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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130917-00019543-toyo-bus_all
東洋経済オンライン 9月17日(火)8時0分配信
米アップルは9月10日、アイフォーン5の後継機種を発表した。2007年に初代アイフォーンを発売してから毎年改良を重ねており、今回が7回目。年間1億台以上出荷されるモンスター製品だ。
しかし、そのアップルもかつての輝きを失いつつある。今ではスマートフォン(スマホ)世界シェアトップは韓国サムスン電子。新興国ではことごとく苦戦を強いられ、直近決算の13年4〜6月期の売り上げは前年同期比0.8%増と失速した。今回の新製品投入を契機に再び成長軌道に乗り、その勢いの中でウエアラブル端末、iWatchのような新ジャンルを作ることがアップルのシナリオだろう。はたして思いどおりに進むのか。
■ 「アップル以外」をどう開拓していくか
一方、アップルに翻弄されてきたのが日本の電子部品だ。それまで多くの部品メーカーにとって主な納入先はソニー、パナソニックのような日本ブランドだった。携帯電話の部品についても、先端を行く日本ブランドと付き合うことが、自然と欧米企業との取引につながっていた。
しかし、2007年のアイフォーン登場で景色は変わった。日本ブランドの競争力が後退し、アップルと付き合うことの重要性が増したのだ。アイフォーンには日本製のパネル、カメラ、受動部品などが多く使われている。出荷増に合わせ、一本足打法といわれるまでに依存度を高めてしまった部品メーカーも少なくない。競合のサムスンは内製志向が強いため、なおさらだ。年初、現行アイフォーン5の出荷見通しの下方修正で多くの部品メーカーがダメージを受けたが、これが初めてではない。
アップルは積極的に中国製の部品の採用を進めている。アップル1社に依存すれば、日本の電機産業における最後の砦ともいうべき部品ビジネスは瓦解しかねない。
アップルとの関係を保ちつつ変化する環境に対応するためには、新興の中国企業などとの取引も増やす必要がある。勝ち残るための回答は一つではない。最終製品メーカーに依存するのではなく、自らの意思で進むべき道を決められるか。部品メーカーも正念場を迎えている。まずは、アップルの再成長への挑戦から見ていく。
■ アップル再起動の行方
「二つのモデルを提供することで、さらに多くの顧客にアピールすることができる」。9月10日(日本時間11日)、米アップルのティム・クックCEOはiPhone(アイフォーン)の新型モデルを発表する前にこう切り出した。
同社は「5」の後継として機能を向上した「5s」、さらに価格を抑えた廉価版の「5c」を今月20日から9カ国で発売する。
「これまでのアイフォーンで最も先進的」と、米カリフォルニア州で開かれた記者会見でフィル・シラー上級副社長が繰り返し強調した5sの目玉の一つは、新たに開発した最新CPU「A7」。「64ビットのCPUを搭載したスマートフォンはいまだかつてない。彼ら(アンドロイド勢)の間では(開発の)話すら出ていないだろう」と胸を張った。
上位機種の5sは、1秒間で10枚連続撮影できるなどカメラのスペックが向上したほか、指紋を利用した個人認証機能を新たに搭載。利用者があらかじめ指紋登録をしておけば、ホームボタンを押すたびに認証される仕組みで、従来の4ケタのパスコード(利用率は50%程度)より格段にセキュリティが強化される。
5sの米国での価格は、199ドル(16ギガバイト、2年契約)。通信会社のインセンティブが450ドルなので、端末のみの価格は649ドルだ。
5cは、機能自体は現行の5とほぼ変わらないが、ケースに強化プラスチックを採用。ボディカラーはグリーンやイエローなど5色展開する。99ドル(同)と5sより低価格だが、「実質0ドルも」という事前予想よりは高い値付けがなされている。
「これまでにない触り心地」とシラー上級副社長が強調するとおり、実際に5cを手にしてみると、これまでのアルミニウムとは違うつるっとした感触が手になじみやすく、安っぽさはない。カラフルな専用ケースを用意するなど、ポップな印象だ。
今回、アップルは日本で新たにNTTドコモが取り扱いを開始すると発表した。アップルによると、年内には世界270以上のキャリアーで取り扱われるという。ただ、取りざたされていた中国最大のキャリアー、中国移動(チャイナモバイル)での販売は発表されなかった。
■ 新興国市場で苦戦 2四半期連続で減益
アップルにとって、5sと5cが果たすべき役割は大きい。イノベーションの旗手、高成長企業としての輝きが薄れつつあるからだ。
2011年10月にスティーブ・ジョブズ前CEOが死去。カリスマ不在が不安視されたが、直後に発売された「4S」が大ヒットし、本格的に船出したクックCEOの下、アップルの株価はぐんぐん上昇した。時価総額は世界一に上り詰め、12年9月の5発売日には705ドルの最高値をつけた。しかし、それがピークとなった。
昨年10月にタブレット端末「アイパッド・ミニ」を投入するなど、タブレット市場では圧倒的なシェアを確保している。それでもスマホ、タブレットともに世間を驚かすことはできていない。
米国など先進国ではスマホ需要が一巡しているうえ、韓国サムスン電子の「ギャラクシー」などアンドロイド端末が台頭。新製品投入ペースが遅く、ラインナップが少ないアップルのシェアは減少傾向だ。膨大な需要増が見込める新興国ではサムスンだけでなく、中国・華為技術(ファーウェイ)など新規参入も盛んで、低価格競争が加速。アイフォーンのような高単価品は分が悪い。このため5は計画ほど売り上げが伸びず、年初には部品メーカーに「アップルショック」が広がった。
成長鈍化は数字にも表れ始めている。13年1〜3月期は売上高こそ前年同期比11.2%増えたものの、営業利益は同18.3%下落。続く4〜6月期は売上高が同0.8%増にとどまったうえ、営業益は同20.4%減と2四半期連続で減益となった。
売り上げ成長の鈍化は新興国での苦戦を如実に反映している。4〜6月期の米国と日本は共に前年同期比で増収となったが、香港と台湾を含めた「グレーターチャイナ」の売上高は同13.8%減少した。
驚異的な高収益にも陰りが見える。4〜6月期の粗利率は36.8%と前年同期の42.8%から低下した。アイフォーン、アイパッドの販売台数は増えているものの、採算の低いミニなどの販売比率が増えていることに起因するとみられる。
一方、部品産業も大きな変化の時を迎えている。
■ 気を吐く電子部品メーカー
パナソニックやソニー、シャープといった日本を代表する電機メーカーが失速する中、電子部品メーカーが気を吐いている。売上高上位10社の10年間の純益合計を比較すると、電機は約1兆5000億円の損失となったのに対し、電子部品は約2兆9000億円を稼いだ。
2012年度末時点の時価総額で比べても、売上高約1700億円のキーエンスが同7兆円前後のソニーやパナソニックを上回る。10年間の時価総額増加率に至っては、上位20位中19位までが電子部品関連だ。隣り合う業界で、なぜこれほどの差が開いたのか。
「10年ほど前まで日本の電機は、共に研究開発する同志だった。ところが機能の進化が部品メーカーに一任され、セットメーカーは単なる”組み立て屋”になってしまった」。スマホ向けに強いある電子部品メーカーの幹部はこう振り返る。
テレビやテレビ用パネルがよい例だ。外部調達比率の高いシャープなどは、需給バランスの崩壊で大赤字に陥った。一方で、日東電工をはじめとするパネル用部材や部品のメーカーは堅実に稼いでいる。
セットを担当する電機以外の業界に主要なノウハウが蓄積されたのだ。電子部品メーカーは技術力をスマホやタブレットなど新市場向けに振り向け、テレビの価格破壊の難を逃れた。
電機メーカーの中にも、電子部品を「次の柱」として見直す動きがある。テレビで苦戦したパナソニックは4月、車載関連製品と電子部品の新事業会社を立ち上げた。スマホ向けコネクターや放熱シートでは、パナソニックはトップシェア。リチウムイオン電池でも3位と踏ん張る。赤字を垂れ流すテレビ事業の陰で、部品事業はしっかりと稼いでいる。
■ 5sは「期待薄」? 顧客の勢力図に変化
ただ、部品産業には弱点もある。部品は顧客あっての商売。顧客のビジネスが伸びれば恩恵を受けるが、その逆もしかりなのだ。
昨春、部品メーカーを「アイフォーン5ショック」が襲った。期待されていた5の量産開始が当初の見通しより遅れ、極端な生産調整を強いられたのだ。主要部品で高シェアを持つ村田製作所は「堅い業績予想の会社」として知られるが、昨年7月には計画を下方修正した。米アップルからの増産要請で膨らんだコストを、短期間では回収できなかったのだ。
スマホなど民生向けの発注量は大きく振れる。新製品を投入する前後は大量納入を要求されるが、売れ行きが鈍いと追加発注が凍結となるケースも珍しくない。「需要予測から逆算するなどの方法で生産を平準化できるかが利益安定のカギだ」(村田製作所の牧野孝次生産本部長)。
タブレットが台頭する前は、部品ビジネスの中でPC向けが大きな割合を占めていた。今ではスマホとタブレット向けが最重要で、PC向けは急減している。結果、PCに強い日本電産やTDK、イビデンなどが打撃を受け、PC依存度が低かった村田製作所や日東電工が業績を拡大させている。
(記事全文は週刊東洋経済9月21日号をご覧ください)。
(週刊東洋経済2013年9月21日号)
週刊東洋経済編集部
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