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敬老の日に、米寿の祝い金の代わりに被用者年金制度一元化法に係る共済年金10パーセント減額通知を受け取り苦笑した。減額は恩給期間のある退職者に限られ、且つ恩給期間の長い高齢者程より高率の減額を課している点に不条理を感じる。年金は高齢者の唯一の糧であり、高齢者の既得権剥奪を先行させるような改革は敬老の日を形骸化するものである。第180回通常国会解散間際のどさくさに紛れて、当時の民主党議員の中でも反対者が多かった被用者年金制度一元化法を平成24年8月10日に成立させた愚鈍な野田佳彦君の面影が頭を過ぎった。
平成24年8月22日に「被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成24年法律第63号)」(以下一元化法という。)が公布された。一元化法の主要項目は下記6項目から成り、(1)から(5)の施行日は平成27年10月1日であり、(6)の施行日は平成25年8月1日である。
(1)厚生年金に公務員及び私学教職員も加入することとし、2階部分の年金は厚生年金に統一する。
(2)共済年金と厚生年金の制度的な差異については、基本的に厚生年金に揃えて解消する。
(3)共済年金の1・2回部分の保険料を引き上げ、厚生年金の保険料率(上限18.3%)に統一する。
(4)厚生年金事業の実施に当たっては、効率的な事務処理を行なう観点から、共済組合や私学事業団を活用する。また、制度全体の給付と 負担の状況を国の会計にとりまとめて計上する。
(5)共済年金にある公的年金としての3階部分(職域部分)は廃止する。公的年金としての3階部分(職域部分)廃止後の新たな年金については、別に法律で定める。
(6)追加費用削減のため、恩給期間に係る給付について本人負担の差に着目して27%引下げる。ただし、一定の配慮措置(減額率の上限は恩給期間も含めた共済年金全体の10%とする。)を講じる。
問題とされるのは上記項目の(6)である。共済制度発足に当たっては、恩給期間に係る給付についても共済年金として支給することとされた。この決定に対しての追加費用削減の考え方は、恩給期間の本人負担は2%であり、共済制度発足当初の本人負担4.4%より低いことから、事業主(国・地方公共団体)負担を合わせた負担に見合って27%減額することで、事業主の追加費用を削減しようとするものである。
然しながら、地方公務員の場合は現在の地方公務員共済年金制度(地共済法昭和37年12月施行)創設時に、国家公務員の場合は(国共済法昭和34年10月施行)創設時に、恩給期間を共済期間と見做したことについては社会的なコンセンサスが出来ており、当時の公務員に全く責任がないことは自明の理である。50年以上も経過した後になって、法の不備を当時の公務員に転嫁して、追加費用削減という名目で一方的に年金の減額を実施することは条理に悖る措置であり且つ憲法29条で保障する財産権の侵害にあたるものである。更に、恩給期間の長い高齢者にとっては死活問題となる暴挙であり法律不遡及の原則に反するものである。恩給期間に於ける公務員の給料は民間会社の給料に比べて格段に低かったことは周知の事実であり、公務員は老後に安定して受給できる恩給を心の支えとして低い給料で我慢してきたのである。
ここに、法律不遡及の原則とは、「新たに制定されたり、改正された法律が、その施行以前の関係にさかのぼって適用されないという原則」であり、そうでなければ、既得権を害したり、過去にされた予測を裏切ったりして、法的安定性が害されることになるからである。特に刑罰については、「事後法の禁止」として、日本国憲法39条で厳格に遡及効が禁止されている。その他の領域では絶対的なものではなく、立法政策上遡及効が避けられているが、既得権を害しない場合とか、既得権を害しても新法を遡及して適用するのが妥当であると考えられる場合には、この原則が破られることがある。戦後の家族法の改正は、あとの例である。上記項目(6)には既得権を害してまでも新法を遡及して適用する妥当性は皆無である。
高額所得者の資産を社会還元させることは、資本主義経済の健全な発展に必要不可欠であることは論を俟たないが、敬老精神の欠片も持ち合わせていない法匪連が作成した、被用者年金一元化法の主要項目の一つである「公務員の恩給期間に係る追加費用削減」の規定は、資産を含め実質的な経済力を考慮することなく恩給期間だけを基準に高所得者とみなし高率の年金減額を終生に亘り実行する悪法である。
具体的には、一元化法により、追加費用対象期間(恩給期間)に係る年金について平成25年8月分(10月定期支給期分)から年金の減額が開始される。減額率は概算で、70歳で1%・75歳で5%・80歳で8%・88歳以上で10%の減額となる。老い先の短い、体力・気力の衰えた後期高齢者を標的にして、年金の大幅な減額を実施するなど人間のやることではない。恩給期間を追加費用対象期間とするが如き不条理な立法をした法匪連に「速やかに敬老の日を廃止して、恩給期間に係る追加費用削減のための後期高齢者安楽死促進法を立法・公布・施行すべし。」と提言したら、わが意を得たりとさぞかし喜ぶことであろう。
高齢者を日本経済の癌細胞と考える小泉純一郎・竹中平蔵トリオの思想を源流に持つ被用者年金一元化法は、国会の良識により廃案化されていたにも拘わらず、愚鈍な野田佳彦君の鼬の最後っ屁によって、国会解散間際のどさくさに民自公の三党合意により蘇った。年金だけを頼りに生活設計を立てていた高齢者にとっては、正に現代の楢山節考である。長生きして悪かったと高齢者に言わせるようでは日本の未来はない。
そこで今後の対応策であるが、一元化法は上述のとおり、法律不遡及の原則に違背して憲法29条で定められた財産権を侵害する規定を含んでるので、当該規定は憲法98条によりその効力を有しない。よって、追加費用削減のための恩給期間に係る年金の減額については、憲法17条の規定に基づき、国家賠償法による救済措置を提訴の予定である。
http://www12.bb-west.ne.jp/matuoka/
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