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1964年 東京オリンピックの開会式 〔PHOTO〕gettyimages
2020年東京オリンピックは日本にとって最高のアピールチャンス
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36977
2013年09月13日(金)川口マーン惠美 :現代ビジネス
東京オリンピックと聞くと、今でも私は即座に1964年のオリンピックを連想する。白黒テレビだったはずなのに、私の脳裏には真っ青な空が広がり、そこを貫くファンファーレの音がはっきりと聞こえる。
エチオピアのアベベ選手が裸足で走り、しかも、42キロ走った後、まだ余裕たっぷりだったのが、子供心にも驚異だった。そういえば当時、私の通っていた小学校では、週に1度か2度、テレビ授業というものがあり、テレビ室で理科や社会の教育番組を見たが、担任の若い女の先生が、どうしてもオリンピックを見たくなったらしく、皆でこっそりオリンピック中継を見たことも鮮明に思い出す。
とにかく、私たちにとって、東京オリンピックの思い出は強烈だ。あのころは、世界がキラキラと輝いていた。経済成長が始まり、世の中に躍動感があった。夢と希望、そう、安倍首相のブエノスアイレスのスピーチの、まさにあの通りだった。
できることなら、ああいうワクワクする気分を、今の子供たちにも味あわせてやりたいと思うが、オリンピックなど、今の子供たちにとっては刺激が弱すぎて、大してエキサイティングしないのだろうか。
■経済的利益を超える大いなる効果に期待
今回、2020年のオリンピック開催地が東京に決定した理由はいろいろ挙げられるが、日本人の心が久しぶりに一つになりかけている今、これはまさに時の運としか言いようがない。小さな熱帯性低気圧として始まった安倍政権は、あれよあれよという間に成長して、周りの物を巻き込み、台風になろうとしている。その安倍首相の強運がオリンピックを東京に引っ張ってきた。しかも、台風はまだまだ成長する気配だ。
東京オリンピックは、日本にとってのチャンスになりうる。放っておいても世界の目が集まるのだ。これほど最高のアピールのチャンスが他にあるだろうか。
最近、とみに霞んでいた日本だが、実は、世界に誇れるものは多い。治安はいいし、清潔だし、これほどの大都会だというのに、駅裏に麻薬患者のはびこる無法地帯もなければ、タクシーでぼられることもない。人々は穏やかで、優しく、地道で、正直で、なるべく人には迷惑を掛けないようにと心がけている。
そして、何より凄いのは、高度に発達したサービス業。日本のサービス業の素晴らしさは、利便性だけでなく、思いやりという付加価値が付いているところで、しかも、それを皆が当たり前だと思っているところが、私に言わせれば、さらに驚異的だ。
クールジャパンなどという御託を並べなくても、日本人が普段通りに暮らしている姿を見れば、それだけで世界の人々は目を瞠るはずだ。だから、オリンピックを機に、どしどし見てもらえばよい。そして、真摯で正直な姿を世界に知らしめることができれば、これは、経済的利益を超える大いなる効果だと思う。
■東京開催決定を恣意的に報じたドイツのメディア
さて、オリンピックが東京に決定した9月8日のドイツのニュースは、屈折したものだった。
2つある公共放送が共に、最後の方でそのニュースを流したことは、まあ、いいとして、ZDF(第2ドイツテレビ)の方は、日本人が喜んでいる姿を見せた後、福島で防護服を着た大勢の技術者が作業している深刻なシーンを流し、そこに、またヨハネス・ハノーという特派員が顔を出し、「安倍首相は、すべてアンダー・コントロールと言ったが、コントロールには程遠い」というコメントを付けた。
彼は、福島の事故のときに、もうすぐ東京は放射能に包まれ、皆が逃げ出すかのような報道を続け、誰も逃げ出さないから、自分が真っ先に大阪に避難した特派員だ。普段は北京にいるが、今もときどき福島で深刻な顔をして、日本がいかに危険であるかをレポートする。しょっちゅう日本にいて、しかも魚を食べている私を、うちの娘たちが非難がましい目で見るのは、彼のせいだ。
この日は、ドイツで一番定評のあるインテリ向け週刊誌『シュピーゲル』のオンライン版も、似たようなものだった。トップに、やはりでかでかと福島の汚染水のニュース。写真は、防御服の大勢の技術者。
「原発の廃墟、福島−水を巡るドラマはまだ10年は続く」という見出しで、それに続くリードには、「東電は原発の廃墟フクシマで、次々と起こる危機に絶望しながらつまづき続けている。アメリカの原子力監督者Dale Kleinは、外国人の専門家を入れるよう要請している。それでも、早急な解決は不可能である」とある。日本人の手には負えないので、アメリカ人に助けを乞うようにというわけだ。
そして、そのあとに、オリンピック開催地が東京に決まりましたというニュース。かなり恣意的な並べ方だと思う。
福島の事故のあと、一番ドラマティックに報じたのはドイツだった。日本全体が放射能で汚染され、東京では水道の水も飲めないと思われる報道が長く続き、原子炉建屋が水素爆発した映像には、それだけでは物足りないと思ったのだろう、ドカーンという爆発音までつけて何度も流してくれた。
そんな危険な東京でオリンピックが行われるはずはなかったのだから、彼らは今、不服なはずだ。しかし、そうなったのは、何も安倍首相の英語のスピーチが、IOCの人々の不安を一気に解消したからではない。おそらくドイツ人以外は、東京の現状と危険の度合いを、もっと前から冷静に判断していたのではないか。「いや、それでも放射能が心配だ」という国は、オリンピックをボイコットすればいい。
■地震、テロ、工事、渋滞、地域格差・・・心配が尽きない7年間
一方、私が心配なのは、放射能よりも地震だ。そういう意味では、東京は危険な都市だ。地震はいつ起こっても不思議ではない。「東京は危険ですよ。しょっちゅう地震がありますよ」と、引導を渡しておいた方がよい。ただ、それは日本人の不注意で起こるものではないので、万が一、地震の被害が出たときには、開催国の日本に賠償などが押し付けられないよう、細心の配慮でしっかり固めておく必要もあるだろう。
もう一つ怖いのはテロだ。こういう祭典で事を起こせば、日本に決定的なダメージを与え、同時に、世界を不安に陥れることができる。世界支配を狙っているイスラム過激派、あるいは、反日勢力にとっては、格好のチャンスだ。
日本人は性善説に基づいて平和に生きてきたため、危機管理が緩い。だから、テロのことを考え出すと、私はとても不安になる。国境警備は強化するとしても、すでに日本に入ってしまっている危険人物も結構いるだろう。オリンピックが無事終わるまで、警備に掛かるお金は、天文学的になるのではないか。
オリンピックでは、ボランティアの警備員をたくさん使うと聞いたが、考えようによれば、それも怖い。私がテロリストなら、嬉々としてボランティアや清掃員に紛れ込むだろう。日本人の性善説は素晴らしいことだが、ここでは一旦それは仕舞っておいて、疑心暗鬼で事に臨んでほしい。
来年、ブラジルではサッカーのワールドカップが開かれる予定だが、スタジアムの建設が壊滅的に遅れているという。ブラジルはもともと治安も悪く、最近はそれに加えて、断続的に反政府デモが起こっている。2016年のオリンピックも控えているというのに、情勢は芳しくない。
そういう意味では、トルコも情勢が不穏だし、スペインはお金がないので建設が中途で滞るかもしれない。結局、日本が一番安心ということらしい。日本で、工期が遅れ、間に合わないなどということは、もちろん想像ができない。
ただ、その工事の多さには、ちょっとビックリしてしまう。新しいスタジアムもたくさん造るらしいが、オリンピック後、無用の長物になってしまう可能性はないのだろうか。1964年のオリンピックでは、そのために造った施設を、私たちはずっと使い続けたし、何よりも、新幹線や首都高速は、日本のその後の発展に目覚ましく貢献した。今回も、インテリジェントな交通網など、後々まで役に立つものを造ってほしいと願う。
それにしても、これから東京は、7年間にわたって工事現場になるのだろうか。ただでさえ渋滞が多いのに、それを考えると、ちょっと憂鬱だ。それに、オリンピックの観光客を見込んでホテルなどを増やして、そのあとの集客は続くのだろうか。
だいたい東京は、今住んでいる人たちだけでも混みあっているというのに、もっと混雑するとどうなるのだろう。外国人はラッシュなどには慣れていないし、日本人のように、何重にもなったホームの行列をさっと横に移動させるなどという芸当はとてもできない。たとえばドイツ人は、人がたくさんいるのを見ただけで、どうやって前に進んでいいかわからなくなる人たちだ。整列乗車などという言葉はもちろん聞いたこともない。
東京にすべてを集中させた結果、地方との格差がさらに広がる心配も捨てきれない。オリンピックの効用を、地方にも行き渡らせるために、いかなる政策が立てられるのだろう。
書いているうちに、だんだん心配になってきた。世界の情勢は、1964年のころとは激変している。まだちらほら焼け野原が残っていた当時とは違い、今の東京は、飽和状態に近い。ロジスティックと警備の問題は、ものすごく難しいに違いない。
あと7年。まだまだ遠いような気もするが、北京オリンピックが決まった時もそう思ったのに、すでに終わって5年。この調子では、東京オリンピックもあっという間にやって来るに違いない。ただ、その時、自分が何歳になっているかを考えると、これもちょっと恐ろしい。
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