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http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20130910-00028000/
2013年9月10日 16時23分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
東京オリンピックの経済効果は3兆円程度であろうという予測がある一方で、7年間の累積ながらも、相乗効果を含めれば100兆円、否、150兆円に達する可能性があるなんて見方もある訳ですが‥
で、そうした大風呂敷を広げる某証券会社の専門家が、一気に脚光を浴びる、と。
高利回りの儲け話に老人が引っかかるケースがいつまで経ってもなくならないのですが‥そうして、そのような旨い儲け話がある訳がないとマスコミは国民に警告するのですが‥その一方で、東京オリンピックの経済効果が100兆円を超すなんて話を国民に報じるのです。
無邪気なものですよね。悪気がないだけに責める訳にはいかないものの‥しかし、軽率の誹りは免れないでしょう。
7年間で150兆円もGDPを押し上げる効果があるということは、1年間で20兆円以上です。そして、日本のGDPは大よそ500兆円ですから、20兆円GDPを押し上げるということは、年間4%ほど実質経済成長率を押し上げるということなのです。
日本の潜在成長率は、どんなに甘く見積もっても1%程度しかないのに‥それに4%分も上乗せされるかもしれないなんていう話です。
つまり、10年物国債に投資して、1%の利回りが稼げるかどうか危ういのが当たり前であるのに、5%ほどの利回りが保証される安全な投資先があると言われているようなものなのです。
俄かには信じがたい話ですよね?
しかし、それでもなお‥お祝いムードのなかで、水を差すような話はご法度であるので、そのような話がわがもの顔でのし歩く、と。
では、やっぱり100兆円以上もの経済効果を期待するのは無理なのか?
無理に決まっています。
どうしてもできない相談なのか?
しかし、絶対にインポッシブルでもないのです。国民に、どんなことでもやり抜く意志と実行力があるなら。プラス、相当のツキがあるのなら。
では、どんな条件が整えば、100兆円は無理だとしても、相当の経済効果を生み出すことが期待できるのでしょうか?
例えば、オリンピックに出場する選手やその関係者、或いはオリンピックを観戦しに日本を訪れた旅行客が、日本の「お・も・て・な・し」にすっかり魅了されて、そして、そのことが口づてに広がり、その結果、日本を訪れる観光客が急増して‥そして、オリンピック後も、その反動で旅行客が減るどころか、益々増加を続けるようなことが起これば、相当の効果が期待できるのです。
或いは、そうやって日本を訪れた観光客などに日本料理の美味しさをしっかりと覚え込ませることに成功するならば、日本の農産物や食材などの輸出が、オリンピック後、格段に増えて、これまた相当の効果が期待できるでしょう。
或いは、オリンピックに我が子を出場させることが日本のパパ、ママの共通の願いになり、そのために、先ず子供を沢山産もうというようなムードが広がり、さらに、子どもに対する教育投資などが伸びれば、人口が増えることによる効果の他に、個人消費が活性化して、これまた相当の効果が期待できるでしょう。
或いは、オリンピックで海外の人々を英語やそれ以外の言語で接待できるようになりたいというムードが広がり、若い人が真剣に語学をマスターしようとすれば‥そして、海外に行ったことがないにもかかわらず、ネイティブにそれほど遜色がないほどの語学力を身につけることに成功するならば、我が国の労働者の生産性の向上につながり、これまた相当の効果が期待できるでしょう。
或いは、そうして徐々に日本の国力が回復する姿をみた外国の企業や人々が、日本に再び拠点を持ちたいと考えるようになれば、これまた相当の効果が期待できるでしょう。
しかし、そうしたことを実現するためには、真に日本が、そして日本人が、海外からみて能力があり、魅力のある存在にならなければなりません。
では、日本は現時点で、どれほど魅力的なのか?
原発の汚染水の問題が、今後どのような方向に進むか予断は許されませんが、しかし、いずれにしても原発の問題に関して、もう少し確たる見通しが立つようになるまでは、海外の人々はむしろ日本を敬遠してしまうでしょう。
貴方が外国人であったとしても、そう思うでしょう? そして、どちらかと言えば、日本が原子力発電に頼らなくなることを歓迎するでしょう?
プラス、海外の起業家からみて、日本のビジネス絡みの規制の多さも、日本に進出する際の大きなネックになっていることは否定できません。大衆薬のネット販売を再規制するとか、タクシーの台数を規制するとかという話を聞いて、日本がビジネスをやりやすい国だと判断することはないでしょう。
つまり、日本は、もっともっと自己改革をしなければいけないということなのです。しかし、現実には、そうした規制緩和に対して根強い反対派が存在しており、なかなか日本が変わることはないのです。結局、既得権益は守りつつ、その上で、財政出動の旨みだけを何とか享受できないかと考えているのが、日本の現実の姿なのです。
東京オリンピックの経済効果を100兆円まで高めることが絶対に不可能だと断定することはできません、国民と政治家がその気になるならば。しかし、少子化がこのまま進み‥そして、お札さえ刷れば経済は何とかなるなんて考え方が主流を占めているうちは、借金が増えるだけで終わるでしょう。
以上
小笠原 誠治
経済コラムニスト
小笠原誠治(おがさわら・せいじ)経済コラムニスト。1953年6月生まれ。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(いずれも秀和システム)など。「リカードの経済学講座」を開催中。難しい経済の話を分かりすく解説するのが使命だと思っています。
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