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原油価格の高騰は14年まで?(写真のボードは、08年のリーマンショック直前の価格:撮影:今井 康一)
強引にリフレ政策を進める、安倍政権の末路 インフレ下の景気後退局面では、中央銀行は何もできない
http://toyokeizai.net/articles/-/19653
2013年09月19日 中原 圭介:エコノミスト 東洋経済
世界的に原油価格が高いのは、来年の2014年までではないでしょうか。
今の原油価格が高止まりしている要因は明らかで、中東地域における地政学的リスクにほかなりません。シリアの内戦、エジプトの政情不安、イランの核開発疑惑、イラクのロシアからの武器輸入問題など、複数のリスクが重なることによって、周辺産油国からの原油の安定供給を妨げるのではないかとの観測が高まっているからです。
■原油価格の上昇は、一時的にとどまる
最大のリスクはイスラエルのイランに対する軍事攻撃の実施ですが、これが現実のものとなれば、おそらく原油価格は120〜130ドル程度までの上昇を余儀なくさせられるかもしれません。
ただしこれはあくまでも一時的なもので、穏健派が主導権を握ったイラクが、今後は国策として精製工場を大増設し、石油輸出拡大を打ち出していることから、過去の連載でも述べたように、世界的に原油価格は右肩下がりで推移していくものと思われます。
中東のほかの産油国、とりわけアラブ首相国連邦のドバイや現時点で世界最大の産油国であるサウジアラビアなどは、原油の余剰時代を強く意識しているようです。稼ぎ出した原油マネーを原資に、新たな産業の創出に躍起になって取り組んでいます。
このように中東の国々がシェール革命のもたらす原油価格の下落に対して、強い危機意識を抱いて動き始めているのに対し、同じ資源国でもブラジルやロシアの反応はあまりにも鈍いと言わざるをえません。
■中国リスクへの意識が薄い、ブラジルやロシア
原油の価格が落ちてくれば、鉄鉱石の価格もツレ安になるわけです。しかも、あれほど需要を無視して資源を買っていた中国経済がひどい状況に陥っていて、政変リスクさえ考慮しなければならないのです。
これまでの中国は無理して鉄鉱石を輸入して、鉄鋼を造ることによってGDPをカサ上げしてきました。ところが、そこまで需要が伴っていなかったので、在庫が異常に積み上がってしまっています。
以前は、しゃかりきに生産する鉄鋼を消費するために、まったく採算の見込めないインフラ開発を行ってみたり、築年数の浅い工場を壊して新しい工場に建て替えたり、人の住まない場所にマンション群を開発したり、無駄の限りを尽くしてきたのですが、ついにそれを続けられなくなったのです。中国は今後、これまで続けてきた浪費経済の調整をするしかありません。
2000年以降、中国は鉄鉱石にはじまり、銅、亜鉛、ニッケルなどを貪欲に買い続け、世界の需要の約4割を担ってきました。資源インフレの元凶のひとつであった中国が資源の無謀な買い付けを改めればどうなるでしょうか。
ここでも長期的な視野に立てば、世界の資源価格が総じて下落せざるをえないのは火を見るより明らかなのです。原油に関しても、目先は高くなる可能性を秘めてはいるけれど、地政学的リスクが収束すれば、中東産油国の原油は確実にダブつくのです。
そうなれば、対策らしい対策を採ってこなかったブラジルは、深刻な試練に見舞われるでしょう。ブラジルの政治の悪いところは、通貨安、通貨高になっても、アメリカあるいはほかの先進国を批判するのみで、自国では何も対応しようとしなかったことです。
その結果、インフレで国民生活がかなり傷んできています。ブラジルは、BRICsの中で唯一格差の拡大があまり顕著ではない国として評価されていました。それが今や、止まらぬインフレによって格差拡大が進もうとしているのです。
ブラジルの政府や中央銀行の行動を見ていると、現在、金融政策を引き締めたらいいのか、緩和すればいいのか、わからなくなっていることがうかがえます。しかし、景気減速が進んでいる中でインフレが進んでいるのですから、正しい答えなど見いだせるはずがありません。
■いったんインフレが加速したら、制御できなくなる
これは、強引にリフレ政策を進める現在の安倍政権にもあてはまることです。インフレになれば、ブレーキを踏めばいいのだと簡単に言うのですが、ブレーキを踏んだところで、いったん加速してしまったインフレを制御できないのは、過去の歴史が証明しています。
景気後退の原因になるまでインフレが進んでしまい、そこで金融を引き締めてインフレを抑えようとすれば、さらなる景気の悪化を招き、もっと悪い結果を導いてしまうのです。おそらく、ブラジルも同じ行程をたどることになるでしょう。
ことほど左様に、インフレとは恐ろしいものなのです。景気減速、景気後退までインフレが進んでしまうと、もはや金融政策ではいかんともしがたいわけです。
これからのブラジルの結果を見るまでもなく、インフレを抑えようとして景気が悪い状況で金融の引き締めを行うと、景気がさらに悪化し失業率が高くなってしまいます。国民の生活はいっそう苦しくなります。
反対に、景気の浮揚を狙って許容できないインフレの中で金融の緩和を進めると、通貨安が定着しインフレに国民が苦しみ続けることになってしまうのです。どちらの選択肢を取っても、やはり国民生活には受難が待ち受けているわけです。
したがって私は、こういうときには、中央銀行は引き締めも緩和もせずに静観するのがいちばん無難であると考えています。ただし、政府に国が成長するための政策を実施するように働きかけることは、忘れてはなりません。
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