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所詮“島国”、身の丈の国家を目指そう 数年後に世界は失われた20年に突入する
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2013年09月17日 世相を斬る あいば達也
本日は多忙の為、筆者が一番納得しているエコノミスト、経済学者水野和夫氏の、最初に金融資本主義経済の頂点に至り、世界各国が日本追いつく関係だと云う事実を、的確に解説しているコラムがあったので、引用しておく。浜矩子、榊原英資なども日本経済の成熟をテーマに、色々と書いている。或る意味で、国家の責任を放棄して、マネーに身を委ねると云うアベノミクス(マネタリズム)の手法が取られたと云うこと自体が、成熟した国家経済を白状したようなものでもある。
つまるところ、そこそこの現在の生活レベルをプラスマイナス10%程度に抑え込めれば、鎖国をしても日本はやっていけることを示している。勿論、完璧な鎖国などはあり得ないわけで、必要があれば、他国からものを買い、他国に売ることが出来ないと云う教条的ものではない。榊原英資なども「鎖国シンドローム『内向き』日本だから生きのびる」などと、筆者張りの本を出している。少なくとも、安倍自民の目茶苦茶な経済政策は、他国とのかかわりが強くなるばかりで、折角のシコシコ貯めこんだ、日本の国民や企業の金が、“おあし”が生えて、早々に失う悪魔の道である。
≪ 「金融抑圧」で説明できるか 日本の超低金利(水野和夫)日本大学国際関係学部教授
日本の10年国債利回りが2.0%を下回って、この9月で17年目に入る。『金利の歴史』(原題 A History of Interest Rates 著者 Sidney Homer and Richard Sylla)によると、これまで国債利回りが複数年にわたって2.0%を下回ったのは、1611〜21年のイタリア・ジェノバと現在の日本の2カ国しかない。
17世紀初頭のイタリア・ジェノバの最低利回りは1.125%、日本のそれは0.315%(2013年4月5日)と、当時のイタリアを大幅に下回る超低金利である。2.0%割れの期間はイタリアが11年、日本の場合は17年目に突入した。
イタリアの経済学者カルロ・チポラは17 世紀初頭のイタリアの超低金利時代を「利子率革命」と名付けた。21世紀の日本で起きている超低金利は、利回り水準と期間において17世紀のイタリアをはるかに凌(しの)ぐのだから、「利子率革命」ということができる。なぜ歴史的な超低金利が起きているのかが問題であり、それいかんで超低金利時代がいつまで続くのかを予想することが可能となる。
マーケットで有力なのが米経済学者カーメン・ラインハートらの唱えた「金融抑圧」説だ。ブレトンウッズ体制下の金融規制によって実質金利がマイナスに抑制されていたことと同じことが、金融自由化を押し占めた21世紀のバブル多発時代において、リスク管理強化などに原因を変えて起きているという。
しかし、米国発の「金融抑圧」説が日本における「利子率革命」を説明できるかどうかは疑問だ。
■日本の長期金利低下の要因は「実物抑圧」
日本では異次元金融緩和が黒田東彦日銀総裁の下で実施されている。その目玉はマネタリーベースと日銀の長期国債保有残高を2年で2倍にするという点にある。しかし、これまでのところ日銀の国債保有残高が増えるにつれて、銀行の日銀預け金が増えただけだ。
中央銀行と民間銀行の連結バランスシートをつくれば、中央銀行の借り方(資産)に国債が、民間銀行の貸し方(負債)には預金が残り、日銀預け金が中央銀行と民間金融機関の間で相殺される。国債の保有者が民間金融機関から中央銀行へ移転しただけで、実体経済は何も変わっていない。
長期自然利子率は潜在成長率におおむね等しくなるのだから(「自然利子率について:理論整理と計測」日本銀行、2003年10月)、10年国債利回りが17 年にわたって2.0%以下で推移し、現在0.7%の利回りで推移しているというのは、1997年以降、日本の実体経済において「潜在成長率≒長期自然利子率」が成立しているからにほかならない(1997年以降、日本の潜在成長率は0.7%)。
日本の利子率革命は「金融抑圧」によってではなく、いわば「実物抑圧」で生じているのである。「実物抑圧」は実物経済の成熟化で起きているのであって、この傾向は今後も変わらない可能性が大きい。すでに日本では資本ストックが過剰になっているからだ。
■景気回復でも1人当たり賃金は減少
日本の資本係数(民間資本ストック/実質GDP)は世界で最も高く、10年国債利回りが2.0%を下回って以降、使用総資本利益率(ROA)は平均4.0%で推移している(±1倍の標準偏差でみれば3.2〜4.8%の範囲内)。実物投資のリターンが低下してきているので、実物投資金額はキャッシュフロー(内部留保利益と減価償却費の合計)の範囲内で十分賄うことができる。
その結果、企業の内部留保利益はバランスシートの資産サイドに現金・預金として積み上がって、銀行は預金が増加し国債を購入するか、日銀預け金に回すことになる。日銀預け金の利息0.1%は、期間の短い2年ないし3年国債などの利回り1.0%台前半と大して変わらないので、民間銀行のポートフォリオからみれば、銀行のバランスシートは変化していないことになる。企業の内部留保利益は人件費を削減した上で増加しているので、勤労者世帯の預金は基本的 には増えない。勤労者の持ち分であるはずの預金が企業預金に化けている。21世紀になって2回の景気回復において、1人当たり賃金は減少しているのであ る。
一方、年金の支払いなどで高齢者世帯は預金を増やしている。日銀の「資金循環勘定」によると家計の預金は2012年度に14.9兆円増加した。結局、家計の預金増の源泉は国の国債発行であるため、マクロベースでみれば、「日本国株式会社」の資産サイドで預金(法人、個人)が積み上がり、負債サイドで中央政府の負債である国債が累増している。
日本銀行が「異次元金融緩和」と称して国債購入を今後2年で2倍に増やすことで需給が逼迫し、「金融抑圧」によって一見、国債利回りの超低金利が実現しているかのようにみえる。だが、国が発行した国債の資金が実物経済に消費支出や 設備投資増などの形で環流しないので、国債という負債と預金という資産が両建てで積み上がっているにすぎない。誰が国債を購入するのかは国債の価格(利回り)に関係ない。
■近代の到達点に先に着いた日本
ただし、銀行預金はいつまでも増え続けるわけではない。モノはあふれていても、高齢化社会において今後サービス需要が高まることで、地銀の預金は2018年度に減少に転じると日銀は警告する(日本経済新聞13年4月24日)。その意味で消費税率の引き上げ(5%から14年4月に8%へ、そして15年1月に10%へ)を実施することで、日本国債の発行残高に占める外国人投資家の保有比率が一段と上昇することを防ぐことができる。日本に居住していない外国人投資家は事実上ゼロ金利に近い日本国債を長期保有してくれないので、日本は預金が減少に転じる前に年間の国債発行額を抑制する必要がある。
企業が実物投資に、家計が個人消費支出に慎重なのは、すでに近代社会が成熟して、日本ではあらゆるモノが「過剰・飽満・過多」になっているからだ。この「過剰・飽満・過多」は米知識人スーザン・ソンタグによれば西欧文明が行く先の到達点だ。
預金の減少以前に消費税を引き上げていけば、日本の超低金利時代は米量的緩和第3弾(QE3)の縮小や日本の量的緩和政策に関係なく続くことになるだろう。近代の成熟化した日本での金融政策は実態に追随し、国債市場を反乱させないことが重要な任務となる。日本が先に近代の到達点にたどり着いたのだから、米国で起きている「金融抑圧」を日本に当てはめても意味がない。今の日本の姿は10年後の米国なのである。 ≫(日経新聞:マネーブログ カリスマの直言)
水野和夫(みずの・かずお) 日本大学国際関係学部教授。1953年愛知県生まれ。77年早稲田大学政治経済学部卒業。80年早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。2012年埼玉大学大学院経済科学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。 1980年八千代証券(国際証券、三菱証券などを経て現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。2000年国際証券執行役員、02年三菱証券チーフエ コノミスト、05年三菱UFJ証券チーフエコノミスト、10年三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミスト、同年退社。同年内閣府大臣官房審議 官、11年内閣官房内閣審議官。13年より現職。 主な著書に「100年デフレ」(日本経済新聞出版社、2003年)「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」(日本経済新聞出版社、2007年)「終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか」(日本経済新聞出版社、2011年)など。
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