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白斑問題について会見するカネボウ化粧品の夏坂真澄社長
白斑問題を招いた、カネボウのたこつぼ風土 花王の改革も及ばず、クレーム情報が死蔵
http://toyokeizai.net/articles/-/19398
2013年09月12日 長瀧 菜摘 :東洋経済 記者
「“事なかれ主義”で、消費者が後回しになっていたのではないか。頭が固すぎる」。
肌がまだらに白くなる――。カネボウ化粧品の美白化粧品による白斑被害について、第三者調査に当たったふじ合同法律事務所の中込秀樹弁護士は9月11日、東京都内で会見し、カネボウの対応をこう切り捨てた。
■白斑に悩む患者は約1万人
カネボウ化粧品が自社開発の医薬部外品認定成分「ロドデノール」を配合した美白化粧品の自主回収に踏み切って、2カ月が経過した。肌がまだらに白くなるという症状やその不安を訴える患者は、全国で約1万人に上っている。
カネボウは7月中旬から、これまでの情報収集や顧客対応の適時性、妥当性についての第三者調査を実施。9月初旬にこの調査報告書がまとめられ、11日に公表された。
ここまでの流れを簡単に整理しよう。ロドデノールが配合された美白化粧品は2008年9月に初めて発売。その後、美白化粧品は順次拡充されていった。購入者から最初の症例が、カネボウ側に相談されたのは2011年10月。12年2月には関西支社の教育担当者が、「美容部員3名に白斑症状が出ている」と本社のマーケティング部門と研究所に問い合わせていたが、カネボウ側はいずれもこの症状を「病気」として処理し、化粧品が原因であることを疑わなかった。
その後も複数の購入者からの相談が相次ぎ、12年9月には大阪府内の大学病院の医師から、美白化粧品との関連性を疑う異常性白斑についての電話連絡もあった。自主回収が始まった13年7月よりもはるか前から、危険な兆候がいくつも出ていたにもかかわらず、カネボウはこの問題を見逃し、結果として被害の拡大を招いてしまった可能性が高い。
カネボウの顧客情報管理システムは、機能不全に陥っていた。そして、それを招いた原因はカネボウ自身の“風土”にある。
■入社時の配属から異動がほとんどない人事制度
「(各部門が)互いにフィードバックしたり、分析し合ったりという機能が極めて脆弱な、当社の組織体制に問題があった」。カネボウ化粧品の夏坂真澄社長は9月11日、第三者調査委員会の報告に続いて開いた会見でこう語った。カネボウは社員の専門性を高めるため、入社時に配属された部署からほとんど異動がない人事制度を採ってきた。そのため、施策の判断や実行において各部門の独立性が高まる一方、部門間での情報共有や業務連携が進まない“たこつぼ化”が進行した。これが、白斑問題の根本にあると言ってもいい。
実は、カネボウでは、親会社である花王が独自に開発している顧客情報管理システム「エコーシステム」を2009年から導入している。花王と品質管理の物差しをそろえ、顧客の声を即時に共有できる体制を築くという目的だった。
ところが、運用面では統一化が徹底されなかった。花王ではクレーム・相談内容の同システムへの全件入力が義務づけられている一方、カネボウでは窓口担当者、店頭美容部員などが直接応対し、その場で解決したものについては入力を省略している場合もある。
さらに今回の白斑症状については、「病気であり、化粧品とは無関係」という同社の研究開発側の「思い込み」(中込氏)があった。そのため入力されていた情報についても、より重要な情報として扱われる「身体(肌)トラブル」ではなく、重要度の低い「問い合わせ」として登録されていたケースが複数あった。
それでも、カネボウ社内が“たこつぼ化”せず、社内の風通しがよければ、顧客情報管理システムの整備にかかわらず、問題が認識された可能性もある。だが、結局のところ部門間で情報が寸断され、連携も悪いという“風土”によって、経営陣が情報を把握するのにはかなりの時間を要してしまった。
カネボウ社内で美容部員の複数名に白斑が出ても、それが全社的な問題であるとの認識に至らなかった。第三者調査報告書は、「安全管理や品質管理を使命とする部署のものとしては、その結果を重く受け止めてしかるべき対応をするのは当然」と、同社の責任を厳しく追及している。
「エコーシステム」の導入時にも、品質管理部門での研修は行われていたものの、新システム導入に当たって顧客情報の収集や分析を全社にどう生かしていくかという経営陣の議論は、当時の記録を見ても行われた形跡がないという。つまり、専門部署に一から十まで任せっきりであったワケだ。花王の青木秀子品質保証本部長・執行役員も「マニュアルだけではダメで、一つ一つ、どう使うべきかを伝えることが不十分だった」と話す。
■部門間異動を積極化するが…
調査結果を受け、カネボウは顧客対応部門を自社から切り離し、花王に統合する。「エコーシステム」への情報入力も人員を増強のうえ、100%即日入力の体制に切り替える。また、今後は同社内ではほとんどなかった部門間の異動を、次の会計年度が始まる来年1月から積極化し、“たこつぼ化”した組織体制を抜本的に解消していくという。
とはいえ、長年しみ付いた“風土”をそう簡単に変えられるものでもない。程度の大小はあっても、縦割りのたこつぼ化に悩む企業は多い。そこで、部門間異動を積極的にやると表明しながら、実際には業務面での支障を気にしたり、社員の激しい反対にあったりして、中途半端な配置転換しかできなかったという企業も少なくない。
花王とのシステム運用の一本化を進めたり、社内の流動性を高めたりという枠組みを整備したとしても、「社員の意識が変わらなければ、意味がない」(中込氏)。全社を挙げて、今回の問題を招いてしまった“風土”を認識し、経営陣以下の全従業員がそれを変えていくという覚悟を持って臨まない限り、根本的な解決には至らない。
(撮影:今 祥雄)
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