01. 2013年9月30日 14:47:31
: niiL5nr8dQ
円上昇、対ドルで一時1カ月ぶり高値−米政府機関閉鎖の恐れ 9月30日(ブルームバーグ):東京外国為替市場では円が上昇。財政協議が行き詰まり、米政府機関閉鎖の恐れが強まる中、リスク回避を目的に相対的に安全な円を買う動きが先行した。 ドル・円相場は週明け早朝に1ドル=98円ちょうどを割り込むと、一時97円53銭と8月29日以来の水準まで円買いが進行。午前は97円台後半でもみ合った後、午後に入り日本株が下げ幅を縮小したのにつれて98円06銭まで値を戻す場面も見られ、1時35分現在は97円98銭前後で取引されている。 みずほ証券の鈴木健吾FXストラテジストは、「市場は議会が合意に至るだろうと高をくくっていたところがあったが、ここにきて対立が決定的となり、政府閉鎖が見えてきた」と指摘。「ドルが主語の材料ではあるが、起きているのはリスクオフで、そうした中でドル安よりも円高が進んでいるというのが現実だ」と話した。 ブルームバーグ・データによると、円は主要16通貨全てに対して前週末比で上昇。ドルは強弱まちまちで、円やポンドに対して売られている一方、メキシコペソや南アフリカランドに対しては上昇している。ドルはオーストラリア・ドルに対しても上昇。中国の9月のHSBC製造業購買担当者指数(PMI)の改定値が予想に反して下方修正されたことを受け、豪ドル売りが強まった。 ユーロ・円相場は早朝に1ユーロ=132円ちょうどを割り込み、一時131円38銭と今月9日以来のユーロ安・円高水準を付けた。その後132円39銭まで値を戻し、同時刻現在は132円31銭前後で取引されている。 一段の円高リスク 共和党が多数を占める米下院は29日未明、医療保険改革法の実施を1年遅らせる条項を含んだ暫定予算案を可決した。暫定予算の適用期間は10月1日から10週間。上院は同様の案を先週、否決しており、30日午後までは再招集の予定はない。暫定予算案が可決されない場合、10月1日から政府機関が閉鎖される恐れがある。 民主党のダービン上院院内幹事はCBSテレビとのインタビューで、「下院の姿勢は基本的に先週と変わっておらず、下院案は再び拒否されるだろう」と発言。政府閉鎖が実施されると思うかとの質問に、「残念ながら、そう思う」と語った。 上田ハーロー外貨保証金事業部の山内俊哉氏は、市場は米暫定予算案が期限内に成立しないことを懸念しており、「リスク回避センチメントが続く」と予想。「中間期末・月末要因からの実需のドル買いが出る可能性もある」としながらも、ドル・円、クロス円(ドル以外の通貨の対円相場)ともにもう一段円高が進むリスクがあると話していた。 財政協議のこう着が米経済成長を損ねるとの懸念から、27日の米国株 は下落。30日の東京株式相場は続落し、TOPIX は一時前週末比2%超下げる場面が見られたが、午後の取引ではやや下げ渋っている。 中長期的にドルの買い場 みずほ証の鈴木氏は、「政府閉鎖も嫌な話だが、17日期限の債務上限問題は米国債のデフォルトにもつながりかねず、そちらも合意に至れないとの連想がリスクオフに拍車をかける可能性がある」と指摘する。もっとも、政府閉鎖や上限超過がそのまま放置されるはずはなく、「短期的にはどこまでリスクが顕在化するかが注目されるものの、中長期的なスタンスからすると、円の上昇局面はドルの買い場になる」と予想。ドル・円が「95円を割るような展開にはならない」とみている。 ユーロ・ドル相場は前週末に一時、1ユーロ=1.3565ドルと約1週間ぶりのユーロ高・ドル安水準を付けたが、その後1.35ドル台前半へ反落。早朝の取引でユーロ・円につられる形で一時1.3469ドルまでユーロ安が進んだ後は、1.3507ドルまで値を戻している。 イタリアではベルルスコーニ元首相を支持する閣僚が辞任し、レッタ首相率いる連立政権が崩壊の瀬戸際に立たされている。レッタ首相は10月2日の信任投票実施を要請すると表明。脱税で有罪が確定したベルルスコーニ元首相が解散総選挙を求める考えを示したことに対抗するもので、ユーロ圏第3の経済規模を持つイタリアの政局は一段と混迷が深まった。 記事についての記者への問い合わせ先:東京 小宮弘子 hkomiya1@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:Rocky Swift rswift5@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net 更新日時: 2013/09/30 13:40 JST
債券は下げに転じる、10年債入札に向けた売り−株価の下げ幅縮小も 9月30日(ブルームバーグ):債券相場は下げに転じている。米国財政問題を背景にした米債相場の上昇や円高・ドル安を受けて買いが先行したが、株価の下げ幅縮小やあすに10年債入札を控えて売りが優勢になっている。 東京先物市場で中心限月の12月物は前週末比12銭高の144円26銭で開始し、いったんは144円27銭まで上昇。その後は上値が重くなり、午後に入って国内株価 が下げ幅を縮めると売りが増え、一時は15銭安の143円99銭まで下落した。 現物債市場で長期金利 の指標となる新発10年物国債の330回債利回りは同0.5ベーシスポイント(bp)低い0.675%で開始し、午前は同水準で推移した。しかし、午後に入ると水準を切り上げ、1bp高い0.69%に上昇している。5年物の114回債利回りは1bp高い0.245%。20年物の146回債利回りは1bp低い1.565%で始まったが、その後は1.58%に上昇している。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊債券ストラテジストは、米国の財政協議難航で国内債は買いが先行したと指摘。ただ、あすは日銀の企業短期経済観測調査(短観)の発表や消費増税の最終判断、経済対策発表などイベントが続くとし、「下期入り後の需給を見極めたい」とも指摘。さらに、10年債入札の前日でもあり伸び悩みとし、「金利水準が低いことから益出し売りの可能性がある」とも話していた。 財務省は10月1日午前、10年利付国債の入札を実施する。表面利率(クーポン)は前回債より0.1ポイント低下の0.7%となる見込み。発行額は2兆4000億円程度。東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストはきょうの相場について、「最後に下押す場面もある」との見方を示していた。 日銀がきょう実施した長期国債買い入れオペ(総額8500億円)では、残存期間「1年超3年以下」と「10年超」の応札倍率が前回から上昇した。両ゾーンで売り圧力が強まっていることが示された。 前週末27日の米債相場は上昇。米10年国債利回り は前日比3bp低下の2.62%程度。米連邦予算をめぐる政治的な対立が政府機関の閉鎖につながるとの懸念を背景に、安全な資産への需要が膨らんだ。上院は暫定予算案を可決し、下院に送り返した。予算が成立しなければ、10月1日に政府機関が閉鎖される。30日の東京外為市場では円が対ドルで上昇し、1ドル=97円台後半中心に推移している。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 山中英典 h.y@bloomberg.net;東京 赤間信行 akam@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:大久保義人 yokubo1@bloomberg.net;Rocky Swift rswift5@bloomberg.net 更新日時: 2013/09/30 13:21 JST
焦点:米FRBの緩和据え置きでキャリートレード復活へ 2013年 09月 30日 13:30 JST [ロンドン 27日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が市場の予想に反して量的緩和策の規模を据え置いたことで、投資家はドル、ユーロ、円など低金利通貨を借りて高金利通貨に投資する「キャリートレード」を再開し、リターンを押し上げるチャンスを得た。
こうした取引が復活すれば、FRBの緩和縮小を予想してここ数カ月減少していた外為市場の出来高が回復するだろう。 CLSバンクによると、外為出来高は6月に1日平均5兆6000億ドルと過去最高に膨らんでいたが、8月には4兆5000億ドルに縮小した。 しかしFRBが資産買い入れプログラムの規模を維持したため、ドルは今後数週間、下落しそうだ。日銀と欧州中央銀行(ECB)も大量の資金供給を続ける構えであることから、円とユーロも低迷するだろう。 リターンの押し上げを狙う投資家は、世界経済回復の兆候を背景にニュージーランド(NZ)ドル、豪ドル、カナダドルなど高成長と結びついた高金利通貨を買いそうだ。スウェーデンクローナとノルウェークローネも恩恵を受けよう。 こうしたキャリートレードは、FRBと日銀の紙幣増刷が世界中でリスク性資産の上昇を煽った昨年からことし初めにかけて人気を博した。 アナリストは、FRBはいずれ緩和を縮小するため、復活したキャリートレードは長続きしない可能性があると言う。しかしそれまでは、ヘッジファンドや銀行の第4・四半期の業績に追い風を吹かせる可能性がある。 FRBの政策不透明感から、一部の銀行は第3・四半期の債券、外為、コモディティ取引の収入が減少すると警告を発している。BNPパリバのストラテジスト、キラン・コーシク氏は「出来高はある程度増加するかもしれない。多くの投資家はFRBの決定が原因で損失を出したので、年末までにそれを取り返したいだろう」と指摘。「当社のエコノミストの予想では、FRBが緩和縮小に着手するのは来年3月なので、米国債利回りは低下して豪ドルとカナダドルは安堵感から上昇する可能性がある」と述べた。 <キャリートレード続行> 米ドルの借り入れコスト低下により、米ドルを使ったキャリートレードが復活しそうだが、6月のような外為出来高は短期的には再来しないかもしれない。 キャリートレードはこれまで利益を上げている。カス・ビジネス・スクールが昨年公表した調査報告書によると、過去30年間では年率5%のリターンを生み出した。 このため足の速い投資家、投機筋、銀行にとって、キャリートレードは相変わらず人気のリターン拡大戦略だ。 しかしノムラのクロスアセット・キャリー・トレード指数によると、バーナンキFRB議長が5月に初めて緩和縮小に言及して以来、通貨絡みのキャリートレードはアンダーパフォームしている。 ノムラのストラテジスト、アンキット・サーニ氏によると、G10諸国の通貨に投資するキャリートレードは5月のピークをなお6%下回っている。対照的に、社債など米国の高利回り資産に投資するキャリートレードは、FRBの緩和据え置き決定を受け、5月以来の損失分をすべて取り戻した。 FRBの決定によって今後の通貨の変動率を示すインプライド・ボラティリティも低下した。つまり通貨が急落する可能性は小さく、レバレッジを利かせたキャリートレードにとって良好な環境が生み出されている。 実際、9月17日までの1週間に豪ドルに対する投機筋のショートポジションは半減し、NZドルではロング超過に転換した。 モルガン・スタンレーのグローバルFXストラテジーヘッド、ハンス・レデカー氏は「当面のメッセージは明確だ。すなわち、キャリートレードは主役にとどまり、ドルと円が調達通貨の役割を果たすだろう」と語った。 (Anirban Nag記者)
今週の米株は政府機関閉鎖で混乱も、経済成長に懸念 2013年 09月 30日 13:26 JST [ニューヨーク 29日 ロイター] - 米議会の予算審議が難航する中、米株市場の投資家は政府機関の閉鎖という事態に備えている。 米下院は29日、医療保険改革法(オバマケア)の1年延期を盛り込んだ2014会計年度(13年10月─14年9月)暫定予算案の再修正案を賛成多数で可決した。 政府機関が閉鎖すれば、市場が混乱することが見込まれる。また閉鎖が長引けば、経済成長に重大な影響を及ぼすことも考えられる。 予算審議で与野党の溝が埋まらなければ、多くの政府職員が一時帰休となる。また米労働省も、協議が物別れに終わり政府機関が10月1日から閉鎖された場合、4日に予定している9月雇用統計の公表を延期する方針を明らかにしている。 アリアンツ・グローバル・インベスターズ(ニューヨーク)の投資戦略責任者、クリスティナ・フーパー氏は「問題の解決を市場は期待しているが、実現しないことがだんだん明らかになってきている」と指摘。ボラティリティの高まりに十分に備えておくべきだとしている。 政府機関閉鎖の恐れが市場の重しになっており、S&P総合500種.SPXは先週4週間ぶりに下落したが、多くの投資家は政府機関が閉鎖される確率は低いとみていた。ここ数年で政府が直面してきた他の問題が、最終的には解決されてきているという経緯があるためだ。 S&Pは今月3%上昇しており、過去最高値までわずか2%の水準にある。 ただし2011年には、米財政問題をめぐってスタンダード&プアーズ(S&P)が米国の長期信用格付けを最上級の「AAA」から1段階引き下げ、株価が影響を受けた。 サーハン・キャピタル(ニューヨーク)のアダム・サーハン最高経営責任者(CEO)は「政府機関の閉鎖はドミノの1つに過ぎない。倒れればその先は未知数で、状況を数字で表すことは不可能だ」と述べた。 これまでの経緯をみれば、同じような事態の中でも米市場は急落を回避できてきた。政府機関が閉鎖された1995年12月15日─1996年1月6日、S&P総合500種は0.1%上昇した。 センチメントレーダー・ドット・コムのジェーソン・ゲッパート社長のデータによると、政府機関が閉鎖された1995年11月13─19日には、S&P総合500種は1.3%上昇した。 成長率が振るわない中、こうした前例を踏襲することにはならないかもしれない。米連邦準備理事会(FRB)もつい最近、量的緩和策の規模縮小を見送り、経済成長率が目標に達していないことを指摘していた。 サーハン・キャピタルのサーハン氏は株価が過去最高値に近い水準にあり、今年は持続的な下落もほとんど見受けられないことから、下げの余地は大きい、と指摘している。
情報BOX:米政府機関が閉鎖された場合の影響 2013年 09月 30日 12:19 JST [29日 ロイター] - 与野党が予算案で合意できなければ、米政府機関の一部は30日深夜から閉鎖される。安全保障など重要な機能に関する支出やメディケアなど高齢者向け制度への支出は継続されるが、事務や規制を担当する職員、国立公園や美術館の職員など民生部門の連邦政府職員は一時帰休となる。 政府機関が前回閉鎖されたのは1995年12月16日から1996年1月6日で、その際は約80万人の政府職員が一時帰休となった。 以下、政府機関が閉鎖となった場合の予想される影響をまとめた。 <連邦政府職員> 最大100万人の連邦政府職員が10月1日から、無給の一時帰休となる可能性がある。職員の大半が一時帰休となるが、航空管制官や刑務所の看守など一部は、一時帰休の対象外となる見通し。議会スタッフも、雇用主の議員や委員会の要請があれば、職務を続けことができる。 <金融市場への影響> 新規株式公開(IPO)で資金調達を目指す企業は、延期を余儀なくされる可能性がある。企業は米証券取引委員会(SEC)に必要書類を提出することはできるが、SECは27日、政府機関が閉鎖されている期間中は、申請書の処理および承認手続きはできないとしている。 米食品医薬品局(FDA)の決定を待っている企業も、遅れに直面する可能性がある。FDAは「限定的な活動」は続ける、としている。 <政府の請負業者> スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、政府機関が閉鎖されて政府からの支払いが受けられなくても、それが2週間弱で解消するならば、軍事セクターの大手業者ならば対応できる、としている。ただ長引いた場合には、中小は財務的に苦しい状況に追い込まれるという。 <食肉検査官> 食肉検査官は、国家の安全に不可欠と見なされ、職務を継続する。 <軍> 米国防総省によると、軍人は全員、通常どおりの職務を続ける。一方、文官については、その多数が一時帰休の対象となる見通しという。 <連邦裁判所> 連邦裁判所は10営業日ほどは通常どおり業務を執行。それ以降については10月15日までに新たな指針が示されることになっている。 最高裁は、政府機関の閉鎖に伴う対応をめぐって、コメントを拒否した。ただし、過去の同様のケースでは、最高裁は閉鎖されなかった。 <IRS(米内国歳入庁)> 2012年連邦所得税申告書は4月15日が提出期限だったが、延長の手続きをした人は10月15日が期限。IRSでは、政府機関が閉鎖されても、納税申告やそのほかの税金支払いは受け付けるが、監査など多くの活動は停止する見通しで、コールセンターも閉鎖される。IRSは、職員9万人のうちおよそ90%が一時帰休となる、としている。 <医療保険改革法> 医療保険改革法は10月1日からスタートする予定であり、新たな保険の申し込みが開始される。必要な資金の手当ては既についている。
無税がくすぐる個人マネー、NISAで68兆円流入も 9月30日(ブルームバーグ):少額投資非課税制度(NISA)の口座開設手続きが10月1日から始まる。一定の条件下で値上がり益などが無税になる新制度は、昨秋以降盛り上がりを見せる日本株をさらに刺激するきっかけになり得る。シンクタンクの調査では、今後5年以内に最大68兆円の資金が株式などに流入するとの見方もある。 「株とギャンブルには手を出すな、との家訓にこれまで自然と従ってきた」という大手電機メーカー勤務の榎本俊哉さん(42)。昨年11月からの日本株の急上昇を見て、「株を持たないリスクを感じるようになった」と言い、NISAを「利用しようと、いろいろ勉強しているところ」だ。 株価低迷への対策として2003年に導入された現行の証券優遇税制は今年末に終了、14年から株式や投資信託などの売却益、配当金への税率が10%から本則の20%へ戻る。優遇税制の終了と同時に来年1月から始まるのがNISAで、年間元本100万円までの株式や投信を新規購入した場合、値上がり益や配当が5年間課税されない。NISA口座は14年から23年の10年間に開設が可能で、同期間に非課税投資枠を最大5つ、計500万円の枠を持つことができる。 フィデリティ退職・投資教育研究所の野尻哲史所長は、非課税枠の上限が夫婦なら1000万円、成人した子供2人まで入れると2000万円になり、「決してインパクトがないとは思わない」とし、個人マネーがリスク資産に向かう起爆剤になり得るとみる。 政府は20年までのNISA開始後7年間で、NISAを通じた投資総額25兆円を目標としている。野村総合研究所が8月に発表した分析結果では、5年後の投資総額を政府目標を上回る28兆−68兆円と試算。予測は個人へのアンケート調査を基に行われ、運用資金の原資は預貯金との回答が最も多かった。東証1部の時価総額 (27日時点で425兆円)に対する割合でみると、政府の目標は5.9%、同総研の最大推計値は16%に相当する規模だ。 山動かす起爆剤に 日本銀行の資金循環統計によると、日本の家計が保有する金融資産は6月末時点で1590兆円。うち現預金が860兆円と、54%を占める。株式・出資金は8.1%の129兆円、投信は4.5%の72兆円。欧米では、米国が現預金14%、株式34%、投信12%(3月末時点)、欧州は現預金36%、株式15%、投信7.2%(昨年末時点)で、日本の異質ぶりが顕著だ。 メリルリンチ日本証券の神山直樹チーフストラテジストは、NISAで個人資金が株式市場に直接入る点も大事だが、個人マネーの変化のカタリスト(触媒)になれば、「リスクプレミアムの低下とPER(株価収益率)の拡大を伴う形で海外投資家の行動に表れる可能性もある」と、海外勢の姿勢への影響にも注目している。東京証券取引所の直近データによると、9月第3週時点の個人投資家 の日本株売買代金シェアは34%。首位の海外投資家 の57%に次ぐが、その差はまだ大きい。 1980年代後半のバブル経済期以降、休止期間を挟みつつ、余裕資金で投資を続けてきた主婦の高木礼子さん(66)は、年金が年々減額されそうで「経済面の不安は尽きない。預貯金の利息は雀の涙で、株式などの運用も交え手元資金を増やしたいと常々思っている」と話す。手元に残るお金が実際いくらになるかが「すごく大事」と言い、「税金がかからないことは魅力が大きい」とNISAへの期待を語る 見込み含め322万件 10月から15年4月にかけ、公的年金の支給額は3段階で減額予定。一方、政府・日銀が2%の物価上昇率を目標に掲げる中、三菱東京UFJ銀行をはじめメガバンク3行の普通預金金利は0.02%にとどまる。普通預金で100万円の元本を2倍の200万円に増やすのには、3600年かかる計算だ。 NISA導入は金融機関にとっても格好の商機で、株式や投信の取引手数料をゼロにする動きが広がるなど、顧客の囲い込み競争は激しさを増す。日本証券業協会が8月上旬に実施した調査で、NISA口座を設けると回答した証券会社128社の「9月末までの見込みを含めた予約件数は合計で322万件」と、同協会広報部の渡辺康貴氏は明かす。銀行など他の金融機関でも、口座開設の予約は着実に積み上がっている。 SMBC日興証券・リテール事業推進部の中田太治部長は、関連セミナーの盛況、想定以上の口座開設予約から「実際の肌感覚として個人の関心の高さを感じる」と言う。三井住友フィナンシャルグループのメリットを生かし、株式へのニーズがある顧客を紹介してもらうなど、銀行と「うまく連携すれば、新たな投資家層を発掘できる」としている。 トラウマとの戦い SBI証券では、8月から9月にかけ全国5都市でNISAセミナーを実施し、定員250−300人が中心の各回ともほぼ満席で終了。また、「書類請求、口座開設予約の申し込みも足元増加している」と、鈴木建経営企画部長は話す。 NISAがすぐに貯蓄から投資への流れを加速させるかどうかについて、疑問視する声があるのも事実だ。史上最高値圏にある米国株に対し、TOPIX は24年前の最高値を現在6割近く下回るなど、日本の投資家の多くは株安のトラウマを抱えている。 早稲田大学大学院ファイナンス研究科の米沢康博教授は、金融ビッグバンの一環で99年に株式売買手数料が完全自由化、インターネット取引を中心に手数料は劇的に下がったが、「家計の株式保有比率は高まらなかった過去もある」と指摘。手数料自由化後には、短期売買の個人は増えたが、日銀統計によると、99年に9.9%あった家計の株式保有比率は、04年には9%とむしろ低下した。 商社に勤める山下貴さん(38)は、証券優遇税制の廃止で来年には税負担が今までの2倍に増えるため、「ことし中に利益が出ている保有株を半分以上売却したい。売却で捻出した資金の一部をNISA口座に投入する予定」としている。こうした動きもあり、NISAの「ネットの効果は限定的」と米沢教授はみている。 ただ、安倍晋三政権が進める経済政策「アベノミクス」の効果で、国内景気は回復基調にあり、長らく続いた株安・円高トレンドも大きく変化した。27日時点でTOPIXの年初来上昇率は42%と、先進国主要指数の中でトップを走り、個人の株式投資意欲の高まりにつながっている。投資信託協会の投信概況によると、株式投信は8月まで7カ月連続で資金流入となった。「継続的な相場上昇、企業の利益増加、若者の賃金増加、こうしたポジティブな要因が重なれば、個人のリスク資産運用は増えるだろう」と米沢教授も述べる。 恒久化の課題 NISAでは1人1口座しか開設できず、いったん口座を開くとスタート当初から4年間は金融機関を変更できない。既に保有する株式や投信の移管に加え、運用資産を売却した場合、その分の非課税枠を使った再投資も不可能。また損失が発生した場合、課税対象の通常の証券口座との損益通算も認められないなど、あくまで利益を得た場合にメリットのある制度だ。申し込み時には住民票が必要などの注意点もある。 独立系投信会社のさわかみ投信 の沢上篤人会長は、現行制度だと非課税期間は最長10年で、長期で運用したい個人には使いにくい面もあると指摘。「将来的に恒久化されれば、長期運用の個人マネーはどんどん入り、NISA経由の資金が日本株を押し上げる図式がいずれ出てくるだろう」と予想している。 NISAのモデルとなった英国で1999年4月に導入されたISA(Individual Savings Account)は、10年間の時限措置だったが、効果検証の結果、08年に恒久化された。英国では国民の約4割がISAを利用している。NISA恒久化の可能性について金融庁総務企画局の高橋敦子氏は、「円滑に導入され、普及・定着していくかを見極めた上で、検討する」とのスタンスだ。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 河野敏 skawano1@bloomberg.net;東京 岩本正明 miwamoto4@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:Sarah McDonald smcdonald23@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net 更新日時: 2013/09/30 12:31 JST |