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7月に行われた就職フェア。学生らは各ブースで企業の担当者の説明を熱心に聞いていた。学生の間にもブラック企業の警戒は広がる=大阪市浪速区
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130925/dms1309251552020-n1.htm
2013.09.25
言葉だけが踊っていた感のあった「ブラック企業」の実態把握と取り締まりに、厚生労働省が本腰を入れ始めた。「若者の使い捨てを野放しにしているようでは日本の国の将来はない。きっちりと対応していきたい」。8月、田村憲久厚労相は閣議後の会見でこう明言し、長時間労働などで若者を使い捨てにするいわゆるブラック企業に対し厳しい姿勢で臨む方針を示した。国が“本気”になった背景には、ブラック企業が社会問題化し、若者を中心に不安が増大している現状がある。ブラック企業の実態把握のため、9月1日に1日限定で設けた電話相談はコールが鳴り止まなかった。厚労省は9月、離職率が極めて高いなどブラック企業が疑われる企業約4千社へ立ち入り調査を行うことを決定。こうした企業への指導監督を実施し、悪質な違反が確認されれば立件して会社名を公表するなど、取り組みを加速させている。
■100時間残業・手当なし、追い出し部屋も
「月に100時間以上の残業をしているし、休日も出勤しているのに手当てがでない」
「仕事上のノルマをこなせなかったら、小部屋に呼び出され2時間、説教を受けた」
「深夜3時まで働いても年休取得を認めてもらえず、売り上げが悪いとたたかれる」
ブラック企業の無料電話相談が実施された9月1日の日曜日。各労働局の担当者らがとる電話は、さながら“駆け込み寺”と化し、電話の向こうには悲痛な声があふれていた。この日1日で全国の相談電話に寄せられた1042件のうち、7割近くの相談が労働者本人からで、うち約半数が20〜30代の若者だった。
賃金不払い残業や長時間・過重労働、パワハラ…。相談が多かったのは主にこの3つ。中でも賃金不払い残業に関する相談は約半数を占め556件に上った。長時間・過重労働は414件、パワハラは163件に上った。
相談者は若者が多かったが、中年男性からも「追い出し部屋のような部署に異動させられ、長時間労働を強いられている。リストラ対象なのかもしれず、どうしたらいいのか」という深刻な相談が寄せられたという。
■鳴りっぱなしの電話
「10回線用意したが、1日中電話が鳴りっぱなし。受話器を置いても2、3秒後にすぐかかってきた」
大阪労働局の担当者は、1日限定だった無料電話相談の様子をこう振り返った。近畿では大阪を中心に200件の相談が寄せられた。
当日は近畿の各労働局から集められた約30人が対応。1人あたり30分〜1時間、相談内容を聞き取ったが、「あまりに電話がかかってくるので、取りきれなかった」(担当者)ほどだったという。
同様の殺到ぶりは各地域でみられた。全国で1042件もの相談が寄せられたが、取りきれない件数も含めると、実際はこれより多くの電話がかかってきたとされる。
厚労省の担当者は「予想外だった。700〜800件ほどかなと思っていた」と、ブラック企業に対する不安の深刻さと、事態が逼迫(ひっぱく)していることに気づかされたという。
■厚労省が使わない「ブラック企業」という言葉
対策に本腰を入れ始めた厚労省だが、実は「定義づけができない」として、“ブラック企業”という言葉は使っていない。代わりに「若者の『使い捨て』が疑われる企業」と、“単語”ではない言葉で表現している。
一般的にブラック企業とは、若者を大量に採用し、長時間、過重な労働をさせた末、退職に追い込む企業のことを指す。だが、採用や退職者数が多いという数字だけでは分からないのも実情だ。
特にパワハラは、労働基準法に明確な規定はなく、受け手の認識などにもよるため、判断するのが難しい場合もある。そもそも明らかな法令違反の疑いがない限り、厚労省が企業に踏み込むのは難しい。
「労基法違反などには指導、監督する権限があるが、パワハラの問題になれば、実効性のある窓口を紹介するという対応になる」(担当者)という。
若者の労働相談に乗るNPO法人「POSSE(ポッセ)」の今野晴貴代表はこうした点を踏まえ、外部の専門家らとの連携の重要性を訴える。
今野代表は「厚労省がブラック企業への対策を『若者の使い捨て』と『長時間労働』という2つにしぼって対策を強化しているのは非常に評価できる」と指摘。「パワハラや解雇の問題は労働基準監督署の管轄外。結局、取り締まりができないし、限界がある。そのため、弁護士や民間支援団体などとしっかり連携することが大切ではないか」と主張している。
■頼りはネット検索
ブラック企業へ不安を募らせる若者は多い。
就職活動中で企業の面接会場にいた大阪市の男性(22)は、気になる企業があれば必ずやることがあるという。その会社がブラック企業であるかどうかのインターネット検索だ。
検索項目に自分が気になる「企業(○○会社)」に「ブラック企業」と単語を入力し、企業にまつわる噂を調べるという。ネット情報が“頼みの綱”というわけだ。
男性は今春、大学を卒業し、市内の人材派遣会社に就職したが1カ月ほどで退職した。原因は多大な仕事量と社長からのパワハラ。先輩からは「ここにいる社員は最長で1年」と言われた。
「大学のときは内定がもらえればどこでもよかったんですが、今はブラック企業だけは嫌です」
身を持ってブラック企業がどんなところか体験したという男性はこう話し、企業への面接会場を後にした。この男性のようにブラック企業への過剰な警戒感が、情報が不足気味の中小企業を避ける動きにつながっている面も指摘されている。
危機感を抱いた厚労省は今年度から「若者応援企業」の認定制度など安心して働ける中小企業と若者の橋渡しをする取り組みも進める。
厚労省の対策は急ピッチで進んでいるが、多くの問題を内包しているブラック企業を完全になくすことは容易ではない。しかし、将来の国の担い手である若者をつぶしてしまうような企業を1社でもなくし、働きやすい労働環境を整えることは国の責務にもなりつつある。
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