://www.asyura2.com/13/senkyo154/msg/271.html

「サラリーマン年収 2年連続減:消費税増税時(97年)に較べ59万円(12.6%)減少:正規と非正規の格差は300万円」
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/689.html

「あいば達也さんへ:カラクリもなにも、増え続ける預金の運用難に苦しむ銀行を救済するために増発されているのが赤字国債」
http://www.asyura2.com/13/senkyo154/msg/305.html

「アマゾン、10月にも薬ネット販売 4000品目を即日配送:電子書籍、アマゾン独走、消費税非課税に不公平感」
http://www.asyura2.com/13/senkyo154/msg/170.html


 

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コメント
 
01. 2013年10月01日 06:13:50 : ndbAjb87pc
もし延期したら安倍降ろしが始まる。
総理大臣になりたい奴は山ほどいる。
(民主党の野田などのように)魂を売ってもなりたい奴はいる。

財務省経済界マスコミ界は、そいつらを担ぎ出して安倍降ろしをするだろう。
それに対抗する「気概」も「能力」も「戦略」も安倍にはない。

だから、あっしらさんの願いは叶わないだろう。

それでも安倍にせめて気概だけでも期待したい。
安倍降ろしには解散で対抗するだけの気概があればいいだけだからだ。


02. 2013年10月01日 06:34:28 : h7xoZYMxbk
あっしらさん残念ながら安倍は予定通り本日来年4月からの消費税増税を表明する見通しだよ。

あれだけマスゴミがリーク報道してるのに増税延期なんてありえん。

なのに何でそこまで自信満々に言えるのかねぇ?


03. 2013年10月01日 07:32:38 : IaTJdgpvYM
そもそも、アベノミクスなる詐欺商法がでてきたのも、消費税増税のためであったはず。日銀のタイミングを見計らった(日本の政治イベントに合わせた)円安誘導は、ヘッジファンドに完全に見透かされて、大損をしてきたはずである。だから、目的通り、増税するだろう。そして、国民はさらに、その詐欺に踊らされて、耐えに耐え忍びに忍ぶことになるだろう。しかし、原発処理により、国力は確実に削がれていく。景気の腰折れどころで収まればよいが。

04. 2013年10月01日 11:31:34 : nJF6kGWndY

>97年の消費税増税は、増税後に円安基調に転換したことでよりいっそう酷い歪みを国民経済に与え、資金循環構造までも大きく変えてしまい、日本経済をデフレに突き落とすことになった

よくある間違いだな

当時の消費税増税はタイミングが悪かっただけで、その影響自体は短期的なもの

デフレになったのは、もっと根本的な要因だ


05. 2013年10月01日 13:33:09 : 9WVAAhJ2PQ
根本的な原因を言ってみろ。

06. 2013年10月01日 21:56:07 : nJF6kGWndY

少しは自分の頭で考えてみな

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