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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130910-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 9月10日(火)6時18分配信
求人情報サービス会社・学情が毎年発表している「就職希望企業人気ランキング」。この最新版2014年度のランキングで9位につけ、前年度の28位から大幅ランクアップした、就活生に人気の金融機関がある。それが今回取り上げるゆうちょ銀行だ。
郵政民営化によって日本郵政公社から主に郵便貯金事業等を引き継ぎ、06年に設立。直近の総資産は約196兆円(2012年度3月期)で、三菱UFJフィナンシャル・グループの約204兆円に次ぐ、日本トップクラスの金融機関である。総資産がメガバンク各行を上回り、日本政府が株主である日本郵政グループの銀行であるゆうちょ銀行は、安定性のある就職先として映っているのだろう。
ちなみに同ランキングにおいて、三菱東京UFJ銀行は昨年と同位の2位。三井住友銀行が14位、みずほフィナンシャルグループが18位だった。人気の面でもメガバンクを上回っているのだ。
そんな人気企業のゆうちょ銀行だが、実は以前からブラックな噂が絶えない会社でもある。就活生や親御さんは、イメージだけの安定感のみならず、このような内情も十分ご確認の上で企業選びを行っていただきたい。
同行では今年に入ってからも、元行員がATMを不正操作して現金1000万円を横領した事件が発覚し、逮捕される事件が起きている。
民営化以前の日本郵政公社時代の話になるが、郵便局職員らが顧客の貯金や保険金を着服した総額は、05〜07年度上半期のわずか2年半で20億円以上に達しているのだ。着服された金は「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命保険」がそれぞれ債権として引き継いでいるが、その後も処理は大きく進んでいない状態である。中には元局長が一人で2億円にも上る「ATM補充用現金」を着服した例もあり、管理体制のずさんさには常々疑問が持たれていた。
同行に関して特に多く報告されているのが、「個人口座の記録が消える」という事件である。つまり、あったはずの貯金口座がなくなっているのだ。常識的に考えてありえない事態なのだが、専門家の間では「よくあること」と認識されている。具体的な事例をみてみよう。
【事例1 外務員の着服】
10年以上にわたって、毎月定額を貯金していたA氏。外務員が自宅まで訪問して貯金を回収していく形で継続していた。
あるとき通帳がなくなっていたので、ゆうちょ銀行に問い合わせたところ、「データが存在しない。勘違いではないか?」と窓口担当者に言われた。そこで、これまで外務員に毎月手渡しでお金を渡し、10年以上継続していることを告げても、「データが存在しないので対処できない」の一点張りであった。
A氏は弁護士に相談したが、弁護士も「ゆうちょ銀行の事件は訴えが多いのだが、相手が総務省ということもあり、もみ消されることのほうが多かったり、訴えても勝ち目がない」と言われた。弁護士側としても、個人の力ではどうにもできず、弁護士会として取り組むには時間も費用も莫大になるので、どうすべきか困惑している。
地方の郵便局では、顧客の通帳と印鑑を顔見知りの職員が預かって、事実上の一任管理状態になっていたケースは数多く存在していた。なんの問題もなければよいのだが、局員が使い込んでいたことが発覚するケースも珍しくないのだ。
【事例2 ずさんなデータ管理】
氏名、誕生日、電話番号、印鑑と、すべてが虚偽のローン契約書が審査をパスし、38万円余のローン契約が締結されていた事件が発覚した。契約書はゆうちょ銀行の盗難キャッシュカードを基につくられたものだったが、審査を担当した「ゆうちょ銀行東京貯金事務センター」では、実際には異なるのに「届け出印の印影、氏名と一致した」と誤って判断してしまった。
結果として、被害者B氏の口座からはローン支払い3回分、総額約8万3,000円が引き落とされた。B氏は「これほど審査がずさんでは、ほかにも被害があるのではないか」と話している。
このような事件は氷山の一角だ。10年夏には、「全国98の郵便局とゆうちょ銀行7店で、顧客情報約11万6700件の紛失が見つかった」という発表もあった。理由は「不要な書類などと一緒に誤って廃棄したため」というずさんさだ。
同行では07年に1,443万件という信じられないほどの顧客情報紛失事故を起こしており、総務省からコンプライアンスの徹底を図るよう、厳しく指導を受けていた。それにもかかわらず、09年から10年にかけて同様の事件が相次ぎ、さらにまたこの事件。組織自体に自浄作用がないことの証明といえるだろう。
【事例3 行員着服疑惑&ずさんなデータ管理】
高額納税者であった父親の遺産相続に当たっていたC氏。父親はゆうちょに複数の口座を持っているはずだったが、調べてみると、そのうちほとんどがすでに解約されていたことが判明した。
C氏の兄の娘がゆうちょ銀行に勤務していたこともあり、「親族によって父の金が使い込まれていたのでは」と疑いを持ったC氏は、その旨を兄に問いただしたが、当の娘は直後に同行を突然退職してしまい、兄によると「娘は行方不明」と回答が返ってくる始末。
その後C氏は遺品から、父親名義の4通の通帳を発見した。解約されていたとはいえ、内容について調査すべくゆうちょ銀行に口座照会をかけたところ、「4つのうち1つだけが存在していた」という回答であった。その1カ月後、解約前の期日にさかのぼって再度照会をかけたところ、こんどは「(口座は1つも)発見できませんでした」という、絶対にありえないはずの回答がゆうちょ銀行から返ってきた。
通帳が存在している解約前の口座情報が「存在しない」ということもおかしいし、つい先月に「存在していた」と回答していた口座まで「存在しない」という回答はありえない。C氏は食い下がったが、窓口では「こちらではわからない」としか答えない。恐ろしいまでにデータ管理がずさんな状況なのである。
一連の対応のずさんさから、C氏は事実関係の説明や口座残高の支払いなどを求めてゆうちょ銀行を提訴するが、十分な証拠を示すことができないまま、結果的に取り下げている。
●裁判での立証は困難
日本の裁判においては原告が自身の受けた被害/損害の事実を立証しなければならないのだが、ゆうちょ銀行の口座を管理しているのはゆうちょ銀行自身だ。同行が「ないといったらない」と通してしまえば追及の方法はなく、立証はできない。立証できなければ裁判には勝てない、という悪循環なのである。
特にゆうちょ銀行の場合、顧客管理システムが昔の台帳管理からオンラインに移行する際に「名寄せ」が徹底できていなかったことが問題の根源として挙げられる。地方の小さな特定郵便局の場合、オンライン化に際して混乱があったはずであり、緻密にデータ移行できたかどうか疑わしい。ただいずれにせよ、裁判で立証するのは極めて困難であることは確かなのだ。
同じような問題は、農協や三菱東京UFJ銀行でも報告されている。いずれの事件も、行員が文書を偽造した不正が原因で、被害者個人が身に覚えのない借金を背負わされ、取り立てられているのだ。当の銀行は、取り立ての際にサービサー(債権回収会社)に債権譲渡を繰り返すので詳細を把握できていない。一方で取り立てに伴う民事訴訟には被害者も対応せざるを得ず、時効も3年と短いために被害者は対抗策を法的に打てない。
こんな事態が許されてよいはずがない。全国で同様の事件は多いのだが、大手メディアではなかなか報道される機会もなく、また制度的な問題で皆「立証」ができずに泣き寝入りを強いられている。そして過去の経緯の通り、自浄作用は期待できない。
結局、民営化やトップの入れ替えを経ても、ゆうちょ銀行は依然としてお役所意識をぬぐい切れていない。そもそも、「民間企業の社風を避けて、あえて郵便局に入った人たち」が経営する会社だ。意識はそう簡単には変えられないことだろう。民間企業で発生したら、連日メディアで大バッシングになるレベルのことが起きているのだが……。
200兆円の国富をムダにするわけにはいかない。やる気のない行員は厳しく処罰し、民間から優秀なマネジャーをどんどん登用し、価値を創り出せる組織となることを期待したい。
話は最初に戻るが、少なくとも就職先選びにおいては、このような内情とメンタリティを持つ組織であることは知ってから受けられたほうがよいと思う。
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新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト
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