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勘違いするな、景気いいのは一部だけ…株高の恩恵薄い会社員世帯 (産経新聞) 
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/632.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 9 月 25 日 00:50:00: igsppGRN/E9PQ
 

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/economy/policy/686072/
2013/09/23 21:47 産経新聞


【経済裏読み】

 2020年夏季五輪の東京開催が決まり、4〜6月期の実質GDP(国内総生産)改定値も前期比年率3.8%増と速報値(2.6%増)を大きく上回った。政府・与党内では、消費税率を予定通り来年4月に8%に引き上げる方針が日増しに固まりつつある。確かに、GDPの約6割を占める個人消費は0.8%増と堅調に伸びているが、一般のサラリーマン世帯は本当に好景気を実感しているのだろうか…。

■消費増税に追い風

 4〜6月期GDPは、安倍晋三首相が10月1日にも判断する消費税率引き上げについての最も重要な材料。消費増税法で実施の前提とした「経済状況の好転」を数値的にはほぼ満たしたといえそうだ。

 中でも、円安株高による資産効果で個人消費は拡大。物価が継続的に下がる「デフレ」からの脱却を目指す安倍政権の狙い通りで、来年4月の増税に向けた追い風になった。

 資産効果とは、保有する土地の価格が上昇したり、株価が上がったりして資産が増えると、消費の伸びにつながるとされる現象だ。とくに、安倍政権下では株高による資産効果が顕著だった。

 さらに、2020年の東京五輪について、甘利明経済再生担当相は「オリンピック開催に、GDP上方修正と、いい材料が加わった」と評価した。

 ところが…。

■資産効果の実態

 「株高の恩恵を受けている人は意外に少ない」

 りそな総合研究所の荒木秀之・主席研究員はこう分析する。

 総務省の家計調査(2人以上の世帯)によると、昨年1〜3月期に113万円だった勤労者(サラリーマン、公務員など)世帯の有価証券(株式など)保有額は今年1〜3月期は108万円とわずかに減っている。しかし、中小企業経営者など勤労者以外の世帯は301万円から376万円に伸びた。

 りそな総研は「勤労者世帯では所得の余裕が少ないことも一因」と分析する。

 実際、厚生労働省がまとめた7月の毎月勤労統計によると、残業代などは増えたが、基本給など「所定内給与」は前年同月比0.9%減の24万1090円と14カ月連続の減少だった。

■近畿の有価証券保有割合、8割は勤労者以外の世帯

 さらに、近畿2府4県では、勤労者世帯と勤労者以外世帯の有価証券保有額の差は広がる。

 勤労者世帯は134万円から144万円と小さな伸びにとどまったが、勤労者以外の世帯は311万円から550万円と全国を上回る大幅な伸びだ。近畿では、勤労者以外の世帯の有価証券の保有総額は全体の8割を占め、勤労者世帯の3.8倍にも達する。

 りそな総研の荒木研究員は「首都圏では、外資系金融機関の社員などアッパーミドル(中流階級の上位層)と呼ばれる人たちの株式投資が盛んだが、近畿ではアッパーミドルの勤労者が少なく、中小企業のオーナーらが株式投資を牽引(けんいん)している」と分析する。

 サラリーマン世帯には株高の資産効果が表れにくくなっており、「株高による消費の押し上げはそろそろ限界」との悲観論もささやかれている。

■「消費税増税」の外堀は埋まったが…

 消費税を引き上げるか否かを判断する材料では、GDPの他、7月の雇用、生産、消費、物価関連の統計も軒並み改善を示す結果となった。中でも、全国消費者物価指数は前年同月比0.7%上昇し、4年8カ月ぶりの上げ幅水準となった。あるアナリストは「消費増税に向けた環境はほぼ整った」と話す。

 しかし、中身を見ると、円安の影響で、電気代が1割近く上がっているのをはじめ、エネルギー関連商品の価格が集中的に上昇している。

 収入が増えないまま、消費税が引き上げられると、家計は厳しくなり、結果的に税収が減る恐れもある。

 安倍政権の最重要課題であるデフレ脱却は賃上げがカギを握る。政府は、企業に賃上げを促す法人減税制度の拡充を検討するが、あまりやり過ぎても、財政再建は遠のく。

 順風満帆に見える安倍政権だが、「最大の難局」に立っているといえそうだ。

(藤原章裕)


 

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コメント
 
01. 2013年9月25日 02:09:41 : qUxJjXsl5I
産経が「ちゃんと批判もしているぞ」という予防線を張っているということは
実体はかなり悪いとみたほうがいい。 あの産経がだ

02. 2013年9月25日 02:12:59 : niiL5nr8dQ
【第111回】 2013年9月25日 熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]
景気の脅威は消費税より円高・株安
誰も見通せないリスクは誰が負うか
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
 安倍首相が近々、消費税増税を最終決定するという。すでに増税を意識して経済対策を具体的に構想しており、10月1日の日銀短観公表後のどこかのタイミングで、増税決定を発表することだろう。

 筆者は、安倍首相が「2013年4-6月の経済状況を見て」、2014年4月の消費税増税を改めて判断するという判断基準に関しては大いに疑問を抱いている。

 この判断基準がおかしいと思うのは、次の4つの理由からである。

(1)2013年4月から秋までの経済データをつぶさに検証しても、2014年以降の景気情勢は完全には見通せない。

(2)2014年4-6月以降の景気の持続性は、消費税の反動減よりも、そのときの海外経済の動向に依存する部分が大きい。

(3)2013年6月あたりまでは、黒田総裁の金融緩和効果が、円安・株高を促して、製造業・非製造業の収益回復に大きく貢献したが、もうその効果は出尽くしている。

(4)経済成長戦略は確かに重要だが、消費税増税のタイミングまでに、景気を大きく底上げする即効的効果は見込めない。

 多くのエコノミストや専門家と言われる人々もまた、最終的に政治が決断するしかない問題に関して、増税後の景気情勢が見通せるかどうかという別の評価基準に論点をすり替えて考えるようになっている。

 2014年の景気情勢について言えば、消費税だけではなく、海外経済の動向や米QE3縮小の行方によって大きく変わる。もしも、新しいFRB議長が米金融緩和の縮小に失敗して、日本経済を円高・株安が襲えば、場合によっては景気失速というリスクが蓋然性を帯びてくる。

リスクは円安・株高の
環境が失われること

 複雑なのは、2014年の金融環境は見えない点だ。すでにFRBがQE3縮小に着手しようとしており、さらに次期FRB議長がどのような金融政策を推進するのかが見えない。

 9月のFOMCは、QE3縮小に着手しなかったが、だから12月になってそれができる環境になるとは言い切れない。9月に判断しなかったことは、この先も判断を留保することになりかねない。

 日本経済の先行きについて、米金融政策の要因を「棚上げ」しておいて、「大丈夫だ」とは言えないだろう。2012年秋以降のアベノミクスが景気刺激効果を発揮したのは、金融緩和効果に依存する部分が大きい。

 先入観を排して言えば、目下のQE3縮小に伴う混乱に対しては、黒田総裁の追加的金融緩和で円高・株安リスクに対処するのが、理屈の上からは自然な対応だと考えられる。

 ただし、4月に開始された量的・質的金融緩和は、これ以上に拡張することができるかどうかを吟味する必要がある。黒田日銀総裁には、米国発のマーケットの混乱が起こった場合、追加緩和によって対処する余地があるかどうかを検討していただきたい。

 筆者なりに世界経済の展望を見通すと、ファンダメンタルズの部分では、米国のISM指数の上昇、欧州・中国のPMIの上昇などからうかがうと、循環的な景気変動は2013年後半から拡大ペースを上げると見ている。

 メインシナリオは、消費税増税の反動減のときに世界経済がファンダメンタルズから大きく悪化するとは見ていない。だから、2014年の日本経済の脅威にあるとすれば、米金融緩和の行方だと考えている。

消費税増税のリスクは
腹をくくるしかない

 安倍政権は今のところ「景気情勢が安定しているから消費税の増税に踏み切る」という判断をしようとしているが、本当は社会保障システムを支えるために消費税が必要だという政治姿勢を前面に出す方が、国民は納得しやすいだろう。

 しょせん、景気見通しに基づいて消費増税に踏み切っても、2014年の景気情勢が安泰とは誰も言い切れない。

 万一景気が悪くなったときに、景気判断を間違えたという釈明を安倍政権ができるかどうかを考えると、おそらく、そうした理由付けはできなくなるだろう。最後は、判断の責任の所在をはっきりしなくてはいけなくなる。

 かつて、消費税を導入した後で退陣した竹下登首相は、「消費税を導入したことは後世の歴史家が評価してくれる」と言い残した。消費税法案を成立させた野田佳彦前首相は、「政治生命をかける」として、法案審議に臨んだ。

 経済政策には、科学的分析の部分の他に、政治判断の部分がある。今回の消費増税の判断は、後者のウエイトが大きくなると考えられる。

 誰もが明確に先行きを見通せないからこそ、政治的リーダーの判断に依存せざるを得ないということも、はっきりさせた方がよい。
http://diamond.jp/articles/print/42089

 


 

 


 【第6回】 2013年9月25日 ダイヤモンド・オンライン編集部
緊急アンケート!消費税増税
若者たちは7割が反対
増税になれば5割超が買い物を控える
 安倍首相が消費税増税を実施するかどうかの決断の時が近づいている。すでに、読売新聞、朝日新聞が、首相が来年4月からの消費税率の引き上げ(5%→8%)を決めたと報じている。

 消費税は老若男女、お金持ちも貧乏人も関係なく、すべての国民から徴収する税だけに、本来ならば7月の参院選で争点とすべきテーマだった。そこで、ダイヤモンド・オンライン編集部では、ネット調査会社・リビジェンの協力を得て、消費税増税に関するアンケートを行った。

 実施日は9月12日、調査対象は10代〜40代を中心とした男女500名。若年層と働き盛りの世代に焦点を絞った。消費税率が引き上げられた場合、高齢者に比べて、はるかに長い期間にわたって、多くの消費税を納めなければならなくなるからだ。

消費税増税反対が圧勝


調査元:リビジェン「スマートサーベイ」(https://www.smartsurvey.jp
題名:「消費税」に関するアンケート調査
実施日:2013-09-12
調査対象:10代〜40代を中心とした男女500名
 Q1は来年4月から消費税率が引き上げられる予定であることを知っているかかどうか、を聞いている。

 さすがに「知らない」と答えた人の割合は13%と、大部分の人が引き上げについては知っている。ただ、世代が下がるごとに、知らない人の割合は高くなる。40〜49歳が6%、30歳〜39歳が7%なのに対して、20歳〜29歳は14%、10歳〜19歳18%だ。

 そもそも若い人たちが政治や経済に無関心なのか、あるいは選挙で争点化しなかっただけに、周知が遅れているのか。その両方の可能性があるだろう。

 Q2は消費税増税に賛成か、反対か、を聞いた。賛成派26%に対して反対が74%。大手マスコミの世論調査では、賛成、反対が拮抗しているケースが多いのに対して、反対派が圧勝するという異なる結果が出た。今回の調査は若い年代の割合が高いため、このような結果になったのかと思いきや、各年代とも反対が70%を超えている。特に20歳〜29歳は反対が76%、30歳〜39才は78%と、一段と高くなっている。

 では、引き上げに賛成の人は、その理由を十分に理解したうえで、賛成しているのだろうか。Q3では、Q2で賛成と答えた人にその理由を知っているかどうかを聞いた。「よく理解している」と「なんとなく理解している」を合わせると67%に達するので、消費税増税の理由は、多くの人が分かっているように見える。一方、「よくわからない」も3分の1に達する。なぜ、いま消費税を増税するのか、10月に開かれる国会で十分説明する必要があるだろう。

至極まっとうな反対の理由


 Q4からQ6 は記述式で、Q4、Q5は賛成と回答した人に、その理由を書いてもらった。「社会保証やら財政が大変なため」(37歳、専業主婦)、「少子高齢化などに伴い、社会保障関係費が増大しているため」(17歳、高校生)など、ほぼ増税の理由をよく理解していると思われる回答が太宗を占めたものの、「大変だから」(18歳、大学生)、「今後の、貯蓄のため」(52歳、会社員)、「五輪招致にも関係するのだと思う」(19歳、大学生)という回答も散見された。

 Q6では、反対の理由を書いてもらった。反対の理由は大きく、3つに分けることができる。一つは、消費税率の引き上げによって、生活が苦しくなるというもの。「生活できなくなる」(34歳、専業主婦)、「消費税は金持ちにも貧乏人にも平等にかかってくる。正直貧乏人には辛い」(24歳、専業主婦)が代表的なものだが、「これから家や車など高額のものを買う年になってくるので」(20歳、大学生)と、高額商品に対する負担増を懸念する回答もあった。

 二つ目が、アベノミクスに代表される経済政策の効果に対する疑問。「給料が上がらないのに物価だけ高くなるから」(35歳、会社員)、「景気が回復していないのに税金を上げるのは経済に良くないから」(26歳、大学院生)、「金融緩和でお金が出回って活性化しているのに、増税で人々がお金を貯め込むようになれば、金の回りが悪くなり再びデフレになるから」(22歳、会社員)などが、その代表的なものだ。


 三つ目が政府(官僚)や政治家に対する不信。「市民から取らないで、自分達の給料を減らすか議員の人数を減らせばいい」(40歳、専業主婦)、「消費税を上げたとしても、不当なものに使われそうだから」(24歳、女性)、「用途があいまいすぎる。まず削るところを削ってからの増税ではないか、と思うので納得できない」(33歳、会社員)と、厳しい声が並ぶ。

 最後の問いQ7では、もし消費税率が引き上げられても、同じように買い物を続けるかどうかを聞いた。「今までどおり」と消費行動を変えないと答えた人は、全体の約3割。「買は控える」は55%、「分からない」を合わせると約7割となった。当然のことながら、個人消費にはマイナスの影響があると考えてよいだろう。

増税して景気対策は変じゃないか

 首相官邸のホームぺージでは、「消費税率引上げによる増収分は、全て社会保障の充実・安定化の財源となります」と明記されている。お金に色はついていないから、毎年、増え続ける社会保障費を消費税増税で賄えれば、その浮いた分で財政赤字の縮小や1000兆円にも積み上がろうとする政府の借金返済に回せるはず、とだれもが考える。

 ところがである。来年4月実施予定の消費税増税(3%の引き上げ)による収入増が約8.5兆円なのに対して、5兆円規模の景気対策が検討されている。8.5兆円収入が増えても、5兆円景気に使うとしたら、何のための増税かということになる。しかも、消費税という形で、国民からまんべんなく金を巻き上げておいて、景気対策として何に5兆円を使うかを決める権限は政治家と官僚にある。景気対策と言えば聞こえはいいが、特定層に対する利益の還元ということに他ならない。

 加えて、麻生財務大臣は景気対策のために補正予算を組んでも、国債は発行しないで収めることを検討すると述べている。何のことはない補正予算の財源は捻出できると言っているのと同じではないか(詳しくは9月19日の「高橋洋一の俗論を撃つ」参照)。こう見てくると、「今なぜ消費税増税なのか」という疑問は強まるばかり。

 大マスコミの報道通り、安倍首相が消費税増税を決めるとすれば、10月の国会ではこうした疑問に、きっちりと答える必要があるだろう。このアンケートでは、7割に人が反対を表明しているのだから。さもなければ、いずれ首相と政権党は「倍返し」と言う形で、しっぺ返しを食らうことになるだろう。

(ダイヤモンド・オンライン編集長 原 英次郎)
http://diamond.jp/articles/print/42091


03. 2013年9月25日 02:35:05 : niiL5nr8dQ
消費増税には景気への最大限の配慮が必要

2013年9月25日(水)  永濱 利廣

 結論としては、来年4月に何らかの形での消費増税は致し方ないが、景気への最大限の配慮が必要と考える。

 まず、予定どおり3%を無防備のまま引き上げると相当景気へのダメージが大きくなる。理由としては、デフレに関連する指標を見ると、まだデフレ脱却から程遠い。こうした中で、仮に無防備で予定どおり3%の増税をすると、どれだけ負担が生じるかを試算した。参考のために1989年度と1997年度、それから今回2014年度に3%上げた場合、2%上げた場合、1%上げた場合、それぞれについて計算すると、1989年には物品税の廃止などもあり、ネットの増税幅が少なかった。それに対し1997年度は、消費税の引き上げ幅は2%、負担増は5兆円程度で限定的だったが、それ以外の負担増があり、結果的には9兆円近い大きな負担があった。

 確かに、1997年度は消費増税以外の負担増もあったため、消費増税の影響は大きいとは言えない。しかし、今回は仮に3%上げると、それだけで8兆円以上の家計の負担増になり、相当大きな家計の負担になる。逆に考えると、それだけ消費増税の上げ幅を縮小すれば家計の負担増は縮小されることになる。

デフレ関連指標

(出所)内閣府、総務省
消費税引き上げ年度の家計負担(兆円)

(出所)財務省、厚生労働省資料を基に作成
 特に1997年のケースには多くの示唆がある。注目すべき点は、今回の消費増税の判断として今年4〜6月期の経済成長率を重要視しているが、実際に1997年の1年前の1996年4〜6月期の経済成長率が年率換算でプラス4.3%だったことである。にもかかわらず、結局景気が腰折れしてしまったことからすると、半年前の経済指標で判断しても半年後の景気がどうなるかは明確には判断できない。これは重要なポイントである。

デフレ脱却が遠のく恐れも

 また、1997年の消費増税の悪影響は部分的であって、アジア通貨危機や金融システム不安があったという指摘がある。実際に、いったん1997年7〜9月期にはプラス成長に戻っており、その後マイナス成長に落ちこんでいる。しかし、今回も当時のアジア通貨危機に近い状態に全くならないとはいえない状況にある。背景には、米国の大胆な金融緩和がこれから出口に向かう状況にあり、成功する可能性は高いとは思うが、これまでどの国も経験していない大胆な金融緩和の出口に向かうという実験的なことするわけである。

 そういう不透明な中で、既に足元で新興国から資金が引き揚げられ、新興国自身の構造問題も出てきている。さらには、シリアの問題などもくすぶっていることからすると、今、景気が良いからと言って半年後は、必ずしも100%景気が回復を続けているとは言いきれない。

消費税導入前後のGDPと消費

(出所)内閣府
消費増税前後のGDPと消費

(出所)内閣府
 だからこそ、最大限の景気への配慮が必要なのである。実際、ESPフォーキャストの8月調査から民間エコノミストの経済見通しの予測の平均値を見ると、来年4〜6月期は年率換算でマイナス5%以上の落ち込みを示している。1997年の4〜6月期が同マイナス3.7%であったことからすれば、その落ち込みの大きさがわかる。

 そして、この通りの成長となったと仮定して需給ギャップを計算すると、これまでのアベノミクスの効果や駆け込み需要により景気が回復するため、今年度末には需給ギャップが一時的に解消する。しかし、その後は再度需給ギャップが拡大してしまう。これは、消費増税を無防備に行うと明らかにデフレ脱却が遠のくことを示している。

市場予想通りの成長となった場合のGDPギャップ

(出所)内閣府、JCER資料を基に予測
景気への影響、欧州の事例は当てはまらず

 さらに、内閣府の最新マクロモデルの乗数を用いて消費増税の影響を試算すると、予定どおり引き上げた場合、来年度の成長率を1.0%押し下げるということで、大きな悪影響が出る。それに対して、1%ずつ段階的に上げる場合、及び2%を初年度に上げてその後1%上げる場合を計算してみると、悪影響は軽減される。

消費増税の経済成長への影響

(出所)内閣府マクロ計量モデル乗数より筆者試算
 一方、欧州諸国では消費増税をしても景気への影響が軽微という議論があるが、これはそのまま日本には当てはまらない。なぜなら、欧州諸国はインフレで金利の水準が高いため、消費増税などの財政健全化を進めると財政プレミアムの縮小によって金利が下がるというプラスの効果が効くためである。それがクラウドイン効果として景気を押し上げるが、日本の場合はデフレで金利低下余地が少ないため、クラウドイン効果が効きにくい。これは非常に重要なポイントである。

 さらに筆者は、政府が前提としている税収弾性値1.1%というのは若干低く、2%台後半程度はあると考えている。理由としては、足元では欠損法人の割合が高いため、景気が良くなって法人税を払える企業が増えれば税収弾性値は高くなるためである。また、時価会計で資産の含み益や含み損の部分が利益に加算されるようになったことなどもあり、税収弾性値は過去に比べて高くなっている可能性が高い。

 以上を踏まえて、実際に先ほどの3つのケースに、先送りも含めてプライマリーバランスがどう改善するかを試算した。具体的には、中長期財政シナリオの経済再生ケースと参考ケースをベンチマークとして、「先送り」、「1%ずつ」、「2%の後に1%ずつ」で経済成長率を試算した。結果は、増税をできるだけしない、もしくは小幅にした方が経済成長率は高まるという結果になる。

プライマリーバランスに留意し、効果的な対策を

 また、1990年代後半以降の税収弾性値(2.9%)を前提とすると、増税を大幅に実施したからといってプライマリーバランスがその分改善するとは限らず、あくまでも計算上であるが、「1%ずつ」、もしくは「2%の後に1%ずつ」の方が長い目で見るとプライマリーバランスの改善は大きくなるという結果になる。

プライマリーバランス(経済再生ケース)

(出所)内閣府「中長期の経済財政に関する試算」から作成
プライマリーバランス(参考ケース)

(出所)内閣府「中長期の経済財政に関する試算」から作成
 以上をまとめると、先送りはプライマリーバランスの改善が遅れるため可能性としては低いが、段階的引き上げの方が予定どおりよりも計算上は効果が高いということからすると、政治面や実務面のハードルが克服可能であれば、段階的引き上げは有力な手段と言える。ただ、それが物理的に困難となれば、予定どおり上げざるを得ないが、その場合は効果的な景気対策が必要と考えられる。

 ただ、消費増税は財政健全化を進めるためのものであるため、できるだけ国債増発は無いほうが良い。足元ではアベノミクスの効果で税収が上ブレしている。さらには、金融緩和の効果で金利も低水準にあるため、あくまでも筆者の試算だが、税収上振れ+国債利払い下振れ+予備費で少なくとも5兆円以上は財源が捻出できる。従って、その範囲でやることが望ましい。

 具体的な補正予算のメニューとしては、公共事業が一般的だが、公共事業については足元でも問題になっている、いわゆる建設労働者の不足で需要が出現しにくいところがある。このため、公共事業に頼るのは危険である。効果的と考えられるのは投資減税で、短期で需要を出すためにはある程度時限措置的な、もしくは減税率を段階的に縮小していく減税措置をやれば前倒しで需要が出現して悪影響を軽減しやすいと考えられる。

低所得者向けに期間限定の商品券も選択肢

 また、消費税増税になると逆進性の問題が注目されるため、低所得者向けの簡便な給付というのも必要になってくる。そこでも需要創出効果を高めるには、期間限定の商品券を配ることなども検討に値しよう。さらに、今期の企業業績が相当良くなることが予想されることを考えると、来年4月からの消費増税の悪影響を最大限軽減するためには、来年の春闘も重要である。そういう意味では来年はさらなる春闘への働きかけや企業の賃上げに対するインセンティブを誘発させる政策も必要になってくると考えられる。

 結局/、2015年10月にも2%上げるスケジュールを考えると、2016年には衆参の選挙が控えていることもあり、今回の消費増税は非常に重要である。つまり、今回の消費増税でいかに景気への悪影響を軽微にできるかが証明できれば次の消費増税も実施しやすくなるが、逆に失敗してしまうと次の増税が困難になる。そういう意味でも、今回は非常に慎重な景気への対策が必要ではないかと考えられる。

このコラムについて
永濱利廣の経済政策のツボ

アベノミクスの登場で経済政策から目が離せなくなりました。政府や日銀の動き方次第で仕事や暮らしは大きく変わります。独自の経済分析に定評のあるエコノミストが、常識や定説にとらわれない経済政策の読み解き方を伝授します。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130920/253657/?ST=print


 


 

【第77回】 2013年9月24日 藤井 英敏
そろそろ短期的な調整を警戒 「空売り比率」で相場を判断せよ!
 日経平均は2020年の東京オリンピック招致が決まる前の9月6日の1万3860.81円から20日の1万4742.42円まで、2週間で881.61円(6.36%)上昇しましたが、そろそろ短期的な調整入りを警戒しておく必要があります。
日経平均の日足チャート(6カ月)。緑が5日、赤が25日、青が75日の移動平均線(出所:株マップ)
 そこで、相場がピークを付けて調整入りするかどうかを判断する指標のひとつとして、投資で成り上がりたいあなたは、「空売り比率」に注目しておきましょう。
「空売り比率」は相場のピークアウトを示唆している
 政府が実施している空売り規制の一環として、東京証券取引所は日々、市場全体の売りに占める空売りの割合「空売り比率」を発表しています。
東京証券取引所のHP内に掲載されている「空売り集計(日時)」(東証HPより) * http://www.tse.or.jp/market/data/karauri/index-market.html
 東証が日々公表している空売り集計では、投資家自身が保有する現物株を売る実注文と投資家が株券を借りてきて売る空売りの2種類があります。その2つを合計した1日の売り注文全体に対する空売り注文の割合が空売り比率です。
各日のPDFをクリックすると実注文と空売りの各代金と比率が表示される(東証HPより)
 「空売り比率」には個人などの信用取引のほか、機関投資家が直接大口株主と株券の貸借契約を結んで借りた株券を売却する取引も含まれます。一般的に、「空売り比率」が30%台に乗せてくれば相場はボトムアウト、逆に20%を下回り、18〜19%程度になるとピークアウトを示唆するとみられています。
 空売りは将来必ず買い戻す必要があります。また、制度信用取引なら6カ月以内という期限付きです。このため、「空売り比率」が大きいということは、今後、ショートカバー(空売りの買戻し)が入りやすく相場が上昇し易いということを意味しています。
 ちなみに、9月20日の「空売り比率」は、価格規制ありは8.8%、価格規制なしは9.7%で、合計18.5%です。このため、目先は、ピークアウトを警戒しておく必要があるのです。
 ただし、9月末の配当権利付き最終日の25日までは、権利取りの買いが見込まれる上、裁定解消売りも出難いため、需給は良好です。このため25日までは、下値は下値で相当堅いと考えます。調整入りは権利落ち日の26日以降と考えるのが妥当でしょうね。
調整入りのきっかけは“米国発”の可能性大
 調整入りするきっかけですが、やはり、米国発となりそうです。具体的には、(1)金融政策を巡るFRB(米国連邦準備制度理事会)の混乱、(2)米政府予算や連邦債務の上限引き上げを巡る米与野党の交渉が難航、の2点です。
次のページ>> 調整一巡後は保ち合い「上放れ」に備える
 (1)に関しては、18日のFOMC(連邦公開市場委員会)でQE(量的緩和政策)縮小決定の予想を外された市場は、FRBの動きに疑心暗鬼に陥っています。FOMC後も、縮小時期を巡るFRB高官の発言が相次いでおり、緩和縮小を巡る思惑が交錯しているのです。
 まず、20日に、セントルイス連銀のブラード総裁が量的金融緩和策による証券購入の減額について、10月にも始める可能性があるとの認識を示しました。しかし、23日に講演したニューヨーク連銀のダドリー総裁は「経済はなお緩和的な金融政策の支えが必要だ」と述べています。このように、各連銀総裁の意見は統一されておらず、先行きの金融政策に不透明感が非常に強いのです。
 (2)に関しては、米国では、10月1日から始まる14年会計年度の予算案が成立していません。月内に議会が法案を可決しない限り、政府機関の窓口が閉鎖される恐れが出ているのです。米下院は20日、政府機関に対する予算を10月1日から12月15日まで手当てする一方、医療保険制度改革法(通称オバマケア)への予算打ち切りを盛り込んだ法案を可決しました。しかし、この暫定予算案を巡り、民主・共和両党には23日も妥協する動きはみられていません。またまた、辟易するような民主・共和両党のチキンレースが繰り広げられています。
 (1)(2)共に、投資家がリスクオフ要因です。つまり、安全資産とされる円が買われる要因です。円高なら、日経平均は調整色を強めることになるとみるのが妥当ですね。
日経平均は1万4953.29円を上抜けると年内高値を目指す
 テクニカル的には、日経平均の26週移動平均線(20日現在1万3828.48円)は45週連続で上昇しました。一方、13週移動平均線(同1万4077.09円)は3週連続で上昇しました。両線が上昇中ですので、現状は、中期上昇トレンドの中の「中段保ち合い」といえます。
日経平均の週足チャート(1年)。緑が13週、赤が26週、青が52週の移動平均線(出所:株マップ)
 このため、今後のチャートパターンは、トライアングル(三角保ち合い)を形成する公算が大きいです。しかし、2020年の東京五輪招致決定で、上振れする可能性が急激に高まっていることは事実です。よって、目先は短期調整の可能性は高そうですが、調整一巡後は、「保ち合い」上放れに備えるべきでしょう。
 当面の日経平均は、13週移動平均線(同1万4077.09円)が強いサポートとして意識されるでしょう。これを割り込んでも、26週移動平均線(同1万3828.48円)が押し目限界と考えます。なお、今後、7月19日の1万4953.29円を上抜けると、「保ち合い」上放れが実現します。そうなれば当然、次のメドは5月23日の1万5942.60円ということになります。
http://diamond.jp/articles/-/42111?page=3


04. 2013年9月25日 02:57:54 : niiL5nr8dQ
米国のシリア攻撃騒動が残したもの

米国の威信低下と一段の中東情勢不安定化

2013年9月25日(水)  門司 総一郎

 8月末にかけて米国がシリアを攻撃するとの懸念が強まり、日本株も含めて世界の金融・証券市場に動揺が広がりました。その後シリアが、保有する化学兵器を2014年半ばまでに廃棄するとのロシアの提案を受け入れたため、米国によるシリア攻撃の可能性は低下し、市場も表向きは落ち着きを取り戻しました。

 しかしながら先行きに不透明感は残ったままです。今後も折に触れ市場を揺さぶりかねない、このシリア情勢について掘り下げて考えてみたいと思います。なおこのコラムでの私の見解は、あくまでも経済や金融市場などへの影響の観点から戦争や軍事行動に言及するものであって、それらの是非善悪を論じるものではないことをあらかじめお断りしておきます。

長期化するシリア内戦

 まず、これまでの経緯を振り返ってみます。2010年12月にチュニジアで始まった反政府デモは瞬く間に北アフリカ・中東各国に広がり「アラブの春」と呼ばれるようになりましたが、シリアでも2011年3月15日に各主要都市で反政府デモが発生しました。これが全土に拡大して内戦となり、現在も継続中です。

シリア内戦の経緯(2013年8月まで)

出所:各種資料より大和住銀投信投資顧問作成
国外からの介入と変容する内戦の性格

 当初、反体制派の中心をなしたのは「シリア国民評議会」、また武力闘争を担ったのは離反兵士によって組織された「自由シリア軍」でした。しかし、その後、徐々に反体制派の性格は変わっていきます。

 2012年半ばになると、ジハード(聖戦)によるイスラム国家樹立を目指すスンニ派の過激派組織が国外から流入、反体制派と連携して内戦に参加し始めました。その代表がアルカイダ系といわれる「ヌスラ戦線」ですが、それまで劣勢だった反体制派はイスラム過激派の参加により攻勢に転じました。ただ、その一方でこうした組織の参加により爆弾テロが増加、一般市民の被害が拡大したとも言われています。現在でも、こうしたイスラム過激派が軍事面では反体制派の主力をなしている模様です。

 その後も反体制派は攻勢を強め、一時は「米政府も『 (アサド政権の)崩壊は時間の問題』(フォード米駐シリア大使)と認識している」(2012年12月15日付朝日新聞)と言われました。しかし、3月から4月にかけてレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラがアサド政権に支援のために本格参戦したことをきっかけに、今度は政府軍が攻勢に転じます。

 ヒズボラがアサド政権を支援するのは、これまでシーア派の分派アラウィー派であるアサド政権の支援を受けていたためです。しかし政権はシーア派(アラフィー派)ながら、シリア国民の70%は同じイスラム教のスンニ派であるため、国外の有力なスンニ派指導者が相次いでヒズボラの参戦を批判、反体制派への参加を呼び掛けました。そのため、ここに来て内戦は「シーア派とスンニ派の『代理戦争』」(2013年6月15日付毎日新聞夕刊)の性格をも帯び始めました。

 もう1つ政府軍の巻き返しを許した理由は反体制派内部での対立です。大まかに言って反体制派はシリア市民や元兵士によるリベラル派、国内外のイスラム勢力、さらに自治の拡大を目指すクルド人勢力に分類できますが、三者三様の思惑で政府軍と戦っているためにそれぞれの意見が食い違い、反体制派同士の武力衝突も生じています。また、米ロが提唱する和平のための国際会議もアサド政権が参加する意向であるにもかかわらず、意見がまとまらないため反体制派が参加を拒否しているため、開催できない状況です。

地政学リスクでの下落は買い

 こうした中、反体制派の情報として8月21日にダマスカスで政府軍が化学兵器を使用、多数の死者が出たとの疑惑が持ち上がりました。その後はすでにみなさんご存知の通りですが、一時は米国などによるシリア攻撃への懸念が高まり、ヘーゲル米国防長官が「(シリア攻撃を)実行する準備はできている」(8月28日付日本経済新聞)と語った8月27日から28日にかけて世界的に株式相場が下落して、債券相場は上昇(利回りは低下)、原油は買われました。しかし、その後はオバマ米大統領が攻撃に消極的な姿勢に転じ、軍事介入の可能性が遠のいたことから株式は買い戻され、債券と原油は売られています。

米10年債利回りとS&P500(日次)

出所:Bloombergより大和住銀投信投資顧問作成
北海ブレント先物価格(日次、ドル/バレル)

出所:Bloombergより大和住銀投信投資顧問作成、期近物
 オバマ大統領の変貌に唖然とした方も多かったと思いますが、内外の世論の支持を得られなかった以上、ある意味、仕方なかったと思います(それにしても見事なへたれぶりですが)。

 経験則的には地政学リスク絡みで株価が下落する場面では、買い向かって成功することが多いのですが、今回もそうした結果となりました。

短期的な影響は小さい

 さて米国とロシアは9月14日に外相会談でシリアの化学兵器を廃棄する枠組みについて合意しましたが、9月15日付日本経済新聞によればその骨子は以下の様なものです。

シリア政府が保有する化学兵器を2014年前半のうちに完全に廃棄する
アサド政権に1週間以内に化学兵器の詳細を申告するよう要求
今年11月までに国際査察官の受け入れと安全の保障を要求
順守しない場合は国連安全保障理事会が国連憲章第7章に基づく措置をとる
 アサド政権が正直に化学兵器の詳細を申告するのか、申告した場合にその保管と破棄をどのように進めるのかなど、この合意が実行されるかどうかについての不透明感は極めて高いといえますが、少なくともしばらくの間は米国がシリアを攻撃することはないと思われるため、当面この問題が市場に影響を与えることはないと見ています。

米国とオバマ大統領の威信低下

 一方、長期的な視点に立った場合、今回の一連の動きの意味、あるいは政治や経済、市場に与える影響などは大きく2つ考えられます。

 1つ目は、米国およびオバマ大統領の威信低下です。米国が“世界の警察官”でないことが明らかになったことにより、北朝鮮やイランなどが核兵器の開発など揺さぶりをかけてくる可能性は多くの方が指摘していますが、これまでと比べて金融市場はより頻繁に地政学リスクと向かい合うことになるでしょう。

 また、そうした状況が各国の政策に影響することも当然考えられます。例えば、日本で言えば、安倍晋三首相が集団的自衛権の憲法解釈見直しなどを急ぐことになるかもしれません。

 またオバマ米大統領の指導力低下により、米国の政治が一段と混迷するリスクも出てきたと見ています。もともとオバマ大統領はリーマン・ショックを終わらせたことと医療保険制度改革を除けば、就任以来大した実績はなく、しかも後者は今でも共和党の抵抗により骨抜きにされかねない状況で、その指導力には疑問符が付きます。今回のへたれぶりで今後の政権運営は一段と厳しくなるのは必至と思われますが、既にサマーズ元財務長官の米連邦準備理事会(FRB)議長への起用断念などに影響が出ているのかもしれません。

 ここから10月末にかけて債務上限の引き上げや来年度(2013年10月から14年9月)の予算策定など重要な政治案件が続きますが、そこで与野党の対立により議論が進展しなければ、債券や株式市場に影響が出ることになると思います。

一段と不安定化する中東情勢

 2つ目は、シリアの内戦を含む今後の中東情勢です。シリアの反体制派にとって、今回、米国がアサド政権を攻撃することが劣勢を挽回する最後のチャンスとの見方もありましたが、それは期待できくなりました。であれば反体制派としては交渉のテーブルにつくか、それともじり貧になるのを待つかの二者択一の様な気がしますが、必ずしもそうではありません。

 前述の様にシリア内戦には国外からスンニ派、シーア派両方の武装勢力が参加しています。またアサド政権はロシアやイラン、反体制派は米国やサウジアラビア、カタールなどから兵器や資金の支援を受けており、こうした状況を見ると内戦というより地域紛争に近いとも考えられます。今回の騒動でも、主役はアサド政権や反体制派ではなく、米国とロシアでした。特に反体制派についてはその存在はほとんど感じられません。

 したがって内戦が終了するかどうかはシリア国内だけでなく、こうした国外の勢力による部分も大きいと思われます。更に長期化すれば、中東情勢は不安定化したまま、ということになるでしょう。

 もう1つ注意しておきたいのはイスラエルの動きです。今回、米国の中東地域への影響力が低下したことにより一番影響を受けるのはイスラエルであり、今後一段とタカ派的な姿勢をとる可能性がありますが、そうなればそれも不安定さを増幅する要因と考えられます。シリア内戦においても、今年の1月にイスラエルが化学兵器の流出阻止を狙ってシリアの施設を空爆したことが、結果的にヒズボラの内戦への介入を招いたとの指摘もあります。

 このように短期的には米国の軍事介入のリスクが消えたものの、中長期的には中東の不安定度合いは増しており、今後も注視が必要と考えています。

 なお最後になりますが、中東地域では10年に1回程度戦争が発生しています。特に理論的な根拠がある訳ではありませんが、前回のイラク戦争から10年が経過しているので、そういう意味でも注意が必要です。

中東地域で起きたこれまでの戦争

出所:各種資料より大和住銀投信投資顧問作成


このコラムについて
政治と市場の“正しい”見方

 今、日本は新政権の誕生で「政治」と「金融市場」の関係がこれまで以上に強まり、複雑化しています。さらに欧州の債務危機や米国の財政の崖、中国の新執行部選出など、政治と市場を巡る動きは、海外でも大きな焦点となっています。

 しかし、市場関係者がこの両者の関係を論じる場合、「アベノミクスで日本は変わる」など物事を極めて単純化した主張になりがちで、十分な分析がなされているとは言えません。そこで、このコラムでは政治と市場の関係について深く考察し、読者の皆様に分かりやすく解説していきます。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130920/253654/?ST=print


05. 2013年9月25日 08:15:10 : niiL5nr8dQ
給与が増えない中で消費税率が上がれば、景気は確実に失速する
2013/9/24
 今月12日、安倍首相は消費税率について、来年4月に予定通り5%から8%に引き上げる方針を固めました。10月1日に発表される日銀の企業短期経済観測調査(短観)の内容をみた上で、同日中にも正式発表します。

 消費税増税を行うと「景気が腰折れするのではないか」という懸念が取り沙汰されていますが、この状況では私はほぼ確実に景気は減速すると考えています。景気後退に対処するために、景気対策を行うとのことですが、財政を健全化させるための消費税上げで、さらに景気対策でお金を使うというのはおかしなことです。今回は、消費税増税の決定までの経緯と増税後の影響、日本の財政について、私の考えを述べたいと思います。

政府が10月1日に消費税増税を正式発表したい理由

 今月12日、安倍首相は消費税率について、来年4月に予定通り5%から8%に引き上げる方針を固めました。正式発表は10月1日になりますが、この日を選んだのは企業の景況感を示す9月調査時点での最新の日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)と、最新の完全失業率などの指標を示す8月調査の雇用統計の発表があるからです。

 日銀短観について、簡単に説明しておきます。短観というのは、日銀が3カ月に1度発表している統計調査のことです。全国約1万社の企業を対象に、業況や雇用、在庫、設備投資、商品価格などを調査して、業種ごとや企業規模ごとにまとめられるのです。

 この調査は、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を差し引いた数字で表されます。すべての企業が「良い」と答えればプラス100ですし、半分の企業が「良い」と答えて、半分の企業が「悪い」と答えれば、ゼロになります。このような方法で算出される指標をDI(Diffusion Index)と呼びます。

 もう少し具体的に説明しますと、この調査は、「3カ月前と比べて、今の状況はどうですか?」という聞き方をする「最近」の数字と、「3カ月後の見通しはどうですか?」という聞き方をする「先行き」の数字があります。

>> 日銀短観の発表と同日を狙って増税を表明

日銀短観の発表と同日を狙って増税を表明

 また、日経新聞の景気指標欄には、「大企業 製造業」と「大企業 非製造業」の業況判断の数字だけが掲載されていますが、実際の日銀短観の資料は、もっと詳細で長いレポートになっています。興味のある方は、日銀のホームページから無料で見ることができますので、調べてみてください。中小企業の業況感などの他に、設備や人員の状況なども同じDIという方法で調査しています。

 では、大企業の業況判断の数字を見てみましょう。


 ここで少しこのところの短観の数字に注目してみましょう。「大企業 製造業」の3月調査はマイナス8、6月調査は4、「大企業 非製造業」の3月調査は6、6月調査は12となっており、いずれも改善していることが分かります。

 ここで特に注目していただきたいのは、「先行き」の数字です。これは、6月調査から3カ月後、つまり9月調査の時点での見通しを示す数字です。ただし、経営者は見通しを慎重に考える傾向がありますから、「先行き」は実際より若干悪い数字になることが多いという傾向があることに注意してください。

 「大企業 製造業」の「先行き」は10、「大企業 非製造業」は12ですから、大企業製造業は6月調査よりも改善、非製造業は横ばいです。つまり、大企業製造業は改善、非製造業は横ばいでももともと良い数字ですから、9月調査ではは高い確率で良い数字が発表されると推測できるのです。

 そこを政府も読んでいて、日銀短観の発表と同じ日の10月1日に消費税増税の決定を正式発表しようとしているわけです。

>> 「雇用統計」も「短観」同様、順調に上向いてはいる..「雇用統計」も「短観」同様、順調に上向いてはいるが

 同じ日に発表される「雇用統計」も、今のところ順調に回復してきています。


 「有効求人倍率」は0.94倍まで改善し、「完全失業率」は3.8%まで低下しており、かなり好調だと言えます。景気の状況は8月も大きくは変わらないままでしたから、おそらく10月1日に発表される8月の指標も、いい数字が出るのではないかと思われます。さらに、雇用の数字は「遅行性」があるので、景気に少し遅れて改善する傾向があります。また、急に大きくトレンドが変わることは少ないので、これまでの景況から見て、大きく悪化することはまずないと考えられるのです。

 この「雇用統計」と「日銀短観」は、経済指標の中でも景況感を示す上でとても重要な数字です。このような重要な指標が、10月1日の午前中にいい結果が発表される可能性が高いわけです。さらに、8月に発表された4〜6月期の国内総生産も9月の改定値で上方修正されて、名目GDPは年率3.7%、実質では年率3.8%と高水準になりましたから、このタイミングで消費税増税を発表してしまえば、あまり批判が出ないのではないか、という思惑があるのではないかと考えられるのです。

 逆に言いますと、その後に発表されるその他の指標で少々悪い数字が出ても、増税を行ってしまうということです。

>> 消費税増税は景気にどのような影響を与えるのか

消費税増税は景気にどのような影響を与えるのか

 ここから、消費税増税が日本経済に与える影響などについて、私の意見を述べたいと思います。


 表にあるように働く人一人当たりの給与総額の平均を示す「現金給与総額」は、6月は前年比0.6%、7月は同比0.4%(速報値)と確かに反転していますが、1%に満たないほどの水準です。仮に給与増がこのままの状況か、よしんば来年4月までの間に前年比1%まで上がったとしても、消費税が3%上がれば、実質的に所得が減ることになります。

 さらに消費の数字も見てみますと、「消費支出2人以上世帯」や「小売業販売額」はまだ伸びていないことが分かります。その上で、増税によって所得が実質的に減少すれば、景気に悪い影響が出る可能性が高いのです。

 以前もお話ししましたが、今年の春先以降、株式の時価総額が上がったことから、百貨店の売上高が増えました。その中でも大きく伸びたのは、貴金属や美術品などの高額品です。しかし、消費全体を見ると、それほど強くはないことが分かります。アベノミクスによって景気がよくなってきたと言われていますが、まだその影響が限定的であると言えるのです。

>> 給与が増えないと継続的に消費は伸びない

給与が増えないと継続的に消費は伸びない

 このコラムでは何度もお話ししていますが、継続的に消費が伸びるようになるためには、やはり給与が増えなければなりません。ところが給与は微増に留まっている上に、物価も好ましくない上がり方をしているのです。政府がかなり執拗に企業に賃上げを要請する主な理由はここにあります。


 「消費者物価指数」を見ますと、今年5月以降反転し、じわじわと上昇しつつあることが分かります。この原因は、円安による「輸入物価」の上昇です。表にある「輸入物価指数」はこのところ大幅に上昇しています。輸入物価が上がって、企業がその分を吸収できなくなって、最終消費財に転嫁せざるを得なくなってきた、という様子が窺えます。これでインフレになっても、価格上昇分のお金が海外に出て行くだけですから、景気には全くいい影響を与えません。今のところは残念ながら、いわゆる「コストプッシュ」型の「悪いインフレ」が起こっているわけです。需要が伸びて物価が上がる「ディマンドプル」型のインフレではないのです。

 さらに注目すべきは、「現金給与総額」の増え幅よりも、「消費者物価指数」の上昇分の方が大きいということです。つまり、株式などの資産を持たない一般家庭にとっては、給与が若干上がっても、それ以上に「悪いインフレ」で物価が上昇しているわけですから、すでに家計が若干圧迫されているというわけです。そこに消費税増税3%がさらに家計にのしかかるのです。

 景気が回復しつつあり、企業業績は確かに改善していますが、GDPの55%強を支えているのは家計の支出です。家計の収入が十分には改善しない中で、消費税率を3%上げることを決定されてしまうと、景気が後退する可能性が高いと私は懸念しているのです。

>> 景気対策の内容も見直すべき

景気対策の内容も見直すべき

 そこで政府は、消費税増税によって景気が腰折れするのを防ぐために、3%の増税分のうち約2%にあたる5兆円規模の経済対策を行うと考えているようです。はたしてそれは妥当なのでしょうか。

 消費税率を1%引き上げると、約2.7兆円の税収増が見込まれます。つまり、3%上げますと、税収は約8.1兆円増えると考えられます。そのうち消費税率2%の増収分に相当する約5.4兆円に近い規模を景気対策にあてると言っているのです。

 具体的にどのような景気対策を行うかは明らかにされていませんが、法人税下げと公共事業などが考えられているようです。もし、従来型の公共事業などを行うのであれば、家計への波及効果はほとんどありません。道路を造ったからと言って、すべての世帯の家計が潤うことはありませんから。

 つまり、国民全体の給与が上がらず、さらにインフレに苦しんでいる中で、国民全体からお金を吸い上げて、土木業者にお金を入れるということと同じだということです。これが本当に正しい経済対策のあり方、政治のあり方なのかどうか、十分に検証しなければなりません。

 もちろん、公共事業だけでなく、投資減税を行うという話も出ていますが、もし減税を行うのであれば、法人税の課税ベースを広げた上での税率下げを行う方がはるかに効果的です。減税の効果があまねく行き渡るからです。

 このように、政府が行う景気対策のあり方も見直さなければなりませんし、そもそも、消費税を上げることで景気対策をしないといけないのであれば、消費税の上げ方自体を考えるべきではないでしょうか。

>> なぜ消費税を上げなければならないか

なぜ消費税を上げなければならないか

 なぜ消費税を上げなければならないか、改めて考えてみてください。日本の財政状況が悪いから、消費税を上げて財政を改善するのが目的であるはずです。もちろん、そこには現在の社会福祉の水準を維持するという目的がありますが、そこで、「景気対策をしなければならないから、赤字国債を増発しよう」などと考えるのは、どう考えてもおかしいことです。自己矛盾です。

 穿った見方をしますと、これは財務省にとって最高のシナリオです。税収が増えることで、自分たちの権限の源泉、つまり歳出の裁量が増えるわけですから。さらに、族議員たちにとってもベストなシナリオです。参院選に勝たせてもらったお礼に、地元に「公共工事」という形でお金を配れるのですから。そんなシナリオに、なぜ私たちが乗せられなければならないのでしょうか。

 私は、消費税を上げることについては、財政状況を考えても一概に反対ではありません。ただ、このコラムでも何度もお話ししているように、来年4月に3%上げてしまうと景気が腰折れする可能性が高いので、1%ずつ上げていくのが望ましいと言っているのです。さらに言えば、その分を社会保障費に回すのは仕方がないと思いますが、同時に歳出削減も行わなければ、結局、財政はいつまでたっても改善しないということです。

 政府は、2020年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化しようとしています。2015年度までに対GDP比の赤字額を2010年度の水準の半分にして、2020年度までにゼロにするということです。増税をしても、歳出を削減する努力をしていかなければ、この目標を達成することは難しいでしょう。これも公約していることですから、消費税上げと同様、この公約が守られなければ、日本国国債の格下げということも十分に起こりうることです。

>> 成長戦略第二弾はどうなったのか?

成長戦略第二弾はどうなったのか?

 2020年には東京オリンピックが開催されることが決定されました。それ自体は悪いことではありませんが、それに浮かれて経済対策が疎かにならないことを強く望みます。

 もう一つ、9月に成長戦略第二弾が発表されることになっていますが、それはどうなってしまったのでしょうか。具体的な議論があまり漏れ聞こえてきません。まさか、政府は内容が不十分な現状のままでいいと思っているわけではないでしょうが、日本全体の経済が底上げされるような、足腰を強めるような成長戦略を打ち出してくれることを心から期待しています。

(つづく)
>> 本連載は、BizCOLLEGEのコンテンツを転載したものです

◇   ◇   ◇

小宮一慶(こみや・かずよし)


経営コンサルタント。小宮コンサルタンツ代表。十数社の非常勤取締役や監査役も務める。1957年、大阪府堺市生まれ。81年京都大学法学部卒業。東京銀行に入行。84年から2年間、米国ダートマス大学エイモスタック経営大学院に留学。MBA取得。主な著書に、『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』(以上、ディスカバー21)、『日経新聞の「本当の読み方」がわかる本』、『日経新聞の数字がわかる本』(日経BP社)他多数。最新刊『ハニカム式 日経新聞1週間ワークブック』(日経BP社)――絶賛発売中!

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