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http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20130913-00028090/
2013年9月13日 13時35分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
消費税の増税が決まりかけているみたいですが‥そして、そのための露払いとして、先日、政府は各界の有識者から意見を聞いたところですが‥しかし、そうやって消費税増税に関して、高邁な意見を垂れる方が多い割には、消費税の基礎的知識が欠如した専門家も多いのではないでしょうか。
ズバリお聞きします。消費税の免税業者というのがあるでしょ? 年間の課税売上高が1000万円以下の事業者は、消費税の納税義務が免除されているでしょ? どう思いますか、このような免税業者について?
売上高が年間1000万円以下の零細業者なのだから、そう細かいことを言わなくてもいいじゃないか‥みたいな感覚でいるのではないですか? 優しい人柄ですね。
えっ、違うのですか?
消費者は、どんなに貧しくても、商品を買えば必ず消費税を支払わされるのに、その一方で、消費税を受け取ったそうした商店が、幾ら零細とは言えその税金をポッポにしまいこんでしまうのは怪しからん?
そのような思いでいる人が大変多い気もするのです。
今まで、免税業者についてよく知らなかった人でも、このような話を聞くと、少しずつ腹立たしくなるかもしれません。例えば、この先、消費税が10%にもなった場合には、その10%分がその免税業者のポッポに入ってしまうのか、なんて‥
しかし、もし、貴方が、そのようにお感じになっているとしたら、それは大変な誤解なのです。実は、免税業者の懐には、本来国に支払われるべきお金が残る筈がないのです。ひょっとしたら、少しはあるかもしれませんが、殆どないと言っていいでしょう。
それは何故なのか?
理由をお示ししましょう。例えば、ある小売店が、1個80円の商品を税込みで84円で仕入れて、そして、それを税込で105円で売っていたとしましょう。
その店がお客さんから受け取る代金は、105円。そのうち消費税分が5円になる訳ですから、5円が国に入ることになる訳ですが、その小売店は、仕入れの段階で4円分の税を支払っているので、新たに国に納める税は1円になります。
ですから、その小売店の課税売上高が1000万円を超していれば、国に納める税金は、その商品1個を売り上げる毎に1円になるのです。
では、その小売店が免税事業者に該当すれば、どのようになるのでしょうか?
その小売店は、1円分の納税が免除されるだけの話です。何故かと言えば、この小売店は、確かにお客さんから受け取った代金のうちの5円分は消費税として国に納めるべきものなのですが、既に小売りの段階で4円分を支払っているので、差し引きの1円分について、国に納めることが免除されるだけだからです。
これだけ知っただけでも、随分怒りが収まったでしょう?
しかし、これだけではまだ真実を語ったとは言えないのです。
というのも、もしこの零細な小売店が、近所の同業者や大型スーパーなどと競合関係にあれば、少しでも安い価格を設定することを余儀なくされ、そうなれば、その商品を105円ではなく104円、或いはそれよりも安く売ることさえあるからなのです。
もし、104円で売るとすれば、この零細な小売店の懐には、消費税に充てられるお金が少しも残る訳ではないのです。
プラス、零細な小売店というのは、仕入れの量が少ないので、卸から有利な条件で商品を仕入れることなどできないことにも留意しなければなりません。お酒やウィスキーの価格が、小さな小売店と大型の安売り店とでは、とんでもないほどの価格の差がついているのをご存じだと思うのです。
つまり、同じ商品でも、零細な小売店は84円で仕入れる一方、大型スーパーは、74円で仕入れるかもしれない。それが現実なのです。
だから、同じ商品であっても、零細な小売店ほど高いのが普通。しかし、だからと言って、零細な小売店の利益率の方が高いとは言えないのです。結局、大型スーパーなどが安売りをするので、零細な小売店にも常に価格を引き下げるさせる圧力がかかるのです。
従って、免税所業者は、消費税を納めなくていいとは言っても、消費税分を懐に入れている訳では決してないのです。仮に消費税を懐に入れることができる小売店があったとしたら、付近には同業者が全くいないような地理的条件にある場合などだけでしょう。
そして、そうして仮に消費税分を懐にいれることができたとしても、先ほどの例で言えば、5円分が丸々懐に入る訳ではなく、1円分しか懐に入らないのです。それに、仮に1円分が余分に懐に残ることあっても、そもそも零細業者は、先ほども述べたように、卸から有利な条件で仕入れることができないので、通常の納税業者ほど利益を上げることができないのが普通です。
ということで、消費税に関しては、如何にも零細な小売店が優遇されているかの感があるのですが、実際には、殆どそのような恩恵を被ってはいないのです。
以上
小笠原 誠治
経済コラムニスト
小笠原誠治(おがさわら・せいじ)経済コラムニスト。1953年6月生まれ。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(いずれも秀和システム)など。「リカードの経済学講座」を開催中。難しい経済の話を分かりすく解説するのが使命だと思っています。
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