05. 2013年9月30日 21:42:45
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村上尚己「エコノミックレポート」 2013年9月30日 印刷用PDF 株式市場と米国の政治混乱〜過去2年と同じ展開? 米国議会において、「オバマケア」に対して共和党が強硬な反対姿勢を続けており、政府機関閉鎖の可能性が高まったと先週末報道された。先週、米国議会でのこのゴタゴタが、米国株の押し下げ要因になったが、今週もこれが市場の悪材料になる可能性がでてきた(グラフ参照)。 誰も分からない政治混乱の顛末がどうなるかを予想して、ポジションをとるのはなかなか難しい。ただ、こうした米国議会における混乱は今回が初めてではないので、過去の経緯を踏まえて対処法を考えることができる。 9月24日レポートで、FRBが事前予想を覆す格好で量的金融緩和を維持し、この決断はほぼ1年前の2012年9月に反対意見が根強い中でFRBがQE3を決断した経緯と似ており、同様に今回の米FRBの金融政策の判断が、世界的な景気回復を支えリスク資産の価格上昇をもたらす要因になる、と述べた。 ただ、金融緩和強化の景気刺激効果は即現れない。実は、1年前にFRBがQE3を決断した2012年秋口に、市場の注目はFRBから米国の政治に移り、米国市場はこの要因で揺れ動いた。グラフは、先ほどのグラフを丁度1年間遡ったグラフである。具体的に、昨年11月の大統領選挙を巡り、共和党のロムニー候補が終盤に追い上げ、株式市場では「ロムニー勝利で株高」との期待がかなり高まった。 実際には、QE3直後に米国株は天井をつけた後、米国株はじり安となり、11月にオバマ大統領の勝利で米国株は更に下落した。ビジネスフレンドリーとされた(幻想だったと思うが)ロムニー氏が敗れ、更にはオバマ大統領続投で「財政の崖」問題で政治的に行き詰るとのストーリーがメディアで踊り、大統領選挙後数日間、米国株は売られ米国金利も低下したのである。 ただ結局、この2012年秋の政治への懸念に起因した株安は、押し目で投資する「おいしいチャンス」だった。その後、年末までずれ込んだ「財政の崖」を巡る協議も、妥協案が成立し最悪シナリオが払しょくされた。そして、FRBの量的金融緩和拡大の景気刺激効果を背景とした米経済を中心に世界経済の復調をうけて、米国株、長期金利は上昇を辿った。 米国の政治混乱がもたらす株安が買い場だったのは、米国政治の停滞がきっかけとなった2011年8月の「米国債の格下げ」がもたらした米国株の大幅下落も同様だった。結局、株式市場の趨勢は、世界の景気動向を反映する米国の企業利益の動きで決まる。2011、12年の米国の政治混乱は、米国経済や政策に決定的に悪影響を及ぼさず、押し目買いの機会を提供したわけだ。 さて、2013年はどうなのか?米国の政治事情がどうかは分からないが、基本的には過去2年と同様のパターンとみて良いのではないか。10月17日までに債務上限引き上げが決まらないと、国庫支払が枯渇すると米財務省が試算を示したが、この状況が10月半ばになり見えるまで、市場はなかなか落ち着かないかもしれない。 一方、政治要因よりも、リスク資産投資において重視すべきは、今年の夏場以降の大幅な金利上昇によって、米国経済が大きく減速に転じることだ。ただ、FRBの緩和継続で金利上昇に歯止めがかかり、また金利敏感セクターである住宅市場の減速も軽微である。現状「真のリスク」については懸念するほど深刻ではない。 http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G903/er/economic.htm
広木 隆「ストラテジーレポート」
チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、個別銘柄まで踏込んだ実践的な株式投資戦略をご提供します。(@TakashiHiroki ) [ プロフィール ] 2013年9月30日 PDF 印刷用PDF (385KB) 今年度下半期の日本株相場とメガバンクの復活 あまちゃん最終回 先週、大人気を博したNHK連続テレビ小説「あまちゃん」が最終回を迎えた。「あまロス注1」なる言葉も生まれるくらいの盛り上がりを見せたドラマだが、通算の視聴率は昨年の「梅ちゃん先生」に及ばず2位だったとは意外である。 注1:「あまちゃん」を観る楽しみが無くなってしまった時の喪失感。「あまちゃんロス症候群」の略称。 ラストは『潮騒のメモリー』に乗せて主要登場人物を映したあと、トンネル内を進むアキとユイ二人のシーンへとつながっていく。実に鮮やかな最終回のエンディングだった。 もうひとつの大ヒットドラマ「半沢直樹」も一足早く最終回を迎え、その視聴率は今世紀最高を記録したという。あまちゃんの「じぇじぇじぇ」、半沢直樹の「倍返し」 ― ともに今年の流行語大賞の候補にあがっている。それだけ、この二つのドラマが社会に少なからぬ影響を与えたということだ。1年前に書いたレポート「三種の神器 シャープ、パナソニック、ソニーは買えるか?」では、その頃放映されていた「梅ちゃん先生」のエピソードを引いて、テレビの持つ魅力を取り上げた。一時はドラマの不振、テレビ離れなどが叫ばれたりもしたが、まだまだテレビというメディアの存在は大きい。であるがゆえに、赤字のテレビ事業にこだわり続けるソニーの戦略は長い目で見て正しいと思うのだ。 銀行という組織 「半沢直樹」を見て、本当に銀行ってあんな感じなの?と疑問に思ったかたもおられるだろう。本当にあんな感じである。僕はいろいろな会社で働いてきたが、一番長く務めたのは銀行であるからよく知っている。こう見えても昔は銀行員だったのだ。とは言え、銀行に籍を置き、銀行から給料をもらっていたが、入行してから辞めるまでずっと子会社の投資顧問に出向してファンドマネージャーをやっていたから、いわゆる銀行業務の経験はない。(ドラマで「片道切符の出向で俺も終わりだ」などの台詞が出てくるたびに苦笑させられたものである。) 銀行という組織のおかしなところについて書けば、きりがないのだが、その最たるものが形式主義の自己矛盾であろう。例えば、虚礼廃止ということで同じ職場のものには上司であっても年賀状は出さなかった。昔の銀行は大晦日まで営業していたから、ちょっと前に「良いお年を」と言って別れた同僚から元旦に年賀状をもらっても…というわけである。 ところが虚礼廃止と言いながら、期末になると関連部署に挨拶に回る。「いやー、上期は本当にお世話になりました。また下期もよろしくお願いします」などと同じ行内の者同士、挨拶して回るのである。虚礼廃止なのか、やっぱり儀礼的であっても挨拶は大事なのか、どっちなんだ。「潮騒のメモリー」の♪好きよ 嫌いよ〜 ではないが、いったいどっちやねん?(ちなみに♪好きよ 嫌いよ〜は松田聖子「小麦色のマーメード」からのパクリである。歌詞だけでなくメロデイーまでも拝借している。熱烈なオマージュなのだ。) 今日は9月30日。上半期末である。僕が銀行にいたころからはずいぶんと歳月が経っているが、まだどこかのメガバンクでは期末の「ご挨拶」が行われているのだろうか。
銀行の基本的なスタンスは、「晴天の時に傘を差し出し、雨の日には傘を取り上げる」というものだ。顧客第一主義と謳いながら、そのスタンスも大いなる矛盾ではないか。自分さえよければ、というご都合主義の極み、自行の利益最優先なのである。無論、銀行は慈善事業をしているわけでないから当たり前と言えばそれまでだが。「半沢直樹」の劇中、若き日の大和田常務が半沢直樹の父親のねじ工場への融資を断り、傘をさして去っていく雨のシーンは、銀行のこうしたスタンスのメタファー(暗喩)である。 最終回、取締役会での半沢直樹の台詞は、現在の大手銀行の体質をいかんなく言い表している。 「大和田常務。あなた私に仰いましたよね。『メガバンクはこの国の経済を支えている。決して潰れてはならない』。おっしゃる通りです。銀行は決して潰れてはならない。ですが私達はその事に拘るあまりいつの間にか自分達の事しか考えない集団になっているんじゃありませんか?弱い者を切り捨て自分達の勝手な論理を平気で人に押し付ける。問題は先送りされ、誰一人責任を取ろうとしない。下らない派閥意識でお互いにけん制しあい、部下は上司の顔色を伺って正しいと思う事を口にしない。そんな銀行はもう潰れているようなものです」 日経平均ダービー さきほども書いたが今日は9月30日。日経平均の月末値を予想する「日経平均ダービー」の結果が出る日である。日経の記事はこのように僕の予想を伝えた。 <もっとも高い1万4550円を予想したマネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストは「日本株の評価としては1万4000円台半ばが妥当だと考えており、相場の夏枯れが終わって9月に相場が動き出せば、7月に下落した分を埋め合わせる動きになる」と読んだ> 先週末までは圧勝かと思われた。ところが!今日の日本株は売り一色で始まった。日経平均の下げ幅は一時300円を超え、1万4400円台前半にまで下落した。しかし、さすがにその水準では押し目買いも入って前引けにかけて下げ幅を縮小、午後は1万4500円台でもみ合いが続いたが、結局日経平均の大引けの値は1万4455円。大引けの15分前までは1万4550円だったのだ。このままいけば、ピタリ賞だ、などと内心、ほくそ笑んでいたのだが...。 さて、10月末の日経平均の予想だが、1万5100円とした。日経平均は今年度に入って、すなわち4月以降、ずっと1万3000円台半ばがレンジの中心だった。月中には大きく上下に動いても、月末の値は1万3000円台に収斂してきた(グラフ1「日経平均の月足」ご参照)。それが9月には1万4000円台半ばで着地した。相場は、ようやく上放れ始めた。東京オリンピックが決まった効果や、4-9月期決算の上方修正見込み、消費税増税決定とそれに伴う景気対策パッケージへの期待などが背景にある。相場の基調は「上」と見ていいだろう。9月に1万4000円台を固め、下期スタートの10月は1万5000円台を固めて終わるというのが僕の読みである。5月23日の高値1万5942円から6月13日の安値1万2415円までの下げ幅に対するフィボナッチ・リトレースメント76.4%戻しの水準が1万5109円だ。 下期の日本株相場 日経平均ダービーなどに夢中になっていると短視眼的になっていけない。明日から下期相場入り。少し長めに下期の見通しを述べよう。この週末に発行された日経ヴェリタスで僕は下期の相場展望を以下のように語っている。
[ 折りたたむ ] <秋以降はアベノミクスが再びテーマになり、日経平均株価は年度末にかけて上昇するだろう。年内は不動産など脱デフレ関連、年明け以降は自動車株など輸出関連が有望と見ている。
10月上旬の消費増税決定とともに、法人税減税や規制緩和などが出れば、海外投資家からの買いが見込める。4〜9月期決算では企業業績が上方修正される可能性が高いが、年末にかけて証券優遇税制の終了などが重荷で年内の高値は1万6000円と見ている。 米国の量的緩和縮小が決まれば1ドル=100円程度まで円安が進み、自動車など輸出関連株に資金が向かいそうだ。年明け以降は10%増益が予想される来期業績が視野に入り、年度末にかけて1万8000円を目指す展開を予想している> (日経ヴェリタス9月29日号・特集「株高の鐘を鳴らすのは 下期の見通しを聞く」) このヴェリタスの取材では、不動産と輸出関連株が有望と述べたが、もうひとつ注目している業種がある。銀行株である。 銀行の復活 マネックスのチーフ・ストラテジストに就任して、初めて書いた業種のレポートが銀行についてだった(2010年10月8日付けレポート「銀行株投資戦略」)。冒頭に結論を要約してある。 <銀行株は割安であるが、買うべきカタリスト(材料)がない。目先の下げは自己資本規制の不透明感によるものだが、デフレ不況の環境下にあって銀行業は根本的に儲からないビジネスモデル。需給面からも「最も売りを仕掛けやすい」銘柄。日本経済がデフレを克服し預貸の利ザヤで稼げるようにならないと本格的な株価の立ち直りはないだろう> それから3年。ようやくその状況が変わろうとしている。 金融緩和でデフレ脱却できるとするリフレ派に対する反論の多くは、日銀がいくらおカネをばらまいても資金需要がないので貸出は伸びず、結局おカネは債券マーケットに滞留し実態経済に資金が回らない、というものだろう。事実、日銀の当座預金残高は先日ついに100兆円の大台を超えた。日銀の異次元緩和で供給されたマネーがそっくりそのまま積み上がっているわけである。この点だけを見れば反リフレ派の指摘は正しいように思われるが、モノ事には順番というものがある。まず、おカネは当座預金に積まれる。しかし、いずれはその資金はどこかに向かう。以前はほとんどが国債に向かっていた。が、状況は変わりつつある。少なくとも大手行は盲目的に国債を買い進むようなことはしていない。むしろ国債保有を減らしているのだ。 では貸出の状況はどうか。これも少しずつではあるが伸びてきている。全銀協の資料によると昨年9月にはマイナスだった貸出金残高(都市銀行等*注2)は昨年秋には微増に転じ、今年に入ってからは明確に伸びが加速してきている(グラフ2)。直近では前年同月比4%超の増加となった。これは4年3カ月ぶりの高い伸びである。 *注2: 都市銀行等とは 都市銀行(5行:みずほ・三菱東京UFJ・三井住友・りそな・埼玉りそな)、信託銀行(4行:三菱UFJ信託・みずほ信託・三井住友信託・野村信託)に加え、新生銀行とあおぞら銀行である。 銀行の復活は国内に先駆けて海外で顕著である。BIS(国際決済銀行)が9月半ばに発表した四半期報告によると、邦銀の海外貸出の世界シェアは3月末で13%。米銀の12%、独銀の11%を抜いてシェアトップに立ったのだ。BISはThe return of Japanese banks (帰ってきた邦銀)と題する特別レポートを掲載した。邦銀の世界シェアは、バブル真っ盛りの1989年に39%に達し、世界を席巻したが、その後はバブル崩壊、金融危機で衰退の一途を辿った。2007年には8%と最低水準に落ち込んだが、そこから復活した。欧州債務危機や米国の金融規制強化など欧米勢の「敵失」のおかげでもあるが、トップに返り咲いたことは間違いない。国内の資金需要が鈍い中、海外重視の方針を打ち出し、新興国等で積極的に貸出を増やしてきた結果である。
こうした邦銀のプレゼンスの高まりは、グローバル・マンデートを運用する機関投資家のポートフォリオにおける邦銀のウェイト向上につながるものと期待される。
メガバンクが買われるカタリスト 3年前のレポートでは「銀行株は割安であるが、買うべきカタリスト(材料)がない」がないと述べた。貸出の増加、世界シェアトップ回復などの材料があっても、最終的には「どれだけ本業で稼げるか」が問われることになるだろう。端的に言えば、預貸金利鞘の拡大だ。現状はむしろ預貸金利鞘は低下し、メガバンク3行では1%をわずかに上回る程度である。預貸金利鞘の改善が見込める状況にならないと銀行株への腰の入った買いは期待できない。 銀行の利鞘拡大が期待できる環境とは、長短金利差が拡大する局面である。債券のイールドカーブが立ってくれば外国人はメガバンクの株に買いをいれてくるだろう。本当はベア・スティープニング(金利上昇でカーブの勾配が急になること)は、銀行が保有する債券が値下がりするので必ずしも手放しで喜べる話ではないのだが、外国人の頭には「スティープニング=銀行株買い」と刷り込まれている。セオリーに即して買ってくるだろう。 グラフ4は10年債利回りと東証銀行株指数の推移である。銀行株のパフォーマンスが長期金利に連動するのが一目瞭然だ。簡単な話である。金利というのは、ざっくり言って、銀行の商品である「おカネの値段」。商うものの価格が高ければ、それだけ儲かるというものだ。 さて、金利は上がるのか?8月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比0.8%の上昇と、2008年11月以来4年9カ月ぶりの高さとなった。一方で、10年債利回りは低位安定が続く。しかし、いつまでもこんな水準にはとどまっていないだろう。消費税増税が決まり、成長戦略を加速させ、デフレ脱却が視野に入ってくれば自ずと長期金利は上昇するだろう。金利の急上昇は困るが、景気回復に伴う緩やかな長期金利の上昇ならば、むしろそれが起こらないほうが不自然というものだ。
結局、銀行株の上昇はアベノミクスの成否にかかっている。だから銀行株こそがアベノミクス相場の本命である。デフレ脱却が視野に入り、景況感の改善を織り込んで長期金利が上昇する ? 「良い金利上昇」ならば、株式市場も好感するだろう。そういう相場が示現して初めて、アベノミクスの成功と言える。今はそんな兆候は見えないが、その日はきっと来ると僕は信じている。今はここまでだけど、来年はここから先にも行けるのだと。 「あまちゃん」の最終回。お座敷列車で『潮騒のメモリー』を歌ったアキとユイの二人は、たくさん間違えたと反省する。 「まだまだ完成しなくていいべ」 「明日も明後日もあるもんね」 「明日も明後日も来年もある。今はここまでだけど。来年はここから先にも行けるんだ」 線路の先をみつめるアキにユイが声をかける。 「行ってみようか」 「じぇじぇ?」 トンネルの中を駆け抜ける二人の表情はこのうえなく明るかった。暗いトンネルの先に光が見えていたからである。その先の未来に向かって走っていたからである。 http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G903/strategy/index.htm 廣澤知子のやさしいマネー講座 2013年09月30日 第332回 生前贈与にNISAを活用?
様々な統計によると、一般に現役世代よりシニア世代の方が、経済的に余裕があって「お金持ち」であるようです。現役世代の30〜50代は、給料が伸び悩み、退職金や年金に不安を抱えつつ、住宅ローンや子供の教育費に追われているという方も多いことでしょう。 豊かで元気、かつ長寿のシニア世代から「生前贈与」という形で資金援助をしてもらう方もいるかもしれませんね。 ただし、いくら親子間、祖父母孫間であってもお金を渡すとなると、一定の金額になれば当然のことながら贈与税の課税対象になります。世の中とケタ違いな「お小遣い」を渡していて世間を仰天させた、某首相経験者一族のことは記憶に新しいですよね。 生前贈与には実は様々な方法があります皆さんも下記のような制度を耳にしたことがあるのではないでしょうか。 「相続時精算課税制度」「住宅取得資金贈与の特例」 「夫婦間の住宅贈与」「祖父母から孫への教育資金の贈与」 上記を説明するにはとても字数が足りませんので、また別に機会に行うとして、ここではごく一般的な、資金使途を問わない、かつ対象を限定しない、毎年可能な贈与の話をしていきます。 さて、前述のとおり「一定の金額」までの贈与であれば何回行っても課税されないのですが、その非課税の金額は、基礎控除である「年間110万円」です。これは毎年可能な枠ですから、1年ごとに上限投資金額100万円というNISA制度はその非課税枠にピタリとはまり、とても相性がよい組み合わせといえるのです。 自身の財産を配偶者や子、孫に効率よく贈与したい、受け取った方もその資金の利用法を制限されることなく、かつ効率よく増やしたい、と考えている場合、非課税での定期的な贈与はそのニーズに合致しており、また贈与人数分の非課税投資枠を得ることになるため、一族単位で見て投資の非課税枠の拡大とも言えます。 例えば、祖父から祖母(妻)と子2人、孫3人に贈与を行うとして、それぞれに毎年100万円をNISA口座に振り込み、運用するとします。祖父自身のNISA口座の非課税枠100万円の他、非課税贈与する資金を毎年6人600万円分、非課税に投資・運用できるということになります。 NISA口座は日本国内居住の20歳以上の方と限定されるため、贈与したい家族全員が対象にならない場合もあるかもしれませんが、資産の移転と運用を全て非課税で行えるこの組み合わせは効果的な相続税対策の一つと言えるでしょう。 廣澤 知子 ファイナンシャル・プランナー CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員 前の記事:第331回 FP的NISA活用術 −2013年09月09日
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