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みやかわ ただお 統計研究会会長、一橋大学名誉教授。麗澤大学名誉教授。1931年生まれ。一橋大学経済学部卒業。一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了。商学博士(一橋大学)。一橋大学商学部教授、同部長、経済企画庁システム分析調査室長などを経る
日経平均株価が犯した「三つの罪」 『日経平均と「失われた20年」』を書いた宮川公男氏に聞く
http://toyokeizai.net/articles/-/19260
2013年09月21日 東洋経済
日経平均株価は「三つの罪」を犯し、経済を映す「鏡」としての役割が大きく歪んでしまっているという。統計研究会会長で、一橋大学の名誉教授である宮川公男氏に聞いた。
──アベノミクスで頑張っても、日経平均株価は上がりにくくなっているのですか。
簡単には2万円台に乗せないと見ている。この間、日経平均は三つの基本的な問題を抱え込んでしまった。「三つの罪」を犯したからだ。それは、算出している日本経済新聞社も気がついているはずだ。
──三つの罪?
順次説明したいが、わかってもらうには、そもそもダウ式平均株価の計算方式の説明がいる。
手作業での計算の時代に始まったから、ダウ式平均株価の計算の仕方は単純だ。選定された構成銘柄の株価を足して、構成銘柄数で割る。
これを出発点にした単純算術平均タイプだ。ただ、連続性を確保するために工夫がされている。
構成銘柄の株式分割や入れ替えが発生すると、分子の株価合計が断続的に変化する。それによる平均株価の変化が生じないように分母(=除数)を修正する。
2012年末現在、日経平均の除数は、これまでにそのような修正が続いているので、構成銘柄数そのものの225ではなく、そのほぼ9分の1の約25(24.975)になっている。
──構成銘柄採用に関する問題点を指摘しています。
1980〜90年代に高成長を遂げた企業を構成銘柄に適切に採用しなかった。そのため、特に90年代の「失われた10年」において、日経平均は低迷の度が増した。
たとえばダイエー(現・イオン傘下)は、70年に三越(現・三越伊勢丹ホールディングス)を抜いて小売業首位の売り上げになったが、ずっと採用されなかった。スーパーが採用されるのは、00年にイトーヨーカ堂(現・セブン&アイ・ホールディングス)やジャスコ(現・イオン)が入るまで待たなければならない。京セラやファナックも採用されたのはその時期。リース業に至っては、80〜90年代にすごい勢いで成長していたが、オリックスさえいまだに入っていない。
一般に新しく入る銘柄は株価が高い。交代させられる銘柄は多くが安い。入れ替え後の分子、つまり株価合計は大きくなり、それに合わせる形で分母、つまり除数は上がる。
全体として見れば、除数の下がり方は構成銘柄の株式分割のスピードを反映しているはずだ。ところが日経平均は80年代後半あたりから、00年まで下がらない。これは入れ替えの際に、成長する銘柄を十分に採用してこなかったからだ。そのために除数は横ばいになってしまった。
──成長銘柄の採用が不十分だったのですか。
これが第1の罪といえる。米国でも同じようなことがある。IBMはニューヨーク(NY)ダウ平均から40年間近く外されていた。その間にものすごく成長している。もしIBMを銘柄に採用していたら、NYダウはもっと高くなっていた。そういうミスは、あることはある。
──日経平均の構成銘柄は00年4月に30銘柄入れ替えられました。
一般に新しく入る銘柄は株価が高い。交代させられる銘柄は多くが安い。入れ替え後の分子、つまり株価合計は大きくなり、それに合わせる形で分母、つまり除数は上がる。
株価の低いものを30外して、高いものを30入れたから、株価合計がいっぺんに大きくなり、分子が実際に倍になった。この結果、分母も倍にということで、いきなり除数がほぼ10から20を若干超える水準になった。ものすごい断絶だ。
除数はダウ式の一番のポイントのはず。米国のように100ドル以下の株価を好み、盛んに分割をすれば、そのたびに除数は下がっていく。株式分割で株価が小さくなってしまうから、分母も連続性から小さくならざるをえない。つまり除数は下がる。これがダウ式(分母修正方式)で、NYダウはもともと28年に問題の多い分子修正方式から切り替えた。NYダウの除数は12年末で今や0.132129493になっている。
──00年の断絶は問題視され、議論がありました。
要するに225銘柄の中身が変わった。ボロ銘柄30をピカピカ銘柄30に入れ替えたのだから、ポートフォリオの性格が違っている。ダウ式は構成銘柄の等株ポートフォリオをベースにしているから、大きな入れ替えが一挙に発生すると、それに対応して、証券会社はもちろん、投資信託やデリバティブの連動ファンドも機敏に動く。そのため大量の異常な取引で株価が形成され、それがダウ式の除数に影響して平均株価自体をも歪んだものにしてしまう。
00年の際も告知期間の5営業日に実際に起こっている。入れ替え前最終日には、30銘柄のうち13がストップ高で引け、入れ替え日にストップ安の銘柄さえあった。30銘柄平均で、外される銘柄は30%下がり、逆に新規に入るものは28.4%アップしている。入れ替えの新旧銘柄間の株価格差は上積みされて急拡大し、除数の異常な上昇をもたらしたわけだ。そして、その異常に高い除数の値がその後の日経平均に埋め込まれ、上昇を抑える力になって、低迷が続くことになった。これが第2の罪だ。
──05年に日経平均は「みなし額面方式」を導入しました。
00年の事態に懲りて、除数を修正するダウ式の基本から外れて、株式分割の場合に分割前の1株の株価に戻して計算する古い方式に戻した。これがみなし額面方式だ。
いちばんわかりやすいのが、ソフトバンクだ。この方式に移った後、1株を3株に分割している。そうすると、今は額面そのものが廃止されているが、3分の50がみなし額面とされ、「50円額面」に戻すには3株分の株価にしなければいけないとして、3倍の株価で日経平均が計算されている。キヤノンは1株を1.5株に分割したから3分の100がみなし額面。ヤフーは「5万円額面」を各2株、2回の分割が該当し、今の株価の4倍が日経平均の分子に入っている。
これは05年導入で、その後、景気もそんなによくなく、株式分割もそれほどなかったが、ダウ式の歴史に逆行した古い方式だけに、分割があっても除数は下がらない。現在の除数約25なら、ソフトバンクが100円上がると、その3倍上がったのと同じで、これだけで日経平均は12円上がる。値ガサのファーストリテイリングが1000円上がると日経平均は40円上がる。株価の高いものが動くと、日経平均も同じ調子で動いてしまう。除数が低下しないみなし額面方式によって、日経平均の上値を抑えていることが第3の罪だ。
(8月26日インタビュー、『週刊東洋経済』9月14日号から一部抜粋して掲載)
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