http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/406.html
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汚染水漏洩がみつかったタンク周辺を視察する茂木敏充経産相(代表撮影)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130912/dms1309121534016-n1.htm
2013.09.12
東京電力福島第1原発の汚染水問題が、2020年東京五輪に影を落とす。安倍晋三首相は、国際オリンピック委員会(IOC)総会での最終プレゼンテーションで、「健康問題には今までも現在も、そして将来も全く問題ない」「影響は原発の港湾内で完全にブロックされている」「抜本解決に向けたプログラムを私が責任を持って決め、着手した。着実に実行していく」と明言した。五輪招致は成功したが、本当はどうなのか。エネルギー問題に詳しい、ジャーナリストの石井孝明氏が迫った。
汚染水漏れは3ルートと推定される。事故直後の冷却で原子炉近くにたまった汚染水、山側から流入する地下水が染み出しているようだ。また、水を循環させて原子炉を冷やす仕組みを作り、タンクにためている。その一部が破損して漏れた。ただし危険な放射線量の水が大量に流れ出ているわけではない。
5月に高濃度の汚染水が海近くで見つかり、20年夏季五輪の開催地選考の中で海外メディアに「日本でのリスク」と注目を集めてしまった。
政府は今月初め、470億円の国費を投入して、原子炉建屋の山側に地下水が流入するのを防ぐ「遮水壁」を建設することを表明。杭を打ち、そこから特殊冷却剤をしみ出させて、地中に凍土の壁をつくる特殊工法を採用した。さらに海側にも壁をつくる。壁の完成まで約2年の予定だ。
東電の姉川尚史常務(原子力担当)は「状況はよい方向に向かっている。原因が分かり対策が決まった」と語る。
しかし、完璧さを追求して巨額の費用がかかる対策を、私は資金面から可能なのかと不安を感じるし、必要なのかという疑問を抱いてしまう。
実は、福島の海の現状は危険ではない。
海洋生物環境研究所の調査によれば、福島沖の海水での放射性物質の濃度は危険な核物質のセシウム137で、現在1リットルあたり0・01ベクレル以下だ。これは太平洋上で核実験が繰り返された1960年代より低く、80年代と同程度といえる。
濃度は現在の飲料水の基準である1リットルあたり10ベクレルより低い。福島沖で試験採取される海産物も食品の安全基準「1キロあたり100ベクレル」を大半が下回る。海の汚染は事故直後の核物質の拡散によるもので、これ以上は拡大しないだろう。
識者の間でも懸念が広がっている。
シンクタンク「アゴラ研究所」の池田信夫所長は「事故の賠償責任を負い、倒産回避のために国の資本注入を受けた東電が、巨額負担に耐え続けられるのか。税金投入による国民負担を増やしかねない」と語る。
ジャーナリストの田原総一朗氏も「日本の放射性物質の管理基準は事故後でも世界比較で厳しすぎる。核物質トリチウムは人体への影響が少ないので他国では海に流すのに、福島ではため込む。冷静に手間とコストを考えるべきだ」と疑問を投げかけた。
汚染水による健康への悪影響は現在でも、五輪開催の20年になっても、ほとんどないだろう。しかし、それを「完全ブロックする」という方針は必要かもしれないが、このままの過剰対策では巨額の支出を生む。
五輪はスポーツの祭典。祝祭の費用は興奮の中で「青天井」になりがちだ。祭りの後の請求書が深刻な金額を示すことが心配だ。
■石井孝明(いしい・たかあき) 経済・環境ジャーナリスト。1971年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。時事通信記者、経済誌記者を経て、フリーに。エネルギー、温暖化、環境問題の取材・執筆活動を行う。アゴラ研究所運営のエネルギー情報サイト「GEPR」の編集を担当。著書に「京都議定書は実現できるのか」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞)など。
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