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クローズアップ2013:国土強靱化、復興阻む 全国で工事増、人不足 業者「被災地に回せない」(毎日新聞) 
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/408.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 9 月 12 日 17:05:00: igsppGRN/E9PQ
 

クローズアップ2013:国土強靱化、復興阻む 全国で工事増、人不足 業者「被災地に回せない」
http://mainichi.jp/opinion/news/20130908ddm003040141000c.html
毎日新聞 2013年09月08日 東京朝刊


 東日本大震災の復旧工事を巡り、被災3県の建設業者が、県外の業者から下請け工事などへの協力を断られるケースが今年に入って増え始めている。政府が全国で公共工事を大幅に増発(前年度当初比16%増)した結果、被災3県以外の業者がそれぞれの地元の仕事に追われているためだ。自民党政権の「国土強靱(きょうじん)化」政策が、被災地の人手不足に拍車をかけている格好だ。【安高晋】

 「地元で公共事業が出始めたので、新たな工事には人を出せないんです……」

 宮城県石巻市の建設会社の幹部は今春、それまで復旧工事の下請けを頼んできた秋田県の業者に言われた。「国土強靱化」を打ち出した安倍政権の誕生により全国で公共事業が増え、そのしわ寄せが来るのではないか。そんな不安が現実になった気がした。夏に向けて5億円規模の漁港修復工事を受注したいと考え、働き手を探していた。北海道や関西の業者にも声を掛けたが、同じ答えが返ってきた。人手を確保できず、入札参加をあきらめた。

 春以降、約10件の工事で被災地外の業者に下請けを頼んで断られた。「震災からしばらくは『仕事があったらやります』と被災地外の業者から声が掛かった。今はこちらから『頼みます』と頭を下げないと業者を確保できない」という。

 建設業で働く人の数は全国で約500万人。15年前の7割に減った。1990年代以降、建設投資額がピーク時の約半分に減少した結果、激しい価格競争が起こり、賃金が30%近く落ちたことが要因だ。

 石巻市でもこの10年で、創業50年以上の老舗5社が廃業に追い込まれた。震災前から業界は疲弊しており、復旧工事を進めるには、全国から働き手に来てもらう必要がある。そうした中で進められる国土強靱化に、幹部は「災害対策に関心が高まるのは分かるが、復興のブレーキになっている印象は否めない。もう少しタイミングを考えてほしい」と落胆する。

 働き手確保に困っているのは、この会社だけではない。毎日新聞は8月下旬、岩手、宮城、福島3県に本社を置き、大規模な県発注工事を受注できる資格を持つ計145社にアンケートを実施した。回答した49社のうち、下請けを頼んだり共同企業体を組んだりしてきた被災地外の業者から、今年に入って地元工事の増加を理由に協力を断られたという回答が13社から寄せられた。別の14社は、同業者が同様の体験をしたと答えた。

 岩手県によると、今年4〜7月に発注した建設工事で入札が成立しなかったケースは33件。発注件数自体は減っているのに、前年同期の24件から増加した。業者からは「鉄筋工が足りない」という声が上がっているという。宮城県の業者は「何度入札を繰り返しても落札にいたらない工事がある」と明かす。

 政府は、震災をきっかけに防災や減災のためとして、今年度予算の公共事業費は4年ぶりの増加(前年度当初比16%増)となり、補正予算と合わせて7・7兆円を確保した。49社の約7割は、今後も全国で公共事業が増えることで人材不足に拍車がかかると不安に感じている。公共工事発注が本格化する秋以降に向け、被災地の業者に、危機感が広がっている。

 ◇対策、効果少なく 宿泊・交通費支給→宿舎確保困難/日当21%増→被災地以外も15%増

 復旧工事の人手不足に対して、国や自治体も対策は打ってきた。だが思ったような効果が出ていない面もあり、課題が残る。

 被災地外の業者が下請けに入るケースを想定して、国土交通省は昨年6月から、作業員の宿泊費や交通費を、国が全額支払うことにした。これまでは元請け、下請けどちらかの業者が、そのほとんどを負担してきた。同省担当者は「被災地外の作業員を確保しやすくなったはず」と話す。だが、被災地の業者からは「三陸地方の沿岸部では宿舎の確保が今も難しい。最近も5人が10カ月泊まれる宿を確保するだけで1カ月かかった」という声も出る。

 震災後、被災3県では公共工事の落札者がいない「入札不調」が増えていた。宮城県では2010年度に3%だった不調発生率が、11年度は23%、12年度は29%と急増。一般的な不調率は数%だが、岩手、福島県も10%を超えている。

 国交省は今年3月、3県で行われる国、自治体発注工事について、予定価格算出の基礎となる建設作業員の標準的な日当(労務単価)を、前年度より21%高くすると発表した。不調率がさらに上がれば、年度途中で再度引き上げる方針だ。

 ただ、被災3県の業者へのアンケートで、この効果について聞くと、回答した49社中「大きな効果を感じる」は2割弱の8社にとどまった。「少しは効果を感じる」が約半数の24社、「あまり感じない」は17社だった。労務単価は被災地以外でも前年度より15%引き上げられた。全国で公共事業を増やしたことと合わせて「被災地の人手不足に拍車をかける効果を大きくしている」との見方もある。

 自治体も独自の対策を取る。下請け業者を変更すると、入札参加資格の審査で減点対象としてきた宮城県は昨年10月から、予定していた下請け企業が変わっても減点しないことにした。「下請けが決まっていなくても入札に参加しやすくなった。業者からの評判もいい」という。

 一方で、被災地の業者からは「発注を同時期に集中させず、ずらしてほしい」という声も上がる。これに対して宮城県は「復旧を一刻も早くという声との折り合いが難しい」と説明している。


 

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