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YAHOOニュース記事
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130919-00000395-wsj-bus_all
日本で進む従来型電力離れ─家庭での代替エネルギー発電が急拡大
ウォール・ストリート・ジャーナル 9月19日(木)19時2分配信
【大阪】東日本大震災をきっかけとする在来の電力会社への不信感から、日本では数万の世帯が水素燃料電池や太陽光パネルを用いた自家発電を始めている。日本は今や従来の電力供給網やそれを支えるビジネスモデルを覆す実験場として、世界をリードする存在となっている。
福島第1原発事故で主要電力源が機能不全に陥ってから2年半。大手住宅建設業者は新築物件に代替発電設備を標準装備として組み込み始めている。一戸建て住宅建設の国内最大手、積水ハウスによると、同社の建築物件の80%以上に太陽光発電システム、50%に燃料電池が完備されている。燃料電池による自家発電は積水の住宅以外ではほとんど知られていない新たな技術だ。
積水ハウスの石田建一・執行役員は、そうした動きの背景には「電気をどうせ使うなら自分で作ったほうがいい」という国民感情が働いていると話す。
日本におけるこうした中央集中型電力からの移行は、圧倒的に従来の電力供給網に依存する米国の電力会社にとって不安をかき立てるものだ。米民間電気事業者を代表するエジソン・エレクトリック・インスティテュート(EEI)は1月に発表したリポートで、新形態の電力によって、電気事業者は得意客を奪われ、料金値上げを余儀なくされ、それによってさらに顧客を失うという悪循環に陥る可能性があると警告した。
米国では、それはまだおおむね理論上の話にすぎない。しかし、そうした電力事業者の悪夢が現実となる可能性を示しているのが日本だ。
日本の主要電力会社は年間数千億円の赤字を計上している。東日本大震災から1年2カ月でそれら電力会社の国内原発50基全てが稼働停止を余儀なくされたことが、その主な原因だ。2基が稼働を再開したものの、保守点検のため今月再び停止された。さらに、ここにきて東京電力は、福島第1原発の貯水タンクからの漏えいを原因とする原発事故以降最悪の汚染水流出問題への対応に苦慮している。
東電は昨年、実質国有化された。また、高価な燃料輸入コストを賄うため、何度も電力料金の値上げを余儀なくされている。
こうした電力料金の値上げや福島第1原発の汚染水問題での度重なる失態で、新たなエネルギー源への関心が急速に高まっている。世論調査によると、過半数の日本人が原発の段階的廃止を支持している。一方、安倍晋三政権の下で日本経済に回復の兆しが見え始めていることから、原発は経済にとって不可欠との主張は説得力を失い始めている。
家を建てる際に太陽光発電システムと燃料電池を完備することを計画している大阪在住の会社員の女性は、「日本は地震大国だから原発には頼れない。怖い。太陽光などでできることをやりたい」と話す。
そうした心理が新たな需要を喚起し、一部ハイテク企業の業績に勢いをつけている。京セラによると、同社の4−6月期利益は太陽光部門の売上高が44%増加したおかげで3倍以上に拡大した。
住宅建設セクターも同様だ。積水ハウスによると、消費者需要全般が堅調なことに加え、代替エネルギーへの関心が高まっていることを受け、同社の5−7月期利益は前年同期比で倍増した。
日本ガス協会によると、3月末時点で家庭用燃料電池「エネファーム」を完備している世帯は約4万件。全世帯数に占める割合からすれば非常に小さいが、需要は急増している。エネファーム販売最大手の東京ガスによると、4月から9月の燃料電池の受注件数は約1万に上る。
同社は電気ウナギイヌをキャラクターに用いたテレビコマーシャルを展開している。エレキギターを持った男性が、電気ウナギイヌにプラグを差し込みギターを弾き始めるがショートしてしまい、燃料電池に切り替えるという内容だ。
震災後に施行された「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は、勝者と敗者をくっきりと分ける結果となった。これは、代替エネルギーの普及促進を目的に、一般家庭や企業で発電された電気のうち余った分を電気事業者が一定価格で買い取ることを義務づけるものだ。太陽光発電の場合、基本的な買い取り価格は1キロワット時当たり42円と、天然ガスの発電コストの3倍に達する。
元化粧品関連会社の幹部で今は引退している山本紀久雄さんは、東京郊外の自宅を取り壊し、住友林業に家の新築を依頼した。山本さんは「最初から太陽光(発電)をやりたかった。そうじゃないと屋根が無駄だから」と話した。住友林業が燃料電池も取り付けるよう提案すると、最初は何のことか分からなかったが、「便利だと思った」ため、そうすることにしたという。
細めの冷蔵庫くらいの装置が家の外に置かれ、静かに動く。水素および空気中の酸素を含む天然ガスを利用して発電し、お湯を沸かす。これらの装置は化学反応によってエネルギーを作り出す電池と似ているが、燃料電池は徐々に消耗することなく、燃料や酸素が供給される限り発電や発熱を続けることができる。
広谷しほさんのキッチンの壁のモニターには、燃料電池とソーラーパネルで毎分ごとにどの程度の電力が生みだされたか、そして、広谷さん夫妻が余剰分を電力会社に売却することによってどの程度の支払いを受けたかが表示される。夫妻は5月に約1万5000円稼いだ。広谷さんは「発電事業みたい」だと話す。
懐疑的な人々は、こうしたトレンドが市場経済というより助成金で成り立っているもので、持続不可能だと指摘している。こうした人々は、太陽エネルギー向けの助成金で公益企業が料金値上げに追い込まれたドイツを引き合いに出している。日本では東日本大震災後に成立した法の下で、太陽エネルギーへの有利な料金が保証されている上、震災以前から、約150万‐200万円かかる燃料電池コストの3分の1以上をカバーするような助成金が支給されている。
こうした支援は住宅所有者が自家発電への投資額を10年くらいで回収できることを意味する。助成金は少なくともあと2年間は継続される公算が大きいとみられており、太陽光発電を推進する人々は、2年後までには自家発電エネルギーコストが助成金なしでも競争できるほど下がる可能性があるとみている。東京ガスは家庭用燃料電池「エネファーム」の価格を、約70万円から2016年までに半分以上引き下げることを目指している。
こうした助成金は、家庭用装置のコストの一部が納税者など、電気料金を支払う人に転嫁されている。電力会社各社は輸入燃料や、余剰電力を買い取るコストを賄うため、電気料金を引き上げている。総合資源エネルギー調査会基本問題委員会の柏木孝夫委員(東京工業大学特命教授)は、国民への負担が急速に高まっていると指摘した。
東京電力は、家庭用装置の設置が拡大していることについてコメントを避けた。関西電力の広報担当者は、同社自体も大規模な太陽エネルギー発電施設に投資しており、変わりつつあるエネルギー市場で多くの異なる企業が成長するのに十分な余地があると述べている。
日本国内では、3月までの1年間に約4ギガワットの太陽発電容量を生み出す施設が設置された。これには家庭用も、商業向け生産業者が所有する装置も含まれる。これは1年前の水準を3倍近く上回っている。それでも、太陽エネルギー生産装置は太陽が出ている時しか機能しないことから、年間の総発電量は原発1基よりもまだ少ない。
太陽光発電について、日本はまだ、ドイツをはじめとする欧州諸国に追いつきつつあるところだ。ドイツは日本が導入しているような助成金を最初に実施した。米国の太陽光発電市場は日本と同様に小さいが急成長している。6月までの1年間に米国で設置された太陽光発電施設は前年比35%増加した。
日本は家庭用燃料電池については他の諸国より大幅に進んでいる。太陽パネルと組み合わせると、家庭では24時間連続で自家電力の供給が可能になる。
日本の企業は、住宅所有者が夜に使用するために太陽光発電を蓄積することが可能になり、余剰電力を電力会社に売却する必要性を減らすため、電池の開発に取り組んでいる。蓄電池の国内メーカー最大手、エリーパワーの幹部、河上清源氏は、各家庭が完全に自家発電だけで済ませることができるようになるには、まだ電池コストが障害になっていると述べた。
定置用蓄電池は一部の住宅建設業者のモデルの標準機能だ。東京ガス燃料電池企画グループのマネジャー、平真実氏は「いろんな流れが重なってきている」と指摘、「政府の中では、エネルギー源の多様化に関心が非常に高い。かたや、グリッドに依存したくない人も増えている」と話した。
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