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国語力がないだけではなく経済学的思考ができない大臣の発言
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20130927-00028463/
2013年9月27日 14時43分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
甘利大臣が本日、次のように述べました。
「民主主義国家なので政府が強制することはできない」
何を強制することができないかと言えば、賃上げのことなのです。政府は賃上げを強制できない、と。
何かおかしいと思いませんか? 別に人格を疑うほどおかしなことを言っている訳ではありませんが‥しかし国語力を疑いたくなってしまいます。
だって、民主主義国家なので、政府が企業に賃上げを強制できない、だなんて。
言うのであれば、「市場経済国家なので、政府が強制することはできない」となるのでしょ?
違いますか? 因みに、民主主義の国家であれば、議会が「賃上げ法」を制定すれば、どれだけでも賃上げを義務付けることができるのです。だって、実際に最低賃金法なる法律が日本だけではなく多くの民主主義国家にあって、企業は、それを下回る賃金で人を雇うことが禁止されているではありませんか。
そうでしょう?
それに、この大臣、そうした言葉の使い方の問題とは別に‥賃金というものの性格を分かっていないのではないかと思ってしまうのです。
賃金の原資は、内部留保にあるのでしょうか?
甘利大臣が次のように言うからです。
「企業側にとってみれば内部留保の流出になるかもしれないが‥」
違うのです。そうではないのです。賃金など様々な経費を削減するからこそ、利益が生まれ、その利益が内部留保になるのです。つまり、膨大な内部留保や利潤というものは結果に過ぎず、従って、理屈の上では幾ら利潤が増大しても賃金が上がることはないのです。
なのに、巨額な内部留保があるから、それを賃上げの原資に使って欲しいと懇願する政治家たち。
法人税減税も同じです。確かに法人税を減税すれば、税引き後の利益が大きくなるのはそのとおり。しかし、企業の利益というのは、収益から経費を差し引いた後に残るものなのですから、利益が増えたから、経費を増やすというものではないのです。
Aは収益、Bは経費、Cは利益とします。
A−B=C
株式会社というものは、利潤を追求するために存在しています。だから、Cを最大化することを目的として行動をする。
では、Cを少しでも大きくするためには、何が必要か?
答えは、Aを少しでも大きくしつつ、他方でBを少しでも小さくする。
その原理に従って行動するのが経営者というものですから、Cが大きいからといって、Bの増大を許すわけにはいかないのです。
もちろん、今言ったことは飽くまでも一つの理屈に過ぎず、仮にBを少々増大させても、そのことが原因でAの増大を招き、そして、結果としてCが増大することが確実であれば、Bの増大を許すことも合理的な行動であると言えるでしょう。
しかし、全ての企業が一斉にそのような行動に出るのであればともなく、そうではなく自分の会社が1社だけ、そのような行動に出ても、十中八九、否それ以上の確率で、自社の利益が減るだけの結果に終わるでしょう。だから、各社はなかなか賃上げには積極的になれない。
では、仮に政府が賃上げを強制するような法律を制定することができたら、どうなるでしょう?
そうなれば、ひょっとしたら賃上げの効果によって、消費が活性化し、経済がもう少し高い成長率を示すようになるかもしれません。しかし‥
そもそも日本で産業空洞化が起きたのは何故だったのでしょう? 何故企業は海外に生産拠点を移したのか?
いろいろな理由があると思うのですが、それでも最大の理由は、海外の賃金が安かったからです。
ということは、仮に政府が賃上げを強制するようなことをすれば、益々企業の海外脱出が盛んになるということではないですか。仮に海外脱出が起きなかったとしても、賃上げが強制された分、コスト増になる訳ですから、輸出産業の価格競争力損なわれるでしょう。
違いますか?
それにも拘わらず、賃上げを実現してくれと企業経営者にせがむ政治家たち。
流石に経済界の方も、最近は、言葉遣いには気を付けるようになってきて、少しは可能性があるかのような返答に心掛けています。
では、経営者は、少しは賃上げに積極的になってくれるのか?
それを期待するのは甘いと思った方がよいでしょう。何故なら、彼らの頭には、A-B=Cの公式が叩きこまれているからなのです。
彼らの言葉遣いが丁寧になったのは、今の安倍総理が余りにも強運であり、総理の言うことに反対しない方がいいと、学習したからだけの話です。
以上
小笠原 誠治
経済コラムニスト
小笠原誠治(おがさわら・せいじ)経済コラムニスト。1953年6月生まれ。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(いずれも秀和システム)など。「リカードの経済学講座」を開催中。難しい経済の話を分かりすく解説するのが使命だと思っています。
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