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カギはTPP、アベノミクス特区!五輪開催を活用すれば2020年まで戦後最長の景気上昇もありえる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36941
2013年09月09日(月)高橋 洋一 :現代ビジネス
2020年の五論開催が東京に決まった。日曜日未明、多くの日本国民は思いっきり喜んだ。安倍首相、猪瀬都知事らの関係者のこれまでの努力を素直に評価したい。
安倍総理は「15年続いたデフレ縮み志向の経済を、オリンピック開催決定を起爆剤として払しょくしていきたい」、猪瀬都知事も「心のデフレを払拭したい」といった。
そこで、五輪の経済効果がどうなっているのかをまず確認したい。
東京都が公表している経済波及効果は、2013年〜2020年において東京都及びその他の地域を分析対象としている。生産誘発額2兆9609億円(東京都1兆6753億円、その他の地域1兆2856億円)だ。
この数字は東京都産業連関表を用いて算出されたものだ。どのような内訳かというと、五輪施設建設費、大会運営費、観客らの宿泊・飲食費などで1兆2239億円(東京都9669億円、その他の地域2570億円)がある。その1次波及効果として五輪特需でさらに1兆1000億円程度、その2次波及効果として五輪関連産業の労働者に消費拡大などで6000億円程度で、合計2兆9609億円の生産誘発額になっていると思われる。
■既存施設を使う東京五輪は儲かるイベント
東京都の発表では、生産誘発額2兆9609億円のほかに、付加価値誘発額1兆4210億円(東京都8586億円、その他の地域5624億円)、雇用者所得誘発額7533億円(東京都4687億円、その他の地域2846億円)も一緒に記載されている。
ある建設会社のサイトでは、これらをすべて合算して経済効果5兆1352億円と書いている。いくら待望した五輪とはいえ、これは間違いだ。生産誘発額は生産額ベースの話で重複計上もある。付加価値誘発額は儲けを表し、雇用者所得誘発額は儲けのうち労働者の取り分を表す。これらを合算すると三重計算になってしまう。
東京都の発表では、雇用誘発数15万2202人(東京都8万3706人、その他の地域6万8496人)とされている。
こうした経済効果ではなく、大会だけの収支を見ても、五輪をイベントと考えた時、1984年のロサンゼルス五輪以降は商業的に黒字となる「儲かるイベント」だ。
五輪の収入は、(1)TV放映権料金(2)スポンサー収入(3)入場料収入(4)記念グッズの販売が主な内容だ。東京の場合、ロンドン五輪のように既存施設が多く、新規のスタジアム建設などのコストがさほどかからないので、基本的に税金をあまり使わずに五輪運営することができ、大会収支も黒字になるだろう。いずれにしても、2週間も国民を感動させる五輪は現在の数少ない有力なプロジェクト案件と考えられる。
■経済学者が唱える五輪経済効果への冷めた見方
このような試算について、経済学者はちょっと冷めた見方が多い。そもそも、一定の前提をおいた上での計算であり、その前提の妥当性など検証すべき点は多いことに留意すべきだ。それにしても、かなりケチをつける。
まず、産業連関表は、他の条件が一定という「部分均衡分析」である。このため、オリンピック関連の消費や消費によって、逆に減少した消費や投資を考慮していないという。この批判は間違いではない。たとえば東京で公共事業を拡大すると、その分人手が足りなくなって被災地の公共事業に支障が出るという話だ。これについては十分に留意する必要がある。しかし、後で述べるように、国内の経済効果の話はあまりたいしたことないという研究からみれば枝葉末節だ。
他にもある。実際に開催地に選ばれた都市は、五輪施設の建設に巨額の資金を費やすが、これらの施設が将来には役に立たなくなることも多いからだ。ただし、この批判は東京の場合、当たらない。既存の施設が多く、その改修で対応するからだ。
開催日近くになると追い込みでおきる建設コストの増大や警備コストを理由とする五輪消極論もある。これらも東京が他の都市に比べてコスト高とは思えない。
■五輪開催で貿易が30%も急増
細かいところにケチをつけるのは、経済学者の習性でもあるが、その中でも大きな方向性で優れたことをいう人もいる。筆者が参考になると思うのは、アンドリュー・ローズ(カリフォルニア大)とマーク・スピーゲル(サンフランシスコ連銀)が書いた「THE OLYMPIC EFFECT(五輪効果)」である。
彼らの論文によれば、1950年から2006年までの間に五輪開催地の国は、五輪開催と同時に実施した自由貿易や為替の規制緩和などによって貿易が30%急増した。要するに、対外的に格好つけるためにやった自由化措置が結果として国の成長に役立ったのだ。
この論文が面白いのは、五輪のために行った国内向け施策の経済効果ではなく、対外的なメンツのために政治的な決定をした自由化措置のほうが、経済効果が大きかったという点だ。
これを東京五輪に当てはめると、TPP(環太平洋パートナーシップ)やアベノミクス第三の矢の規制緩和だ。この際、日本が世界に恥をかかなという理由でも何でもいいが、TPPの自由化では短期的には不利にみえても自由化措置を進めるのが日本の長期的な成長に望ましいし、規制緩和でも世界が驚くようなことやれば、それが長い目で見て成長につながるだろう。
■カジノや都市交通24時間化のアイデア
猪瀬都知事なら、お台場カジノは当然の話だし、羽田の国際化で東京都市交通の24時間化もすでにやっている。この際、どこかの区を特区にして、先端都市にしてもいい。それら以外にも猪瀬都知事ならアイディアはでてくるはずだ。それをアベノミスク特区で取り上げて、五輪のためという名目で、地域限定・時間限定で規制緩和を進めていけばいい。
これは東京だけの特権ではない。アベノミクス特区は全国の地方からの発意で地域ごとの規制緩和ができる。アベノミクス特区は、民主党時代の総合特区とは異なり、「規制改革先にありき」なので「尖がった提案(混合診療など)を出しすぎると、特区として認定されなくなる」といったことは想定されていないようだ。
筆者の役人時代の感覚でいえば、規制改革は数を打たなければ当たらない。発案から法律作成を経て実際に効果でるまでにも3〜5年かかる。このため、7年先の五輪を目指し長期戦略ではうってつけのタマである。タラレバの類であるが、五輪とTPP・アベノミクス特区を組み合わせれば、2020年の東京五輪までの長期景気上昇もあり得る。
内閣府は2009年3月からの景気拡大局面が12年4月まで37カ月間継続したと暫定的に判定した。09年3月が「谷」で、12年4月が「山」というわけだ。まだ正式に決まっていないが、12年11月が「谷」である可能性が高い。となると、アベノミクスによって、景気後退期はわずか7ヶ月となった。景気後退期は平均して16ヶ月であるが、戦後直後の朝鮮戦争の反動の景気後退4ヶ月に次いで戦後で二番目に短い後退期になる。
12年11月が「谷」として、東京五輪を上手く生かして、TPP・アベノミクス特区を推進すれば、8年に及ぶ戦後最長の景気上昇局面がありえるだろう。
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