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「JR北海道」を嗤えない日本の「現実」
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2013年 9月 29日 22:44 成瀬裕史 JanJanBlog
■「過激派分子」の工作か!?
JR北海道の「不祥事」が止まらない…。
9月24日、菅官房長官は、JR北海道が線路異常を放置していた問題について、「極めて悪質性がある。組織、体質的な問題もあるのではないか」と記者会見で厳しく批判した。
JR北海道では、2011年の5月、トンネル内で特急列車が炎上、乗客248名が自らの判断で非常ドアを開けて外へ避難。間一髪で死者は出なかったが、煙を吸った39名は病院へ搬送という「重篤事故」を起こし、国交省から「事業改善命令」を出され、社を挙げて「安全確保」に取り組んでいた筈だったのだが…。
その後も2012年には脱線事故が相次ぎ、2013年には1月に走行中の特急車両の「ドアが開く」という「重大インシデント(事案)」を皮切りに、2月、3月、4月には特急車両で「発煙」、
5月と7月には特急車両で「出火」という「重大インシデント」が発生している。
(原因はいずれもエンジンのオイル漏れらしいが…。)
加えて7月には、特急列車の配電盤からの「出火」事故も起きている…。
「社内に“過激派分子”でもいるのではないか?」
とさえ思ってしまいそうな、「重大インシデント」の“頻発”ぶりである…。
これ以外にも、7月には運転士が「覚せい剤」取締法違反容疑で逮捕。
9月には運転士が操作ミスを隠すためATS・自動列車停止装置をハンマーで破損…。
「不祥事」の“オンパレード”である…。
■「脱線事故」で判った“中堅社員”不足
そんな中、この9月19日に道南の七飯町で発生した「脱線事故」から明らかになった、「レール異常の放置」問題…。
国交省の「特別保安監査」等により、約270か所でレール幅の異常が「放置」されていた実態が明らかとなったが、その「ずさんな実態」の背景には、社員の「いびつな年齢構成」がありそうだ…。
2011年の特急“炎上”事故を受けた「安全報告書」P15の社員年齢構成によると、http://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/safe/safety/pdf/safetyreport2011.pdf
40代の中堅社員層が、他の年代の1/3以下と、極端に少ない。
いわゆる「働き盛り」「戦力」がいないのである…。
地元紙の報道によると、「保線」部門の社員は、2011年の特急“炎上”事故を受けて増員されたものの、定年後の再雇用や新入社員が増え、実際の「戦力」は不足のままという。
さらに人員不足の中、「検査周期の厳守」だけは強いられ、補修する前に検査だけが繰り返されるという「本末転倒」の悪循環が続いていたという…。
■「人員整理」と「財務改善」の末に…
JR北海道は、1987年に旧国鉄からの「民営化」によって誕生したが、開業当時は余剰人員を抱える中、社員の新規採用を極端に抑えていた。
それが現在の40代の“底”につながっている…。
また、民営化後は、売上増に向けて各種「営業」に力を入れるようになり、保線社員も『ビール列車』などに駆り出されていたという…。
また、JR北海道は、地方ローカル線を多く抱え、慢性的な「赤字体質」を抱えており、民営化当時から「経営安定基金」の運用益による「赤字穴埋め」が続いており、本州のJR各社よりも「営業圧力」は強かったものと思われるが、
路線に「ドル箱」を持たず、札幌以外は「過疎化」で駅前開発もままならぬ中、「経費削減」圧力だけが強まっていったのではないか…。
かつて、冬の北海道では、大雪や猛吹雪で道路が寸断する中、JRの運行は確保され、「冬こそJR」と信頼されていたが、現在では、保線人員削減の余波か、大雪となるとポイントの除雪が間に合わず、乗客の多い札幌周辺でも、すぐに「運休」になってしまうという…。
「運休」で乗客に“迷惑”をかけるよりも、保線人員削減による“財務改善”が優先されるという、何よりの「証左」ではあるまいか…!?
9月の脱線事故の直前、8月17日には道南の八雲町で倒木に貨物列車が衝突し、脱線事故が発生。
前日のゲリラ豪雨で川が氾濫。応急措置で土嚢を積んだが再度の氾濫で土砂が流され、線路が一部、宙吊りとなっていた。
さらに翌18日には、復旧後の臨時特急列車が、南隣の森町で線路上で土砂崩れを発見し、緊急停止した。
乗客約360人が徒歩で避難する際、80代男性が雨にぬれて体調不良を訴え病院に搬送された。
ゲリラ豪雨後の氾濫・土砂崩れが懸念される中、「営業最優先」で十分な監視も無く「運行再開」を強行した末の、「重篤事故」一歩手前の「脱線」「緊急停止」であった…。
なお、一連の不祥事発覚の元となった七飯町の「大沼駅」は、この森町の「緊急停止」現場の南、すぐそばである…。
■日本中の職場で「JR北海道」現象!?
しかし、このJR北海道の「人員・経費削減」と「財務最優先」の姿勢は、今日、我々の身近な企業・職場で「蔓延」しているのではあるまいか…!?
職場に若手がいない中、50代の職員が新人がやるような仕事をこなしたり、逆に若手社員とバイトしかいない営業現場があったり…。
職員体制を充実させて売上げを伸ばすよりは、派遣職員で人件費を抑え、手っ取り早く「利益向上」を目指す…。
事務や接客などは、それでも良いのかもしれないが、鉄道会社の保線や車両整備などの「技術職場」が、それで済む筈はない…。
「財務改善」のため、バブル崩壊以降、新規採用を殆ど控えていた日本の多くの職場で、これから10年後、全職員の1/3を占める50代の職員がそっくり辞めた後、「最少数派」の現・40代の職員たちは、職場の“技術”や“ノウハウ”を果たして引き継いでいけるのだろうか…?
■経営陣“刷新”が必要なのは?
政府は28日、国交省による「特別保安監査」の終了を受け、JR北海道に対し、社長以下の経営陣の刷新を図る方向で検討に入ったという…。
「ずさんな安全管理体制を続けた責任」を重く見て、経営トップの交代は避けられないと判断したようだ…。
「経費削減」と「財務優先」で「安全性」が蔑ろにされて「重篤事故」が発生した後も、「ずさんな安全管理体制を続けた」のは、今回のJR北海道だけではあるまい…。
そう、今も全国民、いや全世界の「安全」を脅かしている、東京電力による「福島第一原発」事故である…。
「津波」による「全電源喪失」の危険性が想定されていたにもかかわらず、「財務優先」のため、防潮堤の整備はおろか、非常用発電機の増設さえも行われていなかった。
同じ「福島第一」でも、6号機は冷却に海水を使わない空冷式の非常用ディーゼル発電機と電源盤を海抜13メートルの高台に増設したことで津波の難を逃れ、6号機とつながった5号機を含めて冷温停止が可能となった…。
事故後も、汚染水タンクを「コスト優先」で耐久性の劣るボルト式で済ませ、汚染水漏れを引き起こし、汚染された地下水が海へ大量に流出することが懸念される中、「莫大な費用がかかる」ことを理由に、一向に根本的対策を打とうとしなかった「東京電力」の経営陣…。
政府が「経営陣の刷新」を検討するのは、「こちらが先」なのではあるまいか…。
東京五輪に向けて、全世界に対し、「汚染水はコントロールされている」と高らかに宣言した安倍総理。
しかし、民主党が福島県で開いた会合で、東電役員から次の発言が飛び出した。
「コントロールするという手当てはしております。ただそこの想定を超えてしまっているのは事実です」
「今の状態は申し訳ありません、“コントロールできていない”と我々は考えています」
「安倍」総理が、この件での「名誉挽回」を期して望んだ「福島第一」事故現場の視察でも、
何と防護服の名札が、「安部」晋三となっていた…。
この映像を見た国民、あるいは全世界の人々は、「安倍総理は決して東電をコントロール出来ていない」ことを悟ったのではあるまいか…!?
電力会社関係者や経団連などから「政治献金」を受ける自民党をはじめ、電力総連や連合から「支持」を受ける民主党が、「東電をコントロール出来ない」ことは「自明のこと」かもしれないが…。
「経営陣の刷新」が本当に必要なのは、実は、我が国の「政権」そのものかもしれない…。
成瀬裕史記者のプロフィール
1960年生まれ。北日本の一地方在住。一次産業を主とする“地方”の復興のため、明治維新から続く中央集権・官僚主導の国家体制の“CHANGE”を志す。
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